母性 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (359ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101267715

感想・レビュー・書評

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  • 「自分が求めたものを我が子に捧げたいと思う気持ちが、母性なのではないだろうか。」

    作者も愛されない子だったのかな。

    私も自分は愛されていない子だと思っていた。
    だからといって、親に愛を求めようともしていなかったけれど。

    小学校の修学旅行の帰り、同級生みんなが車で迎えにきてもらっている中、私だけが迎えに来てもらえず重い荷物を抱えて夜道を一人歩いて帰ったというエピソードを思い出して、私は愛されてない子だと思っていたという話を最近、母親に言った時には、笑いながらも涙が出た。

    また小学校の頃の話だけど、
    友達の母は専業主婦で、学校から帰ると手作りケーキで出迎えてくれる家庭とか羨ましかったし、
    3年生くらいになっても、母が一緒に寝てくれる時は嬉しかった。

    いまではイライラばかりする母だけれど、やっぱり子どもの頃は、母が好きだったし、愛されたいと思っていたんだなぁ。

  • 母親と娘と幸せな家庭の物語を想像していたが、蓋を開けてみると愛憎入り混じる壮絶な半生が語られていた。

    幸せだったのはおばあちゃんがいたから。柔らかい微笑みをいつも浮かべて、おばあちゃんの言葉は愛に溢れ、みんなを優しく包み込んでくれる。
    みんなおばあちゃんが大好きだった。

    しかし、災害に巻き込まれた一家は大好きなおばあちゃんを失ってしまう。
    そこからこの一家の不幸が始まった。


    母親、娘、父親はみなこの事件で、それぞれの後悔、
    過ちと秘密を持ってしまう。

    みな心の奥底で濁った思いを持ちながら、生活を共にするうちに育まれたのは歪んだ愛憎だった。

    母親に愛されたい娘を、母親は大好きだった自分の母親(おばあちゃん)を奪ったとして心の奥で憎んでいる。
    父親は、家族をすぐに助け出さなかったことに後悔し、その光景から目をそらし続けている。

    交わることのない家族の思いは、歪んだ愛憎に支配され、誰も幸せにならない結末が予想された。

    しかし、物語の最後でそれぞれの思いを打ち明けるシーンがあり、そこから家族の再起が見えることから、この家族の再出発があるのかもしれない。

    時間はかかったが、再びみなが集い、家族が前に進み出そうとしてきる。
    ある意味ハッピーエンドになるのだろうが、ここまで来るのに谷が深すぎてビターな後味が残るばかりだ。

  • 流石、湊先生。

    全然自分と似たところの無い母娘の手記であるが、気持ちは本の中に乗り移ってしまう。

    読み始めると止まらなくなる。

    湊先生はこんな風に、何人かに語らせる描写が得意なのだろうなぁと思う。

    語り手が代わり、あらゆる視点から書かれることで、物語の本質が次第に明らかにされてくる。

    シルバーウィークはサクサク読める本で、しっかり楽しむことができた。最近読んだ本はどれもこれも読書の時間をしっかり楽しませてくれている。当たりの作品ばかりだ♪♪

  • 久しぶりに湊かなえ作品を読んで…やっぱり
    母と娘の愛をめぐる話しなんだなぁと思った。
    10年前に湊かなえ作品を見た時は自分の気持ちと重ね合わせて重い気持ちになったりしたけど。
    10年たって母と娘の話しを読んで、主人公の気持ちにのめりすぎることなく、淡々と読めたことに自分の成長を感じて嬉しく思った。
    逆に10年前の自分ならしんどくて読めなかったと思う。内容が辛くて。

  • 母と娘の視点で語られるすれ違ったストーリー。母性ってタイトルは、果たして合ってるのかな?ずっと重くて読んでいて辛くなった。もう少し共感できる部分があればよかったな。。

  • 子供を産んだ女が全員母親になれるわけではありません。母性なんて女なら誰にでも備わっているものじゃないし、備わってなくても、子供は産める。子供が、産まれてからしばらくして、母性が、芽生える人もいるはずです。逆に、母性をもちあわせているにもかかわらず、誰かの娘でいたい、庇護される立場でありたい、と強く願うことにより、無意識のうちに内なる母性を排除してしまう女性もいるんです。              

    普通に、子供を、愛せる人ばかりではなく、
    色んな思いがあるんだな。と、思いました。
    私は、子供に対しては、「無償の愛」だなあ。と、思ってます。亡き母に対しては、今でも逢いたい!と、思うし、涙する事も、あります。母性って、母から、自分へ、子供へ、孫へ、と、引き継がれていけたら、それが、自分が生きて来た証のような気がします。
    母親に感謝していく事を、この本によって、改めて考えさせられました。

  • 読んでいて苦しかった。どうして母は自分は愛されて育ったのに、娘を傷つけるのか。この母親の状況にも同情できるが、母親には娘の気持ちに応えてあげてほしい。母と娘っていつの時代も難しい。

  • 母性という言葉だけでは、拾いきれない想いがある。すれ違う気持ちの中でも、尚求める母への想いを持ち続けられるのは幸せなのだろうかと思う。私は、求めない。

  • 正直私はあまり好きな話ではありませんでした。
    湊かなえさんの本未だハマっておらず、他も読んでみます!!難しいのかなぁ私には、、、、

    母と娘(子供)のそれぞれの気持ちがずっとすれ違い。交わらないし、理解し合えない。
    子は親を選べない。逆に親も子を選べないのだと思う。

    自分の家庭環境とも重なる部分があって、分かるからこそ、私はスッキリしない終わりでした。
    他の解釈もあるかもしれないからまた読んでみようと思います!

    ※本の概要※
    累計100万部突破!
    湊かなえの大ベストセラー、待望の映画化
    戸田恵梨香 × 永野芽郁
    監督:廣木隆一
    2022年11月23日(水・祝)公開

    事故か、自殺か、殺人か――。
    母の手記と娘の回想が交錯し、
    浮かび上がる事件の真相とは。
    圧倒的に新しい、母娘ミステリー!
    女子高生が自宅の中庭で倒れているのが発見された。
    母親は言葉を詰まらせる。「愛能う限り、大切に育ててきた娘がこんなことになるなんて」。 世間は騒ぐ。これは事故か、自殺か。
    ……遡ること十一年前の台風の日、彼女たちを包んだ幸福は、突如奪い去られていた。
    母の手記と娘の回想が交錯し、浮かび上がる真相。これは事故か、それとも――。
    圧倒的に新しい、「母と娘」を巡る物語(ミステリー)。

  •  娘が自殺未遂をして意識不明になったことをきっかけに、母と娘のそれぞれの視点で半生が振り返られる話。
     母と娘が両方とも信頼できない語り手で、最後まで何が真実なのかは分からなかった。けれど、それぞれの中ではそれぞれが感じたことが事実であり、お互いを思った行動が別の意味に捉えられ理解されなかったりしたところは、とても興味深かった。それでも、お互いが求めていることが、自分を見てもらうという同じことだったのも面白かった。ただ、母や義母を始め感情移入が全くできない人物が多く、話の続きが気になるが、読んでいて辛くなるということが多かった。
     最初は「母性について」の章で扱われる事件が違うことや登場人物が誰かに気付けなかったが、最後には気付くことができ、何とも言えず嬉しくなった。ただ、娘のその後については描かれるが、母のことは全く描かれないため、母が変わったのかどうかは分からなかった。最後まで、母の母がかけた呪いのような言葉に縛られていたのかどうかは想像の余地があると思う。
     物語の中で下の名前が大事な要素になっており、その人を一個人として見るということに繋がっていると思った。最後まで夫を下の名前ではなく名字で呼び続ける母と彼氏を下の名前で呼ぶ娘がその最たる例で、役割に固執する人と個々に人を見ようとする人の差が出ていた。最終的に娘は母が自分の名前を呼んだ時には、母がどういう人間かに気付き、諦めて上手く付き合う術を見つけられたのだと思う。

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著者プロフィール

1973年広島県生まれ。2007年『聖職者』で「小説推理新人賞」を受賞。翌年、同作を収録した『告白』でデビューする。2012年『望郷、海の星』(『望郷』に収録)で、「日本推理作家協会賞」短編部門を受賞する。主な著書は、『ユートピア』『贖罪』『Nのために』『母性』『落日』『カケラ』等。23年、デビュー15周年書き下ろし作『人間標本』を発表する。

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