老後破産: ―長寿という悪夢― (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (289ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101283791

作品紹介・あらすじ

「預金が尽きる前に、死んでしまいたい」「こんなはずじゃなかった……」年金だけでは暮らせない。金が無いので病院にも行けない。食費は 1 日100円……。ごく普通の人生を送り、ある程度の預貯金もある。それでも、病気や怪我などの些細なきっかけで、老後の生活は崩壊してしまう。超高齢化社会を迎えた日本で、急増する「老後破産」の過酷な現実を、克明に描いた衝撃のノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • 押しとどめる事は難しい超高齢化社会。僕自体があと20年もすると高齢者の仲間入りなのですからそりゃそうだ。順送りで年齢を重ねて行くのだから当たり前の事であります。
    年金を納めていればとりあえず暮らしていけるという安心が有った時代というのはいつの事だったのでしょうか。そもそも働き始めた頃には年金はいつか破綻するからあてにならないなんて事を片耳で聞いていた記憶があります。
    この本は今この時、わずかな年金、または無年金の状態で辛うじて生存している老人たちのリアルな今を取材した本です。
    一日一食しか食べられない、一日100円で生活しなければならない、介護サービスを十分に受けられず不自由な体で過酷か毎日を送っている。
    取材班の人達も自分たちの手で助けてあげたかったんだろうと、文章からにじみ出ています。一生懸命生きて納税してきたのに地獄のような老後を送っている人々。これからもっと老人が増えて非正規で働いている人が山盛りいる中で、この本に取り上げられた人々は特殊な人ではなく、ありふれた老人の姿になっていくのだと思います。
    これ読んだら、急に自分の足元に大きな穴が開いているような気分になりました。今はまだまだ若いし何をしても生きては行けると思うけれど、夫婦で高齢化して日々の生活を豊かに営めるほど潤沢な資金が有るわけではありません。
    この本の人々も今の自分のような老後を送るなんて夢にも思っていなかった人々ばかりです。老後の生活が破綻してこの本で描かれる「老後破産」は誰の身にも起きる事です。
    お金を使い果たし持家を売らないと生活保護を受けられないという事は、現実に即して無茶な人達が沢山います。そうは言っても最低限の貯蓄は必要だし、持ち家を処分するという事は家賃が今後発生する訳で余計な出費が増える事にもなります。この本の中に、どうしても思い出の家を売る事が出来ず困窮して、病院に行けず体の状態が悪化する人もいました。
    他人事どころか自分の親の事が心配になりました。うちの親はまだ若いのですがあっという間に後期高齢者になってしまいますからね・・・。
    僕は団塊ジュニアなのでこれから世の中に負担をかける世代であります。僕が後期高齢者になった時には世の中どうなっているのでしょうか。何とか家族を守っていきたいですがそれにはまず健康ですね。健康第一です。めざせピンピンコロリ!

  • 超高齢化社会の老後破産の事例を克明にレポした本。解説に実態、背景、対応策の提案があるが、本文の方は事例列挙で、気の毒だとは思うものの、これほど困窮していないことに安堵する自分を感じ、また何もしてあげられそうになく、色々と読後感が悪かった。家族や世帯の機能が低下する社会で、支え合う社会というものが実現するのだろうか?という疑問がわく。社会保障の強化にはお金が必要だが、巨額の財政赤字の中、税や社会保険料の負担が大きくなって文句を言うのは、やはり同じ国民なんだよな~。2020年現在、新型コロナの影響で日本の国は更に大変。老後破産どころか国家が破産してしまうのじゃなかろうかと心配な今日この頃。

  • 老後破産に至った方のインタビューを通して、彼らの現状、老後破産に至った要因を取り上げているが、全員共通した要因があり、自分自身の将来を考える上で参考になる。
    ①厚生年金に未加入:ほとんどの方は自営、もしくは厚生年金加入期間が短く、未加入であり、国民年金のみでやりくりしている。(国民年金も満額で無い事例も)
    ②生活保護をもらえないと思い込んでいる。もしくは、貯金が多少あるために一度追い返されている。
    ③完全に孤立している。生活を見守る方がいない。
    ④支援者がいるが、それによって、かえって公的支援が受けにくく合っているケース
    ⑤病気になり、働けない

    現時点で老後を迎えている世代は比較的年金などに恵まれた世代にもかかわらず、こうした老後破産に至る事例が数多く、今後はさらに老後生きて行くには厳しい状況になることが容易に想像できる。逆に現時点で老後に至っている方の多くは「こんなことになるとは思わなかった。」と語っており、かなり自分で招いた(見通しが甘い)結果であるように見え、あまり共感できなかった。

  • 老後社会に絶望感を抱かざるを得ない。それくらい精神にくるノンフィクション。

    取材を受けた高齢者の大半は現役時代誠実に働き金遣いも荒くなかった人々。だがそれでも病気など偶発的なきっかけで老後破産またはその寸前に追い込まれた。老後生活に向け準備や対策をしていても、破産する可能性がある。結構こわい。お金がないと快適な生活は保証できないから早く準備しておくに越したことはないと改めて感じた。お金に対する意識は高めるべき。

    自分で稼ぎ収入範囲内でやりくりする能力身につける
    周りとの関係大切にして、ひとりでかかえこまない

    この2点をこれからより重視していきたい。あと孤独になるのを避けるため結婚したいなとも思った。つらいとき寂しいときに話せる人がいるのはかなり大きいと思うから。

  • 老後破産のケーススタディ。ノンフィクションなだけ深刻に訴えるものが強い。日本の終身雇用が見直され、欧米の実力主義の時代となった。健康面で満足に動けなくなった、介護のため退職を余儀なくされた、等のバックアップがない。男女平等で結婚する人が減った。都市集中で実家を離れる若者が後をたたない。貧富差拡大はますます激しくなる。表面上欧米化しても社会保障の面では貧困。貧しくても幸せなんて言ってもいられなくなってきた。現実を直視し、今後この方面の多くの提言が必要だ。2020.3.16

  •  確かに個々の事例は気の毒だしいろいろ考えさせられるところは多いが、それを執拗にルポしたって現実の解決にはならない。制度的にはまず持ち家や預金があってもそれを担保に生活保護を受けられるようにする、それと自営業者を強制的に年金制度に組み入れる、ということでは。今後増えてゆくであろうフリーターや途中リストラされた無年金者なんかはセーフティネットで救うには無理がありそうなので雇用対策で就労を促すと。そもそも就労意欲のない人できない人は生保よりカウンセリングなり治療なりの対象のような。まあ政府に聞く耳があればの話。

  • これはちょっと、老後を安穏と構えている場合じゃないっていう、焦燥感につまされる内容です。その場凌ぎの享楽主義で過ごしてきた人じゃなく、いわゆる真面目に生きてきた人たちに起きている問題だから、怖い。家族の在り方まで含めて、一度真剣に向き合わざるを得ない気持ちにさせてくれる一冊です。

  • ★購入済み★

  • ・読んでいて背筋が寒くなる。
    ・自分にもあり得るかもしれない未来。
    ・未来に備えて資産を貯めよう。

  • 老後2000万円問題なんていうけどそれで安心して暮らせる訳ではない。時代の変化によって家族の在り方も変化した。今は高齢者の連帯保証人や身元引き受けや死んだ後の手続きをしてくれるサポート法人なんかがあるよって昔の人にいっても信じられないだろうな。
    暮らしの水準が上がって豊かになっても天涯孤独な人は増えてるんじゃないかな。
    これがノンフィクションなのが一番怖い。
    長寿ってありがたい、おめでたいことのはずなのに。

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著者プロフィール

長年「ひきこもり」をテーマに取材を続けてきたメンバーを中心とする、全国で広がる「ひきこもり死」の実態を調査・取材するプロジェクトチーム。2020年11月に放送されたNHKスペシャル「ある、ひきこもりの死 扉の向こうの家族」の制作およびドラマ「こもりびと」の取材を担当。中高年ひきこもりの実像を伝え、大きな反響を呼んだ。

「2021年 『NHKスペシャル ルポ 中高年ひきこもり 親亡き後の現実』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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