葬送の仕事師たち (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.75
  • (17)
  • (44)
  • (19)
  • (7)
  • (2)
本棚登録 : 524
感想 : 37
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (321ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101263939

作品紹介・あらすじ

誰にでも、いつかは必ずやってくる人生の終わり。旅立ちの手助けを生業とする人たちがいる。葬儀社社員、湯灌師、納棺師、復元師、エンバーマー、火葬場職員……。なぜこの職業を選んだのか。どんな思いを抱いて働いているのか。忘れられない経験とは。著者は、「死」と向き合うプロたちの言葉に耳を傾け、葬送の現場を見て歩く。光があたることのなかった仕事を描破した感動のルポルタージュ。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • おくりびとを読み終えてからその仕事に興味をもちこちらも。
    旅立ちの仕事、初めて知る事ばかりでした。
    そしてこの仕事の世間からの目も。
    私自身は自分の葬式は望んでいませんが、この本を読むと人生の最後にお世話になりたいと思いました。
    もしかしたら自分以上に自分の死と向き合ってくれるのではないかと。
    自分ではなくとも自分が大切に思う人をこの本に出てくる人達に送ってもらえたら納得して旅立ちを見送れるようなそんな死と向き合うプロの人達のお話です。

  • 葬儀社・火葬師・復元師・エンバーバーなど、亡くなった人の弔いをしてくれる方々に取材したルポタージュです。

    ブログにて詳しいレビューしています*
    https://happybooks.fun/entry/2021/03/06/170000

  • 普段、全く意識していなかった葬送の仕事。葬儀社、エンバーマー、火葬炉で働く人々など、壮絶な仕事の姿が書かれていた。
    うつ病で何度も死にたいと思う経験をしたが、死んだ後自分がどう送られるのかを考えたことがなかった。本著で書かれた葬送の仕事師たちの思いの中で送られるのなら、死ぬこともそう悪くないなと思った。一方で遺族のことを考えると、死ぬときはできるだけきれいに死にたいもんだと思うようになった。
    死を身近に感じることができる一冊。
    いかに自分が死んだ後のことに無知だったかを思いしらされた。身近なひとたちの死は避けられない。だからこそ生きている今を大切にすることと、死んだ後にどのような思いで弔うかにも想いを馳せることは大切なように思える。
    葬送の仕事師たちの言葉から、生きることと死ぬことは続いているのだということをつくづく思い知らされて、生きていることに清々しさを感じることができたように思う。

  • 死にまつわる仕事をしている人たちに密着したルポルタージュ。なんとなく遠ざけ、なんとなく無関心できた裏方の(まさしく)仕事師の方たちが、その仕事ぶりを通じて身近に感じられてくる良書。
    映画「おくりびと」は、本木が美しすぎた分、逆にテーマ性が半減していたと感じるが、この本はもっと網羅的で、ありのままでありながら、ライターが取材を重ねるうちに芽生えてくる仕事師たちへの敬意や、故人の尊厳を守ろうとする人たちの想いなどが感じられ、より深く送り人への理解と共感が進んだと思う。

  • 葬儀に係わる人たちについて書かれた本。
    例えば、病院で亡くなった場合家まで業者が連れ帰ってくれるのだが、そのまま葬儀の話になったりする。
    身近な人が亡くなると心がいっぱいでよく考えられなくなるし、言われるままに葬儀を執り行ったりする場合もある。
    しかし必ずしもその葬儀社で頼む必要はないのだ。
    葬儀の形やサービスなど、業界の仕組みをこの本で少し知ることにより、家族や自分の葬儀をどうしたいか話すのも必要なのではないかと思う。

    まずは葬儀に関する専門学校の学生インタビューから始まる。
    人が亡くなるとどういったことが行われるのか、どういった人々がかかわるのかがわかりやすい。
    今と昔の葬儀社の違いや、東と西の風習の違いなども面白い。
    感染症のことなども知らなかったので参考になった。

    湯灌・納棺・復元師。
    亡くなった人を綺麗にして棺に納める。この復元師というのがまたすごかった。
    状態が悪い人を見られるように、その人らしく整えていく。

    復元とはまた違ったエンバーマーという職業も初めて知った。
    エンバーミングとはアメリカの南北戦争で遺体を長距離輸送するために開発された技術だそうだ。
    特殊な薬液などを使い防腐処理を施すらしい。
    日本では死亡してから50日以内に火葬しなければならないとのことだが、その期限いっぱいまでまるで眠っているかのように保存しておくことが可能らしい。

    火葬場についての記述もあった。
    特に裏側は知ることはないので、興味深く思った。
    火葬方式に違いがあること、東と西では拾うお骨に差があること、従事する人に対する世間からの目や遺族からかけられた言葉などがあった。

    どの職種の人も、この本に出てくる人は皆亡くなった人に寄り添い遺族に寄り添う。
    東日本大震災にかかわった人の尽力なども描写されている。
    本編にはなくあとがきに霊柩車の運転手の方の話しもあった。
    文庫版のあとがきには、最初の単行本から3年たったこともあり、現在のことが補足されていた。

    改めて自分がどういう葬儀をのぞむのか、家族をどうやって送りだしたいのか考えるきっかけになった。

  • 病院で看取り お見送りをするまでの過程しか経験がなく 身近な人が亡くなっても「遺体」という感覚が自分にはない

    葬儀社社員 納棺師 復元師 エンバーマー 火葬場職員など 他職種で働いている人達はどう受けとめ遺族と関わっているのか とても興味があった

    東日本大震災で復元納棺師という職種があることを知ったが エンバーマーはより技術的な行為であり どの職種も改めて深く知ると まさにプロフェッショナルだと思わざるを得ない

    ─「お葬式で一番大切なことは、遺族が大切な人と過ごす最期の時間だということ。」─


    ※追記 11/8母死去
    対応してくださった納棺師さんがとても丁寧で 綺麗に整えられた母の顔を見て泣けた
    コロナ禍で面会も制限され さらに突然の死で看取りもできなかったが 穏やかな母の顔を見たら救われた気持ちになりました 

  • 抜群に美味しいコシヒカリみたいな一冊。日本人全員に欠かせないことなのに、こんなに知らなかったことが多いなんて…すごく良かった。知らなかったことを知れた。人々のリアルをあぶり出す、ルポルタージュが果たすべき役割の極致。

    まずもって葬儀ってのは誰の為の物なんだろうか。故人のためにするもの?残された人のためにするもの?エンバーミングを例に取れば、残された人を救う技術ではあるけど、あれだけ苦しみ抜いてメスを入れて頑張った遺体をさらに傷つけてまですることなのか?

    だからこそ最終章みたいに自分の最期をしっかり話し合っておくことこそ肝要だなと感じた。死に際はどう生きたかを表すってのは割とその通りだと思っていて、世の中に何がしか貢献してきた自負があるなら、自分の最期ぐらいきっちり自分で締めてやるわっていざとなったらなるのが自然ではないか

    「葬儀屋は傘。深い悲しみに陥った家族がやがて一区切りついて日常に戻れば、傘なんかいらなくなる」

    「死にたいという人にいつも僕は、その前にちょっと横を見てくださいと言いたいんです。あなたがこんなになっても、お顔を見たいというご家族がいる。あなたをなんとかしてさしあげたいと必死になる僕みたいなのもいる」

    「生きている間、自分は存在しない。死んで、生きている人の心に入ってから、生きていたと世に証明される」

    葬送に関わる人たちの言葉の重さったらない。本当に重たい。日頃関わりもないのに死ぬ時だけしゃしゃり出てくる仏様よりこちらに手を合わせたい気分になる。

    人の死の数だけ葬送がある。家の繋がりが薄れている今だからこそ、多死社会への移行と合わせて劇的に変わっていくジャンルなのだろう。自分が死ぬ時はどんな葬儀にしてもらおうか…子供に伝えるときまでにたくさんの選択肢からあれこれ迷う羽目になることを願う。

  • 昨年9月に母の弟が亡くなった。入院してくださいと言われたときにはすでに癌が全身に転移していて医者から手の施しようがない、と言われたらしい。私は転職の合間だったこともあって、娘を連れて平日何度か病院にお見舞いに行くことができた。

    お通夜、お葬式、火葬場でお骨を焼いてもらい、49日の納骨。
    亡くなった人に対してたくさんの人が動くし、それぞれ働いている。そんなことに気付いてこの本を手に取った。

    遺体に化粧を施したり、生きているかのように保存をきかせるエンバーミング。そんな職種があることを初めて知った。
    火葬場は公営民営がある。遺体を焼くときの温度。火の入り方はオートではなく人間が目視して調整する。これを日々の生業にされている方には頭が下がる。

  • 誰もができる仕事ではない
    でも真心をもって勤める様子に涙が出た
    自分がいつか死ぬときは、どんな風に送られるんだろう

  • ある日ふと目に留まり、
    気になっていたものの手に取るまでに
    ある程度の月日を要する。
    購入したのは父が亡くなり10年目の年。
    読み始めるまでに時間がかかる。

    大事な大事な友人が亡くなり、
    この本からまた遠ざかりたくなったが
    「読まなければならない」ある日ふとそう思った。

    葬儀社社員、湯灌師、納棺師、復元師、
    エンバーマー、火葬場職員…
    旅立ちを支える人たち。

    彼らは日々「死」と真正面から向き合い、
    悲しみに打ちひしがれる遺族だけではなく
    亡くなった人にも寄り添う。

    きれいな遺体ばかりではない。
    家族や友人に囲まれて旅立つ人ばかりではない。

    どんな場合であろうと、真摯な姿勢は変わらない。
    そこに仕事と割り切っている人はいないのだ。

    「辛くて読めないかもしれない」
    そう思っていたわりに比較的冷静に読み進められたけど、
    火葬場職員の話のところは相当苦しかった。

    火葬場のひんやりとした空気、
    さらに冷たい炉前に並ぶ無機質な火葬炉。
    全て鮮明に残っていて、
    何度か本を閉じては開くの繰り返し。

    「きれいに焼く」
    言葉だけ聞けば過激でもあり誤解され、
    不愉快に思う遺族もいるだろう。
    でもそうじゃない、わたしも今だからこそ、
    その言葉の本当の意味と重みがよくわかる。


    火葬場職員の方々を考えてみたことがあっても
    わたしは浅いところしか考えてなかった。
    こんなにも沢山の「作業と苦労」があったなんて。
    そして職員たちの思いの強さも
    わたしの想像をはるかに超えていた。


    火葬場職員だけじゃない。
    葬送を生業としている人たち。
    彼らがこれほどの想いだったなんて。
    この本を読まなければわたしはずっと
    気づけないまま、知らないままだった。


    「死」を語ることはタブーとされている風潮は
    今だに根強いと感じる場面も少なくない。
    でも「生」と「死」は切り離すことはできない。

    この本を「読んでみて」など決して言えないし、
    言う意味もないと思う。
    必要な人には自然と手に取る時がくるかもしれないから。



    父が亡くなった頃、映画『おくりびと』が大ヒットした。
    どんなに好きな俳優が出ていても
    「絶対観られない、観たくない」と拒絶したし
    この先も観ることはない。


    だからこそ、この本を読むことができて本当に良かった。


    父を大事に送ってくれた
    葬送の仕事師たちに感謝しながら。

    父、祖母、叔母、そして友人を想いながら。


    追記。

    大人の事情、取材相手に対する誠実さなのだろう、
    取材先の歴史なども詳しく書かれている。
    それがやや過剰な印象。
    同じ書くにしてももう少しシンプルな書き方だと
    気持ちがぶつ切りにならず、
    入ったまま読み終えることが出来たように思う。

全37件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

井上 理津子(いのうえ・りつこ):ノンフィクションライター。1955年奈良県生まれ。タウン誌記者を経てフリーに。主な著書に『さいごの色街 飛田』『葬送の仕事師たち』『親を送る』『葬送のお仕事』『医療現場は地獄の戦場だった!』『師弟百景』など多数。人物ルポや食、性、死など人々の生活に密着したことをテーマにした作品が多い。

「2024年 『絶滅危惧個人商店』 で使われていた紹介文から引用しています。」

井上理津子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×