日本文学100年の名作 第2巻 1924-1933 幸福の持参者 (新潮文庫)
- 新潮社 (2014年9月27日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (500ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101274331
作品紹介・あらすじ
関東大震災からの復興、昭和改元、忍び寄る大戦の影――。この10年だから生れた、厳選15編。中勘助「島守」岡本綺堂「利根の渡」梶井基次郎「Kの昇天」島崎藤村「食堂」黒島伝治「渦巻ける烏の群」加能作次郎「幸福の持参者」夢野久作「瓶詰地獄」水上瀧太郎「遺産」龍胆寺雄「機関車に巣喰う」林芙美子「風琴と魚の町」尾崎翠「地下室アントンの一夜」上林暁「薔薇盗人」堀辰雄「麦藁帽子」大佛次郎「詩人」広津和郎「訓練されたる人情」
感想・レビュー・書評
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学生時代に国語国文学科だったので、近代の作家さんは広く読んだつもりだったけど、このシリーズには知らない作家さんの作品や、有名な作家さんの作品でも知られざる名作が結構収録されていて、こんな小説があったのか、と嬉しい驚き。
巻末の「読みどころ」も読書欲を掻き立てられるし、脚注がそのページの端にあるのも、いちいち注を探してページをめくらずにすんで読みやすい。
手練れの読み手にも、日本文学初心者さんにもおすすめできるシリーズだと思う。
加能作次郎『幸福の持参者』、水上瀧太郎『遺産』、大佛次郎『詩人』が印象的だった。
ハッピーエンドでない作品からも、関東大震災や、大戦の気配の中でも生活していく人間のいじらしさを強く感じた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
とにかく文字が大きいのが嬉しい(笑) どの作品も初読みでしたが、前巻にくらべると言い回しとか読みやすくなっていて(それが文学の成長なのかどうか解りませんが)、現代に近づいてるんだな、等と変な感想を持ったりしました。ともあれ、良かったです。
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『100年の名作』に相応しい短篇が並ぶアンソロジーの第2巻。収録作家は中勘助、岡本綺堂、梶井基次郎、夢野久作、尾崎翠、上林暁など。
岡本綺堂、梶井基次郎、尾崎翠、上林暁の短篇は代表作かそれに近い定番。逆に夢野久作、島崎藤村、林芙美子はおっ、と思わせるセレクトで、バランスのいいアンソロジーになっている……というか、非常に『新潮社』らしいアンソロジーだよなぁ、と思う。 -
どの短編も良かった。夢野久作の「瓶詰地獄」はやっぱり好き。ほかの作品も笑えるやらしんみりするやらでやはり名作揃いだと思った。表題作の加能作次郎「幸福の持参者」や林芙美子「風琴と魚の町」が特に気に入ったのでもっとこの作者たちの作品を読みたいと思った。
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1924~1933年 関東大震災の復興、大正から昭和に、戦争の足音
(わたくしの生まれる直前の時代・・・)
口語体文学が発展途上にあって、こんなにも完成した短編が書かれていたとは驚きだ。
創作ながらに、しっかりとその時代、時代を捉えて生き生きと人間を再現させているので、面白いことこの上ない。
中勘助『島守』
『銀の匙』だけではない。
岡本綺堂『利根の渡』
梶井基次郎『Kの昇天』
元祖、幻想短編か。
島崎藤村『食堂』
震災復興には「食だ!」というフレーズが新鮮。
黒島伝治『渦巻ける烏の群』
これぞ埋もれたプロレタリア文学。
加納作次郎『幸福の持参者』
普通のことがいいなあ。
夢野久作『瓶詰地獄』
水上瀧太郎『遺産』
龍胆寺雄『機関車に巣喰う』
林芙美子『風琴と魚の町』
尾崎翠『地下室アントンの一夜』
シュールレアリスムで驚いた。戦前は昭和の初めだもの。
上林暁『薔薇盗人』
堀辰雄『麦藁帽子』
ちょっとプルーストの『失われた時を求めて』の一部を彷彿させた。
大佛次郎『詩人』
広津和郎『訓練されたる人情』
上林暁の『薔薇盗人』を読みたくて、図書館検索に引っかかった本。
新潮文庫で池内紀・川本三郎・松田哲夫編にて年代別に1~10巻がある。
全巻読みたい、興味がわいてきた。 -
中勘助『島守』A
島での孤独だが清々しい生活。危篤の報せも受けて。
岡本綺堂『利根の渡』B
盲人、針で復讐。
梶井基次郎『Kの昇天』S
間違いない。
島崎藤村『食堂』B-
黒島伝治『渦巻ける烏の群』B
シベリア出兵。つれないガーリャ。少佐。
加能作次郎『幸福の持参者』B-
蟋蟀いいねぇ。→うるさい!
夢野久作『瓶詰地獄』S
間違いない。
水上瀧太郎『遺産』A
地震が隣家の金貸しとの境界である塀を崩す。
そこから生じた友情。
それが町内会の集団圧力により、粉微塵となってしまう。いやーな話だが。
龍胆寺雄『機関車に巣喰う』S
これがこの本の中の大発見!
こんなにみずみずしくコケティッシュな文章があったとは。
「十三歳の花嫁!
花どころか蕾にもなってやアしない。――」
林芙美子『風琴と魚の町』B
尾崎翠『地下室アントンの一夜』S
間違いない。
上林暁『薔薇盗人』B
人情物。
堀辰雄『麦藁帽子』S
間違いない。
大佛次郎『詩人』A
スペクタクル。
広津和郎『訓練されたる人情』B
孕んでばっかの玉千代。 -
全10巻のセレクト短編集の第2巻。1924年から1933年の10年間に発表された短編15編を収録。戦争、関東大震災といった事変を背景にした作品が多いようだ。
中勘助『島守』。人間嫌いから湖に浮かぶ島に独り島守として移り住んだ私。静謐な自然の中でひっそりと暮す日々を描く。
岡本綺堂『利根の渡』。毎日、利根川のほとりに現れる座頭の目的は何か。ホラーチックな時代小説。
梶井基次郎『Kの昇天』。一面識しかないK君の死の理由は。人間の内面、精神世界に迫る作品。
島崎藤村『食堂』。関東大震災で焼き出された母親が息子が1年後に再建した食堂を訪ねる。震災が残した心の傷と未来に向けた希望が感じられる。
その他に黒島伝治『渦巻ける烏の群』、加能作次郎『幸福の持参者』、夢野久作『瓶詰地獄』、水上瀧太郎『遺産』、龍胆寺雄『機関車に巣喰う』。林芙美子『風琴と魚の町』、尾崎翆『地下室アントンの一夜』、上林暁『薔薇盗人』、堀辰雄『麦藁帽子』、大佛次郎『詩人』、広津和郎『訓練されたる人情』を収録。 -
1巻より明らかに作品の質が上がっている。(日本的な小ささばかりが感じられて好きになれそうにない作品もいくつかあったが)
特に、岡本綺堂、尾崎翠、堀辰雄あたりの作品が素晴らしい。