日本人はなぜ戦争へと向かったのか: 外交・陸軍編 (新潮文庫)

  • 新潮社
3.64
  • (4)
  • (15)
  • (12)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 167
レビュー : 15
  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101283746

作品紹介・あらすじ

日本人だけで300万人を超える死者を出した太平洋戦争。軍幹部ですら「負ける」と予想した戦争へ、日本はなぜ踏み込んでしまったのか――。当事者の肉声証言テープなど貴重な新資料と、国内外の最新の研究成果をもとに、壮大な疑問を徹底検証。列強の動きを読み違えた日本外交の“楽観”、新興ナチスドイツへの接近、陸軍中央の戦略なき人事・・・・・・今だからこそ見えてきた開戦までの道程。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • リアルタイムで番組を見た。その時は聞き流していた事柄が、今はなんと心に響くことか。私が変わったからではない。世の中が変わったからである。

    2011年1月の放送開始は、NHKの良心の最後の輝きの時だったのかもしれない。今では間違ってもこんな番組作れない。よくぞ、文庫が出版されたと思うくらいである。あと2年遅かったら、本の出版さえ無理だったかもしれない。日本は未だに「出版・言論の自由」は謳われてはいるが、ことNHKに限り、それは急速に戦前の段階まで後退しているからである。

    番組の最初の映像の中で流れる、無数のドミノ倒し。「もしあの時に違う選択をしたならば」そういう問題意識で作られたこの番組に喝采を送りたい。そして決定的な場面はひとつではなく、とてもとても多くあった。それが日本の特徴です。でも選択の時はあったのです。それが、そのまま現代に繋がる。

    外交編では、最初に1931年国際連盟脱退の「選択」に焦点が当てられます。松岡外相が堂々と演説して、日本は最初から進んで孤立の道を選んだ、かのような認識が私にありました。教科書で学んだのが、そういうニュアンスだったからです。しかし、違った。日本は脱退など予想しないでジュネーブに臨み、英国も着地点を用意していた。

    そうならなかった要因。

    日本側当事者たちの甘い体質に他ならなかった。そこから浮かび上がってくるのは、「希望的判断」に終始し、その幻想が破れると「急場しのぎ」の美貌作に奔走する、国家としての根本的な戦略が欠如した日本の姿であった。(38p)

    それは、現代ではTPP交渉、又言えば安保法をめぐる国家戦略にも通じる、日本政府の最大最悪最低の弱点だろう。

    陸軍編では、よく「陸軍が暴走した」と一言で片付けられることが多い。まるで過去の出来事で他人事である。

    しかし、ここで語られるのは、暴走の仕組みは現代にそのまま残っているということである。

    外交編も陸軍編も、その組織的体質は全然変わっていない。それは基本的には旧体質が、主体的には一切反省などせずに、アメリカによって温存されたためではあるのだが、こういう番組のあとに、国民の側から、組織的体質の徹底的な反省を促す運動が起こらなかったためでもある。もっとも、この番組の直後に東日本大震災が起きて、そんな余裕を持たなかったといえばそれまで?いや、その組織的体質は原発事故体質にも引き継がれたのだから、それはそのまま、国民の側の怠慢でもあったのだと、今になって思うのは、おそらく少数意見なのだろうな。
    2015年10月4日読了

  • 外交と陸軍にスポットをあてたもの。陸軍はそもそも人事制度に問題があったことを指摘している。そのほかにも、過剰な現場主義によって、中央からの統制がうまく効いていなかったことなどがわかる。

  • 外交交渉をかけ違う外務省、
    想定敵国が異なる陸軍と海軍、
    独断専行したことへ懲罰のない人事、

    などが積み重なり、アメリカとの戦争の選択肢を選ばざるを得ない選択肢がなくなり、追い込まれていく。
    総理大臣や国会議員達が担うべき政治が機能不全であったこと原因だと思う。

    現代では改善され防げることが出来る日本になったのか?と悩みが止まぬノンフィクション。

  • 関心がないように見えても、個々人が歴史観をそれぞれ持っており、他者との間でそれについて議論したりはおろかお互いに披瀝したりもしないのが通常である。
    要はセンシティブなものであるから、特に近現代史については、軽々に口にしないのが利口である。以下は個人の感想であって真実それ以上のものではない。

    ・当時の日本にはリーダーもなく、大局観もなく、悪循環に陥っていた。
    ・満州事変から日中戦争に至るまでに政党政治が破綻し、それが藩閥政治、元老に代わって担うはずであった、外交・軍事を一元化する意思決定の仕組みは確立できなかった。
    ・満州事変をきっかけに独断専行、下剋上的風潮に歯止めがかからなくなった、現地軍の規律違反をきっちり処罰できなかった、などといった点は以前から読んでいた本にも繰り返し述べられている。
    ・しかし、本書で独特だと思ったのは、慶應の菊澤先生の経済コスト的観点から軍人の行動を説明するという箇所だった。現地軍にとってはあくまでコスト面で合理的選択を行なっているにも関わらず、社会全体から見て非効率的、非合理的結果になってしまう。これは現代の大企業でも代理人関係において起こりうる現象であるとしている。中央と現地で同じ人物でも態度を変えてしまうのもリスクテイクする人間の心理的側面から説明していて興味深かった。
    ・つまり、ただ当時の軍人たちの見方が甘いとか、単に判断力に乏しいからとかではなく、彼らは合理的知性的に判断した(つもり)であってもなお失敗してしまったということが読み取れて興味深かった。
    ・また、戸部教授の軍事VS軍政の二元的意思決定方法の過ちについての記載もあった。

  • 戦争関係は苦手だなーと再認識

  • とても読みやすくまとめられているが、
    これは実際に映像で観ていた場合、
    もっと印象が異なっていたのではないかと思う。

    菊澤研宗氏へのインタビューによる知見は、
    日本陸軍が陥った組織としての脆弱性を、
    いまの大企業でも有しうる問題として解き明かしており、
    とても興味深いものがあった。

  • 陸軍が開戦の元凶のように言われるが、本書では、外交はじめその背景を易しく説明してくれる。松岡外相が国際連盟脱退反対の立場とは知らなかった。2015.10.18

  • なかなか学ぶ機会のなかった時代の歴史であるが、正しい知識を持ちたいと思う。
    多面的なアプローチであるため、一気に理解が進むとはいかないが、本シリーズにあるように複合的な理由があることは間違いない。

  • 2015年の42冊目です。
    戦後70年ということで、夏前から書店には戦争に関する書籍がたくさん平積みされていました。
    その中の一つとして手に取りました。
    2011年に放送された何回かのNHKスペシャルの放送とその放送のために取材された内容から構成されています。
    本巻「日本人はなぜ戦争へとむかったのか 外交・陸軍編」を含め3巻からなっています。
    この巻では、陸軍という組織が制御できない状態に陥ったことを、組織論的な検証がなされています。
    日中戦争における日本陸軍の残虐行為がも今でも外交問題になります。日本人が残虐な人間との批判を受けることもあります。正常に機能しなくなった組織で、末端部まで統制でいなくなったことを示した結果とも思えます。
    日中戦争から太平洋戦争へ至る複雑な自国の歴史を、社会の教科書だけで理解するのは困難だと思います。
    正しい、正しくないといった視点でなく、何がありどう検証されているかを知る機会をたくさん持つべきだと思います。

  • 日本人が何故戦争へと向かったのかを、外交、陸軍の面から考える一冊。

    正直、目新しい考察とも思えなかった。
    日本の軍部の暴走だとか、縦割りの制度のために権力が乱立してしまい、抑制することが出来なかったことや、決断を後回しにし責任を回避する姿勢があったことなどは今迄も言われていることだ。
    どうしてそういった体制を覆すことが出来なかったのかしなかったのかといったことに及んで欲しかった。
    それに、これで戦争へ突入した理由になるのだろうか。
    本書に書かれてあったことは、ひとつの意見に国の意見として纏めることが出来ずに軍部の暴走を許した理由でしかなく、何故そうなったかの解明には至っていない気がする。


    もう一冊、メディアと民衆・指導者編を購入済みだけれど、どうなのか。

全15件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

キラーストレス(PART.1)監修。ストレスが原因の突然死、慢性病、精神疾患の増加が注目を浴びる中、ストレスに苦しむ人たちに有効な対処法を伝えようと企画を立ち上げる。2016年にNHKスペシャル「シリーズ キラーストレス」を放送、大きな反響を得た。

「2017年 『「キラーストレス」から心と体を守る! マインドフルネス&コーピング実践CDブック』 で使われていた紹介文から引用しています。」

NHKスペシャル取材班の作品

日本人はなぜ戦争へと向かったのか: 外交・陸軍編 (新潮文庫)を本棚に登録しているひと

ツイートする
×