介護現場は、なぜ辛いのか: 特養老人ホームの終わらない日常 (新潮文庫 も 37-1)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (329ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101276113

作品紹介・あらすじ

かけた優しい言葉とは裏腹に、心の中では毒づいている。「我が儘言うなよ……」苛立つ職員。荒くなる作業。介護者、入居者共に我慢の24時間――。人は介護を受けるために生きているのではなく、生きるために介護を受けているはずなのに。齢50を過ぎてヘルパー2級を取得し、時給850円で働いた小説家が目の当たりにした、終(つい)の棲家の現実とは。老親を持つ世代必読のノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • 腰痛持ちが多い。若くないとできない重労働だが景気が良いと若者は来ない。リーマン不況でちょっと人材供給が増した。10年前でも¥850は最低賃金に近い。「立位のまま布オシメを替える」技能は和裁着付け以上の難易度と思うが布信仰/マニュアルもない、週2日勤務の者に入居者を顔で覚えろ、個別注意事項多い/正社員の夜勤は更に過酷。大規模チェーンが構築されマニュアルと労働規準がなくてはと思うが、コムスンが倒産した以上、手を出す大資本はないだろう。死ぬのを待つ設備/「私は…(特にセクハラ関連)」で1万字以上の長文の反響多し

  • ジャーナリストである著者が好奇心からヘルパー2級を取得し、中年初心者介護職員として特養ホームに勤務する、体験記。

    糞尿処理、食事介助、お風呂介助 といった、汚れ仕事や力仕事、年中休みなしの介護作業、事故や怪我にも最新の注意を払い、行事や記録や事務作業にも追われる。
    認知症や痴呆が進んだ入所者は何をするか分からないし、人では常に足りない。夜勤や残業で疲れが溜まった職員はストレスや過労で職場環境も悪化… っていいことない仕事にしか見えない。しかも薄給。

    最近介護施設で夜間に職員による暴行、殺傷事件が起こったが、いくつもの原因があるような気がしてならない。
    介護虐待が起こる背景には、過重な勤務、スタッフの老人や痴呆に関する知識の欠如、職員体制の法的不備など。

    保育士などもそうだが、人相手の気も使うし体力も使う仕事に対しての評価が低すぎるのではないだろうか。これでは誇りをもって長く勤めてスキルを上げていこうという前に辞められてしまうだろう。普通は人手不足なら給与水準が上がるはずだが、福祉予算の制度上上がりにくい仕組みになっている。国がなんとかしないと介護現場は苦しくなる一方だ。

  • 日本本当にやばいなぁ。ただでさえ凄惨な状況が今後一層ヤバくなるはずなので親を特養に何も考えずに入れるのはやだなぁと実感。

  • 本岡類 著「介護現場は、なぜ辛いのか」(特養老人ホームの終わらない日常)、2013.7発行。ホームヘルパーにせよ、施設介護にせよ、はたまた自宅で家族を介護する場合にせよ、もっとも大変なのは排泄介助、ウンコ、オシッコである。並んで大変なのは入浴介助。50歳を過ぎてヘルパー2級を取得し、自給850円で働いた作家(著者)の経験した介護現場。介護される人のわがまま、介護内容の大変さ、そして、その仕事の割りに安い手当て、だけでなく職場(介護する者同士)の人間関係も大変なようです。

  • 週二回・夜勤ナシのバイトで老人ホームに介護職員として入った著者。元から半年ぐらいで辞めるつもりだったから、仕事を本気で覚える気がない。仕事を覚える気がないから、必死で教えようとする上司と衝突してばかり。となれば、文中ににじみ出てくるものは、愚痴と不平不満ばかり。ほとんど参考になる話がなかった。

  • 仕事の関係で読みました。
    介護現場の大変さを語った本。人手不足で、先の見えない世界。その大変さは嫌というほど伝わってきた。
    これからどんどん高齢者は増えるのに、こんなことではいけないと感じた。
    でも、これ読んだら、これから介護の仕事に就こうと思ってた人でも、嫌になるんじゃないかなと思い、ちょっと複雑な気持ちになった。でも、それが現実なのだから、仕方ないといえばそうなのかもだけど…。

  • 半年間パートで働いたおじさんが体験した介護についてを悲観的に書いている。介護という仕事が悲観的なのか著者の性格が悲観的なのかわからないけど、第3章で耐えられなくなりギブアップ。だいたい介護が大変なのは周知の事実。その大変な部分はこうなのですと具体的に解説しているだけで解決しようという熱意がなければ情熱もないし当然感動もない。個人的体験談というだけで、これはドキュメンタリーとも言えない。

  • 近年何かと話題に上る介護の世界。しかも耳に入るのはよろしくない噂ばかりであります。虐待・暴行・拘束・いじめ・セクハラ...
    実態はどうなつてゐるのか? 作家の本岡類氏が、実母の介護をきつかけに、この世界にのめり込んで行きます。

    本岡氏はヘルパー2級の資格を得、さる特別養護老人ホーム(特養)で週二日勤務の非常勤職員として採用されました。時給は850円ださうです。まあ少なくとも高給ではありませんねえ。しかも新人もヴェテランも同額らしいので、これでは職員は定着しないことでせう。

    人手が少ないこともあり、入居者一人ひとりに時間。入浴や食事、トイレは時間を決めて流れ作業のやうに進められます。目を離すと何をしでかすか分からないので拘束してしまふ。本書を読むまでは、さういふ報道に接するたびに「怪しからんのう」と憤慨してゐましたが、この現場は人心を荒廃させるなあ。一方的に非難されるのが気の毒になつてきました。

    さらに本岡氏が驚くのは、新入り職員のためのマニュアル類がまつたくなく、先輩がするのを見て盗む(覚える)といふ、前近代的な徒弟制度みたいな世界であるところ。だから教へられてもゐないのに、「なぜやらないのか」「なぜできないのか」を難詰される理不尽も日常の一こまであります。
    もつとも、かういふ職場は中小の零細企業ではよくあること。中高年で転職した人なんかは特に「さうさう」と頷くところではないでせうか。

    本岡氏は結局五ヶ月で辞めることになりますが、問題を問題として捉へられるには絶妙な時期と申せませう。同じ職場に半年も勤めると、それまで問題だと思つた事案が「日常」になつてしまひます。さうすると問題は問題ではなくなり、次に入つて来る新人さんにも、「ここでは、かうなんだ。さういふものだよ」と訳知り顔で語るやうになるのであります。

    結局職員の待遇問題が大きな焦点となるのですが、現在の介護保険法では処遇改善には限度があるさうです。国はこれをいいことに、だから保険料値上だ、増税だ、きみたちは将来の日本のことを考へるなら協力してくれるよな、な、な? と国民に負担を押し付けるのであります。むろん為政者たちは自分たちの血は流しません。国民の金はいまだにダーダーと無駄使ひされてゐるのに。

    著者は、現状では若い人ばかりに負担がかかる仕組みに疑問を呈し、元気な高齢者をもつと活用しやうと提言してゐます。しかし肝心の高齢者がその気にならないので叱咤してをります。
    そして最後に言ひます。

    「そうした大きな政策転換は厚労省の役人には荷が重過ぎ、政治家の仕事である。そして、有能な政治家を選ぶのは、国民の役目である」

    つまり、国民は役目を果たしてゐないといふことになります。巷間いはれる「(日本の)国民は一流だが、政治は三流」も幻想であります。国民は選ぶ権利ばかり叫ぶのですが、選んだ結果についても責任をとるべきでせう。その覚悟がないからいつまでも世の中が変らない。

    ううむ、わたくしの意に沿はない真面目な話になつてしまひました。しかし介護の問題ひとつから日本の大問題が見えるのは事実のやうです。
    全国民が関はる問題ですので、一読しても罰は当りますまい。

    それではご無礼いたします。

    http://genjigawa.blog.fc2.com/blog-entry-494.html

  • 齢50を越えて介護業界へ飛び込んだ著者、渾身のルポルタージュ。介護業界で働き続けてきた、そこに慣れきった上司と、数々の業種を経験してきた著者との戦い。未体験の僕が介護業界への偏見を煽るつもりははありませんが、本書を単なる愚痴や不満として切り捨てるなら、介護業界の未来は暗いでしょう。最後の提案を早急に活かすべき。

  • ものさしがひとつしか無いと、モノの見方が狭くなる。という意見が心に残った。

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