さいごの色街 飛田 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (493ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101263915

感想・レビュー・書評

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  • 2000年から2011年にわたる取材によるルポルタージュ。
    飛田の経営者、働く女たち、お客、警察などに取材したきわめて真面目な記録。
    女性であるが故、大変な取材だったと思う。
    ただ出版までが長すぎた。
    飛田の様子は動画、写真がネットで見られるようになり、体験談も多数。元経営者の本も出版され (杉坂圭介「飛田で生きる」「飛田の子」)、しかもこれが面白い。
    新鮮味がなくなってしまった。

  • 後半の女の子や店主へのインタビューが面白い。
    過去は家の借金のかたになった女の子が、今は男かギャンブルで失敗した女の子が借金におわれて、飛田に入ってくる。それを店主、闇金、男客が搾取するという構造だということだ。
    みんな自分を飾りたがる。女の子は嘘の過去を話をして、店主は自分は女の子を育てる仏だといい、男客は粋に情緒を楽しんでいるのだという。
    陰鬱な気持ちになる。

    しかし一方で、本当にそんなに暗い話ばかりなんだろうかとも思う。実態にはさまざまな事情があるのじゃないかと思う。著者に飛田は裏社会で闇であってほしいという願望が透けて見える。そしてそこから美談的なものを抽出したがっているように見える。ステレオタイプな視点は終始鼻についた。

  • どのような形態で成り立っているのかが少しわかった。中にいる人達の声が記載されており非常に貴重な文献だと思った。

  • 意外とマジメ。

  • アマゾンレビューで結構、酷評されているが、それも分かる気がする。一番疑問なのが、この本を書くに当たっての著書の動機がなんなのか、だろう。足かけ10年もの月日をかけて、しぶとく取材し続けたことを考えると確固たる動機があったと思うんだが、それは意図的なのか書かれていない。そこも含めてノンフィクション好きは、ふざけんなって思いたくなる部分が多々あるんだろう。ただ、ノンフィクションライターではなく、1人の中年女性が等身大の目線で描いたと考えると、それは他のノンフィクションにない魅力なのかもしれない。そして、等身大の記述でありながらこの本をこの本たらしめているのは、10年間と足で稼いだ経験の数々だろう。面白く読めるが、憤りも感じる不思議なノンフィクション。

  • 昔ネットで飛田の動画を見たことがあるような。
    異様な雰囲気で、おばちゃんとおねえさんがいる店先を眺めた記憶がある。

    読んでみると、なんだか事件のルポタージュを読んでいるような、若干くらーい気持ちになった。そりゃこんな所だもの。住んでいる人も働いている人もそれなりの事情があるよね。

    言い方は悪いけれど「日本の最下層の人々」という気がする。なんとなく、今時満足に教育も受けていないところとか。

    私が男だったら、一度は行ってみたいと思うんだろうか。でも本書のあとがきに書かれているとおり、やめておいたほうがいいんだろうな。

    というか、こういうの書く人って大変ですね。
    女性なのに危険な目にも合って。私には無理だぁ。

  • 大阪にいた頃から聞いたことのあった飛田。独特の雰囲気で、怪しげで、見てはいけないものを見るような、そんな雰囲気。飛田の深い闇を、まのあたりにするような感覚。闇金ウシジマくんの世界のような。読み終わった後、自分の中でなんの答えも出ないけど、日本人として、知っておかなければならない事実だと思った。

  • 学生時代に名古屋市内を偶然散歩して目にした独特な木造建築たちに、これは遊郭の跡だなと直感した。あれから20年以上過ぎて残っている建物はほとんどなくなったそうである。大阪・飛田も売り手市場から買い手市場へと時代移ったそうである。店は最近3年間で10軒増えたとは驚きである。遊郭の跡が「料亭」になって残った。丁寧な取材だが、なんとなくすっきりとしない読後感であった。

  • 他にこういう風俗系のノンフィクションって読んだこと無いので飛田以外の風俗街の人々についてはよく判らないのだが、元の認可地。赤線地帯で、往時の気配を濃厚に残す「アンタッチャブルの街」飛田を10年に渡って取材して著した労作。
    エピローグ間近のエピソードと、単行本発行後を記した文庫版あとがきにある加速度的な街の変わり様がすごい。

著者プロフィール

井上 理津子(いのうえ・りつこ):ノンフィクションライター。1955年奈良県生まれ。タウン誌記者を経てフリーに。主な著書に『さいごの色街 飛田』『葬送の仕事師たち』『親を送る』『葬送のお仕事』『医療現場は地獄の戦場だった!』『師弟百景』など多数。人物ルポや食、性、死など人々の生活に密着したことをテーマにした作品が多い。

「2024年 『絶滅危惧個人商店』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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