日本文学100年の名作 夢見る部屋 (第1巻 1914-1923) (新潮文庫)
- 新潮社 (2014年8月28日発売)
本棚登録 : 278人
感想 : 20件
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
Amazon.co.jp ・本 (496ページ) / ISBN・EAN: 9784101274324
感想・レビュー・書評
-
大正3~12年(1914-1923)までの10年間の、短編アンソロジー。読んだことがあるのは森鴎外と芥川龍之介くらいなので、大正時代のいろんな作家の作品が読めて新鮮だった。好きなのは芥川龍之介の「妙な話」(オチがいい)、長谷川如是閑「象やの粂さん」(明るい語り口ながら、金かプライドかという現代に通じるテーマを感じる)、稲垣足穂「黄漠奇聞」(幻想的な世界観)。江戸川乱歩「二銭銅貨」も良かったので、他の乱歩作品も読みたい。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
どの短中編も明るくて面白かった。1914-1923年ごろ、大正時代の頃の世間の様子や文学の流行りを代表的な作家の作品で紹介しているような趣があった。このあと続くシリーズも読んでいきたい。表題作の夢見る部屋が特に面白くて、現代にも通じるものがあった。
-
新潮文庫100年を記念して出されたシリーズ。100年を10年ごとに分け、その年に書かれた作品を収録したアンソロジー。第1巻は1914年〜1923年。収録作家は荒畑寒村、森鴎外、佐藤春夫、谷崎潤一郎、宮地嘉六、芥川龍之介、内田百閒、長谷川如是閑、宇野浩二、稲垣足穂、江戸川乱歩。
代表作と呼ばれるものが収録されている訳でなく、そのためもあって初めて読む作品が多かったです。それどころか初めて読む作家も。それがこのアンソロジーの魅力にもなるでしょう。活字も大きめで組まれているので、全体的に贅沢な雰囲気が漂います。
10年という時代を切り取っているので、時代の持つ空気感も収められています。鬱々とした自分語りが多く目に付くのは、そういうものなのでしょうか。しかしそんな鬱々としたものも読まされてしまうのです。これが小説の持つ力なのでしょうか。
そんな中、足穂の「黄漠奇聞」のキラキラと煌びやかな幻想世界が印象に残りました。これもきっと時代の空気なのでしょう。
また長谷川如是閑の「象やの粂さん」は物寂しさとカラッとした明るさが同居した感じがあり、悪夢のようなのに思わず笑ってしまうような内田百閒の「件」、独裁者的才能を持つ子どもの怖さが静かに迫る谷崎潤一郎の「小さな王国」、久々に読み返してその面白さを改めて感じた乱歩の「二銭銅貨」が印象的でした。 -
父親 / 荒畑寒村 著
寒山拾得 / 森鷗外 著
指紋 / 佐藤春夫 著
小さな王国 / 谷崎潤一郎 著
ある職工の手記 / 宮地嘉六 著
妙な話 / 芥川龍之介 著
件 / 内田百閒 著
象やの粂さん / 長谷川如是閑 著
夢見る部屋 / 宇野浩二 著
黄漠奇聞 / 稲垣足穂 著
二銭銅貨 / 江戸川乱歩 著
著者:荒畑寒村(1887-1981、横浜市、労働運動家)、森鷗外(1862-1922、島根県津和野町、小説家)、佐藤春夫(1892-1964、新宮市、詩人)、谷崎潤一郎(1886-1965、中央区、小説家)、宮地嘉六(1884-1958、佐賀市、小説家)、芥川龍之介(1897-1927、中央区、小説家)、内田百閒(1889-1971、岡山市中区、小説家)、長谷川如是閑(1876-1969、江東区、ジャーナリスト)、宇野浩二(1891-1961、福岡市中央区、小説家)、稲垣足穂(1900-1977、大阪市、小説家)、江戸川乱歩(1894-1965、名張市、小説家)
編者:池内紀(1940-、姫路市、ドイツ文学者)、川本三郎(1944-、東京、評論家)、松田哲夫(1947-、東京、編集者) -
池内紀・川本三郎・松田哲夫さん編集のセレクト。みなさま1940年代生まれ。その年代が微妙に影響していて、同年代わたしの好みの短編が集められていることになるのはもっともだ。
ひとつひとつ、うなずきながら読んだ。
その中でも一番印象的なのは、やはり宇野浩二『夢見る部屋』
書き手のこだわりや好みが変わっていて、ちょっとめんどくさい性格。と読めるのだが、誰にでも思い当たるところのある心理でもあるなあと思う。
売れない作家が家を一軒借り、自分だけの部屋を持つのだが、それを誰にも見せたくないけれども、妻もいれば、お手伝いさんもいるのでおちおちできない。
すごく見せたくない事にこだわっているのだけれど、最初は人に見せられない事情があるのでもないよう。「閉じこもり」的な自分空間の夢想らしい。
ところが、しばらくするとこんどは外部にひと部屋を借りる算段をする。
短編にこんな文章がある。
「この世で何が一番好き」かと聞かれれば私は「山と女と本」と答える、と。
あらら、本音はそこか?ではそこで逢引きするのね。と思いきやその借りた部屋に女性を招くのでもないのだ。
山の絵をかざり、本棚に好きな本を並べ、お茶を自分で入れ、万年床で原稿を書いたり、本を読んだりするだけで悦に入っている。狂ったように楽しんでいる。
自分の好きなことを、心行くまでしてみたい。それが出来れば苦労はないよ。
人間だれしも持っている孤独癖や現代の人間心理はそういう傾向になりそうで気になるなあ、という展開がおもしろい。 -
p.384 宇野浩二「夢見る部屋」
どんな俗な、どんな下等な、ものでも、それが音楽と名のつく限り、世に音楽ほど人の心を誘うものはない。 -
個人的に宮地嘉六「ある職工の手記」がすごく面白かった。佐賀出身なので、大正時代の佐賀ってこうだったんだとか、武雄から長崎まで歩くとかすごいなあとか、小さなことに驚きがあり、もっと宮地さんの短編が読みたい。
-
佐藤春夫、谷崎、江戸川乱歩あたりがよかった。二銭銅貨はどこかカラスの親指を思わせるどんでん返し。あと、稲垣足穂を初めて読んだが、この独特な世界観はすごいなぁ。ギリシャ牧野もそうだが、大正時代ってこういった幻想風味の作品がけっこうあるんだよなぁ
-
新潮文庫100年出版企画ということで、1年につき1作品を選んで100作を全10巻でまとめるよ!という趣旨のアンソロジーです。有名なのもあるし、聞いたことない作家のもあるし、有名な作家だけどあまり知られてないのもあるし…と色々つまってます。
まず、言いたいのは字が大きい。最近のは大きくて読みやすいらしいですが…なんか損した気分にもなるような…
谷崎潤一郎の「小さな王国」は面白かったですが、どっかで読んだような記憶も。表題作「夢見る部屋」は、名前こそほのぼのしてますが、正直この男はちょっとはっきりいってクズでは…いや、ふとんでゴロゴロしながら栗饅頭食べて本読んで暮らしたい、というあたりにはすごく共感しましたけど…。まあ、100年近く前の話なんで… -
明治、大正、昭和の香り。有名な作家でも読んだことがない、あるいは遠い若い頃に読んだもののあまり記憶にないという作家とその作品。そのような作家と作品に出会うよいきっかけになった。
-
大正時代の小説が楽しめる.「寒山拾得」は既読だったが、他の10本は始めてだ.谷崎の「小さな王国」では、教師の貝島が沼倉の動きに取り込まれる.百間の「件」は幻想的で独特の雰囲気が楽しめる.乱歩の「二銭銅貨」は推理過程の描写が素晴らしい.なかなか読めないものばかりなので、第2巻以降を期待する.
-
文学
-
1914年から1923年にかけて書かれた日本文学から11篇を収録。個人的に面白かった順に。
宇野浩二「夢見る部屋」
表題作を一番にするのもベタだけど、個人的にグッと来たので。周囲の目を執拗に気にかけるところ、そして恋というものの捉え方に、ひどく共感した。
宮地嘉六「ある職工の手記」
プロレタリア文学の先駆。でもそういった背景よりも、登場人物の心情の機微がよく描かれていた。駅で主人公が叔父と会う場面など、特にそう思う。
谷崎潤一郎「小さな王国」
異分子が集団を支配していく話。普遍的なテーマ、でもそこは流石の大谷崎。学校という空間の中、先生の目線を通して見事にそのテーマを描いていた。
長谷川如是閑「象やの粂さん」
江戸ことばのセリフは活き活きとしていて、巻末でも言われていた通り、落語のような面白味があった。
内田百閒「件」
既読だったので、初読の作品と比べると順位は少し低い。けれども奇妙なとぼけた雰囲気がとても楽しい一篇。
佐藤春夫「指紋」
幻想的で、蠱惑的で、上質なミステリ。少し病んでいるような主人公の造形がよかった。ただ少し冗長な気も。
稲垣足穂「黄漠奇聞」
冒頭のイメージの広がり具合が少し急なように思った。月とか星といったタルホ特有のモチーフが掴めたあたりからは面白く読めた。
芥川龍之介「妙な話」
芥川が得意とした、所謂ドッペルゲンゲルもの。この一篇も面白いが、このジャンルの彼の作品の中にはもっとよいのがあった気がする。
荒畑寒村「父親」
子を思う父親の心情、その健気さに感動した。もう少し歳をとってから再読したい。
森鴎外「寒山拾得」
最後に附いている「縁起」も含めて、少し説教臭かったのが気になった。物語そのものは面白かった。
江戸川乱歩「二銭銅貨」
こちらも既読。多岐に亘る乱歩作品の中では地味な方なのかな、と。トリック自体にはいつ読んでも新鮮味を覚える。
一応順位づけはしたけれども、どの短篇も一様に面白かった。 -
気の向いた時に一編、また一編と読みました。乱歩の『二銭銅貨』以外は初読でしたが、意外に面白い作品もあったりして楽しめました。
-
読みそびれていた「寒山拾得」と「二銭銅貨」を読めた。
谷崎潤一郎の「小さな王国」は不気味だ。谷崎の小説はあまり読まないが、読む度ごとに感心させられる。荒畑寒村の
「父親」は父と妻への思いが分かる。 -
こういうアンソロジーは存在自体に価値があると思っているものの、既読の作品も含めどこか物足りなかった。
中では、『件』『黄漠奇聞』あたりがよかったように思う。 -
新潮文庫100年を記念して出版された全10巻の中短編集の第1巻。1914年から1923年の10年間に書かれた11編の中短編をセレクト。荒畑寒村、森鷗外、谷崎潤一郎、芥川龍之介、内田百閒、江戸川乱歩など錚々たる作家の作品が収録されている。荒畑寒村のリズムを感じる文体、佐藤春夫のミステリー、そして、とどめに江戸川乱歩の『二銭銅貨』。百年前の古き日本を感じるアンソロジーである。
荒畑寒村『父親』。心地よいリズムを感じる文体は、現代作家では決して綴る事の出来ない文体であろう。東京の大久保から転居した息子を慮り、父親が息子を尋ねる。
森鴎外『寒山拾得』。中国の古い物語に自らの宗教観を論じたような短編。時代を感じる文章なのだが、丹念に言葉を選び抜いたかのような美しさを感じる文章である。
佐藤春夫『指紋』。佐藤春夫のミステリー短編。ロンドンで阿片窟にハマり、帰国した友人の不可解な行動は…
谷崎潤一郎『小さな王国』。転校して来た生徒にいつの間にか学級を支配されていく、恐怖短編。
宮地嘉六『ある職工の手記』。時代のせいなのか、13歳という若さで実家を出て、職工にならんとする清六。清六を慮る父母…懐かしさとともに苦い思いが心を過るような短編。
芥川龍之介『妙な話』。芥川龍之介らしい奇妙な話。誰かの企みなのか、白日夢なのか、不思議な世界に浸る愉悦。
内田百閒『件』。世界の愚かさを浮き彫りにするかのように僅か三日間しか生きる事の無いという件の予言を期待する人びとをユーモラスに描く。小松左京の短編にも『くだんのはは』というのがあったのを思い出した。
長谷川如是閑『象やの粂さん』。玩具の象を売る粂さんに訪れた転機。
宇野浩二『夢見る部屋』。滑稽なくらい四畳半の小さな空間にこだわる男を主人公にした表題作。
稲垣足穂『黄漠奇聞』。何処かの砂漠の中の王国を舞台にした物語。
江戸川乱歩『二銭銅貨』。暗号をテーマにした日本のミステリーの最高傑作ではないだろうか。変に捏ねくり回さずに簡潔に短編としてまとまっているところに面白さがある。 -
タイトル通り、まさに『100年の名作』が並んだアンソロジー。全10巻が予定されているのも長く楽しめそうで期待大。
第1巻には森鷗外、谷崎潤一郎、芥川龍之介、そして江戸川乱歩など。読み終えたあとの満足度は非常に高い。
アンソロジーの作品
