後宮小説 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (303ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101281117

作品紹介・あらすじ

時は槐暦元年、腹上死した先帝の後を継いで素乾国の帝王となった槐宗の後宮に田舎娘の銀河が入宮することにあいなった。物おじしないこの銀河、女大学での奇抜な講義を修めるや、みごと正妃の座を射止めた。ところが折り悪しく、反乱軍の蜂起が勃発し、銀河は後宮軍隊を組織して反乱軍に立ち向かうはめに…。さて、銀河の運命やいかに。第一回ファンタジーノベル大賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 中華風な世界観を舞台としたファンタジー。
    …というと十二国記を思い出すところだけど、この後宮小説は、粛々と史書に基づき物語るように見えて、その中身は大変すっとんだドタバタコメディだった。
    狐につままれたような読後感!

    あらすじにはこう書いてある。
    "時は槐歴元年、腹上死した先帝の後を継いで素乾国の帝王となった槐宗の後宮に田舎娘の銀河が入宮することにあいなった。物おじしないこの銀河、女大学での奇抜な講義を修めるや、みごと正妃の座を射止めた。ところが折り悪しく、反乱軍の蜂起が勃発し、銀河は後宮軍隊を組織して反乱軍に立ち向かうはめに…。さて、銀河の運命やいかに。"

    田舎娘の銀河が、どうやってドロドロした後宮で正妃の座を射止めるのかと思いきや、特段のエピソードなく正妃に据えられる。
    正式に妃になる前の後宮教育(房中術)に多くのページがさかれ、禅問答のようなやりとりで煙に巻いてくる。そして実際に後宮に入ってからの帝の寵愛争いや派閥争いなんかもほとんどなく、いきなり国家存亡の危機に陥る。
    都は反乱といえるような反乱でもない賊に攻め入られ、正妃銀河は後宮を守るために義勇軍を組織する。この軍がどんなのかと思いきや、宮女達が付け焼き刃すぎる遊びのような戦いを嬉々として繰り広げる。
    帝は突如出ていくし、愛を育んだ様子もないのに銀河は追いかけていくし、なんだか登場人物の動きが荒唐無稽で捉えどころなく、でもそのアホらしさについ笑ってしまう。
    この物語の重要人物のあだ名が『渾沌』なのだけど、この名前に全てが表れている。とにかく渾沌としてるんです(笑)

    この世界観をもっと膨らませたら爆笑コメディになると思うんだけど。爆笑には至らない「なんか笑っちゃう」止まりな小説だった。

  • 追悼 酒見賢一さん
    訃報ニュースから改めて手に取りました。
    1989年受賞作品だったんですね。当時、アニメを見てから原作を手に取って、アニメで描かれていなかった部分を読んでびっくりした記憶があります。「17世紀初頭の中国を思わせる架空の国の王朝」という設定にすごく新鮮な感じがしました。
    ご冥福をお祈りします。

  • 《異世界》ほど小説家の技量が試される舞台は無い ~酒見賢一『後宮小説』に見る名場面|話題|婦人公論.jp
    https://fujinkoron.jp/articles/-/5185

    酒見賢一 『後宮小説』 | 新潮社
    https://www.shinchosha.co.jp/book/128111/

  • 後宮って、日本でいう大奥にあたるのかな。皇帝の子を授かる為、色んな技教えたり…まぁ、エロくはないけど、具体的な…
    その話ばっかりではないけど、つい目がいって…(~_~;)
    史実に基づいてのような形式で語られているのか、途中で注釈とか多いので、私向きではなかった。
    流れるような語り方(書き方?)の方が好きやなぁ。

  • 中国史と思わせるような後宮をテーマにしたファンタジー小説。
    史実だと思って読んでいたが、著者の創作だった。
    田舎娘が正妃になり軍隊を組織するという突拍子もない話だが面白く読めた。

    真理は子宮から生まれる。

  • この小説のおかげで、出来てすぐのファンタジーノベル大賞がいきなり世間に認知されたと思う。すごい!

  • アニメは見ていたけど(大好き!)、小説ははじめて読んだ。
    すごい面白かった。ファンタジーなのに史実ぽく書いてるのも。

  • アニメの方を見てから読んだが、あまりに内容が振り切れているのでびっくり。よくこれを大賞に据えてアニメにしたな、と思う。玉遥樹の最後や「道女」になるシーン、馬小屋の二人は子供に分からないように映像を作っているのがなんとなく分かったが、相当苦心されたろうな、というのが伝わってくる。
    歴史資料をもとに作者が想像交じりで小説風に語るという形式を取っており、普通の小説で見せ場になるような部分はあえて簡素にして切っている。もっと会話を聞きたくなるような魅力的な人物ばかりなのに、世界観にどっぷり浸るということはさせてくれない。その分読んでいる方はああでもない、こうでもない、と想像が膨らんで、そこに作者の飄々とした語りがだんだんはまってくる。不思議な感じ。

    角先生の哲学、アニメでは「女とは子宮があること。子をはぐくむこと」というだけで終わっていたが、小説を読み進めていくと、先生の言う真理とは森羅万象(おそらくいのち)、という部分があり、国の真理とはすなわち皇帝、後宮とは子宮である、女の腹はすべての真理を生む、とつながっていき、ようやく全貌がわかるようになっている。
    哲学の大先生がなぜ壮大な後宮の教育に生涯をかけたか、後宮とは何なのか、そこまで来てはっきり分かる仕組み。面白い。それなのに、終盤に渾沌がこの作品の屋台骨のような後宮哲学をくだらない(美しいけど)と一言で切ってしまうのがまた一層面白い。

    渾沌の頭がいいのにその場の気分と思い付きでしか行動しない感じ、私の昔の親友に非常に似ており、なんだか懐かしくなってしまった。いつも信じられないほど突拍子もないことばかりしていて、10年近く親友だったのにどうでもいいことで喧嘩別れしてそれっきり、それも渾沌風に言えば縁というところか。他人と思えなくて、妙に彼の言うこともしみじみと心にしみた。

    「人の心は太古は生命力の渾沌とした沼であった。生の欲求が時々ぼこっと浮かんできて泡になる。その泡が弾けて、泡の中に詰まっていた気を吸うことによって人は生命の欲求を知るのである。」
    ここの部分がかなり好きだ。沼の上に建てられた人々の社会、その揺らぎ。そして建物を持たない危険人物が、渾沌であったということ。

    江葉がクールで聡明でとてもかわいいので、後宮生活と戦いを経て銀河と親友になったらしいのは嬉しかった。故郷に連れ帰るほどだったとは!もっと二人の話を読みたかったな。この説は信用しないが、なんて言いながら最後に二人が欧州に渡った説をちらりと書くあたり、本当に分かってやってるんだなあ、と思いつつ作者の手のひらで踊り狂ってしまいそうだった。

    • りかこんぐさん
      江葉とのくだりが本当にそう!それ!!しか言えない私です。素晴らしい感想をありがとうございます。
      江葉とのくだりが本当にそう!それ!!しか言えない私です。素晴らしい感想をありがとうございます。
      2021/05/19
  • アニメの「雲のように風のように」の原作。
    後宮内で教わっているようなことを、主人公の目線で教わっているような気分になる。つまり興味のないことは、銀河と共に昼寝するが如く読みとばしてしまうようなところがある。
    個人的には基本的に原作の方が好きなのだが、珍しくアニメの方が爽やかで好きな作品。

  • 恥ずかしながら私最後の最後までこの小説が史実に基づいた実在の人物や事件のことを書いた小説だと思っていました。
    解説を読んで始めてこの小説が作者の創作した全くのフィクションであることに気づきました。何故この小説がファンタジー大賞なんだろうと不思議に思っていたのですが、成る程素晴らしいファンタジーでした。

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