神の棘 (II) (新潮文庫)

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  • 新潮社 (2015年6月26日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (672ページ) / ISBN・EAN: 9784101269726

作品紹介・あらすじ

ユダヤ人虐殺という任務を与えられ、北の大地で生涯消せぬ汚名を背負ったアルベルト。救済を求めながら死にゆく兵の前でただ立ち尽くしていた、マティアス。激戦が続くイタリアで、彼らは道行きを共にすることに。聖都ヴァチカンにて二人を待ち受ける“奇跡”とは。廃墟と化した祖国に響きわたるのは、死者たちの昏き詠唱か、明日への希望を織り込めた聖歌か――。慟哭の完結編。

感想・レビュー・書評

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  • 戦争は恐ろしい。人格も変わってしまう影響力。戦争に慣れてしまうのも怖いです。

  • 敵対する立場で、幾度も運命を交差させてきたアルベルトとマティアス。

    この物語の果ては、本当に慟哭という言葉が相応しい。


    神は、乗り越えられぬ試練を与えることはない。
    …などと言うのも愚かしく感じるほどの、悲惨な殺戮。意味を見出せない戦闘。
    今この瞬間も、女性や子供を含めた民間人に銃を向けている兵士たちは、皆こんな心境でいるのだろうか。
    そうだとしても、到底受け入れられないのだけれど…

    現実になおも続いている侵攻や、防衛のためと称して軍備を増強しようとしている政府。
    感想を書くことも出来ず日にちが経ってしまったが…
    とにかくとてつもなく力のある作品だった。

  • 最後のページは涙で文字がかすんで読みづらかった。
    こんなことは文字的表現だけだと思っていたが、本当に読めなくて何度も読み返した。
    その続きを、と思っても参考文献と解説だけだった。
    アルベルトの最後の本音が、私の胸の中で大きな波の奔流となって渦巻いた。

    二冊、時間をかけて読んでいたが、厚さも厚さだし、次巻も早々取れるものではないため、いつか飽きるのではないかと危惧していたが、そんなことは全くなかった。
    つづきを、と一度読み始めるとどこからでもドイツの戦中下に連れて行かれた。戦場の暴力的な時間が続いたかと思うと、ふっと息をつけるような戦後。
    しかし、その戦後もじわじわと締め上げるような痛みが、これまでの主要登場人物の告解と告白によって事の初めからのことが明かされていく。
    ただの歴史小説かと思いきや、そんな推理的なレトリックが含まれていたとは思わなかった。
    しかし、今振り返ってあのシーン、このシーンを読み返す力はない。十二分に思い出せることもあるが、余りにもその視点で読むと辛すぎる。

    実は、今日読み終わる前に、一度先が気になってつまみ読みをしていた。だからあのページの後に続くものがないこともわかっていたはずだった。それぞれのセリフも読んでいたはずだった。
    しかし、すべてを通して読んでくることによって、彼らの告白、告解、そして最後の一言は、全く意味も重みも変わってしまった。

    恐らく今年読んだ本の中で最も愛すべき、深く心を抉られた物語となるだろう。
    この物語に出会えたことを幸せに思う。
    と同時に、今の社会と重ねてしまう。
    日本はいまだに第二次世界大戦を引きずっているが、ドイツが今それほど揶揄されないのは、ドイツ国民自身が戦後徹底的にナチや軍部の処刑を行ったからだという話を、この本を読んでいる間に聞いた。
    それも相まって、余計にこの物語は感慨深いものになった。

    先に一度つまみ読みした時の感想が残っているが、アルベルトを指して、誰も彼を救えやしないとメモをしていたが、今はそうは思わない。
    彼は救われたかどうかが問題ではない。
    最後の時間に自分が憧れたものと嫉妬なしにおいしいコーヒーを飲みあえたこと。
    その時間が彼にもたらした安らぎは大きかったに違いない。
    人が人を許すのではない。神が許すのだ。と言っているが、アルベルトは友人に許しでも救いでもなく、安らぎを感じることができたのではないか。
    それを感じられることが、読後の私の救いである。

  • Ⅰの続き。
    ナチス時代のドイツ。親衛隊に入隊したアルベルトと、修道士のマティアス。図らずも対立してしまった旧友の物語。

    ドイツのポーランド侵攻から第二次世界大戦、そしてドイツの敗戦。戦後の様子までが書き綴られているのだけど、本当に一言で感想を述べるとすれば、「戦争は人々に何ももたらさない」ということ。
    だからこそ今読めてよかった。プレゼントしてもらえてよかった。
    著者の須賀さんは大学で史実を専攻されていたようだし、この小説を書くにあたってたくさんの文献を読まれたそうなので、この小説を読んだだけで当時のドイツで起こっていたことが分かりやすく理解出来ると思う。
    物語としても、とても面白かった。
    戦中の描写はハラハラするけれど、最後はとても静かに終わったのも印象的。

    アルベルトはとても冷酷な人間の設定だけど、なぜか憎みきれないところがあって、その理由が後になってから明かされるという、枠としてはミステリ小説。
    マティアスはそのまま純粋で真っ直ぐな青年で、読みながら思わず「頑張れ」と応援してしまうような人物。
    その二人が基本は平行線を辿りながら、たまにその道が交錯する。人と人の不思議な縁を感じずにいられない。

    個人的に思うのは、この表紙の感じは作品としてはちょっぴり損しているような。中身はとても硬派でしっかりした歴史ミステリなので、もっと重厚な表紙の方が合ってるような気がする。

    自分ではあまり選ばない小説を読めて、そしてそれがとても面白くて読んでよかったと思えたのもひとつのめぐり逢い。
    時を置いて再び読み返してみたい小説。
    そして関連本にも興味が…。

  • ハードカバー版を既読。もう何と言ったらいいのか。何と書いたらいいのか。まさに慟哭と呼ばれるかたまりを喉元に詰まらせながら読み進めたⅡ巻は、悲劇と残虐と無力をこれでもかと描いている。すべてを背負って生きることを当然としたアルベルトが民衆の目にどのように映ろうと、彼の生き様はまるで神に仕えるものと同等か、それ以上であると言わざるを得ない。憤怒の嵐のなか苦悩するマティアスの対極で、凪いだ風のように立つアルベルトの姿が脳裏に浮かぶ。信仰と法と戦争。それらを小説というかたちでこうも深く表した作家が他にいるだろうか。

  • 障がいのある人やユダヤ人への迫害を阻止しようと、自分の持つ力を出し切る修道士マティアス。ナチスの立場から宗教を弾圧をしてきたアルベルト。
    第二次世界大戦の最中、ドイツやドイツに侵攻されていた国で起きていたことを、彼らの目を通して見ているようでした。
    それだけでも星5つの価値でしたが、驚きの展開もあり読み応え抜群です。


  • 不意に出会ってしまった名作。
    本当に本当に良かった。

    マティアスとアルベルトの決して交わらない正義が、その中で交わる出会いと運命が、抗えない時代の流れと力が。
    どんどん作品の中に引き込まれていきます。
    上下巻で1,200ページを超える大作ですが、絶対に後悔しません。

    アルベルトの最期に想いを馳せて、本を閉じてから、ふと、マティアスはまた失ったのかと気が付く。
    神は何度も、何度でもマティアスに試練を与え、マティアスもまた何度も、何度でも向き合い越えていくのだろう。

    アルベルトの最期が穏やかでありますように。
    マティアスの祈りが届きますように、と思わずにはいられない。

  • 修道士マティアスとナチス親衛隊アルベルトの、本来混ざり合うことのない二人の運命が折々に交錯する。マティアスはそれを偶然と考えていたけれど、最終章で実はアルベルトが仕組んだ必然だったのだと明かされる。
    少年時代友人であった二人が後に白と黒の運命を歩むも、実は二人とも白だった、というありきたりな結末にはならない。白というにはアルベルトの手は血に塗れ過ぎていた。
    アルベルトに言わせれば、カトリックもナチスも指導者が被指導者に無限の服従を課す指導者原理に基づいたもの。よって二人は似た道を歩いていたとも言える。
    二人とも種類は異なるとはいえ信心の心を持ちながら、そこに絶対性を見出せず、マティアスはユダヤ人を救おうとしないカトリック体制へ、アルベルトはユダヤ人を虐殺するナチス体制に持った上部への懐疑を拭えずにいたことも共通する。
    アルベルトの妻イルゼの告白から、大恋愛劇としても読める。そこで物語は一転、次に別の真実を告白した男の述懐で更に一転。
    最後まで読者を惹き付ける語りに圧倒されっぱなしだった。

  • 緻密な取材と検証に基づく真実味ある設定と、謎がそれとわからないまま物語が進行し、あとでからくりに気づかされ、読み返して初めて謎と理解できる複雑な構成力。この巻では二人の主人公だけでなく女性の存在が特に印象的で物語にインパクトをもたらしている。「革命前夜」もそうだったが、ミステリーとノンフィクションが混ざったような小説で、早く完結を味わいたいというはやる気持ちや読了後の安堵感と読了ロスの全てを味わえる読み応えのある本。

  • クライマックスからが、ものすごく良かった。

    マティアスとアルベルト。
    色合いの違う二人は、どんな末路を辿るんだろうと思いながら読んでいた。
    序盤で覆された筋書きは、終盤で更に覆される。
    イルゼの告白に、一体自分は何を読んでいたんだろうと思わされた。

    戦争、虐殺という、人間の為す非道の中で、人間は懸命に救いを求める。
    人間が信頼というシステムの中で創り上げた「救いの神」は、非常時にあって機能する。
    そうしてまた、人間は人間の世界において自らが行なった罪を償っていく。

    先日読んだ文章には、ニヒリズムとは世の中の不条理から目を逸らすことを意味する、と書いていた。
    自分一人ではどうにもならない出来事の連続の中で、目を逸らし、時に己にとっての「楽園」に身を置いて逃避してしまうこと。

    そう言った虚無に身を包まれて尚、不条理な世界に戻って来れるのだろうか。
    今作でのアルベルトは、まさにニヒリズムを超越した人間だったのではないかと思う。
    彼がしたことの善悪を簡単に論じることは出来ないけれど、彼はナチスの行なった不条理から目を逸らすことはなかった。
    そんなアルベルトを見つめる人間として、マティアスという存在がいたのかな、とさえ思えた。

  • 読むのにとても集中力の必要な心にずっしりと重い本でした。戦争に翻弄された若者たちの受難の物語り。受難としか言いようのない、その時代に生まれたことだけが不幸な彼ら。バチカン以降は涙が止まらなくてページを捲れませんでした。当たり前ですが奇跡は起こらず。最も神に愛されたのが彼だと信じたいです。

  • 読書備忘録589号(上下巻なので)。
    ★★★★★。
    文句なし。
    そして戦争が始まる・・・。
    アルベルトはSSの保安部隊アインザッツグルッペンとして、戦時下の反ドイツ分子を処理する。障害者を絶滅させる安楽死作戦、独ソ戦におけるパルチザン狩り。共産主義者、ユダヤ狩り。
    一方のマティアスは修道士と、反ナチ組織のレギメントの連絡員として活動する。
    舞台は東部戦線からイタリア戦線へ。保安部隊から武装SSに配置転換されたアルベルトは連合軍のイタリア反攻に対応していた。マティアスも徴兵され国防軍の衛生兵としてイタリアモンテ・カッシーノの激戦区に身を投じていた。そして再会・・・。
    度重なる絶体絶命の危機をなぜか生き永らえるマティアス。その陰にはアルベルト。アルベルトの謎の行動。
    そして戦後。
    捕虜収容所の地獄から生還したマティアスは、アルベルトの行動の意味を知ることになる。
    そこには、揺るがない信念があった・・・。
    そして、部隊が壊滅するなか、こちらも生き延びたアルベルトに対する審判、所謂アインザッツグルッペン裁判が行われる。アルベルトの判決は!
    熱い熱すぎるよ!須賀さん。
    日本人が戦時ヨーロッパの、しかも宗教的な内容が濃い凄い物語を書けるとは!
    ただモノではない。笑
    上巻ではまだまだでしたが、下巻で一気に★5つ。
    ただ、最後50pくらいですべての種明かしをするのであれば、もっともっと伏線をきっちり張っておいて欲しかった。実はこうだったんですよ、ああだったんですよ感が半端なかったことも確か。別に良いけどね。笑

  • 宗教という難しい問題を戦争との関連で語られていてとても勉強になった。ページが多いけど、一気に完読。登場人物それぞれに魅力的があって、女性たちの強さも印象的だった。戦争の惨たらしい描写にも関わらず、冷静に状況をイメージできるのは著者の文章力によるものだと思う。最後、言葉を返せないマティアスを、アルベルトの腕がやんわりと廊下へ押し出した時点で感極まってしまった。そしてラストは限りなく清々しく静謐。時間をおいてまた読みたいと思える小説です。

  • 鉄拳神父マティアスさん素敵です!
    フェルシャーの告白を聞いたうえで分かりやすい棘(拳)を与えてやれるマティアスと、望んだ棘を与えられてなお自分を赦していたのかどうなのかとか考えているフェルシャーの差たるや。左の頬も殴られてろ。

    先が分かっているぶんラストは穏やかに読めたのですが、イルゼへの老婦人の言葉でびっくりするほど涙がでてしまいました。アルベルト夫妻の恋愛描写少ないなーまあ須賀作品では真っ先に削られるところだよなあーと思っててこれだから、もし出会いのくだりをしっかり書かれてたらカサカサになってたかもしれません。命拾いをしました。

  • 取り扱うテーマとしてはどうしても避けられない残酷なシーンの数々に打ちのめされながらも、最後見たさについ勢いで読んでしまいます。

    2人の運命が奇妙に交差するローマへの道程がとても好き。
    そして最後のアルベルトの台詞で、何度も泣いてしまいます。

    文庫では会話が増えたことによって、人物の温かみが増した気がします。
    マティアスもアルベルトもよく動きよく喋るなあと。
    特にマティアスはシーンが追加されたことにより、新たな魅力を感じましたね。

    1巻でも述べましたが、全体的に読み易くなっていると思います。
    この「易しさ」が結構好みを分けるような気もするのですが…。

    個人的な意見としましては、単行本の淡々とした温度感の方が好きです。
    だからこその、アルベルトの貫いたものに余計込み上げるものがあったかな、と。

    しかし最後はほんと何度読んでも泣いちゃいますね。
    追加の会話によってアルベルトの心情に足しの部分もあったんですけど、それでもやっぱり最後の一言が何より重い。
    胸が締め付けられます。

  • 直前にトルストイの『光あるうち光の中を歩め』を読んでいたので、キリスト教の教えとは、信仰するとは、赦しとは、正しさとは… キリスト教について学びながらも疑いながら触れる時間が続いた。

    なによりまず、須賀しのぶさん、ほんとにすごい。
    物語の組み立てにしても、知識量にしても。なのに読みやすい。
    この本を読んだおかげで、わたしはナチス、キリスト教、ユダヤ、第二次世界大戦について何も知らなかったんだなと気づけたことは大きい。もっと知りたい、知っておかなければと思った。

    でももう残り150ページを切ったあたりからそれどころでもなくて……なにをどう言えばいいのか分からない。
    せめて最後にアルベルトとイルゼが会えたら良かったのになとか思うけど、それはわたしのエゴでしかないしアルベルトは望んでいないこと。
    マティアスとひとときを過ごせただけでも良かったのだろうなあ。
    あまりに強くて美しく、冷静で隙のない、器用だけど一周まわって不器用にも思えるアルベルト。
    許されない罪は罪としてのしかかり、本人も理解している。自分を救うのは自分というアルベルトの言葉にも納得できる。
    でもやっぱり、世間一般のいう幸せをもっと味わってほしかった。罪を重ねる必要のない生活を送ってほしかった。外野からそんな風に思われることは望んでないだろうけど。
    マティアスになりたかった、の言葉についてもアルベルトからもっと聞いてみたかった。
    マティアスのどんなところに憧れて、羨んで、嫌だったのか。アルベルトの言葉で聞きたかった。

    マティアスはこの後どのように生きていくのだろう。
    きっと、変わらず信仰と疑心の間で揺れながら、でもその視点があるからこそ立派な司祭でいられるのだろう。マティアスが生きている間はまだ、そうできるのではないだろうか。
    時代が過ぎるごとにアルベルトのように自分の責任は自分に還るというような考え方をする人も増え、キリスト教との関わり方も変わっていく人も増えるのだろう。今はイベントのときにだけ教会に行くという人も多いと聞くし……
    まだまだキリスト教については理解が及ばない部分が多いなあ。

    きっとまた読み返すことになる本。
    次読むときにはどう思うのだろう。

  • 2巻を通して、読み進めることがしんどいシーンも沢山あったけど読んで本当に良かった。
    あの時代に本当に彼らのように生きた人がどこかにいたのだと思わされた。
    最後の2人が対話するシーンはずっと忘れられないと思う。

  • 重厚な歴史小説ゆえに読了後の満足感がすごい。
    祈ることの意味について考えさせられた。

  • 歴史的背景やキリスト教の考え方含め学ぶことができた。
    スケールの大きなストーリーで非常に面白かった。

  • 人を赦すとは

    最後のアルベルトの言葉で
    マティアスはこれまでのアルベルトへの対峙が間違っていなかったとわかるのでは
    そんなふうに思われたい
    そんな生き方をしたい

    生き方、考え方
    心に響く本でした

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著者プロフィール

『惑星童話』にて94年コバルト読者大賞を受賞しデビュー。『流血女神伝』など数々のヒットシリーズを持ち、魅力的な人物造詣とリアルで血の通った歴史観で、近年一般小説ジャンルでも熱い支持を集めている。2016年『革命前夜』で大藪春彦賞、17年『また、桜の国で』で直木賞候補。その他の著書に『芙蓉千里』『神の棘』『夏空白花』など。

「2022年 『荒城に白百合ありて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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