重力の都 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (177ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101274027

感想・レビュー・書評

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  • ぞくっとする。神的なものが欲望を持って存在し、見えない力によって物事がそうなっていくような連作短編でした。

    表題作に出てくる、伊勢に葬られ溶けて骨になった御人の気配がずっと漂う。時代が変わり人が変わっても、影響を受けるものはその力によって動かされてしまう。

    『春琴抄』への和讃と、あとがきにありました。土地にまつわる霊気と『春琴抄』から生じる二つの重力場をイメージしました。


  • 谷崎潤一郎『春琴抄』へのリスペクトを込めた連作短編集。
    端的に言って極上。作品の持つ神聖さや美しさにゾクゾクする。あとボリュームが個人的に丁度良い。
    同氏の文体をなぞり、句読点を排した長文が続く構成だが、内容と整合が取れている。
    土臭く滾るような雰囲気が作者の魅力だが、後期にかけて現れる本作の様な神話めいた雰囲気は非常に好み。

  • 谷崎潤一郎チックだなと思えば文末にその旨記載あり。

  • 谷崎潤一郎の「春琴抄」をオマージュして書いた作品群とのことで、全体的に耽美的(いわばエロティック)。
    しかし、谷崎潤一郎と決定的に違うのは、この作品群は良くも悪くも埃くささを感じさせる。谷崎潤一郎のような洒脱さを感じさせない。
    個人的には、実験的な作品群だったのかと感じる。
    紀州サーガのような匂い立つような人間臭さはなく、かと言ってつまらない話でもない。
    中上健次らしさを求めると、少し肩透かしを喰らわされた感じになるかもしれない。

  • 谷崎の「春琴抄」への和讃を込めた連作短編集。あまりに露骨な性描写にたじろぐ。盲目や針といったところに谷崎作品の香りを嗅ぐこともできるけど、何を読んでもやはり中上健次。男女の情交と愛欲は谷崎にはない放逸と過剰な力があり、そこに引きずられ最後まで読んでしまう。

  • 連作「重力の都」は谷崎の「春琴抄」への心からの和讃である―作者はあとがきにそう記している。つらつらと長い文体はそれゆえに図られたものだが、これがどうにも肌に合わなかった。読みにくい。
    しかも谷崎というよりは(もちろんモチーフなどからはそれを感じるのだけど)、阿部公房の「砂の女」を読んだ時のような不快感とうっすらとした恐怖を感じてしまった。

  • 短編集。谷崎へのオマージュを冒頭で表明しているだけあって、刺青や盲目のエピソードが多くちりばめられていました。しかし表題作「重力の都」は、谷崎よりむしろ折口の「死者の書」を彷彿とさせられましたが。個人的には幼い姉弟の歪んだ成長を描く「ふたかみ」が印象的だったかな。このひとにしては珍しく中性的な美少年が主人公の「よしや無頼」も異色でした。

    ※収録
    重力の都/よしや無頼/残りの花/刺青の蓮花/ふたかみ/愛獣

  • 中上健次の作品は全て読むべきですが中でも個人的にはこれが1番お勧めです。
    本書は確か谷崎潤一郎へのオマージュとして捧げた作品だったように記憶しているのですが、中上健次の文学的ルーツを知るにも大きな役割を持っています。

  • 11/7

  • 中上による谷崎へのオマージュ。短編集の極北。中上の描く人物は濃密濃厚で儚い生を謳歌する。

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著者プロフィール

(なかがみ・けんじ)1946~1992年。小説家。『岬』で芥川賞。『枯木灘』(毎日出版文化賞)、『鳳仙花』、『千年の愉楽』、『地の果て 至上の時』、『日輪の翼』、『奇蹟』、『讃歌』、『異族』など。全集十五巻、発言集成六巻、全発言二巻、エッセイ撰集二巻がある。

「2022年 『現代小説の方法 増補改訂版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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