絶唱 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.50
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本棚登録 : 967
レビュー : 74
  • Amazon.co.jp ・本 (322ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101267739

作品紹介・あらすじ

五歳のとき双子の妹・毬絵は死んだ。生き残ったのは姉の雪絵──。奪われた人生を取り戻すため、わたしは今、あの場所に向かう(「楽園」)。思い出すのはいつも、最後に見たあの人の顔、取り消せない自分の言葉、守れなかった小さな命。あの日に今も、囚われている(「約束」)。誰にも言えない秘密を抱え、四人が辿り着いた南洋の島。ここからまた、物語は動き始める。喪失と再生を描く号泣ミステリー。

感想・レビュー・書評

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  • これが著者の3作目となる私ですが、この作品は明らかに違うように感じました。4つの話、主要な登場人物すべてに、阪神淡路大震災とトンガ王国が関係してきます。「楽園」「約束」「太陽」の最初の3章を読み終えた時点で、さすがにうまく話しの裏側の視点を交えながら、ストーリー展開しているなと、小説としての巧さをとても感じる作品でした。ところが、最後の「絶唱」の章。これには正直参りました。私なんかが読んでいいのだろうか、果たして読む資格があるのだろうか、そう思いながら、心の中をえぐり取られるような気持ちで読んでいました。はっきり明言されていませんが、どうやら最終章の主人公は湊かなえさんなのではないか。実際にトンガに海外青年協力隊で2年赴任されていますし、年齢・お住まいからしてそのように思っています。

    震災をテーマにする本というのは本当に難しいと思いますが、かなりリアリティのある話でしたし、湊さんの思いが強く込められていたような気がします。少なくとも私には強く強くその思いが届きました。湊かなえさんという作家がいてくださって、ありがたいことだと感謝の思いがしています。

  • 楽園/約束/太陽/絶唱

    いつもの場所では癒しきれない哀しみに出会ったとき、全然違う、知らない場所に行ってみるのも一つの方法なんだ。でも行先はどうやって選ぶのだろう。インスピレーションに頼るしかないか。行った先での他人との出会いにも色々あるんだろうな。良いことばかりではないかもしれないけど、一歩を踏み出すことが気持ちを切り替えるきっかけになれば良いのかもしれない。

  • 夏休みは本を読み漁ろうと意気込んでいたのに、バイト漬けで全く気乗りせず、少しの間読者はお休みしていたのですが、新潮の100冊に入っていたこの話題作は絶対に読みたい!と密かに思っていて数日前にやっと購入しました。

    帯にある作中のセリフを見てイヤミスを覚悟していたのですが、思わず泣きたくなるような人々の暖かさを感じられるお話でした。阪神淡路大震災を背景にした決してハッピーエンドと言えるものではありませんが、様々な境遇の人々の人生を見ることができます。湊さんは学校に1人はいるよねこういう人!と思わせるのが上手いなあと毎度感心してしまいます。

  • 各編の人物が、主役になったり端役になったりする、私小説とミステリーとが混ざり合った連作短編集。
    著者がかつて、青年海外協力隊として訪れたというトンガの光景に、阪神淡路大震災の光景が重なる。
    特に、『絶唱』は、後に作家となる「わたし」が主人公で、私小説の色合いが濃くなる。
    著者の代名詞(イヤミスの女王)とは、一線を画す作品。

  • 美しい異国の島で
    “あの日”を経験した3人が
    それぞれの自分を取り戻す

    そんなお話。

    最後の「絶唱」は
    この小説の作者目線のお手紙。

    どこまでがフィクションなのか、
    実話なのか・・・


    あの日とは、阪神淡路大震災。
    以外と震災で人生が変わったという話ばかりではなく
    ただの共通点にしか過ぎない。
    根本は自分自身の問題。

    自分と本当の意味で向き合う
    ポジティブなストーリー。

    でも正直どの話の主人公も好きになれなかった。
    全部誰かのせい、ナニかのせい。
    震災を結びつける必要はあったのかな?


    震災の被害を語るのは外側にいた人だけ

    という言葉は刺さったけど。


    もしかすると、
    本当に著者の経験で、
    感じたことを文字にしたのかも。
    何を伝えたい、とかではなく
    吐き出したいという思いで。

    経歴もぴったり重なる。

    だとしたら、
    私が理解をする必要もなくて
    なんだか納得。

    自然災害ってそれぐらい
    理解ができなくて
    納得ができなくて
    やり場のない思いを残すものなのかなと。

    震災当時、大阪にいた私は
    人ごとのように思ってしまう。


    「楽園」
    ただただ可哀想な主人公。
    話の内容は、
    最初から伏線が分かりやすくて
    結末の驚きはほぼなし。
    この話はあの日はあまり関係ないかな。
    親の価値観にガチガチにはめられて、
    苦しんできた主人公の自立のお話。

    でも、なにより
    恋人の裕太くんがすばらしすぎる。
    それが一番の感想

    「約束」
    楽園で何度も出てきた松本先生の若かりし頃のお話。
    “あの日”の不条理さがよくわかる。
    こんなこと実際にあったんだろうな。と思う。
    ただ、ちょっと恋人の宗一の言動の変化が違和感。
    松本先生はともかく、
    宗一は島にきて間もないと言うか1日で、
    いろんな考え方が変わるはずもなく、
    うーん、なんだかしっくり来ない感じ。


    「太陽」
    楽天で出てきた杏子の話。
    シングルマザーで
    お金もなく、子育てに悩む杏子。
    最初はただただ嫌な奴だったのに、
    読み終えるとちょっと応援したくなった。
    でもなんか自ら不幸を背負ってる感じが抜けなくて
    やっぱりあんまり好きな主人公ではないかな。

  • トンガ王国の底なしの明るさと陽気さ、そこで生活する登場人物たちの、思い悩んで、暗く沈んだ心情の差がすごい。

    大学時代が、人生の夏休みだと言われる理由は
    バイキング方式のように、好きなものを好きなだけとればいい。
    自分のペースで生きていけるからだ。
    これはまさにその通りだと思った。苦手な人とは距離を置くこともできる。一人でいても誰も気にしてない。好きな授業をとって、好きなことを研究していけばいい。
    いい意味でも悪い意味でも、みんな自分に興味がない。
    とても心地よい距離感だった。
    私の大学時代も、まさに人生の夏休みであった。

  •  短篇集。4篇ともに主人公は異なるが、全て阪神淡路大震災を経験したことが共通点となっており、最後の短篇は著者の経験を多く使った私小説であることを匂わせてくる。ということで、震災により何か心に穴が空き、そこから一歩進む舞台装置として、太平洋の島国トンガが出てくる。

     私は日本の各震災で災害の内側にいたことはなく(関東にいたからガソリンの品薄等で困ったくらいだ)、日々報道される痛ましい事件の一つという認識であり、それ以上でもそれ以下でもない。だからなのかもしれないが、読んでいる途中から判明してくる「震災」という串が一冊の本に刺さっている理由が、いまいち見えてこなかった。
     また、どれもこれも上手くいかない人が登場して、後からその根っこの部分に震災がある!みたいに書かれると、何でそんなに読み辛い見せ方をするのだろうかと思う。今でもNHKの「あの日 わたしは」など、テレビを始めとしたメディアで実際に被災された方やご遺族の声が紹介されることがあるが、そこには過剰な演出があるわけでもないにも関わらず、人の心を恐ろしいまでに強く揺さぶる。この小説であとからネタばらし的なミステリの手法を使うことで著者は何を狙ったのだろうか。

     短篇それぞれの内容は、まぁ面白い。とりわけ、『楽園』『太陽』ではそれぞれの主人公が交差するのだが、互いに「なんだこいつ」的な目を向けていて、主人公の考えが極めて一面的であることをあぶりだす。もちろん、「なんだこいつ」と思われるような行動や視界が限られてしまうことにもそこに至るまでの複雑な事情があるわけで、その事情は外部の者には究極的には分かりようがない。
     子どもの夕食をシュークリームで済ませることには驚いたが、牛乳が消費期限3日過ぎたくらいでわざわざ過熱して飲むことにも驚いた。私の基準は一週間である。みんなどこかおかしい。そんなもんだ。

  • 史上最強の号泣ミステリーと書いていたので、
    読んでみると、自分が期待する方向性とは、少し異なったのかなと。でも相変わらず、
    女性の視点を表現するのが上手だ。

    大学時代が人生の夏休みと呼ばれる所以は、
    バイキング方式の料理のように、好きなものを好きなだけとればいい。自分のペースで生きていけると、表現してみせた。
    確かに。
    小中高校では、自分とソリが合わない人がいるが、どんなに避けようとしても、共同作業などで、排除したがる輩はいたなぁ~

  • トンガと阪神淡路大震災を軸にした短編集。
    いつもの湊かなえの作品とは一味違って、ストレートに良い話だった。
    ただ登場人物の時々見える闇部分はいつもの湊かなえさんだった笑
    鞠絵視点では最低な親にしか見えなかった杏子にも過去があって、杏子視点から描かれる物語があったのも良かった。

  • 「楽園」「約束」「太陽」「絶唱」の4編からなる。
    湊さんはこういう作品も描かれるのかー、と思った。
    トンガ王国、気になります。

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著者プロフィール

湊かなえ(みなと かなえ)
1973年、広島県生まれ。武庫川女子大学家政学部卒。
2005年に第2回BS-i新人脚本賞で佳作入選。2007年には第35回創作ラジオドラマ大賞受賞、「聖職者」で第29回小説推理新人賞を受賞し小説家デビュー。読んだ後に嫌な気分になるミステリー「イヤミス」の優れた書き手として著名。
「聖職者」から続く連作集『告白』は、2008年、「週刊文春ミステリーベスト10」で第1位、「このミステリーがすごい!」では第4位に選ばれ、2009年、第6回本屋大賞を受賞。デビュー作でのノミネート・受賞は、共に史上初。2012年「望郷、海の星」で第65回日本推理作家協会賞(短編部門)、2016年『ユートピア』で第29回山本周五郎賞をそれぞれ受賞。ほか、直木賞で度々候補になっており、2018年『未来』で第159回直木賞に3度目のノミネート。同年『贖罪』でエドガー賞候補となった。
映画化・ドラマ化された作品多数。特に映画では、2010年『告白』、2014年『白ゆき姫殺人事件』、2016年『少女』、2017年『望郷』と話題作が多い。

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