キケン (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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レビュー : 707
  • Amazon.co.jp ・本 (356ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101276328

作品紹介・あらすじ

ごく一般的な工科大学である成南電気工科大学のサークル「機械制御研究部」、略称【キケン】。部長*上野、副部長*大神の二人に率いられたこの集団は、日々繰り広げられる、人間の所行とは思えない事件、犯罪スレスレの実験や破壊的行為から、キケン=危険として周囲から忌み畏れられていた。これは、理系男子たちの爆発的熱量と共に駆け抜けた、その黄金時代を描く青春物語である。

感想・レビュー・書評

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  • 「キケン」あなたはこの三文字を目にした時どういう行動をとるだろう。
    「キケン」あなたはこの三文字が書かれた本をどうして気軽に手に取れるのだろう。
    「キケン」あなたはこの三文字の先に待っている扉をなぜ開こうとするのだろう。

    「キケン」…これ以上書くとしつこいだけなのでやめますが、人が人である限り、悪意なく書かれた「キケン」という三文字を無視して進んだその先に起こること、降りかかることはすべてあなたの責任です。そして、この本の表紙に書いてある三文字、それは「キケン」です。

    『某県某市、成南電気工科大学 ー ほどほどの都市部に所在し、ほどほどの偏差値で入学でき、理系の宿命として課題が鬼のように多い、ごく一般的な工科大学』が舞台となるこの作品。略称【機研(キケン)】とされる部活の面々が主人公として活躍します。機研は、『キケン=危険』と学内で認識されている部活です。そんな部活のチラシを見ていたのは新入生の元山高彦。『かなりアクの強い部らしいぜー』と語りかけるのは『席が隣だった縁で親しくなった』池谷悟。そんな時『よっ!うちのチラシに興味持ってくれたのかな?今からうちの部室遊びに来ない?』と『背後から二人の肩が同時に抱かれ』ます。『取り敢えず話だけ!』と連行された部室に赴くと『大神宏明が二回生で副部長で、俺が部長の上野直也。同じく二回』と紹介を受けます。『部員数は何人くらいですか?』という質問に『四回生は八人。三回生は不明。二回は俺と大神の二人だけ』と答える上野。だから『今年の新入部員獲得はけっこう死活問題でさぁ』と言われ『上野に笑顔で迫られ、その笑顔の圧力に負けた。「ハンコは拇印でいいからね!」』と入部させられてしまいます。そして早速『新入部員獲得作戦!』に参加させられる二人。頑張って四十人を集めますが、『そろそろ統制の限界だ』という上野。『最終的には十人前後』になるよう『ふるい落とし』の手段を説明すると言われ上野の家を訪れる二人。そんな上野の部屋に『元山は目を疑った。「かやく」、かやくー かやくって、火薬としか変換が思いつかないんですけど⁉︎』と思わぬものを見つけてしまいます。そして、『火薬』を使った衝撃的展開を経て、二人の機研での部活動は始まりました。

    学生時代の日常を目一杯描いたこの作品。印象に残るシーンが多々ありますが、学祭に模擬店を出店する場面はインパクト大でした。その名も『らぁめんキケン』というお店。スープを準備する段からして本格的です。『鶏ガラを鍋に放り込む。湧いて出るアクをせっせとすくい。湯がいた後に血合いをとり。鶏ガラでも豚のダシが要るから豚ひき肉を入れる。昆布は水から入れて沸いたら引き上げる。鶏ガラはすぐにダシが出るから軽く湯がく程度』と細かい部分まで有川さんは描写していきます。そして予想外な細かさを見せるのが『衛生面は徹底的に管理する。殺菌石鹸を洗い場に常備するから、定期的に手を洗え。掃除も定期的に行う。風呂は毎日入ることを義務づける。店の周りの掃除も定期的に。それだけ守って後は好きに野垂れ死ね』というマニュアルの如くの細かさ。こんな部分を描く小説ってあまり印象にないぶん、とても印象に残りました。そして、店構えも『お祭りの屋台、学祭レベルの屋台って、こんな大袈裟な造りでしたっけ?』と聞く元山に『模擬店という字面を考えろ!店の模擬だ』と答える上野。『小なりとはいえ店の構えを取っていない模擬店など模擬店とは言えん!うちは屋根まで波板で葺いて雨が降ってもビニールシート下ろして水撥完璧!』、さらに『厨房には業務用の三連コンロ。業務用のシンクを据え付け水道を繋げる』。『学祭レベルの装備じゃねえよなこれ』とその本格仕様に一回生は驚き、読者はニンマリするしかありません。このある種のイケイケモードがたまらない、とても好みな展開でした。

    また、登場人物の濃いキャラにも魅了されます。『世界一有名な爆弾魔の名前が渾名になる部長って一体ナニモノだ』とユナ・ボマーの渾名を持ち火薬が好きという上野は小さい頃から花火をほぐして火薬を集めたと説明します。『火薬くださいなんて言って売ってくれるところないからね。玩具問屋まで行くと安く買えるからまとめ買い』という上野。『元をたどれば、戦隊ごっこで怪獣が倒れたときの爆発を再現したかったのが始まり』という上野は『だから怪獣役は譲らなかったねー』という執着ぶり。もう一人の二回生である『名前を一文字隠した』という一文字は、『大と神の間に「魔」が隠れてるって』という『大(魔)神』というこの二人の絶妙なコンビぶりがあってこそという作品だったと思います。

    全体としてとても読みやすい作品。内容的には、中・高生でも漫画代わりに気軽にパラパラと読める作品。正直なところ最後の数ページ前まではそう思って気楽な気分で読んでいました。それが、最後の二、三ページで作品の印象がコロッと変わってしまいます。あっ、ヤバイ!ヤバイ!ヤバイ!この胸の高鳴り。こみ上げてくる熱いものが…。そして、完全に油断してしまった私の頬に伝った涙。嗚呼。またやっちまった感。読後、すぐに窓を開けて遠くの空を見上げている私がそこにはいました。そして、この作品は完全に大人向け、学生時代から遠ざかれば遠ざかるほどに流す涙の量が増えるだろう大人の中の大人向けの作品だったんだ、と気づきました。そう、青春時代を現在進行形の皆さんには決して見えないものがある、決して聞こえないものがある、そして決して味わえないものがある。キラキラとした眩しい光の中にいる人には決してわからないいつまでも色褪せない世界がこんなところに潜んでいた。…「キケン」…そういうことか…。

    有川さんって、本当に構成が上手いなぁとしみじみ感じ入りました。そして、「キケン」と表紙に大きく書かれているのに油断しすぎていた自分を反省しました。でも注意書きは欲しかったですね。

    「キケン」
    ※『青春』という言葉を聞くと、遠い目をするあなたは読むのに注意が必要です。

    そして、

    【有川浩=キケン=危険=電車の中では決して読んではいけない作家】

    を改めて認識させられた、そんな作品でした。

  • 舞台はとある大学の理系サークル、「機械制御研究部」。
    略して「キケン」、カタカナなのには理由があります、エエ。

    人は、卒業と共に「学生」ではなくなってしまいますが、
    学生であったことまでもを失うわけではなく、、変わらない何かが残ります。

    全てを掴んだような気持ちで、ただ全力だった学生時代、
    何とも懐かしい風を感じた物語でした。

    そんな、甘さも苦さも伴ったノスタルジーが、
    有川さんらしい軽快な筆致で描かれています。

    そう、女性からはどうにも理解しがたい世界を「男の子」は抱えているのです、
    「空を駆ける流れ星」や「風を払う稲光」のような、なんて。

    今でも、学生時代の友人と会うとあの時代に戻れます。
    初めて出会ってからもう、10年、20年も過ぎた友人たちと。

    たまに思います、今でも親しくしている友人たちと、、
    共に時間を過ごす所から、学生を再開してみたい、とも。

    ん、戻れないからこそ、色褪せない思い出となっているのでしょうけど。

  • 「機会制御研究部」略称「機研(キケン)」。

    本が「楽しい!」と叫んでいるみたいな物語。

    機研での時間を一緒に過ごしたような気にさえなってきて、
    「最終話」の文字を見た瞬間に、この本に充満した
    楽しい時間を終わりにしたくなくて寂しくなったほど。

    ただただ夢中で楽しかった大好きで大切な場所は
    時間を経るごとに、自分の場所でなくなっていく感覚。
    寂しさは自分がココロに作った距離と感覚なのに。

    大切な時間が"思い出"へとカタチを変えてしまうことが
    いろんなことを変容させてしまいそうで怖くなる。

    いつだって自分の一番の敵は弱い自分で、熱い気持ちさえあれば
    時間なんていつだって飛び越えて、どこまでも大切なものは
    大切なまま繋がっていく。

    変わること、変わらないこと、それぞれを大事に
    今をめいっぱい楽しもう!と改めて思わせてくれる
    熱量溢れる【キケン】での時間。あー、楽しかった!

  • ほとんど、一気読み、三日で読み切りました。

    最初は表紙の挿絵で、子供の冒険譚かあ、なんて思ってましたが、全然違う!大人のお話でした。

    読みながら、30年近く前の自分、思い出してました。私は理系男子でもなかったし、あれほど過激になれなくて、けど男ばっかりでつるんでて・・・

    最後の 「お店の子」が学祭に行くまでの逡巡、分かる分かるとグーで力んでました。

    でも、最後の黒板の殴り書き達、あれ反則!あの挿絵見た途端、泣きましたね、
    嬉しくて嬉しくて。読んでて漠然と、げんしけんの一期の頃の雰囲気に似てると思いましたね。

  • この本は私にはたまらない郷愁を呼び起こした。私も大学時代は理系。やっぱり女子はほとんどいず、99%男子の世界。文系の学部の方がうらやましくてしょうがなかった。はるか昔のことなのについこの前のように思い出してしまう。有川さんの作品にはそんな力がみなぎっている。私の場合は、理系の部活はやっていなかったが、自分たちの代で仲間たちとサークルを起こした。テニスにスキーに、バカ騒ぎをしたものだ。さすがに爆弾はないが 笑 私もいまだから言えるが、悪いことしちゃってます。当時の大学があった京都から、信州のペンションまで大量のビール瓶を購入して、こっそり運んだのだ。何人かの限られたメンバーだけでこっそりと。目的は、、私が一度やってみたかったあれ。プロ野球選手が優勝したときにやるビールかけ。合宿の打ち上げに派手にやろうぜって、こっそり打ち合わせ。行きのバスの中で発表したら、物議を醸しだし、「やめるべし!」という部員もでてきて、モメモメ。でも会長特権で「うっせー。やるったらやるんだ!」と強行。合宿の最終日に、隠していた大量のビール瓶を持ち出して、なんもないひらけたところで、「おめーら いくぞぉー」の掛け声とともに一斉にビールを掛け合う。背中にもぶち込んだり、もうハチャメチャ。いやぁ楽しかった。。 で、宿に帰った部員たち。当然ビールでびしょ濡れ。ペンションのオーナーは「隠れてビール持ち込みしやがった」と激怒。平謝りに平謝りで、とにかく謝った。一生懸命、説明して謝りまくった。今考えればマナー違反もいいところ。地元の皆さんにもほんと申し訳ない。でももう相当昔なんで許して下さい。。そんな懐かしいメンバーとも、大学は京都だったので、男同士はやっぱ転勤やらなにやらで全国へ散っていく。次第に年賀状だけの仲に。いまだに会っているのは、バカをやった中心人物のうちの一人だけ。

    この「キケン」は、そんな男子の心情を見事に描いている。この人ほんとうはやっぱり男性じゃぁないの?と思うぐらい、うまい!主人公が、卒業後に学祭に行けなかった気持ち、まったく一緒だ。どうしてこんな気持ちわかるんだろうって思いました。私も、自分たちで立ち上げたサークルが、もう自分たちのものでないような寂しさを感じ、なんとなく行けなくなっていました。
    しかしラストシーンで、10年後に学祭に行った主人公。懐かしいメンバーの黒板のメモ(というか落書き?)を見る。私もまったく泣く予定のなかった小説で、ボロボロっと泣いてしまった。。多分自分に重ねてしまったんだろう。あぁ、なんて素晴らしい仲間なんだ。。本当に素敵だ。。

    ちなみに私が仲間たちと立ち上げたそのサークル、いまでも健在で、はるかに若い子たちが運営してくれているようです。どんだけ長く続いてんだって驚き。

    でも首都圏に来てしまったから、、というのを言い訳に、やっぱり見に行けない。男って面倒でしょ? 笑 そのくせ毎年の年賀状で、「まだ続いているみたいですよ!」とお互い言い合う。何気にお互いチェックしているんだな 笑

    有川浩さん、いっきにタイムスリップさせてくださってありがとうございました。ストーリーの引き込み力は抜群だし、エンディングも最高!

  • 成南電気工科大学機械制御研究部、略して”機研(キケン)”。もちろん、期待通りに”危険”という意味も含まれ、それがこの物語を面白くしている。体裁としては、「お店の子」元山が、機研現役当時のことを思い出しながら妻に語るという、能スタイル。ジャンルは青春、王道的ストレートタイプ。どことなく、自分の学生時代と心重なるところがあり、なんとも言えない酸っぱい(甘酸っぱくはない)気分(いい気分ではある)になる読了感清々しい一品。
    若い。

  • 某工業大学卒の学生として申します。決して危険な爆薬は取り扱っておりません。部室というか研究室は確かに根城で、生活物資がいっぱい詰まっておりました。卒業後何年たっても仲間が出会うと、やはり学生時代の無茶でおちゃめな頃の話で盛り上がります。同類です……

  • 本キライの中2の息子の朝読書に選びました。
    数ヶ月後、「面白かった!!」と返されました。
    その言葉を聞き、「キケン」を選んで良かったと思いました。(数ヶ月かかりましたが)
    とても読みやすく、主要登場人物も敢えて?多くなく、ゲラゲラ笑いながらあっという間に読み終わりました。
    「あの時の大好きな思い出(機研)」は皆にある。
    当時は目一杯全力で打ち込んできた事は大人になってとてもいい経験になります。
    不思議な事に、大人になってからのそれより、若い頃の思い出なんですよね。
    最後は愛しくて涙が出ました。
    中高生で読んだら社会勉強、大人になってから読んだらこれぞ青春の愛しいお話です。

  • 有川さんらしい展開。
    キケンとは電気工学大学の機械制御研究部の略。
    ロボットや火薬の話もありながら、学園祭で提供する美味しいラーメンの作り方まであります。
    ほぼ男子学生の大学での男たちの世界。
    男の友情に最後は涙がでそうでした。
    有川ワールドの、とてもよい作品でした。

  • 中学の頃から題名は知ってて読まず嫌いで高校生になって読んでみた。それまで知らなかったことを悔やむくらい面白い!上野さんの行動と大神さん、下級生たちのツッコミやら何やら行動の一つ一つに現れる周りの反応が面白いです!!!
    短大生となった今、元山や池谷たちと同い年になったんやなぁって思います。それでもうちの学校ではそんなハチャメチャないですよ\(ˊᗜˋ*)/

    でもそんなことじゃなく、高校時代のいろいろ振り返って思うけど、人にとってそれぞれ「あの頃は楽しかったなぁ、輝いてたなぁ」って思う頃がその人の輝いてた楽しい時代なんやろうな。
    もしかすると今も何年か後に振り返ったら面白い時代なのかもね♪

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著者プロフィール

有川浩(ありかわ・ひろ)
高知県生まれ。二〇〇四年『塩の街』で電撃小説大賞大賞を受賞しデビュー。同作と『空の中』『海の底』の「自衛隊三部作」、「図書館戦争」シリーズをはじめ、『阪急電車』『旅猫リポート』『明日の子供たち』『アンマーとぼくら』など著書多数。

「2017年 『ニャンニャンにゃんそろじー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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