ケンブリッジ・サーカス (新潮文庫)

  • 新潮社 (2018年7月28日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (272ページ) / ISBN・EAN: 9784101279329

作品紹介・あらすじ

米文学者にして翻訳家の著者が、少年時代の記憶や若き日の旅、大切な人との出会いを、エッセイ・紀行・自伝的短編小説で想像力豊かに描き出す。ヒッチハイクで旅したイギリス、P・オースターと語り合ったニューヨーク、兄を訪ねたオレゴン。東京の六郷で過ごした少年期を回想しつつ、S・ダイベックと京浜工業地帯も訪れる……。『ケンブリッジ・サーカス』に新たに掌篇 9 作を加えた一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 今年8月に文庫化されたのが平積みしてあって手にとったんだけど、2010年刊行の「ケンブリッジ・サーカス」と2006年刊行の「バレンタイン」の合本だそうで、けっこう古い本だったんだ……。
    ポール・オースターと柴田さんがそれぞれの子ども時代の話をする対談がおもしろかった。「学校は公立?私立?」とか「高校は試験があるの?」とかいった普通の話がおもしろくて。意外と日本とアメリカの教育事情は似ているのかも、とか思ったり。
    あとは、お兄さんの住むオレゴン州ポートランドを訪ねた日記とか(今、なんかポートランドって「変わった都市」として話題になってるような。町山智弘の番組でとり挙げられてたり)、スチュアート・ダイベックと京浜工業地帯を歩く、とかも楽しかった。
    エッセイと見せかけて、するっと妄想が入ってくることがあるんだけど、妄想とか奇想とか奇妙な話がすごく苦手なわたしでも嫌じゃなかったので、そのことにちょっと驚いたり。自然で説得力があってすごく奇妙っていう感じがしないのはきっとすごくうまいんだろうなと。
    (子どものころの自分と出会う、っていうのが多いんだけど、もし子どものころの自分に出会ったらどうするかな、とか考えた。わたしの場合、「こんなふうになっちゃってごめん」とか言いそうであんまり楽しくなさそう。)

    今の自分のまま、子どものころの時代にタイムスリップして、その時代の自分や親がいる近くで、苦労して(お金とかなにももっていってないから)生活していく話はすごく怖かった。。。

  • 思ってた自叙伝とは違ったが、せかせかしていない筆者の生き様?は読み取れた

  • ワタシが敬愛する柴田元幸のエッセイ…と言いたいところだけれど、この本には旅日記もあり、対談もあり、私小説もあり、もはやエッセイの域をはるかに超えている。なぜこんな形式になったかと言うと、「旅に出ることや誰かと会話することを通じて、過去の自分自身と出会う」というアプローチで書かれたから。はたしてその試みは、大成功!単なるエッセイではない、柴田ファンとしては大満足の一冊となった。
    なぜここまでこの翻訳家に傾倒するのか、実はあまり意識したことはなかったのだけれど、本書を読んでその理由が少し分かった。そのキーワードは「妄想」。本書の第4章と第7章にある「妄想間奏曲」は、私小説と妄想のごった煮、いや、大半が妄想なのかもしれない。この止まらない妄想に共感と親近感を覚える自分にはたと気づき、そう言えば以前より妄想している時間が長い自分にはたと気づき、そうか、妄想患者同士が引き合ったのか、と腑に落ちた。
    柴田ファン、止められません。

  • 書名のケンブリッジ・サーカスはロンドンにある広場。
    学生時代は、バックパック&ヒッチハイクでイギリスを歩き回っていたという。その時の思い出と、少年時代の東京の六郷、本郷、ニューヨーク、そしてオースターやダイベックへのインタビュー。フィクショナルなエッセイでは、過去の自分、未来の自分に何度も会い、いまの自分を見つめ直す。
    「ケンブリッジ・サーカス」は、ロンドンでバスから飛び降りた時に転落したその時点から、自分にいくつかの未来がありえたという物語。ダッフルコートを着た青年というあたり、庄司薫の『赤頭巾ちゃん気をつけて』を彷彿とさせる。そういえば、庄司は柴田の高校(日比谷)の先輩だ。
    文庫版は単行本にはない「バレンタイン」など3作品が追加されている。「バレンタイン」は少年サンデーを買う少年の自分に会う。「妄想間奏曲2」は「四人の林」というロックバンドのライブに参加することで始まる妄想。読後、「四人囃子」のCD「ゴールデン・ピクニックス」を引っ張り出して聞いてしまった。
    エッセイ風に始まって、途中から妄想が入ってきてフィクションになり、また出発点に戻ってエッセイが完結する。そうか、こういう書き方があったのか!

  • 名翻訳者柴田さんのエッセイ集。と思いきや、単なるエッセイに留まらず、ニューヨークやオレゴンへの旅日記に始まり、オースターとの対談やダイベックの日本案内、柴田さんの子供時代の話や幽霊の見えるという体の妄想?など盛りだくさん。

    結構クセ強めで対象となる読者の間口は広くないと思いました。そう言う私もちょっと読みにくかったと感じた部類の人間です。あっちへいったりこっちへいったりと話が飛び飛びな感じが少し苦手でした、

  • 六郷に生まれ育った方だったんだなあ。単なるエッセイにとどまらず、あることないこと妄想想像あれこれ、レアで興味深い本。

  • 柴田さんは読んでも読んでも訳書があるし、ほかの作家や翻訳家のことも知りたいということで最近は敬遠していたが、やはり面白いし学ぶことがたくさんある。

    幼いころの街並みにいまの自分が立ち、街角を曲がると過去と接続している。その仕方が電気をカチリとつけるよりもっと簡単で、過去と現在と妄想が実に滑らかに行き来しあっているので、ああ、ポール・オースターやスティーヴン・ミルハウザーと同期しているなと感心したが、彼らは果たして本当にいるのか?と小川洋子さんが巻末で書いていることと同じことを思ったりした。

  • 柴田先生のちょっぴりノスタルジーなフィクションを加えたエッセイ。
    こういう先生の文学講義を聴いてみたいものです。

  • 初めて読む作家さん。
    本屋でなんとはなしに書棚を見ていたら、表紙のデザインとタイトルにもの凄く惹かれ、そのままレジへ。

    これは、エッセイと言ってしまって良いのだろうか?
    エッセイ、随筆、紀行文、創作文…。
    全部の要素が詰まっているけれどどれかに限定出来ない。
    なんだか不思議な本。

    どこまでが現実でどこからが虚構なのか、その境界線が全然分からなくて、ミステリでもないのに前を読み返す事もしばしば。

    作者の思考のせいなのか、語り口からくるものなのか、気づくと自分がニヤニヤしながら読みすすめている。

    文庫版の特別付録でご本人の直筆の字を見て、「なんか確かにこんな感じの人なんだろうなぁ」と感じた。

    ケンブリッジ・サーカスが交差点の名前だとは知らず、言葉の雰囲気で気に入ってしまったが、読み終わって場所を調べてみたら歩いた事のある場所だったのにビックリ。
    文庫版のあとがきに表紙の写真についての話が書かれていて、なんだか嬉しくなった。

    帯は、柴田元幸さんの著作や翻訳を読んだ事が無いから「原点」なのかが分からないが、無駄な装飾の無いシンプルな言葉が本の中身にあっていた。

    解説は、半分くらいはすごく共感出来るんだけれど、半分くらいは表現が複雑というか多いというか、とにかくストレートに入ってこなくてちょっと残念。

  • 180811 中央図書館 ポール・オースターを読んだばかりなので、明晰な訳の柴田の名がアタマに残っていたところ。妙ちくりんな、エッセイとも私小説とも雑文ともつかないオムニバス形式の本ということで、新鮮で面白かった。

  • エッセイとも小説ともつかない散文。この本に書かれている内容は、本当に妄想なのかもしれない……?
    吉田健一の例を挙げるまでもなく、翻訳家は名文家が多いなぁ。

  • 祝文庫化!

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    未掲載
    http://www.shinchosha.co.jp/book/127932/

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    柴田元幸、初のトラベルエッセイ集
    20年来の友人でもある作家ポール・オースターに会いにニューヨークへ。大学時代に暮らしていたロンドン、思い出深い音楽の街リバプールへ。米国に移住した実の兄を訪ねてオレゴンのスモールタウンへ。シカゴ在住の作家スチュアート・ダイベックと共に、柴田が生まれ育った東京・大田区六郷の路地裏へ。これまで Coyote の特集で世界中を歩き、綴った紀行文を中心に、柴田が現在も教鞭を執る東京大学本郷キャンパスを舞台にした書き下ろしを加えた一冊
    http://www.switch-store.net/SHOP/BO0050.html

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著者プロフィール

1954年生まれ。米文学者・翻訳家。東京大学名誉教授。文芸誌「MONKEY」編集長。『生半可な學者』で講談社エッセイ賞、『アメリカン・ナルシス』でサントリー学芸賞、トマス・ピンチョン『メイスン&ディクスン』で日本翻訳文化賞受賞。訳業により早稲田大学坪内逍遙大賞受賞。現代アメリカ文学を中心に訳書多数。

「2025年 『スティーヴン・クレイン全詩集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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