人生の〆方: 医者が看取った12人の物語 (新潮文庫 お 85-2)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101277622

作品紹介・あらすじ

普通の偉人12人の物語――。彼らは時代の波に翻弄されるも、様々な苦難にそれぞれの立場で懸命に向き合い、幸福に満ちた最期を迎える。死を目の前にしても幸せで、人に感動さえ与えて逝くという死生観とは、どのようなものなのか。1000人を超える患者を見届けた緩和医療医が、まるで小説を思わせる感動的エピソードを書き綴った感涙の書。『感動を与えて逝った12人の物語』改題。

感想・レビュー・書評

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  • ホスピスの緩和ケアドクターが看取った12人の
    それぞれに特別なエピソード

    全て、ちょっと普通以上の人たちなのだけれど
    不思議に私が強く感じたのは、
    病院で迎える最後という同じ光景

    病院で死を迎えるのは避けたいという声があるけれど
    それは家族などに恵まれた人の声ではないのかな
    少なくとも、病院にいれば孤独死はない。
    一人かもしれないけれど、
    病院の医師や看護師などとは接触がある。

    一人でいることが苦手でない人ならば
    時間に糸目なく好きなことができる環境になる
    読書でも、手芸でも、夢想でも・・

    作者の意図とは違っているかもしれないけれど
    病院で一人で死ぬことが怖くなくなった
    これって、すごく気持ちが楽になることだ

  • 朝 起きて、身体痛くない時には、今日は「幸せ」と、思いながら、身体を起す。
    人生100年には、まだまだ、あるけど、年齢を重ねるごとに、薬の副作用も加えて、身体に痛みを感じる事が、多くなって来た昨今。
    図書館へ行って、この本を見つけた。

    「人生の〆方」
    誰でも たった一度だけの〆切が、あることに、・・・
    11人の方たちの〆方が、著者 大津秀一氏が、この本で記載されていた。
    はじめに と、最初に書かれていた中学時代の彼女の死。
    私も高校時代の友達が、韓国籍であったのは、後で、知ったのだが、韓国の大学の入学通知も授与した後なのに、焼身自殺した!と、聞いた時の衝撃は、なんとも言えなかった。
    いつも、ひょうきんな言葉を言ったり、笑顔ばかりしていた彼女だったのに、何が、どうしたの!と、・・・
    沢山の友人に囲まれていたのに、誰にも言えなかった事が、あったのだと、・・・・
    今、凡庸に過ごしている私は、この彼女の苦悩が、未だに解らずにいる。

    エピソード1から、著者の初めて病院への赴任の出来事から描かれている。
    採血技術についても、よくわかる。
    私も、看護師泣かせの血管の持ち主であるため、採血時には、大変である。
    入院で、手術と、なった時には、前夜から絶食の為に余計に血管が、浮かび上がらない。
    これは、著者だけでなく、みんな人それぞれの身体だから、ここだ!と、思う場所から採血が、採れない事だと思う。
    私も、毎月の採血で、看護師さんに、1度で、採血して貰ったら、感謝して言葉にしている。(笑)

    エピソード2になると、寡黙な男性が、苦しい、つらい、等と言う事も無く、「今日も変わりません」と、言って過ごし、最後に、医師に感謝の言葉を残して、あの世へと行ってしまった。
    我身を実験台にして、未来への医学の進歩へと、託している姿に凄い人だと、思ってしまった。

    エピソード3は、著者の回診で、「自分の住むところに今度一度 来てみて下さい」と、・・・・
    ステロイドの使用方法も、個人差が、あるだろうけど、医師の薬の選択にもよるだろう。
    普通だったら、今度来て下さい!と、社交辞令でも言っていても、訪れる機会があるのに、この病院ヘ入院したら、戻れない事も自覚している所が、辛い。

    エピソード4 辛い人生を過ごしていても、最後まで、「幸せ」と、口癖になる迄、言い続けて過ごした老婦人。
    私も、これから、「幸せ」と口癖になる迄、言い続けてみよう!!!

    エピソード5 間接性肺炎の病気に冒された かって要職の男性。
    一生を仕事に費やし、炎を燃やし続けた男性。
    だけど、部下の人達や職場の友たちに慕われていた事が、凄い人だったのだと、わかる終わり方だった。

    エピソード6 昔は、美人で聡明な人だっただろうと推測される80歳台の老婦人。
    医師は、礼儀正しく謙虚で、・・・と、
    そして、人間の人生は、大木の如し・・・と
    禅の庭の引き算の美学の境地。
    まだまだ、断捨離も出来ない私には、この境地になれないでいる。

    エピソード7 自殺を図った男性。
    本当は、一度死んだはずだったのに、永らえたロスタイム(?)に家族は、心の準備も出来、そして、その男性は、残りの人生の過ごし方を穏やかに新しい病棟で、生まれ変わったように過ごし死へ向かって行った。

    エピソード8 90歳の元住職の妻だった老婦人。
    再婚という事で、住職の妻になるには、子どもと別れて過ごした波乱万丈の人生。
    そんな苦労の一片をも、見せないで、逝ってしまった。

    エピソード9 着物についても アメリカで、ショーもし、勉学にも優秀だった男性。
    自分が、一番!と思って人生を過ごして来たけど、自分が1番ではない事に気付く。
    人生の先取りを見つめる男性の哲学的指摘に、とても優秀な方だったのだと、・・・
    最後の著者である先生への言葉も 心を打つ。

    エピソード10 大腸がん末期の60代の女性。
    抗がん剤をしなくなって、7カ月も経つのに、未だ症状は、お腹が、膨れてきている事位であった。
    著者の長期生存への挑戦でもあるかのように・・・

    エピソード11 40代の腎臓がんの男性。
    母親は、80歳。
    素敵な息子であり、その母である。
    どちらも、気遣いをして、笑顔で、墓場まで自分だけの秘密として、もっていくつもりであることも。
    みんなを微笑ましくさせる様子も、末期である事を忘れさせるような話である。

    みんな、一人づつ 人生のドラマがある。

    この本は、薄い単行本なのに、書くことが、多くなった。
    12人の物語りであるが、エピソードは、11人まで。
    エピソード12は、自分の物語り。と!

    さてさて、この桜も、あと何回見る事が出来るのか?と、思いながら、1日を大切にしたいと思った本であった。

  • 終末医療に携わる医師が経験した11のエピソード。人生何が幸せか、人生を全うした人の話は説得力がある。著者自身も生きがいを持っているのがよく感じられ、自分のことを振り返る機会となった。2015.2.19

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著者プロフィール

早期緩和ケア大津秀一クリニック院長。茨城県出身。岐阜大学医学部卒業。緩和医療医。2006 年度笹川医学医療研究財団ホスピス緩和ケアドクター養成コース修了。内科専門研修後、2005年より3年間京都市左京区の日本バプテスト病院ホスピスに勤務したのち、2008年より東京都世田谷区の入院設備のある往診クリニック(在宅療養支援診療所)に勤務し、入院・在宅(往診)双方でがん患者・非がん患者を問わない緩和医療、終末期医療を実践。2010 年6 月から東邦大学医療センター大森病院緩和ケアセンターに所属し、緩和ケアセンター長を経て、2018年8月より現職。遠隔診療を導入した日本最初の早期からの(診断時や治療中から。対象をがんに限らない)緩和ケア専業外来クリニックを運営し、全国の患者さんをオンライン緩和ケア相談している。全国相談可能な『どこでも緩和』ネットワークを運営。著書に25万部のベストセラー『死ぬときに後悔すること25』(新潮文庫)、『死ぬときに人はどうなる 10の質問』(光文社文庫)、『死ぬときにはじめて気づく人生で大切なこと33』(幻冬舎)などがある。

「2021年 『幸せに死ぬために 人生を豊かにする「早期緩和ケア」』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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