白蝶花 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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レビュー : 57
  • Amazon.co.jp ・本 (366ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101285726

作品紹介・あらすじ

傾いた家のために財閥の妾となった泉美、貧しさ故に芸妓として売られた姉妹の菊代と雛代、奉公先で書生の子どもを身篭る千恵子、豪奢な屋敷で愛に飢える県知事令嬢の和江。人生を選びとることも叶わず、女は明日死ぬかも判らぬ男を想うしかなかった時代-戦前から戦後の不自由さを吸い上げ、荒野の日本で美しく野性的に生を全うした彼女たちが咲かす、ドラマティックな恋の花。

感想・レビュー・書評

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  • 全てのお話が、同じところにつながっていくのが面白かった

  • 図書館で。
    明治・大正・昭和と戦争を生きた女性が大変だったのはワカルけど…なんかステレオタイプな感じでどこかで聞いたようなお話って感じなので共感も出来ずそうですか~という感じで流して読んでしまいました。というか壊滅的に男の趣味が悪いな、と思うんですが…。少しマシなのは戦争行った子ぐらいだと思うけど…それでも彼も問答無用で行為を迫るしなぁ… まあ時代的にそう言う時代だった、と言われればそうなのかもしれないけど、だったらそれこそ戦時中に恋なんて…とどちらかは踏みとどまらない?とか考えてしまいました。そして結局皆素敵な殿方にメロメロになるなら女性に惹かれたってくだりは必要だったんだろうか?とそこも疑問に思いました。

    まあ簡単に言うとあまり男の趣味が合わなかった、という事なのかなぁ。あの時代、女性が一人で自立して生きていくなんてほぼ無理だったんだろうし、大変だったのはわかるけれどもわかるからこそ安易に危険な恋に飛び込むヒロインが理解出来なかった感があります。自分だったら良い顔して近づいてきて、結局は女性を窮地に陥れる優男よりも金持ってる不格好な中年男性の方が責任とる覚悟ができていてまあマシかな、なんて思ってしまいますが。…世間一般的には優男の方が良いって思う女性が多いんだろうな、ウン。(でも所詮あいつら、責任取らないでやり逃げしてますぜ、と言いたくなる辺り自分に恋愛小説は向かないのだろうなぁ…)

  • 読み始める前、それぞれが独立した短編なのかと思っていた。
    その頭で読んでいたので、芸者に売られた菊代姉妹の出てくる「天人菊」、破産して自殺した父のせいで財閥の当主の妾になった如月泉美を主人公とする「凌霄花」が、とてもあっけなく感じた。
    が、どうやらそういう読み方は間違いであるようで。

    一冊の大半を占める分量の「乙女椿」で、それらの因縁がつながっていく。
    太平洋戦争が激化する頃、千恵子が女中として働く先で出会うのが泉美の息子、政吉。
    身ごもったものの実家にもいられなくなった千恵子を助けるのが、菊代と雛代姉妹。
    そうか、そう来るんだ、と驚いた。
    もう一方の主要な筋は、気難しいお嬢様の和江と千恵子のつながりの物語。
    そうか、この話は、女の絆を、複層的に描こうとしたのか、とやっと理解した。

  • 読む度に惹きこまれる宮木さんの小説。
    大正から戦後にかけてを強く、逞しく生き抜いた女性を描いたこの短編集は、読み進めていくにつれ連作短編小説だと気付きます。点と点が線になる。

    解説は三浦しをんさんが書かれているのですが、これがまた素晴らしく小説の魅力を伝えていて、ページを閉じるその瞬間まで、むしろ読み終えた後も余韻が残り、幸せでした。

    何をもって幸福なのか、不幸なのか。
    理不尽なことがない人生なんてない中で、登場する女性たちに、幸せなことも、辛いことも訪れて、それはこの小説に限らず、現実に生きている私たちも同じこと。
    全体を通して際立つのは、愛する男性の存在。
    そして、女性同士の深い繋がり。

    愛する人に出会えたこと、そのこと自体は、女性としてとても幸せなことだと思います。
    一方で、その人と離れなくてはいけないことは、どれ程魂がちぎれる痛みでしょうか。まして、戦地に赴く、命が助かるかわからない、それをどうすることもできない無力さは、想像するだけでも居た堪れない。

    三浦さんも解説で書かれていましたが、男性同士の友情とはまた違った、女性同士の友情、というのもあるんですよね。
    表面上は分かり合えなくても、深いところで繋がっていること。宮木さんの描く女性が好きです。

    そして、辛い出来事が起こりながらも、花の名前がつけられたこの短編集は、美しさを置き去りにしない。
    「花の匂いに溜息が出た。すぐ外に見える沈丁花が甘酸っぱい香りを部屋の中まで漂わせ、その横の寒緋桜は毒々しいほど鮮やかに花を垂れている。柊南天がひよこみたいに黄色い花をぽつぽつと星のように咲かせ、地面の近くを見れば、鈴蘭水仙が申し訳なさそうに小さな白い花を付けていた」
    と、まだまだ続けたくなってしまうけれど、なんて、美しく、素敵な目線を持って世界を見ているんだと思いませんか。

    泥に汚れても凛とした花のような、誇り高い美しさを見せてくれるから、泣きたくなる。日本ではもう戦争をしていないけれど、今も世界で戦争をしている国の女性たちは、同じように愛する人を送り出している。
    そう思うと、またさらに泣きたくなるのでした。

  •  愛って言うものはそんなに素晴らしいものなのだろうか。
     この本を読むと、女たちはみな、愛のために身を焦がし、生きていく。
     いや、それは素晴らしいとは思うのだけれど、すごいなぁとは思うのだけれど、愛だけでは生きていけないだろうとも思うのだ。
     あるいは、辛い時代であったからこそ、愛のみを頼りに生きるしかなかったのかも知れないのだけれど。

     いや、よく考えると、愛だけで生きてないか。
     最後の短編を読むと、お嬢様のすさまじさにおどろく。やはり気高さというのは尊いものなんだろうか。

  • その日、どれだけの女が獣の声をあげたろう。息子を返せ、夫を返せ、兄を、弟を、あのひとを。わたしの愛した男をかえせ――と。

    大正末期、かつて両親に売られた有馬温泉の芸妓姉妹・菊代、雛代。昭和元年、父親の借金のかたに妾として売られた東京の女学生・泉美。太平洋戦争ただ中の福岡県知事宅へ、女中として働くために酒田からやってきた千恵子、そして知事の一人娘・和江。それぞれの女たちの道ならぬ、つかの間の恋。
    いつだって時代は女を縛り、男を連れ去ってゆき、愛した男との短い逢瀬が、その後の女の長い人生を変えてゆく。
    激動の時代に咲く女たちの恋を描く連作短編集。

  • 第二次世界大戦を生きる2人の女性を題材にした二つの話。
    一人は姉妹で女衒に売られ、一人は知事の家に奉公に上がる。
    どちらも厳しい時代を強かに生きる様子に心打たれます。

  • 「花宵道中」に続き2作目の宮木作品。

    独立した短編かと思いきや、少しづつ見える関係性で、
    あの人のその後がちらと垣間見えて、「あー、あの時代をあの人はこうやって乗り越えていたのだ、」と感慨深い想いがする。

    女と男がいる以上、粘膜での会話はある段階からは
    あってしかるべしだが、それが過剰に嫌らしく無く、
    でもぬめぬめした質感と哀切に富んだ表現は、
    切なく胸に迫るものがある。

    今の世は、おんなひとりも当たり前だから、
    楽になったものだ。

  • 戦前~戦後の婦人解放も儘ならなかった時代を生きた5人のヒロイン達を4つの花の名に題した連作短編。
    花宵道中に引けを取らないぐらい官能的…。
    情婦、妾、女中、令嬢、立場も環境も異なる女性達の儚くも情熱的な純愛物語が最後1つに繋がった時は鳥肌が立ちました。
    それでもやっぱり戦争物は泣いてしまう。
    女だって必死に戦ってきたんだ…と。

  • 小説だな、と思う部分もあるけど小説だから良いのだ。そんな謎結論。

    男と時代に翻弄される女性達のお話。
    どの女も強い。泣いてるけど、みんな強い。
    思い返してみると誰も生きることを諦めていないのがすごい。
    そんなにも愛した男はいい男だったのだろうか。
    文にすると
    どの愛も短い。
    当たり前のことだけど読んでる側とと彼女達の時間の長さは全く違う。支えになり得る充分な時間をかけていると思う。
    でも、読んでる私から見ると短い。愛は時間の長短ではないと思うけど。もうちょっと恋愛してても良かったかな。
    それを許さない時代だったのだろうけども。

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著者プロフィール

宮木 あや子(みやぎ あやこ)
1976年生まれ。神奈川県出身。2006年『花宵道中』で第5回女による女のためのR-18文学賞 大賞・読者賞受賞しデビュー。同作は2014年映画化された。
代表作に2016年テレビドラマ化された『校閲ガール』とその一連のシリーズ。

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