- Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101259611
感想・レビュー・書評
-
何人かに進められて読書中。
ルソーの真贋鑑定対決や、ルソーの下に隠されたピカソを巡る攻防など、ストーリーや題材自体は面白い。でも残念なことに、主人公の織絵がどうも好きになれない。
美術研究者として博士まで取って、学界を騒がす風雲児とまで言われているのに、織絵の絵に対する感覚が主観的、感情的に過ぎて論理に欠けるから研究者としての彼女に敬意を抱けない…。
ピカソの鳥籠を鑑賞する際、
「ピカソが描いたのは籠の中の鳥ではなく、鳥がたまたま籠のところにやってきた絵なのではないか?なぜならそう解釈すれば自分や娘の未来がもう羽ばたけない鳥のようなものではないという天啓になるから!」
って考えているところとか、絵画の新しい解釈を思いつくとっかかりが身勝手な感情移入でしか無い点でアカデミズムから程遠いなあと。
コーヒーカップの底に残ったコーヒー豆の絵柄を判じるが如きノリで絵画を解釈するの、専門家の視点としてはナンセンスなのでは。
文系学問全般に言えることだけど、市井の好事家と研究者の違いは、自分の立てた仮説を事実と先行研究に基づいて立証できるかと、論理的に仮説を展開できるかだよね。織絵の絵画への視点には研究者を研究者足らしめるものが欠けている。
ここら辺以降は斜め読みであらすじだけ追ってしまったんだけれど、そんな彼女の研究者人生の頂点と引退が本編のメインになってるよね。
不倫の末できた子供を、男に黙って日本に帰って産みたいから美術界を退く(ここら辺の行動もかなり愚かに感じる)…というのなら、冒頭、飛べない鳥のごとく山陰の田舎に縛られたとしてもクサクサせずしっかり生きるべきだったのでは?娘に向き合うこともなく、イマジナリーフレンドとしての絵画への想いを断ち切ることもなく中途半端に生きてるから、周囲からは遠巻きにされ娘からは心を閉ざされてるんじゃないのか?
とか考えてしまうと、どうにも織絵が好きになれない…。
私は自分の選択とそれが引き起こす結果に責任を持ち、良い人生を勝ち取るために一生懸命努力するようなキャラが好き…。
ルソーの絵を巡る論争でも、結局最後に織絵が主張したことは主観的、感情的な絵への想いだったしね。それで研究者として評価されてるって場違いにすぎるのでは…。
娘と向き合えてないことに対し、「あの子はエル・グレコの前でガムを噛むような子なんだ」って感じているところにも織絵の未熟さを感じる。自分と美術界の重鎮の遺伝子を掛け合わせてたって、美術に興味を持つとは限らないのにそんなことにも気づいてないよね。
日本を発つ前、娘と少し交流ができた描写もあるけど、あれも娘に歩み寄るというよりは、これから海外に出張するというイベントを通じて娘に歩み寄らせていたし。
織絵が美術界を退いてでも手に入れたかったのは、血の通った娘なんかじゃなく、同じような美術趣味を持つ理解者を所有すること、ないし、イマジナリーフレンドである絵画にかわる友達みたいなものだったのかもしれない。でもそんな風に接されたら娘としては迷惑だろうし、そりゃ心を閉ざすだろうなと。
斜め読みして読み飛ばしたところに、織絵が研究者として尊敬されるに値する人物であるって描写があるのかな??
人から紹介された本だからこれからちゃんと読み直すけど…自分の好みには合わなかったように思う詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
1.8
-
さっむ
-
それぞれの意思決定が不明瞭で読後もやもやしてる。織絵が真作判定をすることで結婚出来なくなると思ったのはなぜ...?バイラーの譲渡の判断軸は何?
-
働くということは自分の欲望との闘いだ。
容易く真実を見失う。
作中のキーワードにもなっている
情熱(パッション)を如何に保ち続けるか。
それが成功の秘訣で、人間の心を動かす唯一のものであると実感した。 -
だがしかしルソーの絵は好きになれなかった。唯一まともに読めたのは7章の小説部分のみ。他はすかすかのインスタントなラノベである。
-
画家の名前とか難しくて途中でやめた
-
ハリウッド映画風の大きな舞台を用意したが乗り切れなかった。まず主人公の早川織江はとても優秀なのに今は美術館の監視員。この経緯があまり語られておらず、無駄にチート。そして、物語の大半はティム・ブラウンというMoMAのアシスタント・キュレーターが主人公。彼は極秘行動をいろいろな人に目撃されていて、運が無いのか間抜けなのかわからない。そして、すべては極秘におこなわれるべきイベントが、外部の人間に知られすぎ。