- Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101260426
作品紹介・あらすじ
清流をまたぐ沈下橋の向こう、懐かしいひかげの家に10歳のみやびを連れ里帰りしたさわ。自分を呼ぶ声に車をとめると、そこには親友ひかるの息子で、褐色の手足が伸びすっかり見違えた13歳のりょうがいた。蜘蛛相撲、お施餓鬼の念仏、遠い記憶を呼び戻すラヴェルの調べ。水面を叩くこどもたちの歓声と、死んだ人たちの魂が交錯する川べりに、互いの衝動をさぐる甘く危うい夏が始まる。
感想・レビュー・書評
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夏100%という感じ。とんでもなく色濃く光景が浮かぶ。
土佐弁?というのかな、方言で綴られるので会話を全て完璧には理解できなかったと思うけれど、それでも土佐弁ってすごくかっこいい。(14歳の夏、高知へ旅行に行った。高知市だけではなく、梼原村という四万十の山奥まで行った。梅雨明け間もない太陽の下で緑が生い茂る道を歩いていると、通りすがりの同年代の男の子2人が自転車に乗りながら「今日家おる?」「おお、おるきよ!」と大声で会話をした。それを真横で聞いて”方言やばい!”とドキドキしたことがあったけれど、なんだかその時の感情を思い出した。)
ただ、ストーリーとしては他の方が書いているようにちょっと嫌悪感もある。そして、大人になっても自分は方言に憧れがあるとはいえ、やはり地方特有の土地の繋がりの強さはやはり苦手だ。古くからの民間伝承はもちろん尊いものであるけれど、それを押し付けて人の人生の足枷になってしまうのもどうかと思う。
しかし、お話として読むにはとても美しい。民俗学への興味も促すような内容だとも思う。 -
ピアノが上手な女の子が、高知県の集落から都会の音大へと進学する。
プロになれると期待されて進んだ進路で、自分の才能の限界に直面する。
いろいろなことに折り合いをつけながら、誰もがその人の人生を歩んでいく。
すべてが最初に望んだ通りではないが、歩んでいく道の途中で、大切にするべき新しいものに出会うこともある。
結婚、出産、友人、家族
田舎ののどかさと、登場人物の温かさ、素直さ。
これまで読んだことのない、何とも言葉では表現できない素晴らしい感じを味わった。
純粋で、繊細で、リアルで。
私の中では、圧倒的に☆5つです。 -
文学として思えばとても美しいお話
リアルに思うと 嫌悪感。 -
高知県の山奥にある「ひかげ」という集落に娘を連れて里帰りしたさわ。親友の息子との再会で、美しくも危険なひと夏の恋が始まる。
中脇作品は『わたしをみつけて』以来二作目だが、その世界観の違いに驚く。「ひかげ」という、おそらく数年後には誰もいなくなる集落を舞台に、美しい自然と対比するかのような人の死と恋。いつの時代もいくつになっても、夏の季節は危険な香りがする。 -
恐ろしいほど、決まった人しか登場しなかった.
危うさって夏が一番、濃ゆい. -
なんだか、いけないものを垣間見てしまったような妙な罪悪感を感じてしまった。
ラヴェルの調べに乗せて流れる激情、指が触れるだけでこんな官能を匂わせるとは、すごいなほんと。
来年のあなたのことはそれほど、ただいまのあなただけを手にして、決して消えない傷を刻む。
なんて女だ、さわさんよ。