うらおもて人生録 (新潮文庫)

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  • / ISBN・EAN: 9784101270029

感想・レビュー・書評

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  • 1.著者;色川氏は、小説家・随筆家・雀士です。学校生活に馴染めず、学校をさぼって、映画・寄席・喜劇に熱中しました。人生哲学は、「ツキの流れを読んでそれに従う」「欲張りすぎず、九勝六敗を狙う」と言われています。著書の「黒い布」は、三島由紀夫・伊藤整・武田泰淳に激賞され、中央公論新人賞を受賞。「離婚」で直木賞、他にも泉鏡花賞・川端康成賞・読売文学賞を受賞。また、“阿佐田哲也”名で発表した「麻雀放浪記」で脚光を浴び、麻雀ブームの火付けとなりました。
    2.本書;アウトローの道を進んだ色川氏のエッセーです。「1.“さて、なにから”の章」~「55.“おしまいに”の章」までの55章構成です。若者向け人生論を説いています。勝負師らしく、著名な人生論にはない言霊の数々に共感します。「もう手おくれかな」「まず負け星から」・・・。
    3.個別感想(気に留めた記述を3点に絞り込み、私の感想と共に記述);
    (1)『“学歴というもの”の章』より、「昔だったら、手に職をつけにくい条件の者が必死で勉強したんだけどね。今は皆、免状を取ろうとするね。・・学歴を得たからって、それで終わりじゃないんだ。学歴はパスポーなだけで、入り口を入って、実生活は別にあるわけだから、学歴さえあれば人間が空っぽでいいというものでもない」
    ●感想⇒確かに、猫も杓子も大学進学する時代です。大卒でなければ希望の職に就けない人、取り敢えず進学する人もいて、動機は人それぞれでしょう。高校生では、世の中が十分に見えていないので、止むを得ないと思います。問題は入学してからです。充電期間として、勉学は言うに及ばず、部活やアルバイトで人間修養するべきです。読書もいいでしょう。親は学資を出すのは良いとして、遊びの為の車を与える等は言語道断。若い頃に、何らかの挫折を味わう事も場合によっては必要です。某メーカーでの話です。職場の新人を現場応援に出したそうです。二日程して、応援先の責任者から連絡があり、「連れて帰ってくれ」と。理由を聞くと、「仕事が出来ない事を言っているのではない。現場の若手に学歴差別的発言をした」と言います。若手に仕事を教えて貰っている時に、「僕は、(大卒で)こんな仕事(現場仕事)をする為に入社したのではない」と。著者が言うような「学歴さえあれば人間が空っぽでいいというものでもない」の事例です。本人は親の庇護の下で、叱られた事もなく、苦労知らずに育ってきたのでしょう。プライドが高過ぎるのです。成人の性根を直すことは難しく、三つ子の魂百まで。
    (2)『“嫁に行った晩”の章』より、「一番大切なのは、生地がずるくないこと。これから成人しようという人たち、まず要領だ、なんて思ったら、それははじめからマイナー指向になっちゃってるんだよ。まず、誠意だ。これが正攻法だ。そうして誠意や優しさや一本気な善意がスケールにつながるんだ。だから、人格形成期に、まずスケールを大きくしていくことを考えよう」
    ●感想⇒要領が良いという事は、悪い事ではありません。しかし、要領だけで世渡りは出来ません。要領だけの人間に、重要な仕事を任せられないと思います。そういう人は、得てして仕事をなめてかかり、雑になります。自信過剰なのです。鈍間でも愚直に、正直な人の方が信頼できます。また、若い時は失敗を恐れずに、何事も果敢に挑戦してほしいと思います。他人を見る眼を持った人は必ずいます。豊田佐吉の名言、「障子を開けてみよ、外は広いぞ」。
    (3)『“球威をつける法”の章』より、「友人は、障害児という、自分の外の、しかし身近なものを、生き方の軸にしている。俺は、小さい頃の感性、というか、思考の癖を、自分のモラルのようなものに置き換えて、やっぱりそのことが生き方の軸になっている。・・人間は、結局、ここだけは死んでも譲れないぞ、という線を守っていくしかないんだ。その、ここだけは、ゆずれないぞ、という線を、いいかえれば、自分の生き方の軸を、なるべく早く造れるといいんだがな」
    ●感想⇒“軸”は難しく考えないで、何でもよいと思います。著書では、「障害児を抱えた親が、何よりも長生きをポイントに置くようになった」と言います。子供を守る事が生き甲斐なのです。気の毒な人生と思う人がいるかもしれません。私には真似る事の難しい、大変立派な軸と思います。「お前の軸は何か」と問われれば、「事実の前には謙虚にありたい、嘘をつかない事」で、キーワードは“誠実と感謝”です。十分には実践出来ていませんが、今後も行動を律したいと考えます。
    4.まとめ;色川氏は、“はじめに”で、「私は不良少年の出で、どこから見ても劣等生です」「この本も、学校の成績でいえば十番以内のエリートよりも、それ以下の成績の若者を念頭において記しだしました」「思想めいた、或いは道徳めいたことの示唆がこの本に欠落しているという御批判もありましょう」「この世の原理原則、不確実でないと思える部分については、一生懸命に記さなければならない」と書いています。わたしの読後感は、『①若者全員と子育て中の母親にも読んでもらたい ②道徳めいた本を凌駕する人生訓の数々 ③物事の原理原則を逸脱してはいけない』です。机上の理論ではなく経験に裏打ちされた本書は、自己啓発本にはない、思いやりと優しさがあります。某新聞のコラムの一節にありました。「自分に嫌気が差した時に決まって手に取る本(うらおもて人生録)。毎度すがるような思いでこの本を開く。確実にこの本は新しい一歩を踏み出す力を与えてくれる」。( 以 上 )
    ★明けましておめでとうございます。昨年は、皆様に“いいね”や“コメント”を頂き、有難うございました。このレビューが私の書初めです。本年もよろしくお願い致します。

    • 如水さん
      ダイちゃんさん、明けましておめでとうございます。

      いつも読み応えがあり、学びの多い感想、ウンウンと頷きながら拝見しております。
      これからも...
      ダイちゃんさん、明けましておめでとうございます。

      いつも読み応えがあり、学びの多い感想、ウンウンと頷きながら拝見しております。
      これからも楽しみにしています。
      2022/01/03
    • ダイちゃんさん
      コメントして頂き、ありがとう
      コメントして頂き、ありがとう
      2022/01/04
    • ダイちゃんさん
      ございました。如水さんの本棚を時々拝見しています。哲学的な本が多く、勉強になります。「甘えの構造」を私も読みました。如水さんのレビューは、分...
      ございました。如水さんの本棚を時々拝見しています。哲学的な本が多く、勉強になります。「甘えの構造」を私も読みました。如水さんのレビューは、分かりやすく参考になります。これからもよろしくお願いいたします。
      2022/01/04
  • 雀聖と呼ばれた作家、阿佐田哲也さんのご自身の人生を振り返りながらの生き方の指南書的エッセイ。ペンネームは、たくさんお持ちのようで、その理由もエッセイの中に書かれてます。
    ご本人さんも周知の如くいわゆる不良少年で、どちらかといえば、劣等感を持っている人達への生き方の技術伝授。
    文体は語り口調で、色川さんの不良なところも書いているので、軽くみてしまうと深い言葉にびっくりします。
    何事も9勝6敗を目標とする。負けた6敗をきちんと受け入れる。
    運をコントロールする。実力と運を分けて考える。
    人生は長く、何もかも上手くいくとは限らない。
    全て上手くいくわけないんだね。わかっていたつもりでも、ピークの時に欲張ってスランプになる。
    一生を6分4分で生きて、生きていくフォームを作る。なんか、少し気が楽になった。
    この作品は、昭和59年に刊行、文庫化は昭和62年。古い作品です。色川さんは平成元年に亡くなれてます。そして、4月10日が雀聖忌で文学忌だったので、「麻雀放浪記」以外でと図書館予約したら2月に予約数16で、3ヶ月かかりました。この時代の文庫では、さすがに珍しい。メジャーな本とは思えないのだけど、知っている人は知っているんでしょうか。
    ばくちという言葉や賭け事への比喩がでてくるので、そこがダメな方は、読みにくいと思います。

    • 土瓶さん
      阿佐田哲也さん。
      ペンネームの由来は、麻雀のし過ぎで「もう朝だ。また徹夜だ」から取ったというのはどこかで聞きましたね。
      嘘か本当かは知ら...
      阿佐田哲也さん。
      ペンネームの由来は、麻雀のし過ぎで「もう朝だ。また徹夜だ」から取ったというのはどこかで聞きましたね。
      嘘か本当かは知らん。

      「二の二と。 明日は雨かな」
      「悪いね~。天和だ」
      言ってみたいね(笑)
      2023/05/17
    • おびのりさん
      懐かしいね。
      麻雀放浪記。
      懐かしいね。
      麻雀放浪記。
      2023/05/17
  • 著者、色川武大さん、どのような方かというと、ウィキペディアには、次のように書かれています。

    ---引用開始

    色川 武大(いろかわ たけひろ、1929年〈昭和4年〉3月28日 - 1989年〈平成元年〉4月10日)は、日本の小説家、エッセイスト、雀士。筆名として色川 武大(いろかわ ぶだい)、阿佐田 哲也(あさだ てつや)、井上 志摩夫(いのうえ しまお)、雀風子を名乗った。阿佐田哲也名義では麻雀小説作家として知られる。

    ---引用終了


    で、本作の内容は、次のとおり。

    ---引用開始

    一度、ためしに、小さく負けてごらん。

    優等生がひた走る本線のコースばかりが人生じゃない。愚かしくて不格好な人間が生きていく上での〝魂の技術〞を静かに語った名著。

    優等生がひた走る本線のコースばかりが人生じゃない。ひとつ、どこか、生きるうえで不便な、生きにくい部分を守り育てていくことも、大切なんだ。勝てばいい、これでは下郎の生き方だ……。著者の別名は雀聖・阿佐田哲也。いくたびか人生の裏街道に踏み迷い、勝負の修羅場もくぐり抜けてきた。愚かしくて不格好な人間が生きていくうえでの魂の技術とセオリーを静かに語った名著。

    ---引用終了

  • 麻雀小説で有名な阿佐田哲也。
    彼の色川武夫名義でのエッセイと言うか、もっと重い「言葉」。
    「もう俺先が短いんだよ」
    「くだらん男なんだよ」
    と言いながら、「人に何か教えようとしようとは思ってはなく」「おれ自身の事を話すだけ」というスタンスで世の‘劣等生達’に‘生き抜く技術’を語ってくれる。
    お人柄が出てそうな飾り気ない口調と、自分の‘つかんだもの’しか話してないように思える誠実さに心打たれる。

    『雀聖』と呼ばれるくらいの稀代の雀士の豪快なイメージとは違って、子供の頃は引っ込み思案で友達との遊びにも入れず、ちょっと離れた場所でじっと見つめていたのだそうだ。
    何をしていたのかというと‘観察’して‘感情移入’していた。
    じっと‘観察’していると友達の‘個性’が分かってきてだんだん好きになってくる。それは周りの大人達に対しても同様で
    ゴミ屋さん、電車の運転手さんも好きになっていく。
    イメージとは違うと思ったが、もしかしたらそれが色川さんの人生の基盤なのかもと思った。
    ‘観察’と‘対象者に対する好意’。

    「相手を立ち直れないほどに負かしちゃいかん。」
    「上手に勝て、上手に負けろ」
    「長所と短所は布の表生地と裏生地のようなもの」
    「生きる『権利』なんてないんだよ。自分は周りになんとか
    許してもらって生きている」
    「生きていくのに不便な『欠点』をひとつだけ、一生大事に育てていく。あとの欠点は直そうと努力する。」
    「持ってる運の『バランスシート』を考えながら生きていく」

    帯で糸井重里さんも書いているが、「親でも、先生でもない人からしてもらえる話」なのである。今となっては遠い戦中、戦後を生き抜いてきた‘劣等生’。

    個人的には「人生負けたときは潔く負けたと認めよう」が心に残った。

    「どんな場合でも、こうすれば楽勝できる、そういう無責任な嘘は、俺は絶対につかない」

    • nejidonさん
      5552さん、こんにちは(^^♪
      この頃なぜか「麻雀放浪記」を見たくて見たくてたまりません。
      何十回というほど見たのに、どうしてかなと思...
      5552さん、こんにちは(^^♪
      この頃なぜか「麻雀放浪記」を見たくて見たくてたまりません。
      何十回というほど見たのに、どうしてかなと思っていたらこの本が!!
      きっと無頼派の作品を見たくなっていたのかもしれないですね。
      無頼派なんてカテゴリーは色川さんには失礼かもしれないけど。
      この本も魅力的です。
      「生きていくのに不便な欠点を・・」のところがすごく好き。
      うまいこと言いますよね。
      このようなタイプのひと、もう現れないかもしれませんね。
      2018/02/11
    • 5552さん
      nejidonさん、こんばんは。
      コメントありがとうございます!
      私にとって初・色川さんでした。
      お名前は知っていたものの機会がなくて...
      nejidonさん、こんばんは。
      コメントありがとうございます!
      私にとって初・色川さんでした。
      お名前は知っていたものの機会がなくて...。
      『麻雀放浪記』も未見です。
      ちょっとYahoo映画のレビューも覗いてみたら傑作!の文字も多く、お話も自分好みなのでレンタル屋さんで探してみようと思っています。小説の『狂人日記』も気になります。

      この本の色川さんはとても魅力的でした。
      もうちょっと若い頃に出会いたかったなーとも思うんですがまあ、出会えただけでラッキーです(^-^)
      「生きていくのに不便な欠点を~」は初めて聞くタイプの言葉で「自分だったらなんだろう」と考えてしまいますね。

      2018/02/11

  • とても面白かった。
    いままでと違う視点、感性を知れたよう。会うべき時に会うべき人と出会うように、本もまた然りだなと思う。

    人生の中には幾つかのフェーズがあって、そのいくつかのフェーズを経ていないとわからない観点のお話だなあと随所随所で思った。
    自分の弱さやどうしようもなさ、しょうもなさに気づいて受け入れられているかどうかは人生のすすめかたにおいて大きく影響することだなあと思う。でもそれって、簡単じゃないなって思う。だって若さはそういうことを美しいほど綺麗に拒絶したりして、勝手にだいぶ深い傷を負ったりすることだから。それって誰もが通ることで、ありきたりで格好悪くてどうでもいいねって言いたくて、言えなくて、やっぱりなにより眩しい。だから、この話をやすやすふむふむと受け取れるようになるときはずっとずっと大人になった時だと思う。

    そういうことを受け入れられる心の受け皿みたいなものはいつどんなふうに変わっていくかわからないし、ものは捉え方次第だなあと思う。認識次第で世界の色は変わって見えるのだろう。
    自分がすごく大きいものなんて、あほくさいこと言ってないでさ。肩の力を抜いてごらんよ。って。
    面白い生き方は面白い見方から生まれる。
    知的でユーモアがありながら、とても深い味のあるの話である。 

    ザ生き方をズバズバ指摘する本よりも、こういうわかりそうでわからなくて、わかりたくてわからなくて、多分まだまだ長い人生の秘密が隠し味でつけられているんだろうな〜、また読んだときに一つや二つは気づけるかなあ、みたいな本がやっぱり素敵だと思う。       

  • この本に書いてあること全てを取り込むのではなくて、この暖かさをいつまでも感じられる人でありたい
    最初読み始めてからこれは私のバイブルだ!!と鼻息荒くしたけど、中盤になると運とか私には分からないことだらけだった
    でもまだ分からないことがあるからこそ、これからも読み直すであろう本となったと思う

    人格崩壊は避けよう、いろんな人を好きになろう、まずは見、守り腰になってはいけない、一病息災と同じく弱点は一つ大切に育てていこう

  • 生きるコツは?

  • とても読みやすいけれど、なんとなく流して読んでしまうと頭に入ってこない内容なので、何度か読んだ方がいいと思った。またその価値がある本だと思う。
    大人が読むと、強くうなずける部分があるので、子供に読ませたいと思うけれど、果たして中学生ぐらいの子が理解できるかどうかは分からない。

  • 色川武大(1929~89年)氏は、小説家、エッセイスト、雀士。中央公論新人賞、直木賞、川端康成文学賞等を受賞。阿佐田哲也名義での麻雀小説作家としても知られる。
    本書は、学校生活に馴染めず、中学中退のまま、担ぎ屋、闇屋、街頭の立ち売り、プロの賭博師等の職を転々とし、アウトローの生活を送った後、ライターとして数々の実績を残した著者が、「学校の成績でいえば十番以内のエリートよりも、それ以下の成績の若者を念頭において」、「生きていくうえでの技術」を語ったエッセイ集である。初出は毎日新聞への連載で、1984年に単行本として出版され、1987年に文庫化された。
    通読してみると、苦労人の著者らしく、とても味わい深いエッセイが並んでいるのだが、白眉はやはり、著者が賭博(特に麻雀)の世界で学んだ人生哲学の部分だろう。例えば以下のようなものである。
    ◆プロはフォームが最重要・・・「フォームというのは、これだけをきちんと守っていれば、いつも六分四分で有利な条件を自分のものにできる、そう信じることができるもの、それをいうんだな。・・・プロは、六分四分のうち、四分の不利が現れたときも平気なんだ。四分はわるくても、六分は必ずいいはずだ、と確信してるんだね。・・・フォームというものはけっして全勝を狙うためのものではないんだ。六分四分、たとえわずかでも、いつも、どんなときでも、これを守っていれば勝ち越せるという方法、それをつかむことなんだ。」
    ◆九勝六敗を狙え・・・「九勝六敗の、六敗の方がむずかしい。適当な負け星を選定するということは、つまり、大負け越しになるような負け星を避けていく、ということでもあるんだね。」
    ◆運は結局ゼロ・・・「運というものは、通算してみると、結局、ゼロなんだ。ゼロというより、原点、といった方がいいかな。・・・本来はプラスマイナスゼロでも、一瞬一瞬はゼロではない運を、どう利用し、どう使っていくかということだな。だから、星勘定をして、運の使い方に対する自分の作戦をたてていく必要があるわけだね。」
    ◆実力は負けないためのもの・・・「実力の部分では毅然と、運の部分では用心ぶかく、手さぐりでおずおずと。・・・実力というものは、負けないためにあるのです。負け越さないために、実力を習練するのです。」
    更に、著者が亡くなった年齢に近づいた私にとっては、次のような一節が特に心に沁みた。「年をとるにつれて運がツクということが、すくなくなってくるんだね。そのうえ、身の回りには、負け越しにつながるような大黒星がぐるりととりまいているんだ。健康の面でも、事故運の面でも、人間関係もそうだし、仕事もだんだんむずかしくなる。もう、負けをひきこんでバランスをとるなんて、キザなことをいっていられない。一生懸命、白星をひろっていかないと勝ち越すのもむずかしい。俺の今の年齢になったら、八勝七敗なんて、奇蹟に近いね。若いときの十三勝二敗くらいと同じことだ。だからもう今は、内容的には七勝八敗、六勝九敗目標。それ以上の大負け越しをしないようにということになる。」
    (尚、丁半博打の必勝法「一一三の法則」は目から鱗であった)
    昭和最後の「無頼派」ともいわれる著者ならではの、優しさに溢れた人生論である。
    (2023年1月了)

  • 劣等生に対する人生の生き抜き方を教えてくれる本。戦争、退学、博打打ちなど経験し「どろどろ時代」も過ごしてきた著者が、様々な場所で様々な人を観察してきた経験を基に、人生をしのぎ勝つ方法を教えてくれる。
    特に、9勝6敗論、先制点を取得、自分の駄目なところを守り育てる重要性は、いつも目の前のことや自分のことで必死になってしまう自分に対して、とても必要な観点だと感じた。


    この本に出会えてよかった。



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