何者 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 9559
レビュー : 1037
  • Amazon.co.jp ・本 (346ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101269313

作品紹介・あらすじ

就職活動を目前に控えた拓人は、同居人・光太郎の引退ライブに足を運んだ。光太郎と別れた瑞月も来ると知っていたから――。瑞月の留学仲間・理香が拓人たちと同じアパートに住んでいるとわかり、理香と同棲中の隆良を交えた5人は就活対策として集まるようになる。だが、SNSや面接で発する言葉の奥に見え隠れする、本音や自意識が、彼らの関係を次第に変えて……。直木賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 『何者』朝井リョウ著

    1.購読動機
    ツイッター読書垢の方に、朝井リョウさん好きの方が、比較的多く観察できました。
    そこで、初読書にいたりました。

    2.初読書の感想
    何者 の小説のゆえんだからでしょうか?
    それとも、朝井さんの物語力の本質なのでしょうか?

    登場人物の語る言葉から、頭と心のふたつに『衝撃』をくらいました。
    衝撃を紐解くと、
    1.本質に共感 
    2.本質が言語化されたときの怖さ
    というものです。

    3.『何者』が私たちに問う、託すメッセージ
    「生きていく。自分の線路を一緒に見守る人数が変わっていくこと。」

    「発信しやすくなったからこそ、語られない言葉の方が、その人のことを表している。」

    「想像が足りないひとほど、他人に想像を求める。」

    「自身は何者にもなれない。』
    (自身は、自身のいまをがむしゃらに、格好悪いも受け入れて生きる。)

    4.最後に
    主人公が面接官から就職活動である問いを投げ掛けられました。
    「あなたは、最近、何に心を動かしましたか?」

    私は、毎朝、ルーティンで、心のメモを起こしています。
    その時間に向き合うことが、日常を私なりに歩める気持ちがするからです。

    心動かされる何か。

    それは、見慣れた街の街路樹の紅色の訪れかもしれない。
    はたまた、仲良く会話する家族づれの風景かもしれない。

    目に映る光景に、心を配るその時間を忘れないでいたいものです。

    朝井さん、ありがとうございました。

    #読書好きな人とつながりたい。

  • 「就活」が、いちばん汚い感情を暴き切る。
    文庫の帯文句の一文が印象に残り、正直躊躇するところもあったのだけど、朝井リョウの長編をまだ読んだことがなかったので、手に取ってみた。
    予想以上にどす黒い感情の交錯に、毒気に当てられたような状態になり、読了後しばし呆然としてしまったのだけれど…これまで朝井さんの爽やかな作品しか知らなかったので、痛さや苦さに満ちた本書は鋭く心に突き刺さった。
    「就活」という言葉すらまだない20年以上前に大学生だったもので、就職活動にSNSが絡んでくるということがピンとこなかったけど、不採用続きで内定が出ないことへの焦り、意外に器用に活動をこなす友への嫉妬、内定にこだわって数打ちゃあたるで臨みながらも、どこかで自己実現にこだわりたくなる過剰な自意識…当時感じていた負の感情が甦り、それはいつの時代も変わることはないのだなと思い知らされた。だけど時代の流れか…現代、そんな本音はSNSを通じて醜く形を変えて自分に、誰かに、襲い掛かることもあるのだと怖くなった。
    男女4人のメインの登場人物、なかなか共感はできなかったのだけど、一番理解できたのは瑞月かな。「私ね、ちゃんと就職しないとダメなんだ。」この言葉に込められた彼女の置かれている立場の切実さ。就活に臨む姿勢が、当時の自分と比べて一番近く、彼女の発する言葉の一つ一つが胸に響いた。理香と隆良のおしゃれカップルは、アンソロジー「この部屋で君と」所収の“それでは二人組を作ってください”で出会っている(本書を手に取ったのもこの短編がきっかけ)。『何者』のエピソードゼロ的な作品のため、頭でっかちながら不器用なところが印象的な2人は好感が持てたのだが、『何者』では気取った感じとか型にこだわる様が途中まで痛く感じられて、正直戸惑った。読む順が逆だったら印象も変わっただろうか。
    クライマックスの展開にはただただ脱帽。朝井さんの恐ろしさ(いい意味で)を存分に感じた。心がバラバラになりそうだったけど、何だか泣きたくなった。徹底的に苦いのに、不快にならないのは、解説の言葉を借りるならば朝井さんの「どうしても隠し切れない優しさが滲み出ている」からだと思う。
    登場人物らに共感できないと言いつつも、彼らのその後が気になる。後日談のような形でスピンオフを読みたいなという気にさせられたのは…彼らの姿に、己の若かりし頃のみっともなさを見たからかな。

  • なんだろう。
    素面で読めない。あとオシャレなカフェとかでも読みたくない。
    この本に感想を書くこと自体が何かへの挑戦のようでとても嫌なのだが、書かないのも逃げてるようで嫌になる。

    就活をする5人の男女による群像劇で、全員よくいる感じの大学生だ。共感できるというよりも、ああ〜いる、こういう奴いるわーという感じの。
    それぞれの就活模様とツイートが、少しずつ人物を浮き彫りにしていく。

    就活もSNSも、自己を発信する側なのに振り回される方が多い気がする。
    この本を読んでいると目の前を覆いたくなる。おかしくない様に、わざとらしくない様に、丁寧かつ無造作に貼り付けた虚飾を、目の前で一枚一枚剥がされる様な気まずさがある。

    この作品が直木賞を受賞したのが2012年。
    就活、SNSといかにも「現代の若者」の話に見えるけれど、8年後に読んでみて風化した感じはしない。
    当時と今で様相が大きく変わらないからというよりも、やはり人間を書くのが上手いからだと思う。
    もともと就活の現状を書こうとしたわけではないんだろうが、今の就活を知らなくてもSNSをやってなくても、こういう奴いるわーと思えるくらい、一人ひとりに立体感というか説得力がある。
    SNSじゃなくてもいる。ちょっと話しを盛る人、斜に構えた発言ばかりの人。頑張ってる、苦労してる。家と会社で別の顔を持っている、コミュニティでキャラが変わる。
    圧倒的に「今」の話なのに、人間の「普遍」的な部分が書かれている。
    そんなところが審査員との世代を超えて直木賞を受賞した一因だろうか。

    実はこの作品を読むのは長いこと避けていた。就活の話とか傷を抉るものを読みたくないというだけでなく、朝井リョウの就活小説ということで。
    自分は作者と比較的年が近いのだが、朝井リョウのイメージとは、「同世代で有名大学に進学して在学中に作家デビューしてベストセラーで映画化で直木賞で大手就職のリア充作家」というものだった。朝井リョウの就活とか高みの見物だろうという。
    あー、恥ずかしい。この本を読んだ後だと特に恥ずかしい。
    でも似たような偏見持ってた人いただろう!と思いながらも、そんな馬鹿自分だけかも、とも思う。こういう時だろうか。ネットで暗い検索をかけてしまうのは。
    『何者』にはそういうことが全部見透かされている気になる。

    読んでいて嫌になるところは本当にたくさんあるのだが、一番嫌なのは、特に何も言ってこないところだ。
    新卒一括採用の功罪とか、SNSによる自意識の煽りとか、カッコ悪いことを認めていこうぜとか、読者に押しつけられるものは何もない。
    ただプロフィール欄は記入自由であると分かるだけだ。
    これは文句たらたらで⭐︎5。

  •  現代の就活に挑む大学生たちの姿を描いた群像劇。

     この小説のテーマは就活から浮かび上がる「かっこ悪さ」そしてそれとどう向き合うか、ということだと思います。

     なぜ就活とかっこ悪さが結び付くかというと、あくまで個人的な見解ですが「就活ほどかっこ悪くならないとできないことはないから」です。

     何がかっこ悪いって、社会的には何の実績もないのに、面接になると「自分はこんなに立派な人間ですよ」「学生時代こんなに頑張りましたよ」と相手がどれだけ本気で聞いてるかも分からないのに、アピールしなければならないこと。

     自分の就活を振り返ると思い出すのは、とある面接で最近読んだ本を聞かれ、その感想を述べると「それは大変大事なことに気づかれましたね。仕事にもつながってくることだと思います」と言ってもらったのですが、その面接は落とされたことです(笑)。

     落とされたのはまあいいとして、面接してくれた人はあの言葉はどういう気持ちで言っていたのか気になります。本心から言っていたのか、それとも内心「何言ってんだこいつ」とせせら笑っていたのか…。そして、そんな面接官の言葉に対し少しだけ手ごたえを覚え「これはもらったな」と思った自分の気持ちを思い出すと……、そんなかっこ悪いことを延々と続けなければなりません。

     自分の面接やエントリーシートに書いたことを就活を終えた今、振り返る勇気はありません。もし面接の様子を録画していたDVDなんてあったら粉々にして散骨よろしく海にでもばらまきますし、エントリーシートはシュレッダーにかけてから、燃やします(苦笑)。それだけ恥ずかしく、かっこ悪く思ってるのに、就活をする以上そうしたものは避けては通れないんですよね。

     作中の大学生たちの就活の様子、そして心情はとてもリアル。作者の朝井リョウさんも近年の就活体験者、ということもあるのだと思います。就活や就活生のかっこ悪さをしっかりと描き切っています。

     しかし、この小説の一番の読みどころは、ラスト近くのどんでん返しとたたみかけ。自分の就活を思い返しながらそれまで作中の就活生のかっこ悪さを、そして過去の自分を嗤っていた僕に、まるでブーメランのように返ってくる言葉の数々。そして最後に本当にかっこ悪かったのは誰なのか気づかされるのです。その場面は作中の登場人物のように自分のライフもゼロになりそうでした。

     ほとんどの人は今の自分とは違う、もっとカッコいい”何者”かになりたいんですよね。そして、それが敵わない場合どうするのか、それを就活とSNSという現代のテーマを使って見事に書かれていたと思います。

     たとえどんなにかっこ悪くても、そんな自分を受け入れてあがき続けなければならないのは就活でも、そしてこれからの人生でもきっと一緒のハズ。これから長い人生を歩む自分に改めてそうしたことを気づかさせてくれた小説でした。

     血反吐を吐きそうになりましたが(笑)、就活を終えたタイミングで読めて良かったです。

    第148回直木賞

  • 「光太郎は自分の人生の中にドラマを見つけて、そのドラマの中の主人公になれるんだよ」
    このセリフをもう一度見たくて、「何者」を読みました。
    映画を観て、このセリフがどうしても頭から離れずずっと残っていたのです。
    単純に「何様」が読みたいのと、朝井リョウが好きという理由もありますが。
    誰にでも自分の中の価値観があり、譲れないものがあり、自分が傷つかないように言い訳のようなバリアを貼って生きてる。
    そうでないと生きていくのは苦行でしかないですもんね。
    拓人も光太郎も瑞月も理香も、そして隆良もギンジも、皆間違っているわけではなく、「就活」という1つの段階でもどかしい気持ちを抱えながら頑張っている人間模様がリアルで、心に巣作ってます。
    私はドラマの主人公になってふわふわ生きてるんだなって言われたみたいに貫かれました。

  • ◯朝井リョウ先生は天才ですね。大変面白かったです。
    ◯ストーリーと描写が完全に合っているというか、小説自体の完成度というか、かちっとハマって美しいです。
    ◯そして相変わらずの、グループ内の心理描写の巧みさはさすがとしか言いようがありませんね。悲しいくらいに心に肉薄してきます。


    ◯何者にもなれていない学生という状況の、社会人になるという段階に対する「不安と焦燥」を、SNSが強く煽っている。それが実に巧みに描かれている。
    ◯現在と昔で学生が置かれている立場が変わったわけではない。
    ◯小説で語られているとおり、 SNSという新しい自己表現のツールを通して、演出された少ない言葉による過度に装飾された自己を、不特定多数・世界を舞台に発信することで、個人の自己顕示欲が満たされる。
    ◯学生という期間であれば仲間内だけ満たされていた関係だが、いざ実体社会と相対した時、そういったコミュニケーションしか知らない状況に陥っていることに気がつく。◯それは、実は自分が何者でもなかったという空虚さを露呈し、SNSによって何かができるという錯覚をもたらしていたことに気がつくことになる。
    ◯コミュニケーションが複雑になり、言葉が選ばれ捨て去られていく状況について、小説家として思うところがあったのか、とも思った。

    ◯そして、そういった状況の中で、過剰な自己顕示欲に囚われている登場人物たちにいは悲しさを感じる。
    ◯ただ、悲しいだけでなく、それぞれ全員に共感できる部分があり、自分のこととして考えさせてくれることが、この小説がいいものである証左だと思った。

  • (大学4年生)
    映画を鑑賞しました。

    私もつい2ヶ月ほど前までは理香のような、就活に対して意識高い系で、2年生の夏からインターンシップに参加するような就活生でした。
    人事の人からたくさん褒めてもらえるような、ザ・就活生でした。

    しかし、自分が理想としていたような就職先からは内定を貰うことができなかった。
    というよりも、もう面接までに自分自身が何者かを考えることが嫌で嫌で仕方がなくなってしまった。

    瑞月は留学経験もありグローバル思考だったが、母のことを支えるため転勤のない安定したエリア職を選択した。つまり、夢よりも現実を選択した。
    そして同時期に元カレへの気持ちも揺らいでいた。

    私も就活と家族問題・恋愛関係でのアクシデントの時期が重なってしまい、自分が何者か、そして何者になりたいかなんて考える余裕が次第に無くなっていった。

    自身の就活を通して、会社の肩書きでは決して人の人生を語ることができないということが分かった。

    会社の肩書きで人のことを品評して、嫉妬したり見下したりしてしまうことは誰にでもあることだと思う。

    しかし、その会社で働く背景には、
    就活中の人間関係や、メンタルの状態なんかも影響して、色んな理由や事情がある。

    肩書きだけで、「あぁ、この人はこういう感じの人だろうな」と決めつけるのは違うと、就活に苦しんだからこそ気がつくことができました。

    それだけで私の人生における就活に意味はありました。

  • 人の嫌な部分がわかるストーリーになっていますが、不思議とそれぞれの登場人物を嫌いになれない。
    不思議な感覚になりました。


    ストーリーは出来事は起こらず、少し個性的な大学生たちの就活が描かれてますが、
    最後に大きくストーリーが動くと自然と汗が出てきました。

  • 読み進めるうちに自分は何者なんだろう・・と主人公と一緒に考えてしまう作品。大学生の就職活動がテーマ。就活前は演劇活動に夢中だった分析系男子の主人公拓人が、同居人であり天真爛漫なバンドマンの光太郎、光太郎の元カノで拓人の想い人でもある素直な瑞月、上の階に住む意識高い系女子の理香&空想クリエイター系男子の隆良カップルと就活仲間として5人で過ごしていく中で繰り広げられる人間模様が現実世界とツイッター世界を行き来しながらリアルに描かれている。当初は拓人に感情移入しながら周囲の人々を分析し、「確かにこういう人いるなあ〜」と私自身も拓人と一緒になって理香や隆良の事を批評家目線でみていた。しかし終盤になるにつれ拓人に対しモヤモヤした感情が大きくなり、理香と一緒になり拓人、そして自分自身に喝を入れたくなる気持ちになっていた。拓人のように自分自身を否定されること、自分が何者でもないことを受け入れるのが怖くて、スタートラインにも立たずに高みの見物ばかりしていた過去が自分にもあった。必死で頑張っている人達の事をどこか羨ましく思う一方で、逃げてばかりいたような気がする。そして、社会人になっても楽な方へ、できるだけ自分が否定されない方へと逃げる癖がついてしまっている。「何者」は私のように自分と向き合う事から逃げた経験のある人には突き刺さるものがあるだろうし、光太郎や瑞月のような人にはそこまで感情移入できない作品かもしれない。

  • 直木賞、大学生の就職活動、自分を売り込むために努力する数年間、これまでの人生の評価が下される一大イベント。私は大学院に行ったので、就職活動をしたことがありませんでしたが、丁度、超氷河期だったらしく、友人たちは相当厳しかったようです。今回の登場人物全員好きになれなかった。最後に拓人の正体が明らかになり、かなり盛り上がった。拓人・理香のような不器用な人は意外と多いのかな。彼らをそこまで非難できないなぁと自分なりに了解。facebook機能を再確認。メールアドレスで私の他のアカウント探索機能はoff!

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著者プロフィール

'朝井リョウ
一九八九年岐阜県生まれ。二〇〇九年『桐島、部活やめるってよ』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。一一年『チア男子!!』で高校生が選ぶ天竜文学賞、一三年『何者』で直木賞、一四年『世界地図の下書き』で坪田譲治文学賞を受賞。その他の著書に『星やどりの声』『もういちど生まれる』『少女は卒業しない』『スペードの3』『武道館』『世にも奇妙な君物語』『ままならないから私とあなた』『何様』、エッセイ集『時をかけるゆとり』『風と共にゆとりぬ』などがある。

「2020年 『夜ふかしの本棚』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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