暗幕のゲルニカ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
4.08
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本棚登録 : 717
レビュー : 65
  • Amazon.co.jp ・本 (510ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101259628

作品紹介・あらすじ

ニューヨーク、国連本部。イラク攻撃を宣言する米国務長官の背後から、「ゲルニカ」のタペストリーが消えた。MoMAのキュレーター八神瑶子はピカソの名画を巡る陰謀に巻き込まれていく。故国スペイン内戦下に創造した衝撃作に、世紀の画家は何を託したか。ピカソの恋人で写真家のドラ・マールが生きた過去と、瑶子が生きる現代との交錯の中で辿り着く一つの真実。怒涛のアートサスペンス!

感想・レビュー・書評

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  • 原田マハ『暗幕のゲルニカ』新潮文庫。

    大傑作『楽園のカンヴァス』以来の原田マハ。次なるアートミステリー作品を待ち焦がれ、敢えて他の原田マハ作品には手を出さなかった。

    冒頭から引き込まれるような展開が続き、この先どのようなミステリーが描かれるのかという興味が次のページを捲るエネルギーに変わっていった。

    交互に描かれるピカソが生きた時代と八神瑶子の生きる現代……ピカソの『ゲルニカ』製作過程の描写にリアリティがあり、悲惨な9.11同時多発テロのもたらした哀しみと『ゲルニカ』とを巧みにリンクさせるアイディアが非常に面白い。『楽園のカンヴァス』と並ぶ大傑作!

    優れたアートは戦争や政治、思想までをも動かす大きな力となるのか……

    久し振りにラストに震えた。



    ニューヨークの国連本部でイラク攻撃を宣言する米国務長官の背後にあるはずの『ゲルニカ』のタペストリーが暗幕で隠される。その指示を出したのはホワイトハウスで、政治的な配慮であることは間違いない。一方、MoMAのキュレーター・八神瑶子はピカソの名画『ゲルニカ』をMoMAで開催される企画展『ピカソと戦争』の目玉にしようと、スペインと貸出の交渉を重ねるがなかなか貸出は認められない。そんな中、スペインに2度目の交渉に訪れ、やっと貸出の許可を得た八神瑶子は何者かにより拉致される……

  • 歴史上の人物と架空の人物を織り交ぜながら、史実とフィクションとが見事に融合したアート小説にしてサスペンス小説。
    十歳の時にMoMAで<ゲルニカ>を見て衝撃を受けた瑤子が主人公。彼女はのちにMoMAのキュレーターとなり、スペインにある<ゲルニカ>を、9.11後のニューヨークに展示しようと活躍する21世紀編。
    一方20世紀編では、ピカソの愛人ドラの目を通して、ナチスのゲルニカ爆撃に衝撃を受けたピカソが<ゲルニカ>を完成させるまでを描く。
    それぞれの編が、交互に淡々と綴られてゆくが、終盤にきて俄然サスペンスフルな状況となる。
    この作品で、ピカソの<ゲルニカ>とは、反戦の宣言であり、「暴力の連鎖は結局何も生まない」という、ピカソのメッセージが込められているのだということに思いを新たにした。
    以前、箱根の森美術館で、ピカソの作品を見る機会があったが、この小説の読後に改めて見てみたい。たぶん、より深く味わうことができるのではないだろうか。

  • 180910*読了
    どこまでが史実に基づいていて、どこからがフィクションなのか。すべてが現実に起こったことなんじゃないか、丁寧で細かな描写にそう錯覚しそうになりました。
    美術史に明るくなくても、この一冊を読むだけでピカソにもゲルニカにも詳しくなれます。アートの力を感じられます。
    戦争がなくなる世の中が来るのはまだまだ遠いかもしれない。でも、この絵がピカソによって生み出されたこと、ゲルニカが多くの人々の心に衝撃を与え、戦争の悲惨さを訴えたこと、それは神からの贈り物ともいえるかもしれません。ゲルニカが数々の危機を乗り越え、今も現存している奇跡にしてもそうです。

    アートが人の心を動かし、世界を変える。わたしも、そう信じたい。

    楽園のカンヴァスのティムが、瑤子の上司として登場し、瑤子を支えてくれたことには心があたたかくなりました。

  • 本書を読むまでピカソには興味がありませんでした。

    美術の教科書か何かで見た程度のゲルニカ 反戦平和の意味が込められていた事を初めて知りました。

    本書のテーマでもあるかとは思いますが、アメリカはテロとの戦いと称して空爆をします。それを支持する国があり、その行為を支持する人達がいる事に間違いはありません。他人から受けた攻撃に対して報復という行為に走るのは悲しいけれど人間のサガかもしれません・・・
    そういう人達には報復という言葉を借りて自分よりも弱い立場の何かを直接的または間接的に傷つけている事に気がついて欲しいと思います。
    そして自分よりも弱い立場の悪に向ける暴力は正義の行使ではありません。暴力は自分よりも強い悪に向けてのみ発すべきであると思います。

    本書は平和とアートについて考えさせられる作品です。

    そしてピカソに興味が湧いてくる作品でした。

  • 1930年代のパリと2000年代のNY。クルクル時代背景が変わることに序盤はついていくのが大変でしたが、展開が進むにつれてどんどん引き込まれて行きました。その時代を生きるということは、やはり意味があって生かされているのかな。

  • ピカソの「ゲルニカ」。彼はどんな思いでこの絵を描いたのだろう。図版でしか見たことがなく、何だか良くわからない絵という印象しかないけれど、現物を見に行きたいという気持ちが湧いてくる。
    キナ臭さがにおいだしている今をきちんと注目していなくちゃいけない。

  • 物語は、少女時代にピカソ「ゲルニカ」と出会い衝撃を受け、ライフワークとしてピカソ、ゲルニカを研究した、ニューヨーク近代美術館のキュレーターが、911テロ事件への報復空爆という国際社会の動きを背景に、ゲルニカを再びニューヨークで展示しようと企画し、奔走するというものです。並行して描かれるのは、ゲルニカ製作当時、ピカソのミューズであり、ゲルニカの製作過程をカメラにおさめた、写真家のドラの目線で綴られるピカソと、大戦前後のパリの情景、そして、ゲルニカ「亡命」のストーリー。

    ゲルニカの米国への「亡命」や、スペインへの帰還、保管場所を巡ってのさまざまな駆け引きは、史実だったようです。
    それが、巧みに911事件に絡められたスピード感のあるフィクションになっていて、一気に読み終えました。

    ゲルニカにまつわる様々な出来事(論争だったり物議だったり?)から考えると、ゲルニカには、製作したピカソ本人に加え、作品が放つ強いメッセージに共感して、この作品を守り、相応しい展示をしようとした多くの人々の強い思いが埋め込まれているに違いありません。

    随分前に、ピカソ展で、ゲルニカを同じサイズで複写した展示を見たことがありました。おそらく、現物の招聘を試みたもののそれが叶わず、それでも日本の人々にゲルニカを見て欲しいと考えた関係者の方たちが、原寸大の写真展示を企画したのでしょう。
    写真だったのに、前に立った瞬間、なんとも言えない衝撃を受けて目が離せなかったことを思い出しました。一つの展覧会に何度も行くタイプではないのに、あのピカソ展には、確か、会期中三回くらい行きました。

    そんなことを思い出しました。写真だったのにあれだけのパワーがあったゲルニカの実物を一度見てみたい。

    先日読んだ「楽園のカンヴァス」同様、絵画に触れたい意欲が急激に高まった本でした。

  • 大好きな原田マハ作品。
    ラストにかけた物語の展開が、一気読みせざるを得ない。マハ作品って、ちょいちょい登場人物が他作品に顔だしてくるのも一つの楽しみかも。

  • ・芸術は飾りではない。敵に立ち向かうための武器なのだ。パブロ・ピカソ(P6)

    ・けれども「誰にも文句を言われる筋合いのない人生」が、ふとつまらなく思えてしまうことがあった(P64)

    ・あなたが「それ」を手放していいのは、あなたが、自分の命を賭けて何かを・・・誰かを守りたいときだけ(P409)

    ・幾百もの眠れない夜、白い鳩はいつも傍らで瑤子を見守ってくれた。元気を出して、負けないで、などと絵の中の鳩が
     語ってくれるはずもない。それでも、鳩は、ただ羽ばたいて、静かに主張していた。私は飛ぶのだ、と(P475)

  • けちのつけようのない五つ星で、この本に出会えたことを感謝している。
    一ページ目から、21世紀のアメリカ、そして大戦前、最中のフランスを中心として描かれる八神キュレーター、ピカソ、ドラ、バルドら、アートを愛し、その力を信じた者達の戦いに引き込まれる。
    この本ははまります。

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著者プロフィール

原田 マハ(はらだ まは)
1962年東京都生まれ。小6から高校卒業まで岡山で育つ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部美術史学専修卒業。
馬里邑美術館、伊藤忠商事株式会社、森美術館設立準備室、ニューヨーク近代美術館での勤務を経て、2002年よりフリーのキュレーターとなる。
2005年小説化デビュー作の『カフーを待ちわびて』で第1回日本ラブストーリー大賞を受賞。2012年『楽園のカンヴァス』で第25回山本周五郎賞、『キネマの神様』で第8回酒飲み書店員大賞をそれぞれ受賞。2013年には『ジヴェルニーの食卓』で第149回直木賞候補、2016年『暗幕のゲルニカ』で第155回直木賞候補となる。2017年『リーチ先生』で第36回新田次郎文学賞受賞となり話題になった。

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