長崎乱楽坂 (新潮文庫)

著者 : 吉田修一
  • 新潮社 (2006年12月22日発売)
3.19
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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101287522

長崎乱楽坂 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • やくざの家族の物語 地方のやくざ一家の物語、いつもの半端もんの男達が集まる家も時代とともに、廃れていき最後に物語の象徴的な離れが火事で焼ける。最初は子供目線で見ていた一家の様子も大人になり思い出となり、人は死に、殺されと憧憬と共に寂しさが伝わってくる。

  • 長崎出身の吉田修一さんの描き出す長崎という場所は、なんとも魅力的な土地ですね。これぞ、ある意味、土着的、ということか。自分の中では「悪人」と、この「長崎乱楽坂」は、長崎という場所の魅力をしっかりと描いた小説、ということで、とても好きです。

    最後の「悠太と離れの男たち」の章で、東京から、おばあちゃんの法事で長崎に帰省した悠太が、映画の撮影している風景を見かけるやないですか。で、「映画でみる長崎は、ちょっと、よそよそしいよなあ」みたいな感想を、心の中で思うやないですか。あれとか、すっごく好きですね。吉田さんも、自分のまさに生活していた「リアルな」長崎と、映画で見る長崎と、「なーんか、ちゃうよなあ~」みたいな、違和感、感じてるのかなあ。あの映画の撮影、っていうのは「悪人」の映画化のロケだったんじゃないだろうか!?そんな妄想、しちゃうのですなあ。

    で、そんな、長崎、という場所を舞台に、三浦家という、いち地方侠家、というか地方ヤクザ?の一家の栄枯盛衰を描きつつ、駿と悠太という兄弟の成長劇(衰退劇?)を描きつつ、というのが、ザックリとした内容?でしょうか。

    なんといいますか、本当に土着的、というか、日本的、といいますか、こう、ジメッ!!とした感じ、日本の古い家の、こう、薄暗くて、換気が悪くて、畳が古ぼけてる感じ、すっごい、いなたい感じ、そういう「感じ」の描き方が、吉田さんは、本当に上手ですよね。「悪人」で、主人公の清水祐一が「こっからどこにも行かれへん気がする、、、」みたいなこと、言ってた気がするのですが、人を縛り付ける、「家」という存在。「生まれ故郷」という存在。呪縛、ってこと?そういう、こう、グログロでドロドロした感じ。すっげえ感じましたこの作品でも。怖いなあ、、、

    しっかしね、駿は、どうして、あっこまで「離れ」の囚人なのだったのだろうなあ。逃げ出せなかったのだろうなあ、、、辛い。つらいよ。やれんよ。でも、自分で、その道を選んだんだろうなあ。どうしても。梨花と一緒に、東京にエイヤッ!!っと飛び出した駿、見てみたかったなあ、、、叶わなかったなあ。

    この作品の、一応の?主人公と思われる存在、駿と、「悪人」の主役だった清水祐一は、どうしても、こう、存在がかぶっちゃう。長崎出身、ってことで、かぶっちゃうのかなあ?吉田修一さんは、「ああいうタイプ」の男性を、語ってしまいたくなるのでしょうかね?生き方が下手で、決して悪いヤツじゃないのに要領悪くて、それでも、どうしても、優しい男。

    「なんもせんで生きとるのも、なかなか難しかぞ」と言って、弟の悠太に殴られちゃう、そんな駿。
    「欲しくもない金、せびるのも、つらかねえ~」という思いを抱きつつ、離れて暮らす実の母に会うたびに小銭を巻き上げていた、そんな祐一。
    これはこう、どうしても、ダメ人間の優しさ、みたいに思っちゃうんですよね。ダメ人間の、不器用すぎる、ダメな方向の優しさ。なんか、ああ、駿と祐一、似ているなあ~ってね、思っちゃうんですよね。

    それにしても、数々のヤクザ者が、基本的には誰も、ロクな人生歩んでいませんよね。
    龍彦。尚吾の組に見捨てられ、夫婦ともども夜逃げ。
    文治。一人暮らしのアパートで酒浸りの人生を過ごした挙句、千鶴の手助けで病院に入るも、すぐ死んじゃう。
    尚吾。長崎を離れ、神戸に行き、そこの組で若頭でブイブイいわすも、敵対する組に銃殺されちゃう。
    たぶん、聖美の恋人だったタローも、一時期、梨花と同棲していた清二も、ロクなその後は送っていないのでは?と、推測されます。

    その一方、登場する女性陣の、なんとも逞しいことよ。強かなことよ。男より、やっぱ、なんだかんだで女性のほうが圧倒的に強いよね。男は結局、どこまでも、大いなる母性、かあちゃんには勝てないのですねえ。
    三浦家のおばあちゃんにしろ、千鶴にしろ、爺さんの葬儀を立派に取り仕切った奈緒にしろ、くう、強いなあ、強いなあ、、、って、感心しちゃうのです。

    あと、どうしても、ゲイっぽいなあ、とは思うのですが、そんな描写も、好きなんですよねえ。吉田さん、どうしてこう、いろんな作品に、ゲイっぽい要素を入れるのだろうか?でも、そこがまた、好きなんですよねえ。刺青って、怖い。ヤクザって、怖い。殴られそうだし。殺されそうだし。でも、そんな世界に、どうしても憧れももってしまう。はあ、人間って、どーしょーもねえなあ、ってね、思っちゃうんですよね。

    あ、あと、駿が働いていたガソリンスタンド。まだ、東京行くって話になってる時に、辞める直前の時に、社員の、さゆりさんや、店長が、駿に向かって言った言葉。「まだ若いんだから、なんでもできるよ。どんな失敗しても、何度でもやり直せるよ」って。言うやないですか。あれ、間違いなく真理なんですけど、若者に向けて送る言葉として、本当にその通りなんですが、でも結局、駿は、何もできなかった。東京にも行かれなかった。梨花との関係は、多分、絶対的に修復不可能だった。離れの囚人になり、見事なまでに、ダメ人間の象徴みたいな人間になってしまった。でも駿は、店長に間違いなく可愛がられ、辞められるのをトコトン惜しまれるほどの、優秀なアルバイトであったことも、間違いのない事実、ですし。ああ、何故、、、そうなったのか、、、
    あの場面、どうしても、フィッシュマンズの「IN THE FLIGHT」の歌詞を、思い出しちゃうんですよねえ、、、

    あと10年経ったら何でもできそうだと思うけど、でも結局なんにもできやしないんだよ僕、

    っていうような、あの歌詞と音楽と歌声と。
    吉田修一さんと、佐藤伸治さん、同じにおいを、感じるんですよねえ、、、どっちも大好きだよなあ。

  • だと思ったよ、お兄ちゃん。

  • 何かを期待させるのだが、読み進んでも何も残っていない。自分に読解力が不足している?著者のパークライフという作品も心に響くものがなかっただけに、相性が悪いのだろう。

  • 家族や自分の置かれた状況から抜け出せない行き詰まる感覚に襲われる作品。

  • 吉田修一や石田衣良は若者の風俗を描いて支持を得たような印象があるのですが、そういう作家さん胡散臭くて結構嫌い。吉田修一もパレードが面白かったにも関わらず、結構胡散臭げに見ていてあまり読まなかったのだけれど、去年読んだ「さよなら渓谷」で見直したのです。
    さて、この本は多分昭和30年代位のやくざの家系の家で育った少年が大人になる道すがらを描いた連作長編で、予想通りろくな大人になって行かない姿がつらつらと書かれています。性的な描写も結構有りますが、個々の章が全て寸止めなので、すっきりしたいエンタメ好きの人には物足りないかも(僕がそうです)。でもそういうワカモノガーみたいな変なおもねりはなく、淡々とどうしようもない家庭のどうしようもない道を歩みそうな少年~青年を描いていて結構好印象。読んでいてぐったりはしましたが、そこは評価とは別の個人的な好みの部分になるか。

  • 吉田修一作品というと、そこはかとなくおしゃれですっきりサラサラしていて、そしてフェミニンなかおり漂うというイメージなんだけど、それを気持ちよく裏切るような泥臭い話。何しろ、やくざ稼業の一家で大人になっていく少年の話なんだから。
    はなれのおばけを信じていた駿少年が青年へと育ち、アルバイトで金をためて女と街を出ようする。そして……。半生記かというと、実は一代記ではないだろうか。駿は若くして生ききってしまったような気さえする。やくざ稼業の一家のなかでは浮いたような、どこか一家を客観的に見ていた彼は、没落していく家から最後の最後でのみ込まれてしまった。
    「乱楽坂」という坂が長崎あたりにあるのだろうか。楽しく乱れながら堕ちていく坂ということか。

  • 全体の雰囲気はそんなに好きじゃないけど、文章が好きです。

  • 母と二人の息子と3人で
    九州の実家に戻り
    ヤクザ一家とともに暮らし、その息子たちが大人になるまでのお話し。

    ん~
    ちょっと自分としては物足りなかった感じでした。

    奥深いところまで感じることが出来ない自分のせいでしょうか・・・スミマセン。

  • 読んだ時はそこまでの感情はなかったが、後から風景が蘇ってくる才能。

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