奇貨 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101266718

作品紹介・あらすじ

男友達もなく女との恋も知らない変わり者の中年男・本田をとらえたのは、レズビアンの親友・七島の女同士の恋と友情だった。女たちの世界を観察することに無上の喜びを見出す本田だが、やがて欲望は奇怪にねじれる。熱い魂の脈動を求めてやまない者たちの呻吟を全編に響かせつつ、男と女、女と女の交歓を繊細に描いた友愛小説。著者26歳の時に書かれた単行本未収録作品も併録。

感想・レビュー・書評

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  • タイトルの意味は作品内で明かされる。何もしなければそのままでいられたのに。もったいない。

  • 表題作は同性との友情に蟠りの有る男と厄介な女性に恋している女の同棲の話。奇貨に喩えるほどの人間関係は寧ろ喪失してから価値が上がるのではなどと思ったりした。私も友人をなかなか作れない上に恋愛が分からないので本田を可愛く思ったり憎らしく感じたりした。「変態月」は『僕はかぐや姫/至高聖所』をどうしてか思い出した。吐息の打つかるような親密さを私は少女より潔癖に忌避し続けている。

  • 変態月、読み終わってからめちゃ昔の作品てことを知ってびっくりした。
    令和でも昭和でもおんなのこはそんな変わんない。

  • 29.7.4読了。
    2話を収録。1話目が45歳のおじさんと35歳の女性とのルームシェアの話。かいつまむと男女の友情は成り立つのか…!?みたいなテーマか。おじさんの嫉妬はちょっと気持ち悪かったけど、お互いを分かり合える(おじさんにとっては『自分をわかってくれる』っていう一方的なものだったような気がするけど。)存在の貴重さったらないですよね。
    2話目の方が面白かった。登場する事件は狂気的だったけど、主要登場人物4人はとてもピュアでムズムズしたー。ラストがちょっと暗雲。

  • 久々に松浦理英子を読んだけども、めっちゃ面白かったぞ。このおっさんはひどいへんたいだと思ったけども(←)こういう人間関係も純文学でないとなかなか味わえない。あと思ったんやけど、松浦理英子は男性の一人称も描くのね。
    後半の「変態月」も面白かったです。思春期だなあ。地元が近いからか方言に親近感。

  • 人との関係性は自分でも認識しにくい。けれど、認識しにくいことは豊穣さを示してもいて、キャッチコピーがその短さゆえに情報量を削るかわりに伝わりやすくしているのと、ちょうど反対側にある。

  • 160315

  • ワクワクしたりドキドキしたり共感したり、忙しかったけれど一気読みしてしまう内容。レズビアン小説としては、もしかしたら他の作家さんのものよりも好みかもしれない。

  • 45歳の私小説作家・本田(独身・男)と、以前勤めていた会社の後輩女性・七島35歳レズビアンの奇妙な同居生活。本田はノンケだし女性が大好きだけれど、ざっくりくくるなら草食系、最近風にいうなら「乙女男子」的な、ゲイでもオネエでもないのに女子への共感力がべらぼうに高く、女性に警戒心を抱かせないかわりにフェロモンも感じてもらえない男。対する七島は、いたって普通の常識的な女性で、人間的にもまとも、ただ、同性愛者。なぜかパートナーに恵まれない。

    非常にベタに定義するなら「男女間に友情は成立するか」という古来から(?)議論され絶対の普遍的な結論は永遠に出ないだろうなとういう問題が主題だとは思う。そして本田と七島の関係性でいえばこれは成立している。でもそれってきっと「奇貨」なんですよね。

    個人と個人の関係性は、「友人」「恋人」「家族」といった大雑把なカテゴリーだけでは括れない多様性があり、彼らの関係もその稀有な1例。最終的に二人は別居することになるのだけれど、後味は意外なくらいポジティブ。登場人物たちが個性的ながらも基本的には「大人」なせいでしょうね。

    同時収録の中編「変態月」は1985年の作品。タイトルのインパクトが強烈ですが、中身は女子中高生の百合風味のいたって繊細な物語。中学生女子を高校生女子が殺した事件に動揺するバレー部女子たちの思春期の心理がみずみずしい。同性愛者ならずとも、男女とも同性に特別な愛着を感じたりスキンシップが嬉しかったりする特定の相手、時期というのはあると思う。その不安定な時期に歪んだ方向へ踏み外してしまうか、一過性と乗り切るか、やがて確信に変わるのかはそれぞれなだけで。

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著者プロフィール

1958年生まれ。78年「葬儀の日」で文學界新人賞を受賞しデビュー。著書に『親指Pの修業時代』(女流文学賞)、『犬身』(読売文学賞)、『奇貨』『最愛の子ども』(泉鏡花文学賞)など。

「2022年 『たけくらべ 現代語訳・樋口一葉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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