異形の大国 中国―彼らに心を許してはならない (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (440ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101272276

作品紹介・あらすじ

「隣に中国という国が存在することは、天が日本に与え給うた永遠の艱難である」。平気で歴史を捏造し、領土拡大の野望を抱き、軍事力の強化に狂奔し、環境汚染を撒き散らすそして毒入り餃子事件ではなりふり構わぬ責任転嫁と開き直り。その狡猾な仮面の陰に隠された恐るべき戦略とは?人口13億の「虚構の大国」の真実を暴き、わが国の弱腰外交を問い質す。著者渾身の中国論。

感想・レビュー・書評

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  • いやぁ、ずいぶん読みごたえありました。
    内容が古い(2005年から2007年)というのが残念だが、過去を振り返るのにはよい。
    安倍さんに対してすらかなり厳しいことをおっしゃっている櫻井さんですが、今の菅内閣に対しては、きっと激しい憤りと絶望をお感じになっていることでしょう…。

  • 2018/02/01 17:50:22

  •  中国は、1971年10月に台湾の中華民国に替わって国連に席を得て以来、自国の領有する空間を陸に限定することなく、宇宙と海洋に向って拡大してきた。彼らの拡大政策を支えるのは、『戦略的境界』という考え方だ。国境線は固定化されているのではなく、軍事力、経済力、政治力、社会や文化の力、国民の意思の力などを合わせた国家の総合力によって変化するという考えだ。総合力が高まれば、戦略的境界は外へと膨らみ、中国の領有する陸も海も空も増えていく。反対の結果は、中国の領有する陸地、海洋、空間を狭めていくと彼らは考える。総合力の最重要の要は、軍事力である。
     中国が海軍力の増強と、宇宙開発に努めてきたのは、まさにこうした考えによる。彼らは貧しかったときも、国家の総合力の礎としての軍事力増強路線をゆるがせにすることはなかった。国民が飢えに苦しもうが、中国全土に内戦の嵐が吹き荒れ、幾千万の人命が失われようが、中国共産党は軍事力を増強し続けた。
     中国共産党の戦略目標は、台湾を併合して、アジアの盟主となり、米国の介入を許さず、日本をも支配することだ。そこに到達するためなら、事実の捏造も、歪曲も、開き直りも責任転嫁も彼らは手段を選ばない。中国伝統芸の2国間外交のみならず、国際社会全般において貫き通す力こそ彼らの政治力である。それはまた、彼らの文化力、文明力といってもよいだろう。そのような中国共産党の対外政策は、中国国民のはけ口となり、強い支持を集める。そこに強力な国民の意志力が形成される。中国共産党の政治のゆがみは、中国の文化、文明をゆがめ、国民の考え方までもゆがめている。そのように歪んだかれらが、強大な軍事力を持っているのである。
     そこで日本がなすべきことは明らかである。自らの力をつけるしかないのだ。日本が中国にも米国にも物を言えないのは、安全保障を米国に頼り、ついでに外交においても米国の意向を忖度しながら後追いをすることを長年続けてきたからだ。安全保障も外交も他国に大きく依存する国が、他国と対等に対峙し、まともに渡り合うことは出来ない。真の意味で独立国で無い国家は、どの国にも相手にされないのである。であれば、日本は真の意味で独立国にならなければならない。そのためには、日本国を構成する私たち日本人には、やり遂げなければならない課題がある。一言で言えば、まともな日本人になることだ。振り返ってみれば、戦後の私たち日本人は、余りにも祖国日本についての知識や理解を欠いてきた。祖国の歴史や価値観に背を向ける教育の中で、まともな日本人がはぐくまれるはずがない。日本の歴史を学び、日本文明を育んだ価値観を知った時、初めて私たちは日本人としての自覚を持つことができる。一人ひとりが日本人としての力を付けるとき、戦後、長きにわたって国家ではなかった日本に国家としての意識が生まれるだろう。国家としての意識があって、初めて日本の再生が可能になる。再生を果たした日本の前に、どんな問題が出来しようとも、日本と日本人は自らの力で問題を解決することができるのである。異形の大国の脅威にも、同盟国の方針転換にも、動じる必要の無い賢く強い国家になれるのである。

  • 中国は異星人なり。尖閣の問題はどうなったのか。民主党は? 自民はくだらない「罷免」論争。どうでも良いと思ったら仕舞だ。

  • 中国の戦略と戦術を説明し、日本の弱腰外交を質す。軍備を背景に威嚇するのではない。正当に話し合い、言いくるめられないようにすべき。それにしても中国の環境汚染はなんとかならないのか。中国産を食す気分が失せる。でも外食すると、絶対と言って良いほど、中国産に当たるのだ。2014.10.1

  • どうやら、この本は2010年に出版(ハードカバーの方で考えると2008年)されたものなので、少し話題は古めです。

    古め、と言っても安倍政権くらいの時期ですが。

    この本は400ページを下らない大著ですが、内容もとても密で興味深く、惹きこまれました。

    今、急激に発展を遂げている大国、中国。中国は、経済的に密着していて、もはや日本とは切っても切り離せません。

    櫻井よしこさんはまず靖国神社参拝問題などで中国の姿勢を解析して、読者にわかりやすく示します。

    中国の”国境=国力の大きさ”という考え方などの、中国外交の前提となるべき事実を提示してくれます。

    そのうえで、いかにして、もしくはどうして、中国は台湾との併合や、アメリカの勢力排除を行うかなどの問題を提起します。

    たくさんの取材の苦労が感じられるほど、裏付けのある前線にいる人たちへの取材も議論の材料に含められています。

    この本を読むと、中国の負の側面が理解できることと共に、日本国への興味や愛着がわき始めます。

    確かに、中国の外交はズルい。しかし、櫻井よしこさんは日本側の非も強調する。

    外交の弱さ。これは本書を読んでいて、嫌というほど突きつけられた。もちろん、中国の外交は卑劣で矛盾にありふれ、噴飯物である。けれど、それは彼らの地盤が彼ら自身が上手く固めているからだった。

    日本は、あまりにもへりくだり、譲歩する。これは日本人の良さであるとともに、弱点であると痛感しました。日本の外交は、自らの主張を貫く以前に主張がはっきりしない。

    これでは当然外交など到底不可能です。そんなことが何度も何度も過去に合ったようです。

    櫻井よしこさんは日本外交の過去からたくさんの例示を行い、説得力ある議論を展開します。

    南京大虐殺について、櫻井よしこさんは強く否定的で日本人としての誇りが感じられました。

    そもそも、僕はこの本を読むまでは南京大虐殺なんてどのようなものなのかわかりませんでした。怖い怖い。(っていうか事実じゃないっぽい)

    読者も櫻井よしこさんの熱意が強く感じられるはずです。

    個人的に、日本人であると誇りに思えるような部分もありました。

    P.340 の南京大虐殺否定についての北村稔さんの講演について。そこでは日本人は偉いな、と感じられました。

    P.360 も心温まりました。台湾の李前総統は、台湾が日本の支配下にあった時のことを「よかった」と語ってくれています。

    やっぱり、日本は正常化を潜在能力として秘めているんではないかな、と思います。


    とにかく、この本を読むと、日本への危機感を掻き立てられます。そして、日本をいい国にしていきたいと思えるようになります。

    読者がこの本を読んで、『中国はダメだダメだ』という思考に陥って欲しくないと櫻井よしこさんは思っていると思います。

    僕は、「中国はダメだダメだ」という思考はすなわち「中国人はダメだダメだ」という差別意識につながってしまうと思います。なので、われらが憎むべきは「中国共産党政府」と痛感しながら意識したいです。

    ★★★★★

  • 志の書、きちんとした分析にきちんとした、正しい憤りがある。

  • そのソフトな語り口とは裏腹に、バリバリの右…否、超保守派の論客の
    著者である。テレビのコメンテーターとして出演している時は、あの口調
    なので聞き流してしまうことも多いのだが、読むという行為は著者の思想
    を考える時間を与えてくれる。

    「隣に中国という国が存在することは、天が日本に与え給うた艱難である」

    この記述だけで大いに笑える。まぁ、笑っている場合じゃないくらいに中国
    による世界征服は着々と進んでいるようなのだが。

    日本のODAでアフリカの資源を買いまくり、その同じアフリカの国々に武器を
    与える。アジア諸国とは領土問題を引き起こし、日本を抑え込む為に先の
    大戦を持ち出す。その為の歴史の捏造なんて当たり前だ。

    日本の教科書問題や歴代首相の靖国参拝にイチャモンをつけて、中国国内
    の反日感情を煽る。周期的に中国国内で持ち上がる反日運動なんて、もう
    恒例行事だよね。

    日本外交はこんな中国に毅然と対応しなくてはいけないというのが著者の
    言いたいことなのだろうが、引用されている資料の偏りを考慮に入れると
    まるごと信じるのは危険な気がする。

    それでも、中国という国はやっかいな隣国に変わりはない。そんな中国を
    つけあがらせた責任の一般は現政権にもあるだろうな。

    なんせ、尖閣諸島沖で発生した中国漁船による事件をうやむやにしたの
    だから。あんなことをしてしまったから、ただせさえならず者国家なのに
    増長しちゃったんじゃないのか。

    そういえば、毒入り餃子事件でも結局は日本に謝罪してないよな、あの国…。

  • 国益とは何かを考えさせられた一冊だった。日本の政治、日本の外交が招いた国益の喪失はあまりに大きく、取り返しの難しい局面にきていることを痛感した。中国の強かさと厚顔ぶりに驚嘆し、先を見通せない日本の政治家にあらためて落胆した。

    また、作中に何度も何度も出てくる、「集団的自衛権」、「靖国参拝」について、私は賛成の一人です。

  • 「隣に中国という国が存在することは、天が日本に与え給うた永遠の艱難である」。
    そんな一文で始まる中国論。
    歴史の捏造、領土拡大の野心、軍事力拡大、環境汚染etc...中国がどのように考え、
    実際に行動してきたか、あるいは今後していくかが論じられるとともに、
    日本の弱腰の外交についても厳しく指弾する。

    日米関係の分断、台湾への侵略、外交カードとしての北朝鮮…といった話は、
    ふとここ数年の出来事を振り返れば、思い当たる節が無数にあり、
    中国の強かさ、えげつなさが際立ってくる。
    本書は文庫版だが単行本が2008年に出版されていることを踏まえれば、
    当事から尖閣諸島の問題などを指摘していた著者の議論は慧眼と言うべきだろう。

    思えば、外交は国益のためになされるべきであり、
    当たり前のことは当たり前のこととして実践され、議論される必要がある。
    一方で、日本においては周辺のアジア諸国との関係はデリケートな話題でもあり、
    忌避されるか、曖昧にするかでずっと数十年来ていたのだろうと痛感させられる。

    皮肉な話だが、こうした中国の手法を学ぶことがむしろ近道なのかとも思える。
    そのためには、「戦略」を教育するためのシステムが必要なのではなかろうか、
    などと思いを馳せた。

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著者プロフィール

ベトナム生まれ。ハワイ州立大学歴史学部卒業。「クリスチャン・サイエンス・モニター」紙東京支局員、日本テレビ・ニュースキャスター等を経て、フリー・ジャーナリストとして活躍。『エイズ犯罪 血友病患者の悲劇』(中公文庫)で大宅壮一ノンフィクション賞、『日本の危機』(新潮文庫)を軸とする言論活動で菊池寛賞を受賞。2007年に国家基本問題研究所(国基研)を設立し理事長に就任。2010年、日本再生に向けた精力的な言論活動が高く評価され、正論大賞を受賞した。著書に『何があっても大丈夫』『日本の覚悟』『日本の試練』『日本の決断』『日本の敵』『日本の未来』『一刀両断』『問答無用』『言語道断』(新潮社)『論戦』シリーズ(ダイヤモンド社)『親中派の嘘』『赤い日本』(産経新聞出版)などがある。

「2022年 『わが国に迫る地政学的危機 憲法を今すぐ改正せよ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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