暗幕のゲルニカ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
4.14
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本棚登録 : 10112
感想 : 708
  • Amazon.co.jp ・本 (510ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101259628

作品紹介・あらすじ

ニューヨーク、国連本部。イラク攻撃を宣言する米国務長官の背後から、「ゲルニカ」のタペストリーが消えた。MoMAのキュレーター八神瑶子はピカソの名画を巡る陰謀に巻き込まれていく。故国スペイン内戦下に創造した衝撃作に、世紀の画家は何を託したか。ピカソの恋人で写真家のドラ・マールが生きた過去と、瑶子が生きる現代との交錯の中で辿り着く一つの真実。怒涛のアートサスペンス!

感想・レビュー・書評

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  • 原田マハさんの作品は、「楽園のカンヴァス」に続いて2作目にトライしてみました。

    ニューヨーク近代美術館に勤務する日本人女性キュレーターが主人公です。楽園のカンヴァスの主人公、ティムがおっさんになって登場しており、なんだか嬉し楽し感を味わえたのは前作読了者の特権です(笑

    ピカソのあの名作「ゲルニカ」にまつわる壮大な物語。ピカソの反戦を願う強烈な意思をこの物語から理解しましたし、同時に奔放な女性関係にも驚きました。さすが天才画家です。超有名人ですが彼の人となりなどは知る機会がなかったので本書で知ることができてよかったです。今後、美術館などでピカソの作品を見ることもあるかもしれませんが少しは見え方感じ方が変わるかもしれません。

    「楽園のカンヴァス」があんまりにも面白くて、期待値マックスを突き抜けた状態で本書を読み始めてしまったんで、期待外れとは言わないもののストーリー展開の部分で何となく物足りなさを感じてしまいました。
    とはいえ素晴らしい小説であることは間違いないです。

    これから読まれる方は、「楽園のカンヴァス」から続きで読む場合は、期待値ゼロにして読んでもらうとめっちゃ楽しめる作品です(笑

  • アートの力を感じさせる物語
    熱い想いを感じました。

    ストーリとしては
    9.11で夫を亡くしたMoMAのキュレーター八神瑤子は自分の企画「ピカソの戦争」展でゲルニカを借り出そうと奔走しています。
    さらに、国連本部のゲルニカのタペストリーに暗幕がかけられた状態で、イラク攻撃を宣言する米国務長官。
    誰が暗幕をかけたのか?

    さらにゲルニカが描かれた時代、ピカソの恋人のドラ・マールの視点で、ピカソの生き様が語れます。
    どこまでが史実でどこからが創作なのかさっぱりわかりませんが、この時代をしっかり理解することができます。

    そんな瑤子の時代とピカソの時代が交互に語られ、この二つのストーリから、「ゲルニカ」に対する想いが熱く胸に残ります。

    そして、ラストの展開
    熱いものがこみ上げてきました!

    この物語を通して、ゲルニカをしっかりと見るようになりました。そして、ゲルニカから伝わるメッセージを理解できるようになりました。

    まさに、アートが人の心を、世界を、変えれるということなのだと思います。

    とってもお勧め

    • 梶井俊介さん
      原田マハさんは、結構振り幅が大きいきがしますが、良い作品はストーリーも提供される情報もともに満たされます。
      原田マハさんは、結構振り幅が大きいきがしますが、良い作品はストーリーも提供される情報もともに満たされます。
      2022/12/24
    • masatoさん
      そうですね。??といった作品もありますが(笑)、原田マハさんは好きな作家さんです。この物語もぐっと来ました。
      そうですね。??といった作品もありますが(笑)、原田マハさんは好きな作家さんです。この物語もぐっと来ました。
      2022/12/24
  • ピカソという芸術家とゲルニカの凄さについて知ることができてよかった。現代と戦前戦中の二つのストーリーがが平行して進行し、後半クロスしていく展開でした。原田作品ならではでやはり面白い。
    かなりハイレベルなものが高い調和を保って描かれているのがピカソの作品なのだそうです。ピカソは物事の本質を一瞬で捉え、絵にしてしまうともあります。何がすごいのかわからない自分にもわかりやすく伝えてくれました。
    本書を貫いているのは「戦うべきは戦争、憎悪、暴力」との強いメッセージです。市井の人々が手を取り合って実現しなければと迫ってきます。そんな普遍的とも言える主題をアートを通して伝えられるのは原田マハさんならではですね。
    今もウクライナ戦争など世界では紛争が起きています。最近新宿を歩いていたら、ウクライナの人たちが支援者の人たちと反戦を訴えていました。また、日本の周りだってかなりキナ臭い。人々が心の中に平和の砦を築かなければいけません。
    このようにアートを切り口に、メッセージ性ある作品でした。

  • 池上彰氏の後書にもあるように、アートにはどれだけの力があるのか、戦争を阻止する力はあるのだろうかという、芸術に対する希望であり、原田さんが描こうとした可能性。
    1930年代後半から世界大戦終焉までの、ピカソと愛人で写真家のドラが、作り上げた「ゲルニカ」
    ニューヨーク多発テロ後の2001年から2003年、キューレターの瑤子と、今また焦点を当てたい「ゲルニカ」
    ゲルニカ制作当時の戦闘下と、アメリカがテロとの戦いを明言した当時が並行して描かれます。この時、国連のゲルニカのタペストリーに暗幕がかけられた国務長官の記者会見。これに衝撃を受けての執筆とのことでした。
    アートには、戦争を阻止する力はないのかも知れません。しかし、暗幕をかけたという事実は、そのアートのメッセージ性を認めているということかと思います。暗幕を掛けなければならないほどの力はあるのですね。
    両時代に登場するパルド。恋人を戦争で失い、その代替のように、ゲルニカを守る。守る事を彼の戦闘とする。フィクション部分と知っても、彼のような役割を果たした人物がきっと居たはずと思わずにいられない。

  • 誰にでも自分の中で好きな、もしくは強く印象に残っている絵というものがあると思います。私にとってそのひとつが、ピカソの『ゲルニカ』、まさしくこの作品で取り上げられている絵です。中学の美術の授業でこの絵を初めて見た時、ちょうど歴史の授業で習った広島、長崎への原爆投下のイメージが重なりました。それ以来、私の中では原爆と聞くとこの絵が真っ先に浮かびます。そして大人になり、この絵をどうしても見たくて、スペイン・マドリッドへと赴きました。「楽園のカンヴァス」の感想では同じマドリッドにある他の絵について触れましたが、主目的はこの絵を見るためでした。『ソフィア王妃芸術センター』を訪ね、この絵が飾らせている部屋に入った時の衝撃は未だもって新鮮です。見たこともない巨大なモノクロームの世界に息を飲みました。しばし呆然と立ち尽くしました。圧倒される絵の迫力に言葉を失いました。結局、その翌日も再度絵の前に立つことになった私。強い印象は何度見ても変わらずでしたが、それは帰国後も同様でした。しばらくの時を経て、この絵を見たいがために再度スペインを訪れているほどです。そんな一方で、半年前に読書を始めて、原田マハさんという方を知り、今日この作品を手にしました。二度の旅行で三度の実視を経て、今度は文字で『ゲルニカ』を見る瞬間の到来。読書を始めて良かったなと実感したこの作品、主人公・瑤子が『ゲルニカ』に対面するシーンからスタートします。

    『瑤子たち一家は、休日ごとに、マンハッタンにある美術館を訪ね歩いていた』という主人公・八神瑤子。訪れたMoMAで『目の前に、モノクロームの巨大な画面が広がっていた』という光景を前にし『磁石に引き寄せられた砂鉄のようにそこから動けなくなって』しまいます。大人になった瑤子は『イーサンと結婚したこともあり、いまではアメリカの永住権を取得』しました。そして、再びの『ゲルニカ』との出会いにより『自分は、生涯をかけてパブロ・ピカソという芸術の巨人を追いかけ、寄り添っていこう』と決意します。一方で時を遡り1937年、パリのアトリエで『今日は私、ポーズをとる必要がある?』と聞く女性・ドラ、それに対し『そうだな』と短かく答えるのはパブロ・ピカソ。『いいかげんに下絵に取りかからないと、もう間に合わないでしょう?』とドラが気にするのは、近く開催されるパリ万博のスペイン館に展示予定の『とてつもなく大きな仕事』という『およそ縦7メートル50、横8メートル』の壁面に飾られる壁画の依頼でした。『政治的に利用されるのはきにくわない。それに、あんなに大きな壁画なんて手がけたこともない』と戸惑うピカソ。でも、『ゲルニカ空爆のニュースに触れた瞬間から、ピカソの中で激しく渦巻き始めた何か。憎悪、狂気、苦悩、憤怒。負の感情の爆発が、いま、芸術家の中で起こりつつある』と絵筆を進めるのでした。一方、2000年、瑤子はMoMAのキュレーターとなり初の企画展の準備を進めます。そんな企画会議の当日、9月11日、『マンハッタンの南端、まぶしいほど澄み渡った青空に立ち上る黒煙。それを目がけて、白い機影が上空を切り裂くように突っ切っていくのが見えた』『ワールド・トレード・センターに旅客機が突っ込む』という悲劇。そして『最愛の夫を失って、このさき、生きていくことにどんな価値があるのだろうか』と生きる意味を失ってしまった瑤子。そんな中、瑤子は『ゲルニカ』を思い出します。『私の運命を、人生を変えた、あの一作。あの作品を、もう一度、MoMAで展示することはできないだろうか。9.11の報復を名目にして武力に訴えるのがいかに愚かなことか』と気持ちを立て直します。そして『企画書のタイトルはピカソの戦争:ゲルニカによる抗議と抵抗』とし、再び前を向いて進んでいきます。

    1940年前後、つまりピカソが生きた第二次世界大戦中のパリと、2000年にワールド・トレード・センターへの旅客機突入により『テロとの戦い』が叫ばれた時代の二つのストーリーが並行して紡がれるこの作品。その二つの時代を繋ぐもの。それが、ピカソの大作『ゲルニカ』でした。パリで製作され、パリ万博への展示、米国に疎開し、MoMAでの42年間の展示を経てスペインへと引き渡されたこの大作。実話と空想の世界を巧みに織り交ぜながら二つの時代を繋ぐこの大作を巡る物語が、それぞれの時代の史実をベースにしながら鮮やかに描写されていきます。『ゲルニカ』は、『縦・約350センチ、横・約780センチ』という圧倒的な迫力を持った大作です。これを原田さんは『ドラは一瞬息を止めた。そこには、驚愕し、もがき、のたうち回る、人間たちや動物たちの群像が出現していた』と表現します。あの絵を『ピカソは、ゲルニカが、空爆を受けたその瞬間をカンヴァスにて再現したのだ』と捉え、その上で、さらに、『見る者にも「共犯者」となることを強いる。それがピカソのやり方だ』と指摘します。そして『この作品で、見る者に「目撃者」となり「証言者」となれと挑発しているかのようだ』と説明します。この絵だからこそのその説得力に、この絵に潜在するただものではない力を強く感じました。

    1939年のナチスによる古都『ゲルニカ』の空爆、そして2000年の『9.11』を始まりとした米国主導のアフガニスタン空爆。歴史は前者を絶対悪と記録しますが、後者は『テロとの「正義の」戦い』とされるこの違い。『武力を武力で封じ込めようとしても、苦しむのは、結局、名もない人々』と思い、自分に出来ることを考える瑤子。一方で、万博会場で兵士に『この絵を描いたのは、貴様か?』と問われたピカソはたじろぎもせずに答えます。『いいや。この絵の作者は、あんたたちだ』。ピカソの強い意思が垣間見れるこのシーン。『ゲルニカ』という絵に込められたピカソの思いを改めて感じました。

    時が流れても悲しい歴史は繰り返されます。それを分かってか、『ゲルニカ』に込められ、託されたピカソの強い思いは不変のものでもあります。『スペインが真の民主主義を取り戻すその日まで、決してスペインには還さないでほしい』と語ったピカソ。そして今『ゲルニカ』は、スペインの地に還りましたが、世界は未だ不穏な空気に包まれたままです。『ゲルニカ』という絵に課せられた役割、果たすべき使命はまだまだ現役であり続けなければいけないのかもしれません。

    原田さんのこの作品を通じて長らく私の中にあった『ゲルニカ』像が、言葉で描いたこの作品を通じて、新しい『ゲルニカ』像として上書きされました。500ページを超える大作。原田さん渾身の読み応えのある作品でした。

  • ピカソのゲルニカを巡る時代を超えた二つの話。
    瑤子の奮闘とドラの葛藤が話の骨子と思う。
    どちらもピカソを、そしてゲルニカを追い求めたが、瑤子は真の意味を追い求め、ドラは別れを告げる。
    ミステリー仕立ての作り込みで読み易く、ピカソの絵をスマホで眺めながら読み進めた。原田マハの絵画の話は改めて芸術に触れられる良い機会になる。

  • 原田マハさんの「絵に纏わる物語」はめちゃくちゃ面白いです。
    この本は、ピカソのゲルニカをめぐる物語です。
    史実とフィクションが折り混ざって出来ており、物語にグイグイ引き込まれてしまいます。
    実際に美術館でキュレーターをされていた著者の経験と知識の深さに感心しました。
    ぜひぜひ読んでみてください

  • 重くて熱い。
    原田マハさんの芸術への、そして、平和への想いがビシビシ伝わってくる。圧倒されながらも読み進んだ。

    MoMA(ニューヨーク近代美術館)のキュレーター八神瑤子は、夫を9.11のテロで亡くしている。瑤子は、いまはスペインにあるピカソの絵画「ゲルニカ」を、ニューヨークのMoMAに展示しようと奔走するが…
    9.11のテロが起きた現代と、ピカソがゲルニカを描いた第二次世界大戦時が交互描かれる芸術ミステリー。

    「ゲルニカ」はナチスドイツのゲルニカへの無差別爆撃への衝撃や怒りから描かれた作品。軍隊への憎悪を表現しているという。、美術史において最も力強い反戦絵画芸術の1つとして評価されている。

    ピカソはドイツの駐在武官に「この絵を描いたのは、貴様か」と問われ、「いいや、この絵の作者はーあんたたちだ」と答えたと言う。いや〜、かっこいい。

    この小説読んで、「ゲルニカ」が描かれた背景を知り、ピカソの平和への強い想いを感じることができた。そして、芸術が持つ、現実を変えていく力も。
    この小説に出会えて、また人生が豊かになった。

    国連安保理のロビーに展示されている「ゲルニカ」のタペストリーが、イラクへの武力行使についてのパウエル国務長官のインタビューの際に暗幕をかけられていたのは、「疾しさ」からだったと推測される。解説で池上彰さんが、トランプ政権は武力行使に「疾しさ」すら感じないのでは?と書いているが、それはそれで恐ろしいと思う。

  • 原田マハ『暗幕のゲルニカ』新潮文庫。

    大傑作『楽園のカンヴァス』以来の原田マハ。次なるアートミステリー作品を待ち焦がれ、敢えて他の原田マハ作品には手を出さなかった。

    冒頭から引き込まれるような展開が続き、この先どのようなミステリーが描かれるのかという興味が次のページを捲るエネルギーに変わっていった。

    交互に描かれるピカソが生きた時代と八神瑶子の生きる現代……ピカソの『ゲルニカ』製作過程の描写にリアリティがあり、悲惨な9.11同時多発テロのもたらした哀しみと『ゲルニカ』とを巧みにリンクさせるアイディアが非常に面白い。『楽園のカンヴァス』と並ぶ大傑作!

    優れたアートは戦争や政治、思想までをも動かす大きな力となるのか……

    久し振りにラストに震えた。



    ニューヨークの国連本部でイラク攻撃を宣言する米国務長官の背後にあるはずの『ゲルニカ』のタペストリーが暗幕で隠される。その指示を出したのはホワイトハウスで、政治的な配慮であることは間違いない。一方、MoMAのキュレーター・八神瑶子はピカソの名画『ゲルニカ』をMoMAで開催される企画展『ピカソと戦争』の目玉にしようと、スペインと貸出の交渉を重ねるがなかなか貸出は認められない。そんな中、スペインに2度目の交渉に訪れ、やっと貸出の許可を得た八神瑶子は何者かにより拉致される……

  • 『自分たちの声で平和を呼ぶんだ』、『自分たちが戦争と闘うんだ』という願いのもと、ピカソにより製作された『ゲルニカ』。
    人類は有史以来、争いを続けてきた。第二次世界大戦以降もイラン、イラクの戦争、アメリカのイラク空爆があった。市井の人々はただそれに巻き込まれて、悲しい人生を強いられる。
    そんな人たちへのメッセージが『ゲルニカ』に込められている。

    本作紹介の帯にて、「大戦前夜のパリと現代ニューヨーク、スペインが交錯する華麗でスリリングなビジュア小説」とあり大戦時の過去と現代が一つの絵画で繋がっている。また、大戦の背景と当時の緊張する情勢およびニューヨークの世界貿易センタービルの大規模テロについても理解を深めることができ、是非お勧めしたい作品である。

    本作の始まりの前年、1936年は日独伊防共協定が調印された年である。日本やドイツやイタリアは、議会制民主主義をいちはやく達成した先進国であるイギリス、フランスやアメリカからはドイツのヒトラー、イタリアのムッソリーニ、そして日本の昭和天皇が絶対的な権力を有するとして、危険な国家としてみられていた。

    そして、この日独伊防共協定調印の翌年の1937年にこの物語が始まる。

    当時のスペインは、スペイン共和国の政府軍と元陸軍総長・フランシス・フランコの指揮する反乱軍との内戦状態であった。
    1937年、フランコ軍を支援するナチス・ドイツ軍は、自治や独立の気風が強いスペイン北部バスク地方の町ゲルニカに空軍による爆撃を行った。

    同年、パリ万国博覧会スペイン共和国館に壁画依頼を受けていたピカソは、この空爆で亡くなった無力な人間の哀しみを表現した『ゲルニカ』を万博壁画として発表する。

    政府軍を支持していたピカソは『フランコの夢と嘘』とそれに添える銅版画の売り上げを政府軍に寄付していたため、パリ万国博覧会スペイン共和国館の壁画制作の依頼を共和国政府軍より受けたのではないかということであった。
    しかしながら発表された壁画は、反戦メッセージとして、ナチス軍はもとより政府軍からもその評価は二分することになる。

    本作の並行する物語として、ニューヨーク・マンハッタンの世界貿易センタービルのテロ事件が絡む。
    この911テロ事件は、ワシントンの国防総省なども標的とされていた。ハイジャックされた旅客機が次々と高層ビルに激突する映像は世界に衝撃を与えたことは、記憶に新しい。

    その後アメリカは「テロとの戦い」を掲げ、アフガニスタン紛争、そしてイラク戦争へと突入する。

    アメリカ軍は、アルカイダやタリバンの軍事施設などに対して激しい空爆を開始する。対テロ戦争を掲げるアメリカを中心とした多国籍軍と、聖戦を呼びかけるアルカイダやタリバンとの泥沼の紛争へと発展していく。

    本作は2003年までの物語であるが、実際には、イラクに駐留していたアメリカ軍の主要な戦闘部隊の撤退を完了は、2010年まで要する。

    私はスペインに行った時、ピカソ美術館、プラド美術館、ソフィア美術館など巡った。そこでゲルニカと出会い、この絵がどのような背景で製作されたかを知った。大きさのインパクトもさることながら、それ以上に抽象化された絵画から発する強烈な不気味さが戦争のもつ悲惨な状況をイメージさせた。そして、なによりも『こんな世界に居たくない』と感じた。

    『ゲルニカ』は、抽象化されているので、実際に血や武器、亡くなった人や動物が本物さながらに描かれているわけではない。だからこそ、それを見た人に与えるインパクトも様々である。そのため、この絵を見たからといって、戦争をしてはならないと思うかどうかも人の感性の違いによると思う。しかしながら、この小説を読んだ方で有れば、『ゲルニカ』から発せられるメッセージを同じ感性で受け止めていただけると思う。

    何度読んでも、訴えかけてくる作品である。

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著者プロフィール

1962年東京都生まれ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部卒業。森美術館設立準備室勤務、MoMAへの派遣を経て独立、フリーのキュレーター、カルチャーライターとして活躍する。2005年「カフーを待ちわびて」で日本ラブストーリー大賞を受賞し、デビュー。12年『楽園のカンヴァス』(新潮社)で山本周五郎賞受賞。17年『リーチ先生』(集英社)で新田次郎文学賞受賞。近著に『リボルバー』(小社)。

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