楽園のカンヴァス (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
4.36
  • (3139)
  • (2194)
  • (693)
  • (92)
  • (25)
本棚登録 : 24532
感想 : 2126
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101259611

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 面白すぎ!
    一気読みしてしまった。

    MoMAのキュレーター、ティ厶・ブラウンは、伝説のコレクター、バイラーの大豪邸に招かれる。そこで、ルソーの名作「夢」によく似た絵を見せられる。同時に招かれた日本人研究者・早川織絵と真贋鑑定対決をすることとなり、勝った方にはその絵の取り扱い権利を譲渡する、と言われる。リミットは7日間。手がかりは謎の古書。
    ルソーとピカソ2人の想いがカンヴァスの上に交差する―


    何度も、登場する絵画を集めたまとめサイトを見ながら、本を読み進めた。「暗幕のゲルニカ」のレビューにも書いたけど、僕には絵画鑑賞のセンスがない。でも、何だか楽しかった。絵画の描かれた背景とか、この小説読んでよく分かったから。

    ー アートを理解する、ということは、この世界を理解する、ということ。アートを愛する、ということは、この世界を愛する、ということ。

    読み終えて、作中のこの言葉に、少しだけ近づけた気がした。美術館に行きたくなった。

    読んで幸せな気分になる、大好きな小説です。

    ところで、僕はピカソよりルソーの絵の方が好きだな、と思いました。

  • 絵画とかクラッシックとか理解できひん…
    ルソーもピカソも名前は知ってる。
    でも、それだけ…
    この小説読むと美術館とか行くと凄い引き込まれそうなんやけど、今まで、大原美術館、京都の美術館とか行った事あるけど、あかんかった(^^;;

    でも、この作品読むと絵画への情熱とか分かるし、引き込まれる。やっぱ、絵を描くのと同様に、文字を描く人か良いんやろな。
    美術ミステリーっていうみたい。殺人とかはないんやけど、絵のホンモノ鑑定での謎解きにドキドキ!
    人間違えの件は、何となくはじめから、そうかなと。

    何にでも良いけど、こんなに情熱を傾けられるのが羨ましくもあるなぁ〜
    ハイ、一気読み!(^_^)v

  • 大原美術館に行く予定ができたため、今回は文庫本で再読。
    一年半前、初めて読んだ原田マハさんの作品です。
    史実をもとにした創作ミステリー。
    結末を知ってるはずなのに、二度目の大感動。

    第一章。2000年、倉敷。
    美術館の監視員、織絵のもとに
    思いがけない話が舞い込みます。
    MoMaのチーフ・キュレーター
    ティム・ブラウンに会ってほしいというのです。
    ルソーの絵画『夢』の貸出交渉をするため、
    織絵はニューヨークへと旅立ちます。

    第二章から第十章まで、17年遡って1983年のスイスへ。
    バーゼルにある伝説のコレクター、バイラー氏のお屋敷。
    バイラー氏が所蔵するルソーの絵の真贋を見極めるため
    織絵とティムが招待されますが、そこには不思議な条件が。
    七章から成る「門外不出の古書」を一日一章ずつ読むこと。
    七日目にそれぞれが作品講評をして、
    より優れた方に絵画の取り扱い権利を譲るというのです。
    織江とティムの 一騎打ち鑑定 です。

    古書では1900年頃のパリが描かれ、ルソーやピカソ、
    ルソーに魅せられた夫婦の物語が繰り広げられます。

    一方、現実世界の1983年のパリでは、
    絵画をめぐる不穏で怪しい動きも語られます。
    鑑定される絵の真贋は?
    最終的に誰の手に渡るのか?
    二人の講評対決の結末には、意外な展開が待ち受けています。

    そして最終章。
    絵画のように美しいシーンで締めくくられます。
    素敵!

    原田マハさんの文章は、いつ読んでも心地よく
    新しい世界への扉を開いてくれます。
    平面的だった絵画にふわっと命が吹きこまれ
    心の底からわくわくさせられるのです。

    大原美術館、ますます楽しみになりました。

    • まことさん
      yyさん。こんにちは♪

      大原美術館に行かれるのですね。
      楽しみですね!
      熱中症などにお気をつけて、楽しまれてきてください。
      いい...
      yyさん。こんにちは♪

      大原美術館に行かれるのですね。
      楽しみですね!
      熱中症などにお気をつけて、楽しまれてきてください。
      いいなあ。
      私は、隣県が宮城県で、コロナ前は時々仙台のジュンク堂書店や丸善に遊びに行っていましたが、行くと、伊坂幸太郎さんがどこかに立っていないか探してしまうというバカなことをやっていました。
      2022/06/26
    • yyさん
      まことさん

      コメントありがとうございます。
      嬉しい☆彡
      原田マハさんの著書にハマったのはまことさんのお陰。
      素敵な世界を紹介して...
      まことさん

      コメントありがとうございます。
      嬉しい☆彡
      原田マハさんの著書にハマったのはまことさんのお陰。
      素敵な世界を紹介してくださって、今も感謝しています。

      最近は、WOWOWオンデマンドで
      マハさんが日本の美術館を訪ね歩いて
      「友だち」に会いに行く番組を楽しみに観ていす。

      まことさんは、伊坂幸太郎さんの大ファンでいらしゃるのね。
      コメントを読ませていただいて、思わず頬がゆるみました。
      でも、そういう ”ときめき” ってすごく大事だと思います。

      そういえば、『マリアビートル』が原作の映画、
      公開が9月になりましたね。
      コロナで半年遅れたのかな?
      原作を読んでからの映画って、楽しみなような怖いような…。
      2022/06/26
  • ずっと読みたいと思っていた原田マハさんの作品。

    アートミステリーとの評判そのとおりで、ビジネス絡みの陰謀やロマンスなんかも織り混ざり軽快に読めた。

    絵画一枚にこんなにもドラマがあるのか?
    もしそうならば絵画一枚一枚をもっと深く知る努力をする事でより見方が変わるのは間違いないと感じた。
    絵画の持つ細かい技術や技巧等はほぼわからないけれども、見た時のそのパッションはドラマを知ることでさらに熱を感じると思う。
    今後機会があればそうしたいと思った。

    ティムも織絵もバトラーも最愛の人がもう一つのテーマになる。
    そして時間の経過と共にテーマは家族になる。
    一枚の絵を通して内側と外側でおきる人間ドラマ。
    真贋の審判に関わり、ティムも織絵もバトラーも「夢をみた」の前で今まで自分達にのせていた色をリセットする。まるで今までが「夢」だったみたいに。
    洗われて自分と向き合い、そこから新たな色味を重ねていく決意。まさに「夢をみた」だ。素敵だ。

    最後に織絵の娘、彼女は「ヤドヴィカ」になぞられているのかな?
    どことなくフワフワとしているのだが、最後に「生きてる」っていう事がリンクする。
    意識の外側で当初のヤドヴィカがそうだったように、娘も作品に触れて徐々に感じる物があるのだろうと感じた。
    同じ栗色の髪色、彼女も今後誰かの作品の中で永遠に生きる事もあるのか?なんて思った。

  • 『さあ、描いてちょうだい。あたしは、いまから、永遠を生きることにしたの』(引用、353頁)

    私たちは本が好きです。よね?
    好きな理由は人によってさまざまあると思いますが、
    その理由の1つに、「読んでる最中は、本(または作者)と一対一で向き合っている」その感覚が好きだ、というのはありませんか?
    本と向き合っているときは、現実を離れ、本の中に溶け込み、物語の中の世界を自由に歩いている。そういうときあると思います。

    「絵画というアートの中にも同じことが言えるんだ!」
    楽園のカンヴァスを読んで僕が最初に思った感想です。
    例えば登場人物の早川織絵(はやかわおりえ)が、ルソーやピカソの絵の前に立っているとき、その絵と向き合うことで、ルソーが描いたその瞬間の熱量とおなじ温度で作品の中に入っていきます。
    そんな作品が何世紀も前につくられ、長い時間を旅して私たちの前に現れる。
    永遠にも思える長い時間を超えてやってきた作品と向き合うことができる。
    そしてひとたび、作品と向き合えば、その世界には今も昔もない。
    その絵はある一瞬が切り取られている。
    絵の世界の中では、一瞬が永遠とおなじ密度で流れている。

    楽園のカンヴァスは、作品に溶け込む感覚をより密度濃く教えてくれます。
    私たちは文章の中に溶け込み、その世界を自由に歩き、その世界の中の絵と出会い、また絵の中に入り込んでいき、絵の中の住人と出会う。

    そんな感覚味わってみたくなりませんか?


    <おすすめの人>
    ・絵画ってお高くない?でも実は、、、興味がある!!
    ・美術館、博物館に行くことが好き!
    ・物語の中に入り込んで、パリの街を歩き回りたい!


    <余談>
    僕は本を読むとき付箋をつけながら読むのですが、その付箋をつけた所が、他の方の感想に同じく引用されてたんです!
    一人の孤独な読書行為なのに、いろんな人と繋がっているんだなという事実に驚きと喜びがありました。
    自分の感想もそんなバトンの一つになることを願って、この言葉を

    『アートを理解する、ということは、この世界を理解する、ということ。アートを愛するということは、この世界を愛する、ということ。』(引用、232頁) 

  • 原田マハさんのアート系ミステリー。様々な作品があるけれど、今まで読んだ原田さんのアート系の中で一番ミステリーの要素が濃いような気がします。ハラハラしながらページを捲る。捲るペースがどんどん早くなってしまう。(至福です)

    読んでいけば知らず知らずのうちにアンリ・ルソーとパブロ・ピカソの知識が増えていく。ただ、原田さんの手にかかると史実と創作の境界が曖昧になってくる。その間を縫うようにミステリーが展開されていく。

    美術館の裏側に関する話も興味深いですね。本物を観ることがどれだけ難しいことなのか?鑑賞する時ののありがたさが爆上がりします。

    ルソーとピカソの関係性を暗示するような、「夢をみた」?あるいは「夢」という作品をテーマにした「ヒストリカルな謎の小説」を紐解きながらストーリーが展開していく。

    ルソーの、輪郭がはっきりとした暗めの緑色の画風とピカソの衝撃的な時代を超える表現。アートの世界に疎い私でさえ知っている様々な「絵」が頭の中を行ったり来たりしてくる。

    浅はかな私は、「夢をみた」をググってしまいました。残念ながら期待通り?の結果。さすが原田さんです。してやられたり。

    もったいぶらせながら、謎を深めつつストーリーを展開していく。素晴らしい。終盤に近づくにつれてハラハラドキドキが止まらなくなってくる。

    ルソーの絵もピカソの絵も、見れば「ああ、この作品だ!」と判るし、印象にも残っている。しかし、原田さんのこの作品を読んで、まだまだ自分が浅はかであることを見せつけられたような気分になってしまいます。

    作品の中に度々出てくる「ウェーブのかかった長い栗色の髪」と言う表現がなぜか印象に残りました。やはり「キーパーソン」の一人だったのですね。納得です。

    一文だけ、どうにも理解できていない文がありました。「おれは、彼女を恋しているんだ。」と言う文です。どうして「に」ではなくて「を」なのか?どうでもいいことなのかもしれませんが、何故だかとても気になりました。(文庫P334)

    色々と考えてみたのですが、「彼女に」とすると直接的に「彼女に対して」と言う意味になる。しかし、「を」にすると「彼女が抱えているすべてに対して」と言う意味に読み取れる。個人的に、言葉の使い方に原田さんの凄さが滲み出ているように感じました。この言葉の後のドラマチックな展開を予想させる言葉。この作品の最後の部分に結びついていたんですね。

    「夢」のモデルとなった「ヤドヴィガ」の、その夫を介した心の移ろいは明らかに創作だと分かります。その夫のことも作品の中にうまく溶け込ませてある。うまいですねぇ。

    読み終えた後、しばしうっとりとしてしまいました。さすが、原田さんです。

    • hirokingさん
      Macomi55さん
      さすがですね!私は気がついておりませんでした。私もよくわかりません。「あなたの感想に」の「に」は的確だと思います。「感...
      Macomi55さん
      さすがですね!私は気がついておりませんでした。私もよくわかりません。「あなたの感想に」の「に」は的確だと思います。「感想に対して」と言うことでしょう。「本棚をいいねしました」の「を」は「に」でいいと思いますね。ただ「を」で何ら違和感はないように思います。

      おそらく、ブクログにはプロの管理人さんがいらっしゃるので、それなりに洗練された言葉を利用されているとは思いますが。
      2023/09/23
    • Macomi55さん
      ヒロキンさん
      「を」だと、「作品を賞賛しました」のようなニュアンスで、「に」だと「答案に丸つけしました」みたいなニュアンスですね。そもそも「...
      ヒロキンさん
      「を」だと、「作品を賞賛しました」のようなニュアンスで、「に」だと「答案に丸つけしました」みたいなニュアンスですね。そもそも「いいねする」という言葉自体結構新しいので、よくわかりませんね。
      原田マハさんの小説に対するご指摘の部分は、「誰々を愛する」とは言いますが、確かに「誰々を恋する」とは言いませんよね。
      私もレビューとか書く時、無意識に変な日本語沢山使っていますが。
      2023/09/23
    • hirokingさん
      Macomi55さん
      コメント頂きありがとうございます。
      日本語の使い方の専門的なことは解っておりません。ただ、雰囲気的にいわせていただくと...
      Macomi55さん
      コメント頂きありがとうございます。
      日本語の使い方の専門的なことは解っておりません。ただ、雰囲気的にいわせていただくと、「本棚に」というと「本棚そのものに対して」という感じがして、「本棚を」というと「本棚に入っている本も含めて」というような感じがしてきます。あくまでも雰囲気ですが。
      Macomi55さんのレビューはとても洗練されていますよ。これからも楽しみにしております。
      2023/09/23
  • 噂どうりの本当に面白い小説だった!
    普段は静かな場所でしか本の内容が頭に入らない自分が
    電車の中、あっという間に物語世界に引き込まれ、乗客の姿も、おしゃべりなおばさんたちの話し声も、窓の外の景色も、全部消え去った。
    美術や絵画というある意味敷居が高く特殊でコアな世界を、
    特別な知識を持たずとも誰にでも楽しめるミステリー、
    いや、エンタメとして物語を構築してみせたマハさんの手腕にはもう脱帽です(笑)

    ある日、ニューヨーク近代美術館(MOMA)の学芸員ティム・ブラウンに届いた一通の手紙。
    それは名前は知られつつも誰もその姿を見たことがない
    伝説の絵画コレクター、コンラート・バイラーからの招待状だった。
    熱帯雨林咲き乱れ様々な動物たちが身を潜める密林の中、
    赤いビロードの長椅子に横たわる
    長い栗色の髪をした裸身の女。
    それこそがフランスの画家アンリ・ルソーが残した1910年の作品で、二十世紀美術における奇跡のオアシスであり、物議を醸し出す台風の目となった傑作「夢」。
    そしてそれと同時期に描かれたと見られる夢と同じ構図の「夢を見た」という作品。
    バイラーはその真贋鑑定を若き日本人ルソー研究者の早川織絵とティムで、まるでゲームのように争うことを依頼する。
    作品をつぶさに調べるのではなく、バイラーから提供の古書に記された七章からなる物語を一日一章読み進めることによって、作品が本物か偽物かを七日目に判断するという、まさに未知の調査方法だった。果たして「夢を見た」という作品は本物なのか? 早川織絵とティム・ブラウンの真贋対決の勝敗の行方は…。

    史実と創作を絶妙に交えながら描かれる貧しき画家アンリ・ルソーの生涯。
    架空のストーリーなのにマハさんが語ると水のような自然さで読む者の心に浸透し、
    それは限りなく真実に近づいていく。
    まるでルソーを主人公にした冒険小説みたく、心躍るエピソードの連続にページを繰る指が止まらなくなる。

    そこにプラス、何かを企んでいそうなバイラー氏の代理人のエリク・コンツや、早川織絵のボスでテート・ギャラリーのチーフ・キュレーターであるアンドリュー・キーツ、
    世界最大のオークションハウスのディレクターであるポール・マニング、インターポール(国際刑事警察機構)のアートコーディネーターで謎の女性ジュリエット・ルルーなど、様々な人たちの思惑が複雑に絡み合うことで実にスリリングな効果をもたらし、ミステリー小説としても一級品の輝きを放つのです。

    また愛すべきおバカな(笑)ティム・ブラウンや容姿端麗で頭のきれる早川織絵など印象的な登場人物の中でも、
    ルソーに愛され絵のモデルとなり、絵の中で永遠を生きることを決意する女性ヤドヴィガや
    ルソーの才能にいち早く気付き彼を後押しする天才画家パブロ・ピカソの人物像が実に人間臭く生き生きと描かれているのも、なんとも魅力的で引き込まれます。

    いい小説は読む人の心の中に物語が生まれる。
    結論を押し付けずに、読む人が思いを巡らすための余白を届けてくれる。

    本当に読みやすく、ページをめくる指が止まらなくなる面白い本なので、
    「美術や絵の話苦手だしな~」っと思って避けてる人も、
    先入観ナシに一度トライしてみて欲しいです。

  • ニューヨーク近代美術館所蔵の、アンリ・ルソー「夢」。そして、その構図と酷似した、個人コレクター所蔵の「夢をみた」の出現。その真贋鑑定を巡るアートミステリー。

    作中に、多くの現実の芸術家・美術品を、巧みに表現して、創作部分を見失う程。フィクションとノンフィクションの狭間を彷徨ってしまう。美術史に詳しくない私でも、西洋美術史の一コマに心酔出来る。

    個人コレクターが、誰であるか、途中で気がついてからは、より感情移入してしまった。

    主人公織江の現在の生活から、物語は始まる。美術館の少し冷たい静寂。美術展に関わる人達の熱量。

    作中に出てくる作品は、きっと検索したくなる。そして、美術館に行きたくなる。次の美術展からは、節約せずに、音声ガイド利用します。

  • その場所にはいかなる不安も苦しみも貧しさもない楽園。ルソーとヤドヴィカが最後ひとつになり「夢をみた」場面は胸にしみた。
    最初、なにげに本の表紙の「夢」を見たときと、読み終えた後ではまったく印象が変わった。絵画の作者の思いの深さが伝わってきたというか。絵を見るとき、難しく考えていた。敷居が高すぎて、何を表現しているのかわからない、とか。
    だけど本書を読んで、ありのままに感じたままに受け取ればいいんだ、とすごく勉強になった。
    読みながら、絵を調べ、文章と絵を同時に見る、という贅沢な読み方も初めて経験(少々労力要ったけれど)。
    日曜画家として貧乏な画家生活を送るルソー。落選者の集まる展覧会でもからかわれ。家族も病気で次々と失った。
    同じアパートに住む婦人、井戸水でごしごし洗濯をする無邪気なヤドヴィカに恋心を抱く。そんなルソーに孤独を見た(やり切れないというか)。ヤドヴィカの夫はルソーの絵の理解者であるが、ヤドヴィカも少しづつルソーに興味を持ってゆく所が面白かった。
    対照的ではあるが、互いにひかれあうピカソとの出会い。ルソーの人柄もよく表れていた。
    聡明で、慈愛深く、いつも冷静な織絵という印象だったが、最後心理的に不安定になったところに女性らしさ(母性)を見、それを救うティムとのやり取りが印象的だった。
    動物園での場面はほっとした。
    その後、ティムの言及通り、美術館の監視員として働く織絵。「コレクター以上にもっと名画に向き合い続ける人、美術館の監視員だよ」
    世界まで昇りつめた織絵が故郷へ戻り監視員として、大好きな絵の近くで仕事をしている所、良かったです。

  • 楽園のカンヴァスの前に、『マグダラ屋のマリア』と『サロメ』という重いのを立て続けに読んでいたために、あっさりすっきり流れるように読めました。
    原田マハさんは、絵画作品の持つ雰囲気に合わせて小説の重さ軽さを操っているのだと思いますが、それがまたぴったり。
    ルソーは今まで、何となく好きではあったけれど、これを読んではっきり好きになりました。ああ、本物のルソーを観てみたい!味わいたい!

全2126件中 11 - 20件を表示

著者プロフィール

1962年東京都生まれ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部卒業。森美術館設立準備室勤務、MoMAへの派遣を経て独立。フリーのキュレーター、カルチャーライターとして活躍する。2005年『カフーを待ちわびて』で、「日本ラブストーリー大賞」を受賞し、小説家デビュー。12年『楽園のカンヴァス』で、「山本周五郎賞」を受賞。17年『リーチ先生』で、「新田次郎文学賞」を受賞する。その他著書に、『本日は、お日柄もよく』『キネマの神様』『常設展示室』『リボルバー』『黒い絵』等がある。

原田マハの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
又吉 直樹
辻村 深月
三浦 しをん
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×