- Amazon.co.jp ・本 (522ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101283814
作品紹介・あらすじ
その男が振り向いた時、捜査員を恐怖が襲った。サングラスの奥に光る釣り上がった目──キツネ目の男だった。「Fがいた!職質したい!」。しかし、捜査本部は尾行を指示。男は姿を消し、犯人逮捕の最後のチャンスは潰えた。日本列島を震撼させた空前の劇場型犯罪。警察はなぜ敗れたのか。元捜査関係者たちが初めて重い口を開く。NHKスペシャル取材班が総力をあげて迫る未解決の「真相」。
感想・レビュー・書評
-
NHKスペシャル取材班『未解決事件 グリコ・森永事件 捜査員300人の証言』新潮文庫。
グリコ・森永事件で犯人が使った子供の声に着想を得たと思われる塩田武士の『罪の声』は作中で事件の決着を付けている点でスッキリ感があり、傑作だった。しかし、本作では当時の捜査員や報道関係者による失敗や失態への後悔と反省のオンパレードに気持ちが沈んでいく。
後悔や反省より、事実のみで事件の経緯を構成した方が好感が持てたかも知れない。
グリコ・森永事件をリアルタイムで体感した世代だけに非常に興味があり、NHKスペシャルの放送も視聴した。が、放送された再現ドラマにはリアリティが感じられず、当時の捜査員の証言も虚しく感じたと記憶している。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
人間個人とタテ社会としての人間組織の限界を感じる一冊。今調べ直してこれ程まで新事実が増える事。騙し討ちでの捜査対象児童の肉声録音や「当時はそれが許される雰囲気だった」として常に転び公妨が選択肢に入っている事にも恐怖(オウム事件では実際にやった)。
-
グリコ森永事件に関心ある人必読の力作。事件は現場で起きている、という台詞を地で行く、証言を元にした場面再現はリアルそのもの。驚いたのは、すでに時効を迎えている未解決事件の総括や反省が、警察内で無かったように見受けられるところ。後悔や無念は、捜査関係者全員に共通するのに、なぜ「負けたのか」の教訓が伴わず、数十年後のTV局の企画で、当時の幹部でさえ知らなかった新事実まで"発見"されるのは残念。「失敗に向き合わなかった姿勢」こそ、未解決に終わった根本原因だったのだろうし、それがNHKの取材の意義となり、本書の価値でもある。敗因となったセクショナリズムありきの情報共有と連携の欠如、臨機応変な対応への縛りは、日本社会全般に見られる風潮だけに、単なる刑事モノに留まらない内容を含んでいる。犯人グループに迫った山場で、手出ししないよう命ぜられていた滋賀県警が、敵はおろか"味方"にも隠れて追尾する様は、悲哀と滑稽さが入り混じる、失策を象徴するシーン。また犯人一味を逃しながら「失敗したのは金を受け取れなかった犯人であって、警察ではない」と強弁する元幹部の主張(反論)を取り上げた章は、だから未解決になったのだという、取材班の強い反論があらわれているようだった。
-
「未解決事件」という、いわば警察の汚点を捜査員自らに語らせるという根気のいる取材をNHKが行った。
当時の無線や科学捜査の限界もあるが、犯人を取り逃がした理由は人的ミスがほとんど。「警察は反省文を書けない」「解決済みなら話せるが、未解決事件のことは墓場まで持って行く」なんて言ってていいのだろうか?
この事件をきっかけに広域捜査のあり方が見直されたというが、今回の取材で「今後のために」と証言した兵庫県警、大阪府警、滋賀県警それぞれの元捜査員たちの口から出る「自分たちは一生懸命やったが、他所が…」というニュアンスの証言。システム的には改善されたかもしれないが、意識の改革にはまだまだ遠いのかなという印象。
そして私含めた民衆がこの事件を面白がり、楽しんだせいでマスコミを増長させ、劇場型犯罪を成立させてしまった。
脅迫された企業の中には多くの無辜の人々がいて、紛れもない被害者がいるというのに。 -
事件に対して後から「あのときああすればよかった」と思えるのは当たり前に思えるが、その時々に対峙している人間にとっては、どの判断が正しいかを選択することは非常に難しい。しかし、あとがきで加藤さんが記しているとおり、四方本部長の反論は言い訳以外の何ものでもなく、単に自身を正当化するだけの詭弁でしかない。キツネ目の男を国鉄車内で職質しなかったことは一網打尽の方針から看過するが、大津サービスエリアでキツネ目の男を発見したときに職質しなかったことは間違いである。二度目は見逃してはならないし未解決に至った警察の失敗である。方針を頑なに変えないことが失敗に繋がっていることは自省すべきと思う。
-
テレビ放送で見ていたので読んでみました。
こういった「動く事件」は現場に任せる比重を重くすべきだと思います。 -
子どもの私が初めて社会に目を向けたニュースが、グリコ・森永事件であった。とは言え。子どもの私が見ていたのは飽く迄事件の表層に過ぎないのであって、改めて現在のこの自分の目で見て、あの時何があったのかを知りたいという思い。当事者たちの証言には「今思えば…」と「たら、れば」がたくさん。
-
幼き頃の衝撃の事件ですから。
録音テープのあの子供は今何を思うのでしょうか? -
塩田氏の「罪の声」から。
事件のあらましや時系列は小説と同じで、改めて塩田さんの執筆力の素晴らしさを感じた。
本書は、なぜ未解決になってしまったのかという視点が大半で、キツネ目の男への職務質問の是非や、保秘による情報の取り扱い、各府県にまたがる広域捜査の難しさや、科学捜査の未熟さなど、結局、今同じような事件が起きたらすぐ捕まるであろうことが、当時の状況では難しかったということ。
今だとサイバー犯罪なんかはほぼ捕まらないだろうけど、そのうち時代も変わるのでしょう。
お、と思ったのが、現代の科学技術で新たな発見があったこと。犯罪で使われた音声から、年齢や同一人物かどうかがわかり、当時の見立てが覆ったと、、、。
個人的には、逮捕されてはいるものの和歌山カレー毒物事件が、だいぶきな臭い感じがするのだけど。。なにか新事実見つからないかな。 -
グリコ森永ネタはやっぱり未解決だけにロマンを感じます!
31/1/9