楽園のカンヴァス (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101259611

作品紹介・あらすじ

ニューヨーク近代美術館のキュレーター、ティム・ブラウンはある日スイスの大邸宅に招かれる。そこで見たのは巨匠ルソーの名作「夢」に酷似した絵。持ち主は正しく真贋判定した者にこの絵を譲ると告げ、手がかりとなる謎の古書を読ませる。リミットは7日間。ライバルは日本人研究者・早川織絵。ルソーとピカソ、二人の天才がカンヴァスに籠めた想いとは――。山本周五郎賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 2012年山本周五郎賞受賞作品

    原田マハさんの作品を初めて読みましたぜ。 

    以前から気になっていた作家でしたがきっかけがなく読まずじまいだったんです。が、職場の読書好き後輩同僚にマハ作品「めちゃ面白いですよ」と勧められて読むことにしました。

    ちなみに本作と「暗幕のゲルニカ」の2作品をその彼から借りました。両作品を立て続けに読んだわけですが、これがまた両方とも大変面白く大満足できたんです。マハワールドに没入し魅力されました。

    有名作家なので以前から名前は知っていましたが作風はいっさい知りませんでした。
    有名画家の特別展が開催されると美術館に足を運んだりする私にとっては、アート系もっと言えば絵画系小説とは題材としては実に実に興味深かかったですな。

    少し作品について触れておくと、本作は異才の画家アンリ・ルソーと彼の作品を巡る物語です。ニューヨークにあるモマの若手キュレーター、ティムブ・ラウンと主人公でルソー研究者、早川織絵のルソー作品の真贋鑑定判定対決のお話しですが、対決相手でありながらにしての二人の関係性の微妙な変化がこの作品の妙味ですね。

    また小説内小説でアンリ・ルソーその人の時代が語られていますが、これがまた良い! ルソーの純朴さ、朴訥さ、天然キャラ大好きっす。

    詳しく書くとネタバレしてしまうのでこのあたりにしておきます。

    ともあれ本作を読み終えたときの満足感、爽快感、余韻…こんな感覚をもてた小説はけっこう久々かもしれません。圧巻と言っていいでしょう。

    本作の表紙に使われているのが、作品のテーマでもあるアンリ・ルソーの「夢」という作品ですが、読む前に見た「夢」と読んだ後に見た「夢」は同じ絵なのに全く違うように見えるんです。
    本作未読の皆さん、読んだ後に見る「夢」をぜひぜひご堪能ください(笑)









    • 傍らに珈琲を。さん
      TAKAHIROさん、こんばんは!
      先日いいねを押させていただいた時からコメント入れさせて頂きたくて、やっと時間がとれました♪

      マハさんの...
      TAKAHIROさん、こんばんは!
      先日いいねを押させていただいた時からコメント入れさせて頂きたくて、やっと時間がとれました♪

      マハさんの作品は未開の地なのですが、気になっている方の1人です。
      マハさんはキュレーターの経歴もお持ちなんですね。

      私もTAKAHIROさんのように、美術展好きで美術館に足を運ぶ者です。
      訪れる度にチケットとフライヤーをスクラップしています。
      ルソーは詳しくないですが、独特の画風ですよね。
      人物画は何かのキャラクターのようだし、緑豊かに動物を描いた作品も綺麗。
      幾つかの作品を見たことがあるのですが、何の美術展だったか…。

      感想文を読ませて頂いて、いつかマハさんの絵画系小説を読みたいなぁと思いました。
      2022/11/15
    • koshoujiさん
      初めまして。koshoujiと申します。
      かなりの亀レスですが、フォロー、或いは私のレビューに“いいね”をいただき、ありがとうございます。...
      初めまして。koshoujiと申します。
      かなりの亀レスですが、フォロー、或いは私のレビューに“いいね”をいただき、ありがとうございます。
      10年ほど前、ひたすら本を読んでいた時期があり、ブクログに掲載しているレビューも、その頃のものが殆どですが。
      その後、故郷の同窓生探しのためにmakopapa77という名前で、歌うYouTuberに変貌し、小遣い稼ぎしていました。
      この2023年2月に、めでたく「前期高齢者」の仲間入りを果たし、4月からは、週に6日は日曜日状態(笑)になり、今後はようつべとブクログの両立も可能で、新しいレビューも書けそうです。
      ただし、海外旅行が増えるので、無理矢理そちらにかこつけたレビューが多くなるかもしれません。
      それでも、読んで楽しくなるようなレビューを書き続けたいと思いますので、読書仲間として末永くよろしくお願いいたします。<(_ _)>
      TAKAHIROさんのレビューも楽しみにしております。

      原田マハのこの「楽園のカンヴァス」は、何故に直木賞に至らなかったのか不思議で、私のレビューでは、そのあたりに言及しております。
      美術館が、というか絵画がお好きなようですね。
      コロナ禍になる1年前、マドリッドに行き、ソフィア王妃センターではピカソの生の「ゲルニカ」を見て、その気迫に圧倒され、プラダ美術館では、あまりの名画の多さに疲れ果てました(笑)。

      その時の様子は下記「ガウディの夏」のレビューに書いておりますので、お暇なときにでもお読みくださいませ。
      https://booklog.jp/users/koshouji/archives/1/4041294177


      2023/04/06
  • アンリ・ルソーの未発見の絵の真贋を判定せよ。対するのはMoMaのブラウンと、若きルソー研究者早川織絵。その背後に、様々な組織、人物の思惑が蠢く。極上の美術ミステリーでした。
    原田マハさんの美術への造詣は群を抜いています。そして、美術への扉を開いてくれるという点で優れて価値ある一冊だと思います。
    美術館で何を見ていいかわからない織絵に父のいった言葉「自分の好きな友だちなら見つけられるだろう?」
    確かに、美術館に行ってこれは好きだという作品なら出会える。箱根の成川美術館で見た加山又造「猫」、京都広隆寺で見た弥勒菩薩像、小一時間動かずに見つめてしまったことがあります。
    あぁそれくらいならわかるかなと読み進めることができるのです。
    そんな自分を名画を巡るミステリーに心を捉えてしまうところに凄みがあります。「夢」にまつわるアンリ・ルソーの物語。そこに描かれる彼の生きざまや情熱に、知識のない自分でも名画の名画たる所以を知ることができるのです。
    そして、まるで見てきたかのように、ルソーやピカソの生きた時代のフランス、織絵とブラウンの過ごしたスイスのバーゼルが描かれていることです。街の空気が匂って来るようです。それくらい生き生きと描写がなされています。
    心からルソーの名画を心から愛する織絵とブラウンだからこそ、その対決の結末はもう、感動でした。

    「画家を知るには、何十時間も何百時間もかけてその作品と向き合うこと」
    「偶然、慧眼、財力。名作の運命は、この三つの要因で決定される。」
    「目と手と心、この三つが揃っているか。それが名画を名画たらしめる決定的な要素なのだ。」
    私たちが名文を読むたびに新しい発見や感動が色褪せず生まれるのと同様に、名画にも見る人の人生を変えるだけのものがある。
    それを見ごたえとして引き出し、私を引き付ける原田マハさんに脱帽です。
    新しい世界に触れる喜び。読了するまで幸せな時間を過ごせました。

  • 秋めいてきたここ数日、原田マハさんのアートミステリーをじっくり堪能した。われわれが何気なく足を運んでいる大型海外作品の美術展の組織のからくりなども垣間見ることができて、トリビア的な知識欲も満たされた。

    謎めいた展開、次々に明かされる真相。現在から、過去の回想と作中作、そして現在へ。事実と創作の境目はどこにあるのか。ダン•ブラウン作品のロバート•ラングドン教授でも出てきそうな、知的なこの空気感が好きである。

    冒頭、美術館で監視員の仕事の良さを内省する織絵が、おもむろに、団体客に遅れて加わる女子高校生に歩み寄る。なぜ分かるのかガムを噛んでいることを注意し、少女が反抗するシーンが映像的で印象深い。両者の関係は後で明かされる。

    織絵を、自ら封印した過去は放っておかない。「あなたは、『一介の監視員』なんかじゃありませんね」「ひょっとしてーあのオリエ・ハヤカワなんじゃないですか?」美術展への出展交渉の重要人物として相手先のMoMAから指名される。

    17年前、パリ大学の気鋭のルソー研究者であった織絵。ある富豪から幻のルソー作品「夢をみた」の真贋調査のためバーゼルへ招待を受ける。作者不詳の文献を7日間で1章ずつ読み作品を講評する形でMoMAのティム•ブラウンと対峙する。

    ティムもルソー研究者であり、上司のトム•ブラウン宛の誤植と思われる招待状を手にバーゼルの屋敷に向かう。目撃情報で事態を察した美術界の大物たち。『猿芝居はそこまでにしておくんだな』彼はキュレーター生命を賭けることになる。

    織絵は若く、黒髪と涼しげな瞳、白シャツと黒スカートのクールな佇まいであったが、静かな火花を散らしながら次第にティムに心を開いていく。織絵が恋人との間に新しい命を宿していることを知り、ティムは織絵への思いを口にしない。

    織絵が動物園にティムを誘う場面。「なんとなく、わかったんです。そのとき、(植物園に足しげく通った)ルソーの気持ちが。彼はアートだけを見つめていたわけではない。この世界の奇跡をこそ、みつめ続けていたんじゃないかなって」

    スマホや本ばかり見ていないで、まずは自分の人生を見つめなさいと言われたような気がした。

    作中作で、徐々に、ルソー作品の下地に描かれていた、ある大物の作品の存在が示唆される中、真贋調査の講評は意外な結末を迎える。血縁関係から真贋を示唆する描き方が巧みである。別れの前、二人はルソー作品を心ゆくまで眺める。

    そして17年後、MoMAのルソー「夢」の前で再会する。色々想像を掻き立てる終わり方である。

    小谷野敦氏の「レビュー大全」では、「…だんだん現実味がなくなって漫画みたいになっていく」「恋をした、といっても何だかお決まり路線みたいで、その相手の女性が魅力的に描かれていないし…」と辛いレビューだが、私は好きである。

    最後に、もう1人の主人公アンリ•ルソーの作品は、これまで自分の好みでなかった。数年前のルノワール展でもどうしても違和感が先に立っていたが、今思えば主要作品が思い出せないほど印象深い。本作は間口を広げる良い契機となった。

    • ハッピーアワーをキメたK村さん
      さいはての彼女は、部類が違うのでベストのままで良いのではないでしょうか?(*^o^*)

      haruさんのアクティブな所、良いですねー!
      私は...
      さいはての彼女は、部類が違うのでベストのままで良いのではないでしょうか?(*^o^*)

      haruさんのアクティブな所、良いですねー!
      私はカレンダー通りです
      良い休日をお過ごしください♪
      2023/10/08
    • harunorinさん
      ですねー 部門別1位ということにします!
      三連休なので、1日くらいは自由に動ける日があるかもというくらいですが笑 国立のキュビズムを見たとき...
      ですねー 部門別1位ということにします!
      三連休なので、1日くらいは自由に動ける日があるかもというくらいですが笑 国立のキュビズムを見たときに、いいマグカップでもあればと思っていたので、その流れで書籍コーナーを覗いてみようかと♪(*´꒳`*) ではまた
      2023/10/08
    • ハッピーアワーをキメたK村さん
      あの書店になら、ありそう
      いってらっしゃい♪
      あの書店になら、ありそう
      いってらっしゃい♪
      2023/10/08
  • 大学生時代から15年間、倉敷市に住んでいました。
    大原美術館はとても身近で、館長さんに講演を依頼したこともありました。

    この作品はその大原美術館から始まります。
    大原美術館 監視員の早川織絵とニューヨーク近代美術館のティムブラウン。
    現代のこの二人が当時のアンリ ルソーの生涯を解明していきます。
    「夢」に隠された秘密。
    ルソーの生き方が描写されていて、とても親近感が持てました。
    織絵とティムもとても素敵。

    一つ一つの作品が人生そのもののように思えます。
    芸術には疎いですが、もっと勉強したくなりました。

  • 「よい旅を(ボン・ヴォヤージュ)」

    読書はいつだって自分の未体験、場所、景色へと案内してくれる。今度の、初めて読む作家原田マハさんは美術の世界へ。

    恥ずかしながら美術の世界は無知過ぎて、ピカソという名前は知っていても顔も作品名も知らない。モナ・リザだってダビデ像だってどこの国の誰が描いてどこの美術館にあって…日本の芸術家なんてもっと知らない。「館」とつく施設の中で美術館は学校の社会見学以外しか多分入った事がないと思う。そんな自分が読み始めて数十頁で面白い!と感じました。

    早川織絵は大原美術館の監視員。その名の通り監視員とは芸術作品の傍に立ち、館内のトラブルが起きないように監視をする仕事なのだが学芸員、コレクター、研究者の誰よりもその芸術作品に向き合う事が出来る一面もある。館内の見回り、監視位置のローテーション、団体客学生の対応など深く考えた事のない職業の日常が細かく描かれています。

    織絵が館長に呼び出され、ニューヨーク近代美術館から絵画「夢/アンリ・ルソー」の貸出の交渉依頼を受けた所からストーリーが動き始めます。一介の監視員ではなく、実は世界的なルソー研究者のオリエ・ハヤカワ。織絵を窓口に指名してきたチーフキュレーターのティム・ブラウンという人物。

    二人の出会いは17年前。伝説のコレクター、コンラート・バイラーからの手紙。コレクションの一つの「夢をみた/アンリ・ルソー」の真贋判断と作品講評で呼ばれた二人が「夢をみた」の取り扱い権利を掛けて7日間を過ごす。色んな人物の思惑、絵の謎、ピカソとルソーの関係…

    美術や史実を知らないからこそより楽しめた感じがある。ピカソやルソーをネットで調べる時にネタバレが怖くて薄ら目で見ていました笑。中盤終盤の惹きつけるパワーとスピード感が凄く、睡眠時間を削って読み終えました。

    美術に触れたくなります。遠くに旅行もいいな。

    • アンシロさん
      mihiroさん、こんにちは。

      め〜ちゃくちゃ良かったです(*^^*)アートに無知でも分かりやすく説明してくれていてとても勉強になりました...
      mihiroさん、こんにちは。

      め〜ちゃくちゃ良かったです(*^^*)アートに無知でも分かりやすく説明してくれていてとても勉強になりました。

      テレビや新聞で〇〇展開催と目にする事はありましたが、裏では貸し借りの交渉や高額なお金の動きがあって苦労の末の開催という事を知りました。日本でルソーやピカソが見られるってのは本当に有り難い事なんですね(*^^*)より興味が湧きました!

      キュレーターはこの作品に出会わなければ知る事がなかった言葉。アートに詳しくなりたいと思って、ブク友さんから教えて頂いた子供用の図鑑『はじめての絵画』を早速借りてきました笑。
      2023/11/12
    • mihiroさん
      アンシロさん、早速ですね〜笑✌︎(๑˃̶͈̀◡︎˂̶͈́๑)✌︎
      チラッと検索したらほんとに図鑑で、なんだか私まで興味惹かれてしまいました...
      アンシロさん、早速ですね〜笑✌︎(๑˃̶͈̀◡︎˂̶͈́๑)✌︎
      チラッと検索したらほんとに図鑑で、なんだか私まで興味惹かれてしまいました笑
      私も図書館に予約してみます!
      2023/11/12
    • アンシロさん
      mihiroさんも興味を持ってもらえて嬉しいです。
      子供向けなので気軽に絵画を見られていい感じですよ。ペラペラ捲っていて、よく目にする作品が...
      mihiroさんも興味を持ってもらえて嬉しいです。
      子供向けなので気軽に絵画を見られていい感じですよ。ペラペラ捲っていて、よく目にする作品が多くて安心感があります。急にどっぷりアートの世界に浸るなんて出来ないのでゆっくりゆっく〜りとですね(*^^*)
      2023/11/12
  • 面白かった。一つの絵を巡るアート・ミステリーというのかな。
    古書による過去の展開もあるし、現在進行系の展開もあるしで、ページを捲る手が止まらない。
    ルソーやピカソも登場し、その絵や美術史にも興味が湧く。
    ミステリー要素をちょっと紹介すると…
    ・名作「夢」に酷似した絵「夢をみた」の真贋は?
    ・絵に何か隠されている?
    ・ルソーとピカソの想い、絵のモデルとのエピソード
    ・「夢をみた」を手に入れたい者たちの真の思惑は?
    ・絵の持ち主の正体って…?
    ・最後にこの絵を手にするのは?…etc

    中学の美術の成績は「2」だった…楽しく制作したのに(T_T)w。そんな私でも楽しめる本書。
    この頃に原田マハさんや中野京子さんの本と出会っていれば、美術史に興味が湧いていたかもしれないなぁ…今からでもっ(๑•̀ - •́)و

    • 1Q84O1さん
      なおなおさん
      違いますよ!
      世間の理解が一門に追いついていないだけ!
      我々はある意味画伯ですからw
      なおなおさん
      違いますよ!
      世間の理解が一門に追いついていないだけ!
      我々はある意味画伯ですからw
      2023/06/27
    • アンシロさん
      なおなおさん、おはようございます。

      『楽園のカンヴァス』まだ読んでる途中ですが、面白いです。美術を全く知らなくても敷居低く、ストーリーに導...
      なおなおさん、おはようございます。

      『楽園のカンヴァス』まだ読んでる途中ですが、面白いです。美術を全く知らなくても敷居低く、ストーリーに導いてくれてとても心地良い(*^^*)美術館で絵画を眺めてみたいと思いました。
      2023/11/08
    • なおなおさん
      こんばんは!
      アンシロさんも読まれているとのことჱ̒⸝⸝•̀֊•́⸝⸝)
      美術を知らなくても、たとえ絵が下手くそでも関係なし!面白いですよね...
      こんばんは!
      アンシロさんも読まれているとのことჱ̒⸝⸝•̀֊•́⸝⸝)
      美術を知らなくても、たとえ絵が下手くそでも関係なし!面白いですよね〜。
      絵画について興味がわきます。
      アンシロさんのレビューを楽しみにしております。
      2023/11/08
  • 原田マハさんの小説は、図書館が開館したら1番で借りられる予定の最新作以外は、ごく初期の2,3作品を除き、全て、マハさんにお詳しい御親切なフォロワーさんにご助言いただき、全てブクログの本棚に載せましたが、ブクログ登録前に既読だったこの作品だけ載せていなかったので、再読しました。
    第25回山本周五郎賞受賞作で、美術ミステリーですが、2012年に出版されておそらく、すぐに拝読したので、所々思い出したものの、最後は全く覚えていず、再び楽しんで読むことができました。
    全然古い感じはなく、ラストシーンでは「やられた!」と感嘆の声をあげ、マハさんの実力を再認識しました。

    2000年、倉敷の大原美術館で監視員として働いていた、シングルマザーの早川織絵のところへ、ニューヨーク近代美術館(MOMA)のチーフ・キュレーターのティム・W・ブラウンからオリエ・ハヤカワを交渉の窓口にすれば、絵画のレンタルを考えてもよいという打診があります。
    大原美術館側は、アンリ・ルソー展を開くにあったてアンリ・ルソー作の『夢』だけでも借り入れたいと織絵に白羽の矢をたてます。

    1983年、伝説のコレクター・コンラート・バイラーがふたりの研究者に真贋鑑定の依頼をします。
    鑑定作品はアンリ・ルソーの『夢をみた』。勝者に贈られるのは『夢をみた』の取り扱い権利。
    ふたりのうち一人は、トム・ブラウンですが、1文字違いの名前を持つティム・ブラウンがトムになりすまし、参加。もうひとりはソルボンヌ美術史科・研究職のオリエ・ハヤカワ。
    ふたりはバイラーに一冊の古書で『夢をみた』という七章からなる物語を渡し、毎日一章づつ読み、真贋の判断をするようにと言い渡します。

    古書の内容は、売れない画家のアンリ・ルソーとモデルのの洗濯女ヤドヴィガ、その夫のジョゼフ、仲間の画家パブロ・ピカソ、詩人のギューム・アポリネールらの物語です。
    途中でティムは自分の本当の名前をある人物に知られおどしをかけられたり、『夢をみた』の隠された秘密を知ることになります。
    ルソー、ヤドヴィガ、ジョセフ、ピカソらの『夢をみた』の作中作がまず、素晴らしく、最後のヤドヴィガが天国の鍵を握ってルソーと結ばれたというシーンでは、涙腺が緩みました。
    また、ティムとオリエの第十章での対決、勝負のシーンも全く予想外で夢にも思わぬ結末でした。
    全ての話がつながったとき「マハさんって、やっぱり最高!」と思いました。

    • kuma0504さん
      そうか。大原美術館から始まるのか。しかもその監視員。ちょっと触手欲出てきました。原田マハさんは「でーれーガールズ」もあるように、青春時代を岡...
      そうか。大原美術館から始まるのか。しかもその監視員。ちょっと触手欲出てきました。原田マハさんは「でーれーガールズ」もあるように、青春時代を岡山市で過ごしています。映画は酷かったと聞いているので、封切り時には観ていないのですが、いつか観なくちゃとも思っています。

      大原美術館は、地元ですから、子供の時は10回近く、大人になっても10年に一回ぐらい行っています。1番好きなのはピカソの「鳥籠」です。小学生の時に、感想文書いたら褒められたので、もっと好きなりました。ルソーもあったと思うけど、印象にないなあ。
      2020/05/05
    • まことさん
      kuma0504さん♪こんにちは。

      『楽園のカンヴァス』は大変お薦めです(*^^*)
      マハさんのおそらく出世作でしょうね。
      大原美...
      kuma0504さん♪こんにちは。

      『楽園のカンヴァス』は大変お薦めです(*^^*)
      マハさんのおそらく出世作でしょうね。
      大原美術館は地元であられるのですね。
      羨ましいです。
      ピカソの『鳥籠』のエピソードは作品の中にも織絵のエピソードででてきますよ。
      『でーれーガールズ』も拝読しましたが、本は、上手くいきすぎのかんじはしたけれど、本はとても面白かったと記憶しています。
      映画にもなっているのですね。
      いろいろ、地元ならではのkuma0504さんの
      感想を拝見してみたい気がします。

      2020/05/06
    • まことさん
      kanegon69さん♪こんにちは。

      マハさんの新作が1番で(強調)借りられるところで、図書館が休館してしまい、半年ほど、マハさんの小...
      kanegon69さん♪こんにちは。

      マハさんの新作が1番で(強調)借りられるところで、図書館が休館してしまい、半年ほど、マハさんの小説を読んでいないな~。と思い手に取りました。
      アートミステリーですが、ほとんど覚えていなかったため楽しめました(*^^*)
      今度は、実は積んである、マハさんの新書を読んでみようかと、思っていますが、私には新書のレビューは難しいかなと思っています。
      そして、kanegon69さんにも、感謝の気持ちでいっぱいです!
      2020/05/06
  • 原田マハと私は、ニアミスをしている可能性があります。解説の高階秀爾大原美術館館長(作品中の宝尾館長のモデル)によると、小学校4年の時に父親に連れられて大原美術館に来館し、ピカソの「鳥籠」を見て「ヘタクソな絵!私ならもっと上手く描ける」と考え実際に描いたといいます。私は正にその同年訪館し、夏休みの宿題感想文に「鳥籠」は「見ていて暖かくで穏やか気持ちになり、全然難しい絵ではない」と書き、先生に褒められました。その褒め言葉が功を奏してその後、小学生、中学生を通じて、美術は常に5段階評価の5を獲ることになります。彼女が訪ねたのが夏休みだったとしたら、すれ違っていた可能性はゼロではないのです。でもここで、原田マハと大きな差が出ていることに、今回このエピソードを知って、私は気がついたのです。批評しかできない者と実際描く者。

    実はその後、もう一つ同じ道を歩みながら、同じような大きな差が出現していたことに、気がつきました。中学時代、私は、画家になるには画力が不足しているからムリ、漫画家になることを夢見ていました。何故画家を諦めたかというと、「鳥籠」を見たとき、同時にセガンティーニの「アルプスの真昼」という作品の感想も書いています。これにはピカソと別の意味で私は驚きました。淑女がアルプスの高原で山羊と共に佇んでいる絵ですが、油絵具の塗り重ねが素晴らしく、草原の色の洪水が、何故か草原そのものに思えました。間近に見たり遠くから見たりして、小学生の私はおそらく早々に見切ったのです。「とてもこんなの描けない」と。私は漫画習作をいくつか描いた後、大学受験のために一時中断しました。実はそんな時、同じ岡山で原田マハは少女漫画を実際に何作も描いていたというのです。一方私は80年1月、ジャンプで連載開始したひとつの作品を見て漫画家になることを諦めました。手塚漫画は真似できる。劇画は努力したらできるだろう。けれども、こんな単純な線で立体的に独創的に描く漫画はとても無理だ、と思いました。鳥山明「ドクタースランプ」です。実際に描く者と、早々に諦める者。その後私は、マンガ編集者になるのも夢見ますが、就活で、そのあまりにも競争率の高さに尻込みして諦めました(笑)。

    さて、ここから本題です(←すみません!)。

    原田マハは、81年3月まで岡山に居ました。当然、小学校以来何度か大原美術館には行っているはずです。高校生の時に訪ねた彼女は、こう思ったのではないか?

    「あゝ懐かしい!ピカソの『鳥籠』だ。ヘタクソと思ってこれより上手く描いたと思ったことがあったなあ。あの後、確かなデッサン力があってこそ、この絵だとわかって意見変えたけど」
    原田マハは美術部にこそ入りませんでしたが、高校時代はずっと漫画を描いてました。美術を観る眼は格段に上がっていました。
    そのあと、同じ部屋にあったひとつの絵にも眼を滑らします。
    「パリ近郊の眺め、バニュー村」
    彼女は鼻で嗤う。
    「これはダメね。一見丁寧に描いているみたいだけど、牛と農夫と積みわらの遠近がまるでなっていないし、光の当て方もバラバラじゃない」
    と、通り過ぎたのでした。

    その4年後、今やすっかり美術作品に詳しくなった彼女は、久しぶりに訪れた大原美術館で、もう一度この作品を観ます。その直前に見たピカソの絵は、籠と鳥との関係で、大きな発見があったのですが、この「パリ近郊ー」は更に全く違って見えました。光輝く、と言っていいのか。部屋の真ん中にある大きなソファー椅子に座り、気がつくと1時間が経っていました。
    「あゝやはり牛はこの大きさじゃなければダメなんだ。牛はそれだけで、穏やかで大きくて、このように光り輝いているんだ」それが、その時の感想でした。それはアンリ・ルソーの絵でした。

    ところで私は大原美術館の代表作エル・グレコの「受胎告知」を素晴らしいと思ったことは一度もありません。アンリ・ルソーの絵もそうです(今なら、違うかもしれません)。でも、1時間同じ絵を見ていたことはあります。そうせざるを得ない力が、「お気に入り」の絵にはあるのです。原田マハにとっては、ルソーの絵はそうだったのでしょう。子供の時から、何度も見て何度も変わっていった「絵の印象」。そういう体験は貴重です。書いていて気がつきましたが、大原美術館は滅多に混まないので、そういうことができます。企画展で美術鑑賞をする時にはあまりできない鑑賞の仕方ですね。

    数年後、原田マハはニューヨーク近代美術館に居た。その絵の前に佇むこと数時間。ふと白昼夢を見た。
    小学4年の彼女と父親が会話していた。
    「ねえお父さん、こんないっぱい絵があったら、どれを見たらいいかわかんないよ?」
    「どんな人ごみの中でも、君の友だちがいる。そう思って見ればいい。それが君にとっての名作だ。絶対に目を閉じちゃいけないよ。みつけられなくなるからね。さあ、よく見てごらん。君の人生の友は、何処にいるかな?」
    ふと気がつくと、鮮やかな緑が迫ってきた。
    熟れてこぼれ落ちる果実の甘やかなにおい。遠くで響く野獣の雄叫び。鼻先をかすめて飛んでいく極彩色の蝶の羽。冷たくやわらいものが、足の裏にひやりと触れる。女蛇が鎌首を上げて睨んでいる。ライオンも世界を覗き込む。冷たい満月。生きている女神が何かを掴かもうとする。
    アンリ・ルソーの「夢」である。
    ‥‥そうね、貴方が、私の「人生の友」よ。
    それから、一日中佇みながら、原田マハは新しく思い浮かんだ小説構想を反芻していた。十数年前にこの近代美術館がルソーの大回顧展を企画した。そのキュレーターと日本の才女をめぐる、めくるめく夢のような小説を。何時も原田マハは、夢を実現する方へ直ぐ動くから、その20数年後に出版される草稿は、その日の夜に書かれたのである。

    ‥‥と、私は「夢をみた」。

    • kuma0504さん
      まことさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
      何処までホントかウソか、そこを狙ってみました(^^)。

      マンガを描いていたのは、ホ...
      まことさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
      何処までホントかウソか、そこを狙ってみました(^^)。

      マンガを描いていたのは、ホントだと思います。これを書こうとして、急遽原田マハ公式プロフィールを見たら、そう書いてました。大学時代では、少女マンガ「ロマンチック・フランソワ」を「りぼんまんが大賞」に投稿、最終選考に残るもあえなく選外に、という華々しい(?)成果もあったようです。もっとも、そう書いていたから、てっきり美術部だろうと想定してこれを書き始めたのに、新たなエピソードを付け足さなくてはいけなくまりました(^ ^;)。まぁ、それには大原美術館に初めて行ったのは小学4年の夏休みとも書いていたので、私はホントにニアミスしていたかもしれません。まぁだからどうなんだ、とはなります。

      ネタバレすれば、
      私に関しては、事実的には全てホントで、
      高校生以降の原田マハは、私の「想像」です。
      でも、私的には「真実」と思っています。
      2020/06/05
    • トミーさん
      レビューとまことさんとの会話にまた新しい物語があって、すばらしいです。
      横からいきなり申し訳ありません。
      楽しませていただきました。「教わり...
      レビューとまことさんとの会話にまた新しい物語があって、すばらしいです。
      横からいきなり申し訳ありません。
      楽しませていただきました。「教わりました」
      2020/06/09
    • kuma0504さん
      トミーさん、コメントありがとうございます。
      まことさんのレビューで、この作品の舞台が大原美術館から始まり、なおかつ、私の好きな「鳥籠」も使わ...
      トミーさん、コメントありがとうございます。
      まことさんのレビューで、この作品の舞台が大原美術館から始まり、なおかつ、私の好きな「鳥籠」も使われていると知って、躊躇していた原田マハの代表作を紐解くことにしました。岡山と因縁ある方だし、嫌いなテーマを扱っていないので、「ハマって」仕舞うことに怖れを抱いていたのです。(←親父ギャグで御免なさい)

      人生は短く、読みたい本はあまりにも多い。

      これ以上ファンを増やしたくないんです。今一生懸命自制(^ ^)しているところです。
      2020/06/09
  • 大好きな原田マハ作品、気づけば27作品目(28冊)の読了となりましたが、現時点での最高傑作と言ってもいいんじゃないでしょうか。

    ずっと読まずに温めておいたのが正解だったのか?それとももっと早くに読むべきだったのか?

    きっと今が読むべきタイミングだったと思いたい。

    本作はアンリ・ルソー「夢」に酷似した「夢をみた」に纏わる物語。

    <アンリ・ルソー>
    アンリ・ジュリアン・フェリックス・ルソーは、19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍したフランスの素朴派の画家。下手な画家と評されることが多いが、色彩感覚や繊細な表現に優れていた。 20数年間、パリ市の税関の職員を務め、仕事の余暇に絵を描いていた「日曜画家」であったことから「ドゥアニエ・ルソー」の通称で知られる。( ウィキペディアより)

    W主演はニューヨーク近代美術館(MoMA)のキュレーター、ティム・ブラウンと日本人研究者の早川織江。

    伝説のコレクターであるバイラーに招かれた2人が目にするのはルソーの「夢」に酷似した「夢をみた」という存在すら知られていない作品。

    バイラーは2人に「夢をみた」の鑑定を依頼します。
    出した条件は①期間は7日間②絵を見るのは初日と講評の最終日のみ③手がかりは古い1冊の古書のみ④本を読むのは毎日1章を1人で読む(制限時間90分)等。
    7日後に行われる講評では結論が「真作」であれ「贋作」であれ問題はない、より優れた講評を受け入れると言う。
    そして、勝者に贈られるのは「夢をみた」の取り扱い権利(作品を転売しても展覧会に出品しても、闇に葬ろうが、煮て食おうが、焼いて食おうが構わない)。

    そして始まった7日間、ルソーが生きた時代と現代を行き来しながら物語は進んでいきます。

    ルソーと彼が愛したヤドヴィガ、その夫ジョゼフを中心に進む古書のストーリー。

    そしてティム・ブラウンにより明かされる古書の著者...

    完璧すぎる...

    アートを愛するマハさんにしか描けない至極のアートミステリー作品。

    ルソーの作品は正直「夢」しかわかりません。
    マハさんの作品と出会い、アートに興味を持ち、先日は熱海山口美術館にも行ってきました。
    岡本太郎、ピカソ等を目にしてきた直後、本作にてルソーとピカソの関係(史実?)も知ることが出来ました。

    東京で開催されている「モネ展」へも大好きな「睡蓮」に会いに行こうと思っていますが、アート初心者の私が学生時代から好きな「ゲルニカ」、次に読む作品は決まりかな☆

    <あらすじ>
    アンリ・ルソーというフランスの画家の作品「夢」に似た絵の真贋をめぐって、二人の研究者が世界中
    を旅しながら謎を解いていく物語。

    ニューヨーク近代美術館のキュレーター、ティム・ブラウンはある日スイスの大邸宅に招かれる。そこで見たのは巨匠ルソーの名作「夢」に酷似した絵。持ち主は正しく真贋判定した者にこの絵を譲ると告げ、手がかりとなる謎の古書を読ませる。

    一方、日本の大原美術館で監視員をしている早川織絵は、ルソー研究の権威である教授から、同じ絵に関する依頼を受ける。織絵は博士号を持つ才女だが、過去のトラウマから学界を離れていた。

    ティムと織絵はライバルとなり、絵の真相に迫るためにニューヨーク、倉敷、パリ、バーゼルと世界を飛び回る。彼らはルソーと「夢」のモデルとなった女性、そしてピカソとの関係を探りながら、次第に惹かれ合っていく。

    果たして、「夢をみた」という絵は本物なのか?ルソーの最後の秘密とは何なのか?ティムと織絵は真実にたどり着けるのか?



    とうとう、みつけたわね。

    ルソーの名画に酷似した一枚の絵。そこに秘められた真実の究明に、二人の男女が挑む。興奮と感動の傑作アート・ミステリ。山本周五郎賞受賞。

    ニューヨーク近代美術館のキュレーター、ティム・ブラウンはある日スイスの大邸宅に招かれる。そこで見たのは巨匠ルソーの名作「夢」に酷似した絵。持ち主は正しく真贋判定した者にこの絵を譲ると告げ、手がかりとなる謎の古書を読ませる。リミットは7日間。ライバルは日本人研究者・早川織絵。ルソーとピカソ、二人の天才がカンヴァスに籠めた想いとは――。山本周五郎賞受賞作。

    内容(「BOOK」データベースより)

    ニューヨーク近代美術館のキュレーター、ティム・ブラウンはある日スイスの大邸宅に招かれる。そこで見たのは巨匠ルソーの名作「夢」に酷似した絵。持ち主は正しく真贋判定した者にこの絵を譲ると告げ、手がかりとなる謎の古書を読ませる。リミットは7日間。ライバルは日本人研究者・早川織絵。ルソーとピカソ、二人の天才がカンヴァスに篭めた想いとは―。山本周五郎賞受賞作。

    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

    原田/マハ
    1962(昭和37)年、東京都小平市生れ。関西学院大学文学部日本文学科および早稲田大学第二文学部美術史科卒業。マリムラ美術館、伊藤忠商事を経て、森ビル森美術館設立準備室在籍時、ニューヨーク近代美術館に派遣され同館にて勤務。その後フリーのキュレーター、カルチャーライターに。2005(平成17)年「カフーを待ちわびて」で第1回日本ラブストーリー大賞を受賞し、デビュー。『楽園のカンヴァス』で第25回山本周五郎賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

  • 作品の舞台は、谷間。夜が始まったばかりの空は、まだ白みを残し、静まり返っている。大地の窪みのはるか高みに肩の高さで左手の拳を構える巨人。そんな彼の脚部は山々で覆い隠され、彼の体躯は雲に取り巻かれている。その足元を逃げまどう数多くの人々、牛の群れ。夢から覚めてなお、巨人は夢をみているのだろうか。それともこれは現実なのか。巨人が見つめる先にいるのは、たぶん、いや、きっと ー 。そんな恐怖に包まれた闇を切り裂く閃光!
    …突然のことでした。ピカッと閃光が目の前の巨人を照らし出したのです。事態が呑み込めない私の耳に『OH, NO, STOP!』という大きな声とともに顔を真っ赤にした係員が近づいて来るのが見えました。友人と出かけたマドリードのプラド美術館。写真撮影が許可されていたこともあって私も友人も気に入った絵をたくさん写真に収めていた時、友人が操作を誤りフラッシュを光らせてしまったのでした。動揺した私は日本人らしくペコペコ頭を下げ、日本語で友人を派手に怒鳴りつけることでその場を取り繕いました。呆れて行ってしまった係員。でも係員は去って行きましたが、目の前には怖い顔でまさに聳え立つゴヤの「巨人」の姿がありました。誰にでも印象に残っている絵というのはあると思います。そして、それは何かしらの出来事に結び付けられていることも多いのではないでしょうか。私にとってはこの「巨人」がそれにあたります。

    『閉ざされた空間に、滔々と流れる時間。朝十時から夕方五時まで、そこから逃れることはできない。どんな刺激も変化も事件もないし、あってはならない』という早川織絵は美術館の監視員として一日を絵の前で過ごします。『ある一線からこっちへ、他人を踏みこませようとしないところが昔からある』という織絵。そんな織絵はある日、館長に呼ばれて暁星新聞文化部の高野と引き合わせられます。そこで高野は唐突に『早川さん。あなたは、ティム・ブラウン、という人をご存じですか?』と聞くのでした。その名前に驚きを隠せない織絵。高野は暁星新聞文化部が大規模な展覧会を企画していること、そしてティム・ブラウンがチーフ・キュレーターをしているMoMAからの交渉条件が織絵を交渉窓口とすることであると告げます。『早川さん。私たちの最後の切り札は、あなたなんです』と織絵に詰め寄る高野。そんな織絵には、26歳で博士号を取得し、ルソー研究で次々と論文を発表していた研究者としての過去があったのでした。

    時代は遡り、1983年、MoMAでアシスタントとして働いていたティム・ブラウン。伝説のコレクター・バイラーから一通の手紙を受け取ったことから、彼の夏休みがスイスにあるバイラーの邸宅行きへと変わります。今一つ目的のはっきりしない手紙。そんなバイラーの邸宅で彼の目の前に、当時ルソー研究で次々と論文を発表していた早川織絵が現れたのでした。手紙の目的が告げられます。『アンリ・ルソーの大作「夢をみた」の真贋を、これから七日間かけて見極めることを依頼された。ただし、真贋鑑定をするのは自分だけではない。若き日本人ルソー研究者、早川織絵も挑戦するのだ』という事実に驚くティム。戸惑いながらも『あの作品を見極めること、そしてあの小憎らしい日本女を論破することに集中しなければならない』とルソーの大作の真贋を見極めるというタスクに立ち向かっていくのでした。

    時代が2000年の現代から1983年へ、そしてさらに過去の1906年というルソーが生きた時代へと物語は3つの時代を駆け巡ります。そして興味深いのは、この作品の中で『赤茶けた革表紙の本』という本が実際に登場し、その本の内容が複層で作品の進行に互いに影響しあって物語が展開していくというとても凝った作りがなされていることです。多くの画家、そして彼らが描いた絵が登場するこの作品、それだけでなく画家同士の交流風景までもが、史実と創作を行ったり来たりしながら丁寧に意味をもって描かれていきます。お恥ずかしながら、『ルソー?、確か社会の時間に習った哲学者だっけ?』という知識のなさだったにもかかわらず、読後には彼の生き様、人となりがおおよそ浮かび上がってくるまでにアンリ・ルソーという画家を知ることができました。また、絵自体についても『アートを理解する、ということは、この世界を理解する、ということ。アートを愛する、ということは、この世界を愛する、ということ』という表現など、絵というものに今まで以上の奥行きが感じられるようにもなりました。

    実はこの作品を読むのに、もの凄い時間がかかってしまいました。というのも絵の説明がでてきたら、それをPC画面に表示してまず眺め、次に原田さんの書かれた文章を読み、そしてそこに書かれていることを確認しながら絵を見ていくということを繰り返したためです。時間はとてもかかりましたが、単にその絵の知識だけでなく実際にその絵を見ることで得られた感覚がその先の読書にフィードバックされることで、作品世界にどっぷりと浸った読書ができました。アート・ミステリーという分類の作品を読むのは初めてでしたが、アートの世界と物語の世界の見事な融合と、謎解き、そしてとても魅力的な登場人物の微妙な心の動きも見事に表現されていたのもとても印象に残りました。

    『美術に関する知識やセンス以上に、人海戦術と交渉力、そしてときには色気が必要になってくる』というキュレーターのお仕事、『偶然、慧眼、財力。名作の運命は、この三つの要因で決定される』という絵画の運命、そして『本気であの人の女神になってやれよ。それであんたは、永遠を生きればいい』という画家・パブロの言葉など、私自身が今まで全く触れてこなかった絵画の世界の奥深さに素直に感動するとともに、織絵とティム、ヤドヴィガとルソー、そしてルソーとパブロなど、絵画に繋がれた人と人の間に生まれる互いの存在への尊敬の念とそこから来る人としての優しさの表現、そして絵画の上に浮き上がる人の物語としての魅力など、とても強く印象に残る、心に響く素晴らしい作品だと思いました。


    追伸 : 少し前になりますが、幸いにもマドリードを再訪する機会に恵まれました。プラド美術館を訪れた私の目の前にはあの日と何も変わらない「巨人」の姿がありました。ただ、実はこの絵は作者がゴヤではなく、別人の筆によるものだったという説明とともに、『N-O P-H-O-T-O-S』という掲示がありました。
    『O-H, N-O, S-T-O-P』が転じて『N-O P-H-O-T-O-S』、自業自得の未来という結果論がそこにありました。嗚呼。

    • koshoujiさん
      素晴らしいレビューです!
      私も2019年春にプラドに行きました。メインはすぐそばのなんちゃらセンターにあるピカソのゲルニカが見たかったので...
      素晴らしいレビューです!
      私も2019年春にプラドに行きました。メインはすぐそばのなんちゃらセンターにあるピカソのゲルニカが見たかったので、プラドのほうがおまけでした(笑)。
      あんなに広いとは思わず、とりあえずメジャーなものだけ3時間ほどで見ましたが、本格的に見ると3日以上かかりますよね。ゴヤの巨人は残念ながら見切れなかったです。
      2022/09/29
    • さてさてさん
      koshoujiさん、コメントありがとうございます!
      はい、ソフィア王妃芸術センターですよね。私もゲルニカ見ました。ただ印象としてはこの「...
      koshoujiさん、コメントありがとうございます!
      はい、ソフィア王妃芸術センターですよね。私もゲルニカ見ました。ただ印象としてはこの「巨人」は特別でして、その後、東京のいずれかの美術館に”来日”して再会、さらに、もう一度プラドへ行く機会があって再び再会。人生で三度見たということもあって、またレビューの事象もあって、個人的に特別度がとても高いです(笑)。
      ちなみに、現在はプラドは写真禁止になったようですね。なのでレビューの事象ももう起こり得ない…時代も変わりました。
      2022/09/29
    • koshoujiさん
      さてさてさん、そうです、ソフィア王妃芸術センターでした。年を取ると、本当に固有名詞がすぐに出てこなくて困ります。(;^_^A
      昔はプラドっ...
      さてさてさん、そうです、ソフィア王妃芸術センターでした。年を取ると、本当に固有名詞がすぐに出てこなくて困ります。(;^_^A
      昔はプラドって写真撮影できたんですね。あんな膨大な名画の数々を写真撮影OKだったとは。
      私はなんちゃらかんちゃら(笑)で、「最後の晩餐」が撮影OKなことに、3年前に行って驚きました。
      2022/10/02
  • 面白すぎ!
    一気読みしてしまった。

    MoMAのキュレーター、ティ厶・ブラウンは、伝説のコレクター、バイラーの大豪邸に招かれる。そこで、ルソーの名作「夢」によく似た絵を見せられる。同時に招かれた日本人研究者・早川織絵と真贋鑑定対決をすることとなり、勝った方にはその絵の取り扱い権利を譲渡する、と言われる。リミットは7日間。手がかりは謎の古書。
    ルソーとピカソ2人の想いがカンヴァスの上に交差する―


    何度も、登場する絵画を集めたまとめサイトを見ながら、本を読み進めた。「暗幕のゲルニカ」のレビューにも書いたけど、僕には絵画鑑賞のセンスがない。でも、何だか楽しかった。絵画の描かれた背景とか、この小説読んでよく分かったから。

    ー アートを理解する、ということは、この世界を理解する、ということ。アートを愛する、ということは、この世界を愛する、ということ。

    読み終えて、作中のこの言葉に、少しだけ近づけた気がした。美術館に行きたくなった。

    読んで幸せな気分になる、大好きな小説です。

    ところで、僕はピカソよりルソーの絵の方が好きだな、と思いました。

  • 絵画とかクラッシックとか理解できひん…
    ルソーもピカソも名前は知ってる。
    でも、それだけ…
    この小説読むと美術館とか行くと凄い引き込まれそうなんやけど、今まで、大原美術館、京都の美術館とか行った事あるけど、あかんかった(^^;;

    でも、この作品読むと絵画への情熱とか分かるし、引き込まれる。やっぱ、絵を描くのと同様に、文字を描く人か良いんやろな。
    美術ミステリーっていうみたい。殺人とかはないんやけど、絵のホンモノ鑑定での謎解きにドキドキ!
    人間違えの件は、何となくはじめから、そうかなと。

    何にでも良いけど、こんなに情熱を傾けられるのが羨ましくもあるなぁ〜
    ハイ、一気読み!(^_^)v

  • 大原美術館に行く予定ができたため、今回は文庫本で再読。
    一年半前、初めて読んだ原田マハさんの作品です。
    史実をもとにした創作ミステリー。
    結末を知ってるはずなのに、二度目の大感動。

    第一章。2000年、倉敷。
    美術館の監視員、織絵のもとに
    思いがけない話が舞い込みます。
    MoMaのチーフ・キュレーター
    ティム・ブラウンに会ってほしいというのです。
    ルソーの絵画『夢』の貸出交渉をするため、
    織絵はニューヨークへと旅立ちます。

    第二章から第十章まで、17年遡って1983年のスイスへ。
    バーゼルにある伝説のコレクター、バイラー氏のお屋敷。
    バイラー氏が所蔵するルソーの絵の真贋を見極めるため
    織絵とティムが招待されますが、そこには不思議な条件が。
    七章から成る「門外不出の古書」を一日一章ずつ読むこと。
    七日目にそれぞれが作品講評をして、
    より優れた方に絵画の取り扱い権利を譲るというのです。
    織江とティムの 一騎打ち鑑定 です。

    古書では1900年頃のパリが描かれ、ルソーやピカソ、
    ルソーに魅せられた夫婦の物語が繰り広げられます。

    一方、現実世界の1983年のパリでは、
    絵画をめぐる不穏で怪しい動きも語られます。
    鑑定される絵の真贋は?
    最終的に誰の手に渡るのか?
    二人の講評対決の結末には、意外な展開が待ち受けています。

    そして最終章。
    絵画のように美しいシーンで締めくくられます。
    素敵!

    原田マハさんの文章は、いつ読んでも心地よく
    新しい世界への扉を開いてくれます。
    平面的だった絵画にふわっと命が吹きこまれ
    心の底からわくわくさせられるのです。

    大原美術館、ますます楽しみになりました。

    • まことさん
      yyさん。こんにちは♪

      大原美術館に行かれるのですね。
      楽しみですね!
      熱中症などにお気をつけて、楽しまれてきてください。
      いい...
      yyさん。こんにちは♪

      大原美術館に行かれるのですね。
      楽しみですね!
      熱中症などにお気をつけて、楽しまれてきてください。
      いいなあ。
      私は、隣県が宮城県で、コロナ前は時々仙台のジュンク堂書店や丸善に遊びに行っていましたが、行くと、伊坂幸太郎さんがどこかに立っていないか探してしまうというバカなことをやっていました。
      2022/06/26
    • yyさん
      まことさん

      コメントありがとうございます。
      嬉しい☆彡
      原田マハさんの著書にハマったのはまことさんのお陰。
      素敵な世界を紹介して...
      まことさん

      コメントありがとうございます。
      嬉しい☆彡
      原田マハさんの著書にハマったのはまことさんのお陰。
      素敵な世界を紹介してくださって、今も感謝しています。

      最近は、WOWOWオンデマンドで
      マハさんが日本の美術館を訪ね歩いて
      「友だち」に会いに行く番組を楽しみに観ていす。

      まことさんは、伊坂幸太郎さんの大ファンでいらしゃるのね。
      コメントを読ませていただいて、思わず頬がゆるみました。
      でも、そういう ”ときめき” ってすごく大事だと思います。

      そういえば、『マリアビートル』が原作の映画、
      公開が9月になりましたね。
      コロナで半年遅れたのかな?
      原作を読んでからの映画って、楽しみなような怖いような…。
      2022/06/26
  • ずっと読みたいと思っていた原田マハさんの作品。

    アートミステリーとの評判そのとおりで、ビジネス絡みの陰謀やロマンスなんかも織り混ざり軽快に読めた。

    絵画一枚にこんなにもドラマがあるのか?
    もしそうならば絵画一枚一枚をもっと深く知る努力をする事でより見方が変わるのは間違いないと感じた。
    絵画の持つ細かい技術や技巧等はほぼわからないけれども、見た時のそのパッションはドラマを知ることでさらに熱を感じると思う。
    今後機会があればそうしたいと思った。

    ティムも織絵もバトラーも最愛の人がもう一つのテーマになる。
    そして時間の経過と共にテーマは家族になる。
    一枚の絵を通して内側と外側でおきる人間ドラマ。
    真贋の審判に関わり、ティムも織絵もバトラーも「夢をみた」の前で今まで自分達にのせていた色をリセットする。まるで今までが「夢」だったみたいに。
    洗われて自分と向き合い、そこから新たな色味を重ねていく決意。まさに「夢をみた」だ。素敵だ。

    最後に織絵の娘、彼女は「ヤドヴィカ」になぞられているのかな?
    どことなくフワフワとしているのだが、最後に「生きてる」っていう事がリンクする。
    意識の外側で当初のヤドヴィカがそうだったように、娘も作品に触れて徐々に感じる物があるのだろうと感じた。
    同じ栗色の髪色、彼女も今後誰かの作品の中で永遠に生きる事もあるのか?なんて思った。

  • 『さあ、描いてちょうだい。あたしは、いまから、永遠を生きることにしたの』(引用、353頁)

    私たちは本が好きです。よね?
    好きな理由は人によってさまざまあると思いますが、
    その理由の1つに、「読んでる最中は、本(または作者)と一対一で向き合っている」その感覚が好きだ、というのはありませんか?
    本と向き合っているときは、現実を離れ、本の中に溶け込み、物語の中の世界を自由に歩いている。そういうときあると思います。

    「絵画というアートの中にも同じことが言えるんだ!」
    楽園のカンヴァスを読んで僕が最初に思った感想です。
    例えば登場人物の早川織絵(はやかわおりえ)が、ルソーやピカソの絵の前に立っているとき、その絵と向き合うことで、ルソーが描いたその瞬間の熱量とおなじ温度で作品の中に入っていきます。
    そんな作品が何世紀も前につくられ、長い時間を旅して私たちの前に現れる。
    永遠にも思える長い時間を超えてやってきた作品と向き合うことができる。
    そしてひとたび、作品と向き合えば、その世界には今も昔もない。
    その絵はある一瞬が切り取られている。
    絵の世界の中では、一瞬が永遠とおなじ密度で流れている。

    楽園のカンヴァスは、作品に溶け込む感覚をより密度濃く教えてくれます。
    私たちは文章の中に溶け込み、その世界を自由に歩き、その世界の中の絵と出会い、また絵の中に入り込んでいき、絵の中の住人と出会う。

    そんな感覚味わってみたくなりませんか?


    <おすすめの人>
    ・絵画ってお高くない?でも実は、、、興味がある!!
    ・美術館、博物館に行くことが好き!
    ・物語の中に入り込んで、パリの街を歩き回りたい!


    <余談>
    僕は本を読むとき付箋をつけながら読むのですが、その付箋をつけた所が、他の方の感想に同じく引用されてたんです!
    一人の孤独な読書行為なのに、いろんな人と繋がっているんだなという事実に驚きと喜びがありました。
    自分の感想もそんなバトンの一つになることを願って、この言葉を

    『アートを理解する、ということは、この世界を理解する、ということ。アートを愛するということは、この世界を愛する、ということ。』(引用、232頁) 

  • 原田マハさんのアート系ミステリー。様々な作品があるけれど、今まで読んだ原田さんのアート系の中で一番ミステリーの要素が濃いような気がします。ハラハラしながらページを捲る。捲るペースがどんどん早くなってしまう。(至福です)

    読んでいけば知らず知らずのうちにアンリ・ルソーとパブロ・ピカソの知識が増えていく。ただ、原田さんの手にかかると史実と創作の境界が曖昧になってくる。その間を縫うようにミステリーが展開されていく。

    美術館の裏側に関する話も興味深いですね。本物を観ることがどれだけ難しいことなのか?鑑賞する時ののありがたさが爆上がりします。

    ルソーとピカソの関係性を暗示するような、「夢をみた」?あるいは「夢」という作品をテーマにした「ヒストリカルな謎の小説」を紐解きながらストーリーが展開していく。

    ルソーの、輪郭がはっきりとした暗めの緑色の画風とピカソの衝撃的な時代を超える表現。アートの世界に疎い私でさえ知っている様々な「絵」が頭の中を行ったり来たりしてくる。

    浅はかな私は、「夢をみた」をググってしまいました。残念ながら期待通り?の結果。さすが原田さんです。してやられたり。

    もったいぶらせながら、謎を深めつつストーリーを展開していく。素晴らしい。終盤に近づくにつれてハラハラドキドキが止まらなくなってくる。

    ルソーの絵もピカソの絵も、見れば「ああ、この作品だ!」と判るし、印象にも残っている。しかし、原田さんのこの作品を読んで、まだまだ自分が浅はかであることを見せつけられたような気分になってしまいます。

    作品の中に度々出てくる「ウェーブのかかった長い栗色の髪」と言う表現がなぜか印象に残りました。やはり「キーパーソン」の一人だったのですね。納得です。

    一文だけ、どうにも理解できていない文がありました。「おれは、彼女を恋しているんだ。」と言う文です。どうして「に」ではなくて「を」なのか?どうでもいいことなのかもしれませんが、何故だかとても気になりました。(文庫P334)

    色々と考えてみたのですが、「彼女に」とすると直接的に「彼女に対して」と言う意味になる。しかし、「を」にすると「彼女が抱えているすべてに対して」と言う意味に読み取れる。個人的に、言葉の使い方に原田さんの凄さが滲み出ているように感じました。この言葉の後のドラマチックな展開を予想させる言葉。この作品の最後の部分に結びついていたんですね。

    「夢」のモデルとなった「ヤドヴィガ」の、その夫を介した心の移ろいは明らかに創作だと分かります。その夫のことも作品の中にうまく溶け込ませてある。うまいですねぇ。

    読み終えた後、しばしうっとりとしてしまいました。さすが、原田さんです。

    • hirokingさん
      Macomi55さん
      さすがですね!私は気がついておりませんでした。私もよくわかりません。「あなたの感想に」の「に」は的確だと思います。「感...
      Macomi55さん
      さすがですね!私は気がついておりませんでした。私もよくわかりません。「あなたの感想に」の「に」は的確だと思います。「感想に対して」と言うことでしょう。「本棚をいいねしました」の「を」は「に」でいいと思いますね。ただ「を」で何ら違和感はないように思います。

      おそらく、ブクログにはプロの管理人さんがいらっしゃるので、それなりに洗練された言葉を利用されているとは思いますが。
      2023/09/23
    • Macomi55さん
      ヒロキンさん
      「を」だと、「作品を賞賛しました」のようなニュアンスで、「に」だと「答案に丸つけしました」みたいなニュアンスですね。そもそも「...
      ヒロキンさん
      「を」だと、「作品を賞賛しました」のようなニュアンスで、「に」だと「答案に丸つけしました」みたいなニュアンスですね。そもそも「いいねする」という言葉自体結構新しいので、よくわかりませんね。
      原田マハさんの小説に対するご指摘の部分は、「誰々を愛する」とは言いますが、確かに「誰々を恋する」とは言いませんよね。
      私もレビューとか書く時、無意識に変な日本語沢山使っていますが。
      2023/09/23
    • hirokingさん
      Macomi55さん
      コメント頂きありがとうございます。
      日本語の使い方の専門的なことは解っておりません。ただ、雰囲気的にいわせていただくと...
      Macomi55さん
      コメント頂きありがとうございます。
      日本語の使い方の専門的なことは解っておりません。ただ、雰囲気的にいわせていただくと、「本棚に」というと「本棚そのものに対して」という感じがして、「本棚を」というと「本棚に入っている本も含めて」というような感じがしてきます。あくまでも雰囲気ですが。
      Macomi55さんのレビューはとても洗練されていますよ。これからも楽しみにしております。
      2023/09/23
  • 噂どうりの本当に面白い小説だった!
    普段は静かな場所でしか本の内容が頭に入らない自分が
    電車の中、あっという間に物語世界に引き込まれ、乗客の姿も、おしゃべりなおばさんたちの話し声も、窓の外の景色も、全部消え去った。
    美術や絵画というある意味敷居が高く特殊でコアな世界を、
    特別な知識を持たずとも誰にでも楽しめるミステリー、
    いや、エンタメとして物語を構築してみせたマハさんの手腕にはもう脱帽です(笑)

    ある日、ニューヨーク近代美術館(MOMA)の学芸員ティム・ブラウンに届いた一通の手紙。
    それは名前は知られつつも誰もその姿を見たことがない
    伝説の絵画コレクター、コンラート・バイラーからの招待状だった。
    熱帯雨林咲き乱れ様々な動物たちが身を潜める密林の中、
    赤いビロードの長椅子に横たわる
    長い栗色の髪をした裸身の女。
    それこそがフランスの画家アンリ・ルソーが残した1910年の作品で、二十世紀美術における奇跡のオアシスであり、物議を醸し出す台風の目となった傑作「夢」。
    そしてそれと同時期に描かれたと見られる夢と同じ構図の「夢を見た」という作品。
    バイラーはその真贋鑑定を若き日本人ルソー研究者の早川織絵とティムで、まるでゲームのように争うことを依頼する。
    作品をつぶさに調べるのではなく、バイラーから提供の古書に記された七章からなる物語を一日一章読み進めることによって、作品が本物か偽物かを七日目に判断するという、まさに未知の調査方法だった。果たして「夢を見た」という作品は本物なのか? 早川織絵とティム・ブラウンの真贋対決の勝敗の行方は…。

    史実と創作を絶妙に交えながら描かれる貧しき画家アンリ・ルソーの生涯。
    架空のストーリーなのにマハさんが語ると水のような自然さで読む者の心に浸透し、
    それは限りなく真実に近づいていく。
    まるでルソーを主人公にした冒険小説みたく、心躍るエピソードの連続にページを繰る指が止まらなくなる。

    そこにプラス、何かを企んでいそうなバイラー氏の代理人のエリク・コンツや、早川織絵のボスでテート・ギャラリーのチーフ・キュレーターであるアンドリュー・キーツ、
    世界最大のオークションハウスのディレクターであるポール・マニング、インターポール(国際刑事警察機構)のアートコーディネーターで謎の女性ジュリエット・ルルーなど、様々な人たちの思惑が複雑に絡み合うことで実にスリリングな効果をもたらし、ミステリー小説としても一級品の輝きを放つのです。

    また愛すべきおバカな(笑)ティム・ブラウンや容姿端麗で頭のきれる早川織絵など印象的な登場人物の中でも、
    ルソーに愛され絵のモデルとなり、絵の中で永遠を生きることを決意する女性ヤドヴィガや
    ルソーの才能にいち早く気付き彼を後押しする天才画家パブロ・ピカソの人物像が実に人間臭く生き生きと描かれているのも、なんとも魅力的で引き込まれます。

    いい小説は読む人の心の中に物語が生まれる。
    結論を押し付けずに、読む人が思いを巡らすための余白を届けてくれる。

    本当に読みやすく、ページをめくる指が止まらなくなる面白い本なので、
    「美術や絵の話苦手だしな~」っと思って避けてる人も、
    先入観ナシに一度トライしてみて欲しいです。

  • ニューヨーク近代美術館所蔵の、アンリ・ルソー「夢」。そして、その構図と酷似した、個人コレクター所蔵の「夢をみた」の出現。その真贋鑑定を巡るアートミステリー。

    作中に、多くの現実の芸術家・美術品を、巧みに表現して、創作部分を見失う程。フィクションとノンフィクションの狭間を彷徨ってしまう。美術史に詳しくない私でも、西洋美術史の一コマに心酔出来る。

    個人コレクターが、誰であるか、途中で気がついてからは、より感情移入してしまった。

    主人公織江の現在の生活から、物語は始まる。美術館の少し冷たい静寂。美術展に関わる人達の熱量。

    作中に出てくる作品は、きっと検索したくなる。そして、美術館に行きたくなる。次の美術展からは、節約せずに、音声ガイド利用します。

  • その場所にはいかなる不安も苦しみも貧しさもない楽園。ルソーとヤドヴィカが最後ひとつになり「夢をみた」場面は胸にしみた。
    最初、なにげに本の表紙の「夢」を見たときと、読み終えた後ではまったく印象が変わった。絵画の作者の思いの深さが伝わってきたというか。絵を見るとき、難しく考えていた。敷居が高すぎて、何を表現しているのかわからない、とか。
    だけど本書を読んで、ありのままに感じたままに受け取ればいいんだ、とすごく勉強になった。
    読みながら、絵を調べ、文章と絵を同時に見る、という贅沢な読み方も初めて経験(少々労力要ったけれど)。
    日曜画家として貧乏な画家生活を送るルソー。落選者の集まる展覧会でもからかわれ。家族も病気で次々と失った。
    同じアパートに住む婦人、井戸水でごしごし洗濯をする無邪気なヤドヴィカに恋心を抱く。そんなルソーに孤独を見た(やり切れないというか)。ヤドヴィカの夫はルソーの絵の理解者であるが、ヤドヴィカも少しづつルソーに興味を持ってゆく所が面白かった。
    対照的ではあるが、互いにひかれあうピカソとの出会い。ルソーの人柄もよく表れていた。
    聡明で、慈愛深く、いつも冷静な織絵という印象だったが、最後心理的に不安定になったところに女性らしさ(母性)を見、それを救うティムとのやり取りが印象的だった。
    動物園での場面はほっとした。
    その後、ティムの言及通り、美術館の監視員として働く織絵。「コレクター以上にもっと名画に向き合い続ける人、美術館の監視員だよ」
    世界まで昇りつめた織絵が故郷へ戻り監視員として、大好きな絵の近くで仕事をしている所、良かったです。

  • 楽園のカンヴァスの前に、『マグダラ屋のマリア』と『サロメ』という重いのを立て続けに読んでいたために、あっさりすっきり流れるように読めました。
    原田マハさんは、絵画作品の持つ雰囲気に合わせて小説の重さ軽さを操っているのだと思いますが、それがまたぴったり。
    ルソーは今まで、何となく好きではあったけれど、これを読んではっきり好きになりました。ああ、本物のルソーを観てみたい!味わいたい!

  • ルソーの絵の真贋を巡るミステリー。
    スマホを片手に小説に登場する作品を検索しながら読み進めました。

    アートの知識は空っきしですが、それ故に、出てくる絵画も初見の者が多く、新鮮な気持ちで楽しめました。

    そしてルソーの一枚の絵を巡る物語も非常に面白く、読後感の余韻も良かった。
    一つの絵画に、ここまで世界を広げられるものなのだと驚かされた。

    解説に美術とミステリーの親和性は高いという記述があったがその通りだと思ったし、他のアートミステリも読んでみたいと思いました。

  • 素晴らしい一冊。

    ルソーの一枚の絵の真贋を紐解く物語は、面白かった!この感情が溢れてやまない。

    無知の世界への扉を開いて、ルソーを愛してやまない人たちに導かれ、絵画に秘められた様々なドラマへといざなってくれたこの素晴らしい構成と物語には称賛しかない。 

    ルソーが生きた、描いた証、そして望んで閉じ込められた永遠の生が、次から次へとパンドラの箱から、理解される喜びと共に飛び出すような感覚に酔いしれた。

    そして迎えた見事な夢の出口の眩い光。

    その光を受け止めた瞬間、この絵をこの目で観て感じたくなる"熱い想い"が駆け巡った。

  • 「たゆたえども沈まず」で惹き込まれた、原田マハさん。
    2冊目も美術史に関連した作品を楽しませていただきました。

    詳しい訳ではないものの、絵画が好きな私にとって、作品が沢山出てくる上、お話自体も楽しめるなんてこれ以上にない喜びです(*^o^*)!

    ロマンチックで情熱的な作品でした。

    • あんずさん
      ヒボさん、コメントありがとうございます!

      そちらはピカソがメインなのでしょうか…?早速探して読もうと思います(*^o^*)教えてくださりあ...
      ヒボさん、コメントありがとうございます!

      そちらはピカソがメインなのでしょうか…?早速探して読もうと思います(*^o^*)教えてくださりありがとうございます!
      2023/10/29
    • ヒボさん
      ゲルニカなのでもちろんピカソです♪
      個人的にはゴッホが主役のリボルバーもおすすめですよ☆
      ゲルニカなのでもちろんピカソです♪
      個人的にはゴッホが主役のリボルバーもおすすめですよ☆
      2023/10/29
    • あんずさん
      やっと今日、おすすめいただいていた「暗幕のゲルニカ」を読み終えました。
      ヒボさんのおかげで素敵な作品と出会えました!
      次は「リボルバー」を読...
      やっと今日、おすすめいただいていた「暗幕のゲルニカ」を読み終えました。
      ヒボさんのおかげで素敵な作品と出会えました!
      次は「リボルバー」を読みたいと思います(*^^*)
      2023/12/10
  • 7年くらい前に不眠症と言っている友人が、「読んでみて」と言って貸してくれた。
    これが私と原田マハさんの作品とのはじめての出会い。
    その後、何人かの友人にこの本を購入し強引に手渡した。もちろん、両親にも読ませるつもりで渡し、大原美術館とルソーに関心を持たせた上で、家族で大原美術館所蔵のルソーの作品を見に行った。

    久しぶりに読み直してみた。おそらく7回以上は読んでいる。

    「ここに、しらじらじしい空気をまとった一枚の絵がある。」読むたびに、気になるこの表現。しらじらじしい空気ってどんな感じだろうと想像する。「生の歓びに満ち溢れているはずの春の森は静寂にさらされ、生々しい命の気配はない。とすれば、これは現実世界を描いたものではなく、天上の楽園のを表したものだろうか。あるいは、画家が夢見たそのままの風景なのだろうか。」この言葉の通じる「しらじらしさ」を確かめたいという衝動に駆られる。そして、そのまま作品の中に引き摺り込まれ、一気に読んでしまう。流石に、今では1冊読むのに1時間かそこらで、読み終えてしまう。

    何度、読み返してみても著者の画家・アンリ ルソーへの愛情と作品に対する精通した知識、そして何より展開のスピード。ルソーの知識がなくても、ルソーの世界に関心、興味を抱いてしまう。
    キュレーターの原田マハさんだからこそ本作が、小説にとどまらず、美術本、ルソーの解説本として誕生出来のであろうと思う。

    最後に、7年前に本作を友人に借りた日、私も寝不足になった。寝れないから読む本ではなく、読むと寝れなくなる本である。

  • 会社の方からお借りした一冊。原田先生の作品を読むのは3作目。

    最初は、美術!?アート!?ルソー!?私には縁のないどこか遠くの御伽噺?と思っていたが、とんでもない。

    物語への引き込まれ方が半端ない。グイグイ引き寄せられて物語の世界の住人になってしまう。

    アートなんて全然わからない私が、スマホ片手にルソーやピカソを探してしまう。
    こんな風に美術作品を見たことは無かった。

    話の展開もとても上品でとにかく読んでいる間中心地よく感じた。

    とても良い本に出会わせてくれた会社の方に感謝したい!
    本当に素敵な作品だった。

  • 表紙に惹かれ、作品紹介のあらすじを一切見ずに読み始めた。「ジヴェルニーの食卓」を読了後の影響で、読み初めはルソーの絡みが少ないと印象を持った。

    しかし、読み進めるとルソーの名画を中心に様々な事象が絡み合いながら物語が進み、原田マハさんの世界観に引き込まれ、何度も読みたいと思う本だった。
    画家が想像した景色を時代を超えて私たちと共有できるのは、なんとロマンがあることか、本を読み進める中で感じた。

    サイズ感や絵筆のタッチ、ルソーの「夢」を前にして私たちが素直に何を感じ取るかは、画集では伝わり切らないので、やはり本物を美術館で眺めたい。
    都会の喧騒の中にあるMoMAで密林に迷い込む錯覚を与える画力と、一目で誰の絵かわかる個性的なルソーの画風は、「日曜画家」と呼ばれるのが惜しい天才である。

  • 芸術のことは全くわからないので、新しい世界に入った気分で読めました。

    アンリ・ルソーがどのような環境でどういう心情だったのかを知ることで、作品を見る目がガラッと変わるんだなと感じました。ぜひとも実物を見て肌で感じたいと思いました。日本で展覧会やってほしいな。

  • MoMAのアシスタント・キュレーターであるティム・ブラウンの元にある日、一通の封書が届く。
    それは伝説のコレクター、コンラート・バイラーの代理人からで、未公開のアンリ・ルソーの作品を調査するように依頼するものだった。

    現地に到着すると、そこには新進気鋭のルソー研究者、オリエ・ハヤカワがいた。ティムとオリエは、ルソー作品の「夢」に酷似した作品を前に二人で競ってその作品の真贋を判定するように言われ、勝者にはその絵を譲ると告げられる──

    ※※※

    原田マハさんの珠玉のアートミステリー。
    今回も出てくる作品すべてや、史実っぽいエピソードを検索しながら読み込んでいたので時間はすごくかかりましたが、めちゃくちゃ楽しかったです!

    そう、原田さんのアート小説を読むのは「面白い」というよりむしろ「楽しい」体験なのです。

    作品に没頭すればするほど、実際に美術館で作品に対峙しているような、さらにはティ厶やオリエのいるスイスのバーゼルにいるような、そしてさらにはルソーやピカソが生きた当時のフランスにいるような…
    そんな贅沢な感覚に陥るような不思議な作品でした。

    また、この作品はミステリーとしての側面も面白い。
    作品の真贋に関して、また勝者への作品の譲渡に関して、ティムたち以外にもさらにいろんな人の思惑が絡み、一体どういった結末になるのか目が離せない展開が続きます。

    ルソーを友達のように愛してやまないティムとオリエ、二人の出した結論は、この二人だからこそ出せるもの。
    そして明らかになった一つの事実にめっちゃビックリしました。なるほどここがこう繋がってくるのね…!

    にしても、本当にアート欲というか、実際に絵画に触れたくなる気持ちをかきたてる作品。
    いつかルソーの「夢」を直接見てみたい、という「夢」ができました。(うまくまとまった!)

  • 今年、読んだ本の中でピカイチに面白かった。ミステリー小説でもあり、冒険小説でもあり、恋愛小説でもある。本当に日本人作家が書いたのかと疑うほどの海外翻訳作品のようなダイナミックさと日本人作家特有の繊細さを併せ持つ傑作。ラストでは鳥肌が立った。

    恐らく物語の核となるアンリ・ルソーの『夢を見た』というタイトルの絵画は作者の創作だろうが、絵画の下にもう一つの絵画が隠されている例は良く耳にする。それだけに設定に十分な説得力があるのだ。また、程良いテンポで物語が展開し、章を追うごとに少しづつミステリーが解き明かされて行くという構成も良い。

    読んでいて、これほど最終章が待ち遠しくなる作品はなかなか無い。

    表紙の装画の雰囲気にどこかで見た絵だと思っていたのだが、お気に入りのギル・ゴールドスタインのアルバムのジャケット装画『眠れるジプシー女』を描いていたのがアンリ・ルソーだった。

  • 「楽園のカンヴァス」 原田マハ(著)

    平成26年7月1日 文庫初版 (株)新潮社
    令和2年5月20日 17刷

    久しぶりに寝食を忘れて読みました^^;

    愛と夢と情熱に溢れた作品でした。

    いろんな人から
    いろんな場所で
    原田マハ良い!と聞いていたのですが

    生来の天邪鬼なぼくは
    読まずに生きてきてしまいました。

    ぼくのバカ!

    この後「たゆたえども沈まず」「暗幕のゲルニカ」が控えているのでした。

    4/19(月)20:00〜のラジオまでに読めるのか?

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著者プロフィール

1962年東京都生まれ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部卒業。森美術館設立準備室勤務、MoMAへの派遣を経て独立。フリーのキュレーター、カルチャーライターとして活躍する。2005年『カフーを待ちわびて』で、「日本ラブストーリー大賞」を受賞し、小説家デビュー。12年『楽園のカンヴァス』で、「山本周五郎賞」を受賞。17年『リーチ先生』で、「新田次郎文学賞」を受賞する。その他著書に、『本日は、お日柄もよく』『キネマの神様』『常設展示室』『リボルバー』『黒い絵』等がある。

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