何者 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 6320
レビュー : 781
  • Amazon.co.jp ・本 (346ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101269313

作品紹介・あらすじ

就職活動を目前に控えた拓人は、同居人・光太郎の引退ライブに足を運んだ。光太郎と別れた瑞月も来ると知っていたから――。瑞月の留学仲間・理香が拓人たちと同じアパートに住んでいるとわかり、理香と同棲中の隆良を交えた5人は就活対策として集まるようになる。だが、SNSや面接で発する言葉の奥に見え隠れする、本音や自意識が、彼らの関係を次第に変えて……。直木賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 痛い、いたい、イタイ…。読みながらずっとキリキリヒリヒリ。読み終わった時やっと楽になれた。凄い作品だった。

    膨大な量のEC、正解のない面接、駆け引きのグルディス、短い言葉で自分を表現し相手に伝える事は難しい。頑張っても頑張ってもかかってこない電話が彼らを追い詰め、自分が何者かどんどんわからなくなっていく。

    自分が落ちてばかりの時友達の内定を心から祝福出来るだろうか。自分だけが内定を取った時どんな気持ちになるのだろうか。

    私だって拓人や理香と同じ事考えてしまう。この作品が痛くて仕方がない。自分の嫌なところをグリグリえぐられて泣きたくなってしまう。私たちは弱い人間なのだ。

  • 「就活」が、いちばん汚い感情を暴き切る。
    文庫の帯文句の一文が印象に残り、正直躊躇するところもあったのだけど、朝井リョウの長編をまだ読んだことがなかったので、手に取ってみた。
    予想以上にどす黒い感情の交錯に、毒気に当てられたような状態になり、読了後しばし呆然としてしまったのだけれど…これまで朝井さんの爽やかな作品しか知らなかったので、痛さや苦さに満ちた本書は鋭く心に突き刺さった。
    「就活」という言葉すらまだない20年以上前に大学生だったもので、就職活動にSNSが絡んでくるということがピンとこなかったけど、不採用続きで内定が出ないことへの焦り、意外に器用に活動をこなす友への嫉妬、内定にこだわって数打ちゃあたるで臨みながらも、どこかで自己実現にこだわりたくなる過剰な自意識…当時感じていた負の感情が甦り、それはいつの時代も変わることはないのだなと思い知らされた。だけど時代の流れか…現代、そんな本音はSNSを通じて醜く形を変えて自分に、誰かに、襲い掛かることもあるのだと怖くなった。
    男女4人のメインの登場人物、なかなか共感はできなかったのだけど、一番理解できたのは瑞月かな。「私ね、ちゃんと就職しないとダメなんだ。」この言葉に込められた彼女の置かれている立場の切実さ。就活に臨む姿勢が、当時の自分と比べて一番近く、彼女の発する言葉の一つ一つが胸に響いた。理香と隆良のおしゃれカップルは、アンソロジー「この部屋で君と」所収の“それでは二人組を作ってください”で出会っている(本書を手に取ったのもこの短編がきっかけ)。『何者』のエピソードゼロ的な作品のため、頭でっかちながら不器用なところが印象的な2人は好感が持てたのだが、『何者』では気取った感じとか型にこだわる様が途中まで痛く感じられて、正直戸惑った。読む順が逆だったら印象も変わっただろうか。
    クライマックスの展開にはただただ脱帽。朝井さんの恐ろしさ(いい意味で)を存分に感じた。心がバラバラになりそうだったけど、何だか泣きたくなった。徹底的に苦いのに、不快にならないのは、解説の言葉を借りるならば朝井さんの「どうしても隠し切れない優しさが滲み出ている」からだと思う。
    登場人物らに共感できないと言いつつも、彼らのその後が気になる。後日談のような形でスピンオフを読みたいなという気にさせられたのは…彼らの姿に、己の若かりし頃のみっともなさを見たからかな。

  • 読み進めるうちに自分は何者なんだろう・・と主人公と一緒に考えてしまう作品。大学生の就職活動がテーマ。就活前は演劇活動に夢中だった分析系男子の主人公拓人が、同居人であり天真爛漫なバンドマンの光太郎、光太郎の元カノで拓人の想い人でもある素直な瑞月、上の階に住む意識高い系女子の理香&空想クリエイター系男子の隆良カップルと就活仲間として5人で過ごしていく中で繰り広げられる人間模様が現実世界とツイッター世界を行き来しながらリアルに描かれている。当初は拓人に感情移入しながら周囲の人々を分析し、「確かにこういう人いるなあ〜」と私自身も拓人と一緒になって理香や隆良の事を批評家目線でみていた。しかし終盤になるにつれ拓人に対しモヤモヤした感情が大きくなり、理香と一緒になり拓人、そして自分自身に喝を入れたくなる気持ちになっていた。拓人のように自分自身を否定されること、自分が何者でもないことを受け入れるのが怖くて、スタートラインにも立たずに高みの見物ばかりしていた過去が自分にもあった。必死で頑張っている人達の事をどこか羨ましく思う一方で、逃げてばかりいたような気がする。そして、社会人になっても楽な方へ、できるだけ自分が否定されない方へと逃げる癖がついてしまっている。「何者」は私のように自分と向き合う事から逃げた経験のある人には突き刺さるものがあるだろうし、光太郎や瑞月のような人にはそこまで感情移入できない作品かもしれない。

  • 初の朝井リョウ作品。面白い、怖い、そして両親が読んでも理解できないだろう、若者らしい作品。
    人間ってこんな感じ、みんな頭の中で考えてることってこんな感じ、とあえて誰も言及しなかった卑しいとまでいかなくても人間の小さい部分が非常にリアルに描かれてる。

    最後のあとがきに書いてある、
    この作品の魅力は、主人公の立場で感情移入し、安全な場所で傍観していた読者が、いきなり当事者になり変わる点だろう
    というところが、そうまさに。

    人間っていろんな考えの人がいてそれがいいというし、私もそう思ってるけど
    結局のところ自分の考えが一番好きだし、自分が一番正しいと思ってる。言葉には出さずとも。

    ううん、少し不気味だけど読んでよかったと思った小説です。

  • ちゃんと就活する人、ESガーOB訪問ガーって就活に洗脳されたような人、そんな人を馬鹿にしつつも就活する人、そもそも就活せずに自分は人とは違うと思い込んでる人、なんだかんだでちゃっかり内定を貰う人…
    皆知ってる。登場人物皆、心当たりのある人ばかりだった。もちろん自分もどれかに当てはまっている。

    私は、就活を馬鹿にしてダサいダサい言ってる人だが、そう言う姿こそダサくてかっこ悪いということも知ってるつもりだった。
    それと同じように、私みたいな奴に馬鹿にされている、就活に毒されたような人も、そんなことしてる自分がダサいって気付いてるんだ。気付いてて媚売って内定に群がってるんだ。

    なんだ、お互い様じゃん。

    結局、何してもダサいかっこ悪いと思われるなら、もう何したっていいじゃん、と思えて少しすっきりした。
    その代わり、皆ダサいんだから、特定の人をダサいって笑うのはやめなきゃな。

    それにしても朝井さんの観察力って凄いな…


    「「就活をしない」と同じ重さの「就活をする」決断を想像できないのはなぜなのだろう」
    「ダサくてカッコ悪い今の自分の姿で、これでもかってくらいに悪あがきするしかないんだよ、もう」

  • 超久々の投稿になりますが…
    直木賞で話題になった本作、今更読みました。

    裏表紙に書いてあった「ラスト30ページ、物語があなたに襲いかかる」の存在をすっかり忘れたまま、
    「あーこういうやついるいる、わかるわー」と朝井さんのリアルな若者描写を楽しんでいたら、
    終盤、急にサーっと血の気が引きました。してやられた。

    この作品で描かれる「人間の心の闇の部分」みたいなものって、
    誰もが持ってるけれど、誰もが気づかぬフリをしている、
    そんな「痛いところ」なんだと思いました。
    それを暴き出され、突きつけられるゾクゾク感がこの作品の面白いところだと思います。

    「人とは違う自分」をアピールする人、自分の肩書きや経歴をアピールする人、自分はこんなに努力してますってアピールする人、そして、それを笑う人。
    彼らに対して読者がどんな感情を抱くかを完全にコントロールして作られた展開。
    でも読後感はどんよりした感じではなく、
    叱咤された後に励まされたような、背すじが伸びるような不思議な爽やかさがありました。
    同世代には特に読んでほしい作品です。

  • 意識高い系の人や発信型リア充に対して一歩引いた冷めた視点で見てしまう。そんな拓人の姿に自分の姿が重なる。映画でも彼に自分を投影して見ていたが、やはり文章だとより染みる。そして、いわゆる意識高い系の理香。イマドキの大学生の光太郎。芸術者気取りの隆良。主人公と鮮やかなコントラストを成す、純粋な瑞月。現在の大学生のリアルな感覚を捉え描く朝井リョウの人間観察力、時代を読む力は見事と言わざるを得ない。この物語はラスト30ページに集約される。メタな視点に浸り観察者ぶっていても何にもならない、何者にもなれない。カッコ悪くてイタい自分の姿を自覚しながら足掻くより他に自己実現への道はない。理香の迫力ある語りが、胸に刺さりいつまでも残る。

  • 就活生時代、マネキンみたいになりたくなくて、何者かになりたくて、苦しんでいた自分を思い出した。社会人になった今、何者かになれた気はしないし、自分は自分でしかないのだ、とわかった。

    SNSがない時代に生きていたら、今よりもっといろんな友だちと直接会って、喋っているだろうなぁと思う。会ってもいないのに、あの子の日常を知っている(気になっているだけ)、不思議(不気味)な世の中だよ。昔のトレンディドラマみたいに、いきなりどうしてる?って電話してみたり、フラッと友だちの家を訪ねたり、お喋りしたいんだけどなぁ…私は。

  • 澄んだ水がどんどん濁っていくかのような物語だと思いました

    249ページからの瑞月から隆良に、299ページからの理香から拓人に放たれた言葉達が、自分が言われてるような気分になり苦しく刺さる。

    読後に思わず「…凄ぇ」と漏れた

    映画化も決まったようで楽しみ。

    「十点でも二十点でもいいから、自分の中から出しなよ。自分の中から出さないと、点数さえつかないんだから。これから目指すことをきれいな言葉でアピールするんじゃなくて、これまでやってきたことをみんなに見てもらいなよ。自分とは違う場所を見てる誰かの目線の先に、自分の中のものを置かなきゃ。何度も言うよ。そうでもしないともう、見てもらえないんだよ。私たちは。百点になるまで何かを煮詰めてそれを表現したって、あなたのことをあなたと同じように見ている人はもういないんだって」

    「頭の中にあるうちは、いつだって、何だって、傑作なんだよな」

    「お前はずっと、その中から出られないんだよ」

  • 第148回直木賞受賞作。

    就職活動をテーマにSNSが日常にある若者たちの本音を描いた作品。

    テーマもタイトルもTwitterの組み込み方も、時代を象徴している。『桐島~』より好きだった。これまた映画向きだと思っていたら、解説を書かれた三浦大輔さん監督で来年映画化が決定しているということでこれまた愉しみ。

    父親から借りたのだが、親世代でも面白いと感じる、というのはなかなかだな、と。SNSはまったく疎いはずなので、それでもこの世界観を楽しめたというのは作者の力量が問われ実証されたのだとおもう。

    いままで「学生」として守られていた子どもたちが、バイトではなく働く観点から無理に大人になるよう強いられる感覚のある就活をよくここまで文章に、物語に落としこんだなと素直に感動した。
    内定をもらえるまでのフワフワとしたあの独特の感触をリアルに思い出した。
    そのなかに、恋愛や、友情や、人間同士の葛藤がこれでもかと詰め込まれていて、小見出し16からの展開は読者のこれまで読んできてモヤモヤしていたものをバシッと回収してくれる心地よさと、怖いものみたさが存分に発揮されている。

    あと、ジンジャーエールが飲みたくなる。


    朝井リョウという作家をもう一度見直そう。

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著者プロフィール

朝井 リョウ(あさい りょう)
1989年、岐阜県生まれの小説家。本名は佐々井遼。早稲田大学文化構想学部卒業。
大学在学中の2009年、『桐島、部活やめるってよ』で第22回小説すばる新人賞を受賞しデビュー、後年映画化された。
大学では堀江敏幸のゼミに所属し、卒論で『星やどりの声』を執筆。2013年『何者』で第148回直木賞を受賞。直木賞史上初の平成生まれの受賞者であり、男性受賞者としては最年少。『世界地図の下書き』で、第29回坪田譲治文学賞受賞。
その他代表作に『少女は卒業しない』、映画化された『何者』がある。

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