さいごの色街 飛田 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 355
レビュー : 48
  • Amazon.co.jp ・本 (493ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101263915

作品紹介・あらすじ

「おにいちゃん、遊んでいってや」客引きのおばちゃんの手招きで、男が一人、また一人と店に上がる。大阪に今なお存在する「色街」飛田。経営者、働く女たち、客、警察、ヤクザらの生の声に耳を傾け、「中」へと入り込んだ著者が見たものは、人間の性むき出しの街で懸命に生きる人々の姿だった。十二年にわたる取材により、一筋縄ではいかないこの街を活写したルポルタージュの傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 12年にもわたり、飛田を取材した著者に拍手。
    同じ女性として、ときに嫌悪を、ときに情けをにじませて語る文章から飛田の現実が炙り出されてくる。

    自由恋愛が発生する、それは見事な屁理屈。法律も警察も、利害のもとでいたちごっこをしていて、遊廓は完全につぶされはしない。

    なぜそうまでして、存在する必要があるのか。
    納得はできないが、簡単に性商売を断罪できないワケを見た。



  • 御堂筋線「動物園前」駅のごく近くに存在する飛田新地について著者がその関係者からの聞き取りをメインに綴ったノンフィクション。
    ネットの書評ではかなり酷評されているケースが目につきますが、私はそれほど嫌な印象は受けませんでした。そもそも正式な広報窓口があるわけでもなく、そこで営まれている活動が法律に抵触するかどうか際どいたぐいである事を考えれば、一人のフリーのライターさんがここまで情報を聞き出して一冊の本に仕上げたというだけでも称賛ものではないかと思います。
    読む前は本書が扱う題材が題材だけに暗く、重い雰囲気の本かと思いました。しかし、著者の突撃ルポ的な部分も多く、次々とアイデアを出して取材を進める様子には「そこまでするか」と感心させられますし、そこに登場する関係者の方が話す言葉が当然のことながらコテコテの大阪弁であることがちょっと明るい目のバイアスになって、読むのが辛くならない一面もあったように感じます。
    決して「風俗店の裏側の暴露本」といったような薄っぺらい内容ではなくて、真面目にそこで生きている人達の人間模様を描いている本だと感じます。

  • 2000年から2011年にわたる取材によるルポルタージュ。
    飛田の経営者、働く女たち、お客、警察などに取材したきわめて真面目な記録。
    女性であるが故、大変な取材だったと思う。
    ただ出版までが長すぎた。
    飛田の様子は動画、写真がネットで見られるようになり、体験談も多数。元経営者の本も出版され (杉坂圭介「飛田で生きる」「飛田の子」)、しかもこれが面白い。
    新鮮味がなくなってしまった。

  • この本に出会って初めて飛田のことを知った。最初手に取ったときは 昔の話なんだと思ったのに 実は現在もあるってわかってほんとにびっくり。表紙の写真も いつの時代?って感じで まるで時代劇の遊郭だし。
    お部屋は昭和初期って様相だし。
    長い時間をかけて丁寧に取材しているので 読みごたえあり。内容も驚くことばかり。
    1番衝撃受けたのは やっぱりトイレの描写。
    いつの時代だよー。シャワーつけようよ。
    場所がないなら せめてビデつけようよ。
    あり得ない。そこで働いてる若い子たちが それを受け入れてるって信じられないんですけど…。

  • 最初はらちが明かないルポという感じだったけど、少しづつ面白い話が出てくる。
    ある程度こういう世界の裏側のことがわかったけど、まだ表面的な感じもする。
    いろんな世界。こういう街。

  • 渾身のルポ。といっていいと思う。
    エロ系ドキュメンタリーかと思って読んだら違った。
    いわゆる底辺の色街の話。流れ着いた女の子たち、経営者、組合員たちの街への愛憎が切ない。
    それにしても体当たりの取材がすごい。400枚の手製のビラまきだの、ヤクザに一人で乗り込んでいくだの、「もしやられそうになったら私がやるから」っていって友人に協力してもらうだの。何もないところから、海千山千の組合員の信頼をよく勝ち取っていったなあと思う。

    関係ないが、「売る女」「仲介人」の気持ちは、いわゆる従軍慰安婦の気持ちを理解する手がかりにもなると思った。明治期以降、東北などの田舎から売られてくる女の子たちの話は哀しい。
    進歩的な女性が売春防止法を成立させようとするが、なくなって一番困るのは女性、という図式とかね。
    ソープランドやヘルスより、このほうが男女とも手間いらずでいいんじゃないの?って思ったり。

    街の歴史とともに、女性の意識変化、貧困の連鎖など社会的なことも考えさせられる作品だった。


    そして、解説桜木紫乃か!で笑う。すごく好きそうだもんなあ。井上さんと感性が似ている気もする。ふたりの会話を、ファミレスの後ろの席で聞いていたい。
    桜木さん、いつか、ここを舞台にした、したたかな女の小説書いてください。

  • 非合法地帯をテーマにしているにも関わらず、そこに暮らす人々の息遣いが聞こえ、人生の深淵を覗くようなルポルタージュだった。女性ルポライターが飛び込み取材を行うのは厳しいテーマであり、様々な抵抗があった事が読み取れる。

    タイトルに『さいごの色街…』とあるように古き日本を知る事の出来る色街は次第に喪われつつあるのだろう。明らかに非合法であるのだが、何故か消えて欲しくないように思えたのは、著者の真摯な姿勢のためだろうか。

    文庫化に当たり、ボリュームのある文庫版あとがきを収録。解説は、作家の桜木紫乃。鋭い視点で、果敢に斬り込んだ桜木紫乃の解説も秀逸。

  • 何だか想像していたのと違う感じのルポだった。飛田だけを追っていたわけじゃないだろうけど、足かけ10年以上の取材で関係をつくり果敢に飛び込んで色街だけじゃない飛田の姿が記されている。
    色街でない飛田とは、いろんな意味での貧困や障害を抱えた人たちが生きている街だという一面。女の子からおばちゃんになった人が「満足度0%」と話したり、店をもつママさんが「楽しかったことなんてない」と言ったり、そんな人たちがいることをどこかでわかっていながら、ここで満足しながら働いている人も、割り切って働いている人もいると思いたい、そういう文章を読みたいと思いながら、結局そんな話はまったくなかった。飛田のみんなで底なしの井の中の蛙のように生きているイメージ。そこがやっぱり10年通ったからこそだろう。考えずに、あるいは考えながら飛び込んでいって、後で何となくわかってきたといった感じの書きぶりで、著者が飛田を知る過程につき合いながら素人目線で飛田のいろんな面を見ていける。お上手にまとまったルポより正直で素直……っぽい感じがする。
    とはいえ、文庫版あとがきでは取材時、執筆時とはだいぶ変わった飛田の姿が少しだけ紹介されている。少しだけなのにだいぶ変わっている様子。飛田も変わっていないようで変わっているのだなと思った。著者が通ってた10年より、上梓前後から文庫化までの数年のほうがドラスチックに変わった感じ。いろんな意味で飛田って予想や想像が追っつかない街に思える。

  • 自分で調べればうんざりする情報を量で固めて記述してあるので「こういう歴史があったのか」と感じることが出来る本と言うよりもブログを読んでる気分でした。
    現地で生きた証言を取れる著者のねばりは正直とても凄い。しかしながらインタビューする相手に敬意があまり感じられなかった。
    馬鹿になって相手に合わせましたとも取れる記述の度に、著者こそ相手から見定められてそれなりの対応をされてたんじゃないかなと感じた。 あとがきと文庫版あとがきは出版後の自署への自慢に見えてしんどく感じた。
    桜木さんの解説が逸材でした。 つかれた……

  • 社員旅行で大阪に行ったとき、専務が「大人の社会見学だ」とか言って、タクシーで流してもらったことがある。4年前くらいかな。
    もともと吉原とかに興味のあった私は、映画さながらの風景にそれはもう大興奮で、窓から身を乗り出す勢い。そうしたら「見んなや!」と、遣り手ばばぁに一喝された。

    女である以上、客として店に行くことはできないし、どうしても中を覗きたければ店に立つしかない。
    とはいえ、さすがに働く勇気もなく、それでもあの風景は頭の中に焼き付いて離れなかった。

    そんな私にはうってつけの本。
    私にとって飛田は、そこにあるものすべてが非日常で、だからこそ、その内情が知りたくなる。

    賛否両論あるのでしょうが。

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著者プロフィール

1955年奈良市生まれ。タウン誌記者を経て、フリーに。長く暮らした大阪から2010年に東京に引っ越すも、たびたび帰阪している。
著書に『大阪 下町酒場列伝』『旅情酒場をゆく』(以上、ちくま文庫)、『新版 大阪名物』『関西名物』(ともに共著、創元社)、『遊廓の産院から』(河出文庫)、『さいごの色街 飛田』(筑摩書房/新潮文庫)、『葬送の仕事師たち』(新潮社)、『親を送る』(集英社インターナショナル)などがある。

「2016年 『関西かくし味』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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