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Amazon.co.jp ・本 (112ページ) / ISBN・EAN: 9784101273518
作品紹介・あらすじ
ある外国語大学で流れた教授と女学生にまつわる黒い噂。乙女達が騒然とするなか、みか子はスピーチコンテストの課題『アンネの日記』のドイツ語のテキストの暗記に懸命になる。そこには、少女時代に読んだときは気づかなかったアンネの心の叫びが記されていた。やがて噂の真相も明らかとなり……。悲劇の少女アンネ・フランクと現代女性の奇跡の邂逅を描く、感動の芥川賞受賞作。
みんなの感想まとめ
テーマは、孤立する現代女性と歴史的な迫害を受けた少女の対比を通じて、真実や信じることの意味を探ることです。物語は、大学のスピーチコンテストを舞台に、主人公のみか子が『アンネの日記』の暗記に取り組む中で...
感想・レビュー・書評
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赤染晶子さん初読です。文庫筋書きの「悲劇の少女アンネ・フランクと現代女性の奇跡の邂逅」に惹かれました。本作は100ページに満たない中篇小説で、2010年の芥川賞受賞作です。赤染さんは2017年、42歳で早世されました。
ナチ体制下で究極の迫害を受けたユダヤ人と、大学のスピーチ・ゼミで孤立させられる主人公の対比が斬新で興味深かったです。その物語の切り口は、異質な存在を排除しようとする根源的な人間の性(さが)に通じ、普遍的問題なのかと思いました。ただ、隠れ家のアンネ・フランク一家の密告と、現代の閉鎖社会での告げ口では隔たりが大きく、そもそも比較にならない恐怖レベルでしょうが…。
こんなレビューを書くと、重く暗い堅苦しい物語に思えますが、京言葉の会話にユーモアがあり、一文が短かくリズムもあるので読みやすかったです。
そして『アンネの日記』が、強制収容所に送られた悲劇の少女の話だけではない優れた文学であることに、今一度目を向ける必要性を感じます。
アンネ・フランクに造詣が深く、様々な著書もある小川洋子さんの「100分de名著」ブックスの名解説を思い出しました。奇しくも、本作が候補となった芥川賞の選考会で、選考委員であった小川さんが本作を強く推したことも頷けました。
『アンネの日記』の奥深い世界の中に、主人公はアンネの真実の言葉、人を救う言葉を見つけたのでしょう。社会に蔓延る差別や偏見に惑わされず、困難な時代を生き延びていくヒントがあるんですね。
80年前のアンネの言葉に再び光を当てる、とても奥深い作品でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
芥川賞受賞作のこの本は非常に薄い。
読みづらいかなと思ったが、書き出しが台本のト書きのようですんなり入り込むことができた。軽やかな文章の合間に笑いも上手く散りばめてある。
ここは京都の外国語大学。授業中に乱入してきたのはドイツ語学科のバッハマン教授。スピーチコンテスト(暗唱の部)の課題『アンネの日記』の一節を明日までに暗記するよう告げ教室を出て行く。
主人公のみか子は暗記しながらアンネの心の叫びに触れる。学園に流れる黒い噂に翻弄される自身をリンクさせながら…
自分の言葉を獲得していく終盤が良かった。
乙女という生き物は「信じられな〜い」と驚いて見せ、誰よりもそれを深く信じる。
自分とは違う異質な存在をきっちりと認識する。
文中で繰り返し目にする「乙女」は噂が真実であるかどうかより「信じる」ことに同調を求める。「乙女たち」から排除されたものは密告される運命にあると怖さも感じさせる一冊。
著者が2017年、42歳の若さで亡くなられたと知りとても残念に思う。他の本も読んでみたい。
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外大生のスピーチコンテストまでの日々と、アンネの日記に綴られた日々。
忘れてはならないことが何か、真実の追求。 -
芥川賞を受賞したのは2010年。その時から気になっていた本。難しかった。
乙女とアンネ・フランク。密告。アイデンティティ。キーワードはあるけど、あの人形にどんな意味があるのか、麗子様の存在や言動はなんなのか、よく分からずに読み進めた。麗子様は始め、エースを狙えのお蝶夫人のようだと思いながら読む。教授は宗像コーチかな。そう思って読むと、乙女のことも分かってくるような気がする。
アンネの日記、しばらく読んでいない。完訳、というかアンネの日記の最初のものしか読んでいない。アンネが戦争が終わったらオランダ人になりたいと書いていたことは初めて知った。ユダヤ人であることをどう自分の中で取り扱うか。アンネのアイデンティティ。
そのあたりからとても難しいと感じた。人形の誘拐に至っては、謎でしかなかったが、読んでいて苦痛になる難しさではなかった。難しくて、理解はできていないのだが、読んでいて楽しいと感じる不思議な本だった。
赤染さんは2017年に亡くなられているので、今出版されているものが全てだ。いつか、読んでいきたい。
分からない、難しい、理解できない。そんなことも含めて楽しんだ稀有な読書体験だった。 -
⚫︎受け取ったメッセージ
「真実とは乙女にとって禁断の果実だった。」
⚫︎あらすじ(本概要より転載)
ある外国語大学で流れた教授と女学生にまつわる黒い噂。乙女達が騒然とするなか、みか子はスピーチコンテストの課題『アンネの日記』のドイツ語のテキストの暗記に懸命になる。そこには、少女時代に読んだときは気づかなかったアンネの心の叫びが記されていた。やがて噂の真相も明らかとなり……。悲劇の少女アンネ・フランクと現代女性の奇跡の邂逅を描く、感動の芥川賞受賞作。
⚫︎感想
すごい短編小説だった。ユーモアとシリアスをこのように巧みにブレンドし、密告する側とされる側という葛藤と統合を描く。深刻なホロコーストというテーマを自分たちの生活に引きつけて考えることは、普段の生活ではなかなかできない。それを「乙女」な女子大生という「清純」を密告者側とと置きかえ描かれた作品。いつ誰が「乙女」と見なされなくなるか、わからない。
真実は多くの人が夢見ていたい中で隠されなくてはならないものである。
人は同じ美しいと思える幻想をみんなで信じて安心したがる生き物だということを改めて思った。
面白く読ませてくれる漫画風なところがありながら、実はメタファーを盛り込み深いテーマを描いている。ぜひ再読したい。 -
本の紹介にもある通り、「アンネ・フランクとの邂逅」ということばがぴったりの物語でした。しかも、生の切実感を伴った「邂逅」です。
意識的なのか、描かれている世界が少女チックな世界で少々とっつきにくかったのですが(笑)、解説の方も書いておられるようにスポ根物に近い背景と、ところどころに繰り出されるユーモア(特に、バッハマン教授の常軌の逸脱ぶりが面白い!)で、何とか物語に馴染むことができました。(笑)中盤の衝撃的告白には、自分もみか子同様、「ええっ!」と思ってしまいました。(笑)
社会の中で認められ働きたい。しかし、その「社会」は人を「他者」として疎外する側の集団でもある。そして、いったん「他者」と指定されてしまったら・・・。それでも、やはり「社会」の一員でいたい。しかし、名前のない「他者」ではなく、「私」と認めてくれたのは、皮肉にも密告者だった!「ユダヤ人 アンネ・M・フランク」であると!主人公・みか子の現実の世界と、「アンネの日記」のスピーチを通して絡み合う2人の切実な想いを、綺麗に融合した作品だったと思います。 -
アンネフランクを密告したのは誰か。
そして、それはどんな意味をもつのか。
最後クライマックスほんとによかった。 -
なんということだろう。
「じゃむパンの日」でファンになり手に取った、赤染さんの数少ない著書。ユダヤ人であることを否定され短い人生を生きた、アンネ・フランクの日記を読み解く女子学生の話だ。
彼女を美化してはいけない。彼女の人生を悲劇だとひと言で済ませてはいけない。ユダヤ人として生きることを許されなかった人たちの名前。みか子の葛藤はわたしたちが抱えなければならないものでもある。なぜかわたしも、彼女たちと同じ壇上にひとりで立っている。忘れてしまう恐怖を突きつけられて身動きひとつできないでいる。
まばたきも邪魔になるほど物語に入り込んでしまった。
何気なく選んだ本に、こうして現実の目の前に放り出されることがある。
赤染さんは今の世界、戦争をみて、どんな思いでいるだろう。 -
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『アンネの日記』を読んだことはないけれど
アンネの日記をベースにした、女子の、いや、乙女の群れのお話。
京都の外語大学では、スピーチゼミのスピーチコンテストが控えている。スピーチゼミの乙女たちは、外大の中でも乙女の精鋭部隊である。みか子は、憧れの麗子様の隠れファンだ。
ある日、事件が起きる。みか子は乙女を剥奪されるのか。乙女の群れから迫害されるのか。匿わなければならないのか。みか子は密告者なのか、密告されるのか。
みか子が練習するアンネの日記の暗唱は、あるところで止まってしまう。次の一言が出てこない。その言葉、とは。
乙女の群れから、名前を得ること。ひとりの“個”として存在すること。
って、たおやかな京都弁で、真剣にやり取りするんだけど、なんか、かわいい。
そうそう、乙女の群れって、こんなささやかな微風にも向きがくるりと変わる。
スピーチゼミの教授、バッハマン教授は激怒する。
「ミカコ!あなたは血を吐きましたか!」
「いいえ。わたしは血を吐いていません」
どんなスピーチゼミだよ。
ところどころ、本人たちの真剣さとはうらはらに、なんか、笑っちゃう。
芥川賞受賞作、ぜひ乙女たちを感じてほしい!
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ナチスの政権下で奪われてしまった名前たち、そんな中でアンネ・フランクは決して彼女の名前を失わなかった。
異なるものとして排除されてしまうという歴史は繰り返されていると思う。そんな世界でどのように生きていくのかを再度考えるような作品だった。 -
短めの文章のリズムと登場人物たち(特に教授)の強い言葉が強く印象に残った。
主題となっている『アンネの日記』とともに、読み継がれて欲しい本。
『アンネの日記』は未読の状態だと「悲劇的な少女」のイメージを持ち、実際に読むとあまりに等身大な小女性に驚くもの(と勝手に思っているけれど)。
本書はその後もう一度、余計なイメージを捨ててアンネを読み、アンネと向き合う時に最適ではないかと思う。 -
この著者の別の作品も以前低評価していたのを思い出す。かなり抽象的な物語世界と短文で畳み掛けるスタイルの組み合わせがどうにも性に合わない。アンネの日記や怪人21面相という耳目を集める題材を使いながら、著者の構築した世界とその独特の論理に至るところでつまずき、引っかかってしまう。結果としてお話が何も入ってこないのだ。そもそもタイトルからしておっさんの読む小説ではないのだろう。
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いつか読もうと思いながら忘れていた。まさか作者の早すぎる死でそれを思い出すとは思わなかった。
密告者はあなただ。本書はひやりとするメッセージを送ってくる。
私たちが人生において演じている役割というのは成り行きにすぎないこと。私たちは他者との関係において、救済者にもなりうるし、密告者にもなりうる、そんな危うい生を生きていることを、『アンネの日記』というプリズムを通して暴いてみせた。
とこう書いてみたが、まだまだ言い足りないことがたくさんある。再読したい。 -
#読了
#乙女の密告
#赤染晶子
あんなにもエッセイは爆笑しながら読めたのに、このたった100ページ程しかない小説が読むのに時間がかかった
読み終えた今も、まだ意味が分からない
うーん、、、やっぱり芥川賞て難しいのね -
外語大学でのスピーチコンテストに向けてのスパルタ教育。熱心に取組む乙女達の間で起きる噂と真実…そして密告。スピーチの題材『アンネの日記』のユダヤ人と乙女達が重なり、さらに『密告』が主人公みか子と麗子様を苦しめる。15歳の若さでこの世を去ったアンネ・フランク…彼女の書いた日記がこれだけの影響力をもって後世に受け継がれているとは。彼女に教えてあげたいですね。
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ナチス政権下で異分子として個の名前を奪われた人々。毎日の日記の最後に記したアンネ・フランクという名前は、悲劇に抹消された人々にも名前があったんだと語ってくれる。
乙女は日々に翻弄されながら、自分の名前を探し続ける。
真面目な文体にユーモラスが顔を出してくる雰囲気が大好きだった。乙女とは乙女らしからぬものを好む生き物なんだなぁ。 -
学生たちから「麗子様」と呼ばれている女子学生が「ほな!」とか関西弁使うところや、
バッハーマン教授が、誘拐された人形にモーツァルトを聞かせてほしいと懇願するところなど、
ユーモラスな場面がある一方、
バッハーマン教授のアンネの日記考は考えさせられた。
確かに、日本での「アンネの日記」の扱い方は、かわいそうな乙女の物語、というもの。
この本で、アンネ自身のアイデンティティに関する記述もあったと知り、2年間もの潜伏生活を送る中で、よほど自分の心と向き合ったんだろうなぁ・・・と想像しました。
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