楽園のカンヴァス (新潮文庫)

著者 : 原田マハ
  • 新潮社 (2014年6月27日発売)
4.30
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  • レビュー :592
  • Amazon.co.jp ・本 (440ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101259611

作品紹介

ニューヨーク近代美術館のキュレーター、ティム・ブラウンはある日スイスの大邸宅に招かれる。そこで見たのは巨匠ルソーの名作「夢」に酷似した絵。持ち主は正しく真贋判定した者にこの絵を譲ると告げ、手がかりとなる謎の古書を読ませる。リミットは7日間。ライバルは日本人研究者・早川織絵。ルソーとピカソ、二人の天才がカンヴァスに籠めた想いとは――。山本周五郎賞受賞作。

楽園のカンヴァス (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 噂どうりの本当に面白い小説だった!
    普段は静かな場所でしか本の内容が頭に入らない自分が
    電車の中、あっという間に物語世界に引き込まれ、乗客の姿も、おしゃべりなおばさんたちの話し声も、窓の外の景色も、全部消え去った。
    美術や絵画というある意味敷居が高く特殊でコアな世界を、
    特別な知識を持たずとも誰にでも楽しめるミステリー、
    いや、エンタメとして物語を構築してみせたマハさんの手腕にはもう脱帽です(笑)

    ある日、ニューヨーク近代美術館(MOMA)の学芸員ティム・ブラウンに届いた一通の手紙。
    それは名前は知られつつも誰もその姿を見たことがない
    伝説の絵画コレクター、コンラート・バイラーからの招待状だった。
    熱帯雨林咲き乱れ様々な動物たちが身を潜める密林の中、
    赤いビロードの長椅子に横たわる
    長い栗色の髪をした裸身の女。
    それこそがフランスの画家アンリ・ルソーが残した1910年の作品で、二十世紀美術における奇跡のオアシスであり、物議を醸し出す台風の目となった傑作「夢」。
    そしてそれと同時期に描かれたと見られる夢と同じ構図の「夢を見た」という作品。
    バイラーはその真贋鑑定を若き日本人ルソー研究者の早川織絵とティムで、まるでゲームのように争うことを依頼する。
    作品をつぶさに調べるのではなく、バイラーから提供の古書に記された七章からなる物語を一日一章読み進めることによって、作品が本物か偽物かを七日目に判断するという、まさに未知の調査方法だった。果たして「夢を見た」という作品は本物なのか? 早川織絵とティム・ブラウンの真贋対決の勝敗の行方は…。

    史実と創作を絶妙に交えながら描かれる貧しき画家アンリ・ルソーの生涯。
    架空のストーリーなのにマハさんが語ると水のような自然さで読む者の心に浸透し、
    それは限りなく真実に近づいていく。
    まるでルソーを主人公にした冒険小説みたく、心躍るエピソードの連続にページを繰る指が止まらなくなる。

    そこにプラス、何かを企んでいそうなバイラー氏の代理人のエリク・コンツや、早川織絵のボスでテート・ギャラリーのチーフ・キュレーターであるアンドリュー・キーツ、
    世界最大のオークションハウスのディレクターであるポール・マニング、インターポール(国際刑事警察機構)のアートコーディネーターで謎の女性ジュリエット・ルルーなど、様々な人たちの思惑が複雑に絡み合うことで実にスリリングな効果をもたらし、ミステリー小説としても一級品の輝きを放つのです。

    また愛すべきおバカな(笑)ティム・ブラウンや容姿端麗で頭のきれる早川織絵など印象的な登場人物の中でも、
    ルソーに愛され絵のモデルとなり、絵の中で永遠を生きることを決意する女性ヤドヴィガや
    ルソーの才能にいち早く気付き彼を後押しする天才画家パブロ・ピカソの人物像が実に人間臭く生き生きと描かれているのも、なんとも魅力的で引き込まれます。

    いい小説は読む人の心の中に物語が生まれる。
    結論を押し付けずに、読む人が思いを巡らすための余白を届けてくれる。

    本当に読みやすく、ページをめくる指が止まらなくなる面白い本なので、
    「美術や絵の話苦手だしな~」っと思って避けてる人も、
    先入観ナシに一度トライしてみて欲しいです。

  • ルソーという奇才画家をめぐり、見果てぬ夢に人生を絡め取られた人々の物語。

    ある富豪の策略に導かれ、隠れたルソー作品の真贋を巡って対決することになる、アメリカ人男性キュレーターと日本人女性研究者。
    ルソー研究者である2人は、ルソーの隠れた作品と真実に迫る瞬間に深く陶酔しつつ、好敵手同士だけがわかる絆を深めながらも、それぞれの事情の為に不安に苛まれています。
    そんな彼らの対決を利用しようとする人々もたくさんいて…。

    そして、時間軸を異にした、奇才ルソーを見い出した不世出の天才画家と1組の夫婦の物語。

    各人の思惑と時間軸が交差した時に明かされる真実とルソーを敬愛してやまない2人のそれぞれの決断、そして、未来の物語の後味の良さはさすがマハさん、という感じです。それから、彼女の美術を扱う作品では、美術作品を資産(金)としてしかとらえてないような一種の憎まれ役が出てくる点もこの方らしい。

    恋愛と美術ミステリーがうまくミックスされていますね。そして、作品をめぐる最大の真実は闇の中へ…。

    ただ、マハさん自身の某過去作と構成がものすごく似ており、それを昔読んでしまっていた身としては、ラストが途中でなんとなくわかってしまったのはちょっと残念でした…。

  • ニューヨーク近代美術館のキュレーター、ティム・ブラウンはある日スイスの大邸宅に招かれる。そこで見たのは巨匠ルソーの名作「夢」に酷似した絵。持ち主は正しく真贋判定した者にこの絵を譲ると告げ、手がかりとなる謎の古書を読ませる。リミットは7日間。ライバルは日本人研究者・早川織絵。ルソーとピカソ、二人の天才がカンヴァスに籠めた想いとは――。

    ルソーの「夢をみた」は真作か、贋作か。壮大すぎるテーマを元に真実を探すティムと織絵。その裏には次々と思惑を持った人々が絡み、いったいどうなるんだろうとわくわくしながら読みました。印象派は好きでよく美術館にも足を運ぶ方でしたが、こんなに熱を持って語られたらルソーの魅力を感じなかった自分が残念な人に思えてきた(笑)し、ミステリとしても面白い。結末はわりと衝撃でしたが納得もできた。ルソーという画家への愛をもった二人がこれから先も絵に寄り添って幸せな道を歩むことを感じさせる終わり方で、幸せな気持ちで読み終えました。表紙を見つめて、しばし恍惚。

  • 絵画の知識が全くなくても楽しく読めた。知識のぶつかり合い、とても知的で情熱的な戦い。ただ漫然と眺めるのではなく、その絵画が描かれた背景を知っていれば感じ方も全然違ってくるんだなあ、と絵画の楽しみ方を教えてもらった。
    注文があるとすれば、作中に出てくる絵画が挿絵として掲載されていたらもっとわかりやすかったかな。まあ、それを文章で表現してこそ小説家の腕の見せ所なんだろうけど。あとは、この小説を読んで絵画に興味を持った読者に、実際に美術館に足を運んで生の絵画に触れてほしいという著者の思いもあるのかもしれない。

  • 知り合いに勧められて読んでみました。絵画のことなんて全くわからないのに、すいすい読めちゃいました。ストーリーにも引き込まれ、しかも突然感動ポイントがやってきて、嗚咽しそうでした。
    娘がどうなっていくのかとか、2人の関係とかその後も知りたくなりました。

  • 初めて読んだ原田マハの作品。
    知り合いの書店員さんからオススメされて手に取る。

    第25回・山本周五郎賞、雑誌『ダヴィンチ』プラチナ本 オブザイヤー2012 を獲得。

    主人公、ティム・ブラウンはMoMA(ニューヨーク近代美術館)のアシスタント・キュレーターであり、ルソーの研究も行っている。
    ある日彼の元に、伝説の名画収集家『コンラート・バイラー』から一通の手紙が届く。
    そこには、彼がルソーの隠されてた名画を所持していること、またそれが欲しければすぐにスイスに来るようにという指示が記されていた。

    主人公はそこで、1枚の作品『夢をみた』を見せられる。
    それは、MOMAが所持しているルソー作品『夢』にあまりにも酷似した作品だった。

    そこには、主人公だけではなくもう一人のライバル、日本人天才研究者・早川織絵も呼ばれていた。
    コンラート・バイラーが出した条件は、7日以内に『夢をみた』の真贋を見極めること、そしてより優れた講評をした者に作品のハンドリングライト(取り扱い権利)を譲渡するというものだった。

    様々な思惑が交錯する中、作品は果たしてどちらの手に渡ってしまうのか…

    途中から作品の世界にどっぷりハマってしまい、時間を忘れて一気読みしてしまった。
    最後は喫茶店でこの本を読み終えたのだけれど、いろんな感情が渦を巻いて胸がいっぱいになってしまい、しばらく何もできず放心状態だった。

    単純に、そして素直にものすごく素晴らしい作品だと思った。
    ミステリー、恋愛、仕事いろんな要素を盛り込みながら、しかしその全てがどれも陳腐にならずとても高い完成度で作り上げられている。
    今まで読んだミステリーの中では最高峰ではないかと思う。

    手かがりとなる古書を読み進めながら、少しづつ作品の真贋の謎解きを進めていくハラハラ感。
    天才研究者2人がぶつかり合い、展開されるスリリングな駆け引き。
    そして、ルソー作品にかける2人の熱い情熱。
    その全てが心地良い。

    何といっても、最後の講評のシーンがたまらない。
    織絵のコトを思い、また『夢をみた』が世の中に残ることを願って、自らの地位をかなぐり捨てる選択をするブラウン。
    また、ルソーの作品への愛情で、同じく自分の立場を捨てる選択をしてしまう織絵。
    形こそ違うがその2人の熱い思いに、強く強く心を打たれる。
    いいなぁと、自分もそんな風に何かに夢中になれたらなぁと、心から羨ましく思ってしまった。

    原田マハ、他の作品も読んでみようと思う。
    新たに好きな作家さんに出会えたことを嬉しく思う。

    <印象に残った言葉>
    ・ この作品には、情熱がある。画家の情熱のすべてが。……それだけです。(P369 早川織絵)

    ・ いかにも。……わしが招待したのは、ティム・ブラウンだ。(P389 コンラート・バイラー)

  • 読み終わった瞬間、視界が滲んだのはどうしてなんだろう。

  • 今年、読んだ本の中でピカイチに面白かった。ミステリー小説でもあり、冒険小説でもあり、恋愛小説でもある。本当に日本人作家が書いたのかと疑うほどの海外翻訳作品のようなダイナミックさと日本人作家特有の繊細さを併せ持つ傑作。ラストでは鳥肌が立った。

    恐らく物語の核となるアンリ・ルソーの『夢を見た』というタイトルの絵画は作者の創作だろうが、絵画の下にもう一つの絵画が隠されている例は良く耳にする。それだけに設定に十分な説得力があるのだ。また、程良いテンポで物語が展開し、章を追うごとに少しづつミステリーが解き明かされて行くという構成も良い。

    読んでいて、これほど最終章が待ち遠しくなる作品はなかなか無い。

    表紙の装画の雰囲気にどこかで見た絵だと思っていたのだが、お気に入りのギル・ゴールドスタインのアルバムの装画『眠れるジプシー女』を描いていたのがアンリ・ルソーだった。

  • 面白かった!!ものすごく。
    読んでる時はわくわくドキドキ、ジェットコースターのようで、読み終えた後は効能が続く穏やかなお薬みたいな本。

    美術館や絵画が大好きなのもあり、手に取った一冊。
    面白いー!!どういうこと?と一気読み、2日で読み終えました。

    現在と過去、オリエとティム・ブラウン、ルソーとピカソのストーリーが巧みに編み込まれ、解かれていくのがお見事。
    とても深いところで繋がることができたような、大きな愛で心満たされるような、幸せな読後感でした。
    心に残る一瞬一瞬が、作品の随所に散りばめられている印象。絵画のように。
    うう、ほんとすごい。

  • 原田さんの作品は何作が読んでいますが、
    美術ミステー作品は初めて手に取りました。
    美術全般に関して知識が詳しくないので、
    あまり意味の分からない所がありましたが、
    ストーリーの展開がワクワクしていたので
    割とさくさくと読めた気がします。

    絵画の作品が紹介されている部分では
    どんな作品なのかとネット検索しながら読んでみたので、少しは作品の雰囲気も味わえたかと思います。

    美術作品とミステリーというのは一見すると
    あまり関係のないように思いますが、
    よく考えてみると一枚の絵を巡って色々な見解があり、
    その裏で当時の時代背景、思想など様々なものが入り、
    謎が謎を呼び一番ミステリー性があるものだと思ってしまいました。
    本当の事を知っているのは、絵を描いた本人。
    一つの物に隠された真実を見破るのは、
    今も昔も難しいものだとつくづく思い、
    またそのミステリーが明かされないのが美術の魅力だと思えて、
    美術品というのは奥が深いなと思いました。

    美術ミステリーと同時に展開されれていたことが
    ラストになって意外な展開になりこちらはミステリーではなく、
    さらりとして明るい未来を暗示させていて吃驚です。

    ルソーにこんなにも魅了される人達がいると思うと、
    実際に美術館に行ってみてルソーの作品を
    見てみたいと思いました。
    そしてこれをきっかけに美術にも少し関心を寄せてみたいと思います。
    美術の知識や関心が無くても楽しく読める作品でした。

    原田さんの作品は心温まるものが多いですが、
    このような奥深いもの良いです。

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