夢の山岳鉄道 (新潮文庫 み 10-12)

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  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101268125

感想・レビュー・書評

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  • ほぼ四半世紀前の著作。本文で計画中とされていた山岳鉄道は一つとして実現されていない。本当の夢の山岳鉄道。

  • どういう話か特に気にせず読み始めたら、こういう山岳鉄道があればいいのに、っていう妄想設定話でした。
    ちゃんと現地調査して時刻表とかもつくってるけど。
    だいたいは道路をつぶして鉄道に、ってのが多いかな。
    道路だと最低2車線分必要だけど電車なら1車線あれば大丈夫だから環境にもいいとかそういう。

  • 全国各地の観光地から溢れかえるクルマを追い出し、代わりに鉄道を敷こうという意欲的な提言書。第1作の「上高地鉄道」は依頼原稿ではなく自らの持ち込み企画だったそうで、宮脇氏の気合の程がうかがわれます。環境保護という錦の御旗を得て、嬉々として新路線の構想を練るさまが目に浮かぶようです。

    しかし回を重ねるにつれ、全くの新線や海外視察記も混じるようになり、1冊の作品として見た場合にはややまとまりに欠けるかなあと、残念な思いもします。

    時を経て環境に対する関心はちょっと異様な程に高まっていますが、景気や日本人の観光嗜好も一変し、実現性が高いと思われた屋久島や菅平でさえ、鉄道敷設の話は完全に止まってしまいました。唯一実を結んだ構想が東武特急の新宿乗り入れ、というのも妙な話ではあります。

  • 上高地に思ひ入れの深い宮脇俊三氏は、同地がクルマに荒らされるのを嫌ひ、観光客の移動手段として新たに山岳鉄道を敷設しませうと提案しました。
    本書によると、必ずしも宮脇氏の夢物語ではなく、地元の自治体でも検討してゐる話だとか。大阪のM組なる建設会社が計画を立てたさうで、結構具体的な案まで作られてゐます。ただ、本書の刊行から20年以上経つ現在でも現実味を帯びてきませんので、この話は立ち消えになつてしまつたのでせうか。鉄道なんぞを作つて、これ以上荒らすなと誤解する人も多いさうです。
    宮脇氏の隣人だつた北杜夫氏も同様で、本書には以下のやり取りが紹介されてゐます。


    その北さんに、先日、
    「上高地への鉄道をつくれという提案をしようと思っているのですよ」
    と言った。
    「鉄道なんぞつくったら、ますます上高地が荒らされてしまうじゃないですか」
    と北さんは答えた。
    「いや、その逆なんです。上高地の自然を守るためにクルマを締め出そうという......」
    しかし北さんは私の説明を聞こうとせず、
    「むかしの上高地はよかったですよ」
    と言ってから私に酒をすすめた。話はおしまいになった。


    現在でもマイカーは規制されて、バスかタクシーぢやないと入れないやうですが、これはまことに消極的な施策であります。バスに乗つてゐる間は、景色は良いでせうが基本的に「移動時間」として認識されます。しかし山岳鉄道ならば、それ自体が観光の目玉と成り得るのであります。

    この「上高地鉄道」の原稿は、実は依頼された仕事ではなく、宮脇氏がJTBに自ら申し出た一文なのださうです。幸ひ反響を呼び、同様の趣旨で全国に架空山岳鉄道を敷設せよ、といふ連載の注文が改めて入り、それを一冊にまとめたのが本書といふ訳です。
    「富士山鉄道・五合目線」「屋久島自然林保存鉄道」「菅平鉄道・根子岳ラック線」「立山砂防工事専用軌道」......いづれも実に興味深く、実現すれば間違ひなく話題になりさうです。番外篇として、イギリス・スイス・イタリアまで足を延ばし、山岳鉄道の先進地を見学してゐます。良いなあ。

    宮脇氏の方針は、「○○スカイライン」などの自動車専用道を廃し、その跡地に鉄道を敷設するといふもの。新たに山を削ることは厳禁であります。単線鉄道ならば道路の約半分の幅で済むので、余つた半分は自然に還し、木を植ゑる。環境に配慮し、電化して「電車」を走らせる。
    そもそも山でも海岸でも、自動車専用道が出来た後といふのは、あからさまに美観を損ねます。宮脇氏は、はつきり「醜悪だ」と酷評します。それが単線鉄道だと、自然と景観に溶け込み、写真を撮つたり、スケッチをしたくなるのであります。

    宮脇氏は「建設予定地」へ趣き、現地を取材した上で、ここに駐車場を作つて乗り換へてもらふとか、狭くて独特の形のトンネルを活かすためにここだけは電車でなく気動車にしませうとか、この勾配はラックレールを使用するとか、トンネル断面が狭く窓から顔を出すと危険だから固定窓の電車にすべきとか、大真面目に考へてゐます。同行の編集者には本気にされず笑はれたさうですが、かかる仕儀を「児戯に類するもの」として嗤ふ人には理解できない世界でせうね。寂しいけれど。

    http://genjigawa.blog.fc2.com/blog-entry-553.html

  • 13/09/24、ブックオフで購入。

  • 富士山の登山鉄道計画が盛り上がっているため、再読してみました。

    読んだ時は菅平の登山鉄道はできそうだったのに、結局実現したのは登山鉄道とは何ら関係ない栗橋でのJRと東武の乗り入れだけ。

    富士山登山鉄道ができるといいなー。

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著者プロフィール

宮脇俊三
一九二六年埼玉県生まれ。四五年、東京帝国大学理学部地質学科に入学。五一年、東京大学文学部西洋史学科卒業、中央公論社入社。『中央公論』『婦人公論』編集長などを歴任。七八年、中央公論社を退職、『時刻表2万キロ』で作家デビュー。八五年、『殺意の風景』で第十三回泉鏡花文学賞受賞。九九年、第四十七回菊池寛賞受賞。二〇〇三年、死去。戒名は「鉄道院周遊俊妙居士」。

「2023年 『時刻表昭和史 完全版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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