命をつなげ: 東日本大震災、大動脈復旧への戦い (新潮文庫 い 119-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (303ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101262819

作品紹介・あらすじ

宮城県仙台市から青森県青森市まで。雄大なリアス式海岸に沿って走る国道45号線は「命の道」と呼ばれている。あの日3月11日に襲った津波により国道は壊滅状態に。この道を開かなければ救助も救援もできない。度重なる余震。あるいは自らの命を失うかもしれない。けれど「やるしかねえな」――。道路の復旧にかけた人々の高き矜持を描くノンフィクション。『命をつないだ道』改題。

感想・レビュー・書評

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  • 東日本大震災において東北の大動脈、国道45号線の啓開にあたった、国、地方、民間、それぞれの物語。

  • あの大津波から五年半。未だにあのショックは忘れられません。今後も忘れることはありますまい。関連書籍も多く出ましたが、辛すぎて中中目を通す心持にはなれませんでした。
    この『命をつなげ 東日本大震災、大動脈復旧への戦い』は、津波により流された汚泥や瓦礫に埋もれた道路を、地元の人々が夫々の使命感から立ち上がり、文字通り命懸けで復旧へと導いた実話を取材した一冊であります。

    すべてが流された故郷の風景。「おまえの家も、俺の家も、もうないよ」と立ち尽くす男性。いつたいどこに道路があつたのかさへ分からないのです。
    元元海運に頼つてきた三陸地方は、陸路が脆弱であつたさうです。そんな三陸に「大動脈」国道45号線が全線開通したのがやうやく1972(昭和47)年になつてからのこと。この命の道が寸断されたのであります。

    火災が起きても消防団が行けない。自衛隊が活動しやうにも、現地へ辿り着けない。そこで地元の建設業者が動き出します。動かせるだけの重機と可能な限り多くの人を集め、緊急車両や救援物資を運ぶ車両が通れる道を、一車線でいいからまづ開通する。
    しかし道路上には流された家など、多くの物があります。家の中には人がゐるかも知れません。泥を除ける作業中に、遺体が発見される可能性もあります。そして作業員は昼夜兼行での強行作業。自らも被災してゐて、心身とも限界なのです。「とにかく道を通すのだ」の一念で動くのでした。

    国や県の指定業者が動けない。ならば動ける我々がやるしかない。指示が無くても、管轄が違つてゐても、違法であらうが、困つてゐる人たちの為には行動あるのみと考へたのです。情報も寸断され、彼らが「くしの歯作戦」を知つたのは、ずつと後のことださうです。

    ほかにも、民間、公務員に拘らず、かかる混沌状態で「腹をくくつて」自分の役目を果たした人たちの行動が描かれてゐます。何の手がかりもない中、とにかく動いた人たち。もつと彼らの事は知られても良いのではないかと思ひ、今回取り上げてみました。

    デハまたお会ひするまで、御機嫌よう。

    http://genjigawa.blog.fc2.com/blog-entry-661.html

  • ものすごく綿密な取材。

    官公庁、民間企業などの立場にかかわらず、最前線の現場で目の前のやるべきことを進めていく、プロの皆さんの矜持が見えます。

  • 3.11、壊滅的な打撃を受けた国道。救助物資を運ぶには、救援の人員を送り込むには、道路の復旧は不可欠… だということを、この本を読むまでは全く思い当たらず。

    道路工事というと、公共事業などで無駄に税金が投入されているネガティブなイメージしかありませんでした。しかし被災後、普段道路を保守している人たちが自らの責任のもと、自ずと道路の補修工事を行っていたという話には胸を打たれました。

    そして少なからずあの土地に関わったことがある身としては、彼らのそうした行為があったからこそ、ボランティアとしてあの地で活動できたんだと思うと、感謝の念に堪えません。

    一国民としては、当たり前のように使用している数々のインフラを失ったときの苦しさと状況を本書で初めて気づかされ、またそのありがたみを改めて思い知らされました。そして、周囲の情報に踊らされず、正しく正否判断できるようにありたいとも思いました。

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著者プロフィール

稲泉 連(いないずみ・れん):1979年、東京生まれ。早稲田大学第二文学部卒。2005年に『ぼくもいくさに征くのだけれど 竹内浩三の詩と死』(中公文庫)で大宅賞を受賞。主な著書に『「本をつくる」という仕事』(ちくま文庫)、『アナザー1964――パラリンピック序章』(小学館)、『復興の書店』(小学館文庫)、『サーカスの子』(講談社)などがある。

「2023年 『日本人宇宙飛行士』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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