さよなら渓谷 (新潮文庫)

  • 新潮社 (2010年11月29日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784101287546

みんなの感想まとめ

物語は、幼児殺害事件を起点に、加害者と被害者の複雑な関係を描き出します。特に、男女の視点の違いが罪の深さにどのように影響するのかを探求し、読者に問いかける構成が印象的です。主人公の女性は、未熟な男たち...

感想・レビュー・書評

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  • 吉田修一さんの作品をいくつか読んできました。
    文学賞受賞作から、いまなお話題の『国宝』まで、どの作品も高い評価と人気です。
    その中でも『さよなら渓谷』は、読後に残る余韻の深さで、他の作品を大きく引き離します。

    一人の若い女性の人生を潰してしまったのは、未熟な男たちだった。
    同じ事件を見つめていても、男女では“罪の深さ”の受け取り方がまるで違う。罪の輪郭が、男女では異なる形に浮かび上がるのだ。

    その象徴が、作中の女性記者と男性記者のやり取りにある。女性が抱く想像通りの答えを、男はあっさりと持っている。
    この見え方の差そのものを小説として
    誰にとってどれほどの罪なのかという問いを、読者へ突きつける。

    そして、その“異なる輪郭の罪”をすべて受け止め、償いという名の不幸を背負い続けるのが主人公だ。
    読後、言葉にしにくい余韻が心地よい。

    みんみん♪
    読んだよー美味しくいただきました(*☻-☻*)

    • みんみんさん
      ラテン攻めで始まったように見えるし
      たぶん鈴木もそのつもりだったと思うけど…
      途中から杉木の性格とかパトロンさん?いたから
      攻めなんじゃない...
      ラテン攻めで始まったように見えるし
      たぶん鈴木もそのつもりだったと思うけど…
      途中から杉木の性格とかパトロンさん?いたから
      攻めなんじゃないかなぁと笑
      鈴木ってたぶんどっちでもOKな人のはず
      わたしリバって嫌いだからどちらでも大丈夫です
      ってのは嫌なんだよね(゚-゚*;)(;*゚-゚)
      でも井上佐藤さんってわからないからな…

      ってわたしの勝手な考察です(●︎´艸`)ムフフ
      2025/11/16
    • みんみんさん
      おびさんの吉田修一でBL語りすぎて申し訳ないです〜。゚(゚´Д`゚)゚。
      おびさんの吉田修一でBL語りすぎて申し訳ないです〜。゚(゚´Д`゚)゚。
      2025/11/16
    • おびのりさん
      (๑・̑◡・̑๑)グフフ
      リバやだよね
      (๑・̑◡・̑๑)グフフ
      リバやだよね
      2025/11/16
  • ある渓谷で起きた幼児殺害事件をきっかけに、マスコミが容疑者の母親に殺到する中、週刊誌記者が、容疑者の隣家に住む夫婦の過去に注目します。
    15年前のレイプ事件の加害者と被害者であるその夫婦は、なぜか共に暮らしていた。
    事件の真相が明らかになるにつれて、被害者と加害者、そして周囲の人々の間に潜む「業」や「罪」と「償い」が描かれていきます。

    感想がとても難しい…
    冒頭で自分の子を殺したと言う事件で始まり、てっきり真犯人は誰か?
    そんな話かと思いきやストーリーは隣の夫婦って⁈
    この流れが素晴らしいです。

    週刊誌の記者、隣家の夫の視点で話が切り替わるのだけど、この夫は大学時代に野球部員で集団レイプ事件で逮捕された過去を持つ男だった

    過去を調べる記者、男の過去の回想が絶妙に切り替わる。そして何故加害者と被害者が夫婦同然に暮らしているのか?
    235ページの作品が濃すぎる!

    作品を通して終始男目線の内容だとは感じる
    被害女性に対する本音がこれでもかと出てくるのはかなり胸くそ悪い。

    この作品は読者が男女で受け取り方が違うと思う。
    他の方のレビューがとても気になる作品でした。




    • kuma0504さん
      アマプラで公開されてます!
      アマプラで公開されてます!
      2025/11/06
    • みんみんさん
      アマプラチェックしてみます〜_φ(・_・
      アマプラチェックしてみます〜_φ(・_・
      2025/11/06
    • yukimisakeさん
      皆さんがお答えして下さった(^^)ありがとうございます♩
      お時間あれば是非感想聞かせて下さい。確かにあれはあれが彼の幸せなんかな…辛い…

      ...
      皆さんがお答えして下さった(^^)ありがとうございます♩
      お時間あれば是非感想聞かせて下さい。確かにあれはあれが彼の幸せなんかな…辛い…

      ペロちゃんがハッピーなメガネを(□_□✨)可愛いー!
      2025/11/06
  • ★3の中。

    おびのりさんとみんみんさんのレビューを読んで手に取りました。

    なるほどな〜。

    加害者の苦悩と被害者の苦悩が文字通り同居している稀有な小説。

    被害者の女性の苦悩は謂れなく逃げ場もない。
    被害者であるにもかかわらず、世間の本音の目は氷点下のように冷たい。
    接するまではそうでなくとも、触れた途端に、自分事となった途端に、まるで汚れ物を押し付けられたかのような攻撃的な拒絶を彼女に示す。

    一方、自分の愚かな行いで道を踏み外した加害者の男は、被害者の女性を案じ、自分のせいで不幸になっていないことを願うのだが、そうはなってくれない。
    男は無限の償いを彼女に示そうとする。

    やがて加害者の男と被害者の女は、もつれるように共に世間の片隅に沈んでいく。
    傷つけ合いながら、世間の目を逃れるための不幸な安心を求めながら。



    ミステリーの皮を被った文芸作品でした。

    • 1Q84O1さん
      それでも★4が出ないのが土瓶師匠ですからね〜w
      期待しないで待っておきます!
      いや、期待しておきます!★2〜3を(^^)
      それでも★4が出ないのが土瓶師匠ですからね〜w
      期待しないで待っておきます!
      いや、期待しておきます!★2〜3を(^^)
      2025/12/28
    • ultraman719さん
      やっぱり、夢枕獏さん〜!(しつこいw)
      やっぱり、夢枕獏さん〜!(しつこいw)
      2025/12/29
    • 土瓶さん
      うん。
      獏さんのも読みたい。
      で1Qさんの期待を裏切ろう!!
      うん。
      獏さんのも読みたい。
      で1Qさんの期待を裏切ろう!!
      2025/12/29
  • 吉田修一さんの本をちゃんと読むのは初めて。悪人の映像が私には強烈すぎて、活字で体験するのは躊躇っていた作家さんである。

    悪人もこのさよなら渓谷も、事件がテーマだろう。そしてそれは女性には耐え難い事件がありありと描かれて、無情にも展開し結末はそうなってしまう。
    さよなら渓谷ではその事件を起点として加害者と被害者がまた接点を持つ。どちらの苦悩も良く描かれていてこのような事件が起こらない事を願いながら読む。

    展開的にはありえない方向に進んだと思う。女性の作家さんならこの展開は無いような気がするが、そうしたところも含めて怖さドキドキがあったのは作者の意図したところにハマッタのではないかと思う。

  • 幼児殺害事件から始まる物語は、自然な流れで隣の夫婦の話しに進む。性犯罪という過去を背景に繋がっている奇妙な男女を男性記者の視点で描かれる作品。

    被害者と加害者の息遣いや空気感が映画のように感じ取れる文章。傑作だ。

    「幸せになれそうだった。」と述べた加害者男性。「幸せになってはいけない。」と話す被害者女性。幸せを拒むのは、事件が想起させる罪悪感なのか、復讐か。被害者女性の心情があまり語られていない事も作品を深化させているように思う。

    性犯罪はあってはならないけど、事件の後、被害者である女性が生きにくく、不幸せになった経緯や、加害者である男性が許されそうになっていた日本社会の雰囲気はなんとなく理解出来る。著書からはそんな情況も問題提起されているようだった。

  • なんか…切ないなぁ。溜息が出ちゃう。
    でも嫌いじゃないなぁ。

    緑豊かな桂川渓谷で起こった、幼児殺害事件。実母が容疑者に浮かぶんだけど…。現場取材を続ける記者は容疑者の隣家で暮らす夫婦(?)が、ある重大事件に関与している事実を掴む…
    って、内容なんだけど。

    幼児殺害事件がメインだと思うでしょ…普通。
    違うの…隣の夫婦がメインなの。
    うまい具合に話がすり替わっていくのよ…
    中盤あたりから16年間の回想形式で話は進むんだけど…情景が鮮明に浮かぶの。

    この小説を好きというのは憚られると思うけど…
    ひきこまれちゃうなぁ…
    実際、自分の身におきたら…ふざけんなっ!
    ではすまないんだけどね。

  • ずっと引っかかっていた既視感。
    読み終わる間際に思い出しました。
    この作品が映画化されたものを結構前に観てた。
    個人的には映画も良かった。なのでもちろん今回読んだ原作も良かったです。

  • さよなら渓谷 吉田修一著

    1.購読動機
    「路」「森は知っている」と読了してきました。
    前情報なく、既知の作家さんなので手にとりました。

    渓谷からは、清らかなイメージがわいたからでもあります。

    2.テーマ
    罪を犯し、生きる意味、生活することへの疑問を抱く男。
    そして、その罪の犠牲になり、両親もそして自らの幸せも壊された女性。

    この2人を軸に物語が進行します。

    他の人のレビューにあるとおり、過去、複数の大学で事件になった「暴行」を扱っています。したがって、物語とはいえ、読むのを躊躇うこともあります。

    3.作者がなぜこのテーマを、そして伝えたかった世界は、、、

    物語の登場人物のセリフに、作者の想いが込められている作品は多いです。

    しかし、この作品は、それが少ないからでしょうか?
    読者側に相当の想像力を求めているようにも感じます。

    罪を犯した者と、その被害者が、なぜ一つ屋根の下で暮らすのか?
    その背景と展開に、吉田修一さんは、何を託そうとしたのか、、、

    残念ながら、僕には、言語化できるほど消化は出来ませんでした。





  • 途中から展開が読めて、最後どう終わるのだろうと。
    どんな最後が良いのか、どうしても女性の立場で考えるとわからない。
    そんなことが本当には起こりえないとも思うし。
    レイプ犯は一生苦しむべきだ。
    幸せになってはいけない。
    と言うのは簡単だけど。
    考えさせられる小説。

  • 映画の衝撃で、つい原作に手が伸びた。暑い夏の空気の中で傷ついた女と傷つけた男の暮らしが重かった。


    読むよりずっと先に映画を見ていた。

    映画を見たらあまり原作は読まないのだが、この映画には主演の二人の、お互いを癒すように見えて、過去から逃れられずにいる。そのために傷つけあいながらも一緒に住んでいる男女の奇妙な愛の姿があった。
    暑い夏の熱気に中で、狭い何もない仮の宿りのような粗末な部屋も、将来に結びつかない、危うい今の姿をそのままに、けだるく、熱く描かれていた。

    映画は、のっけからの真木よう子と大西信満の過激な絡みが話題になったが、夏のむんむんする暑さや、隣の主婦のわが子殺しや、その主婦と大西信満の浮気疑惑が、これは夏に読まないでよかったと思うほど、汗臭く泥臭い物語だった。

    隣で発生した子供殺し、それを追うトップ屋、ニュースに群がってくるマスコミ。そうして、二人の過去まで知られ、隠し切れなくなっていく。女の虚無的な生き方と、男が悔恨にひしがれつつ生きていく姿が、人の弱さをひしひしと感じさせる。

    人家から離れて澄んだ川が流れるところで暮らす二人は、隣の騒ぎの外にいても、いつか過去の傷口を広げていき、女はもう男と住んでいられないと感じ始める。

    レイプ犯と被害者の同居関係。人生を狂わしてしまった一夜の悪ふざけの事件が、生涯の不幸の根となって生き残り根をはり、周の好奇な面白半分の目に晒される。
    それがこともあろうに事件の中でも大学野球部と女子高校生の悪質なレイプ事件だった。

    当事者たちは時間がたっていたが、お互い生きづらい中で出逢ってしまう。
    二人は、過去の事件によって深い悲しみと、周囲の好奇な冷たい目に晒されて生きてきた。
    他人ごとのように考え忘れて生きることが、救いであったのかもかもしれない。

    買ってあった、この「さよなら渓谷」は、勝手に名作だと思っている「赤目四十八瀧心中未遂」と同じような濃密な人生の一編を見せられるようだった。
    生活圏の最下層に属する人たちが織り成す過去と現在、読書の世界は、現在の自分と距離がありそうでどこか重なる、そういった生きる重みがずっしりと感じ取れた。

    寄り添いながら常に距離があるふたりを、周りの人々の生活を絡めて読ませる一冊だった。
    交互に語られる二人の過去も、いい構成だった。

    同じ作者の「横道世の介」が明るい中にもの悲しさを秘めているのに比べて、これは終始、重く暗い人生と、人はそんな中でも空気を求めるような、ささやかな安らぎがあれば生きていけるのかという風にも感じられるが、しかし開放されるために何をしたのだろう。生きることは何かもの悲しい。
    こういった特殊な世界でなくても、人は重い何かを背負っているに違いない。

    根源的な愛や性に関わるニュースや事件となると、それを見聞きする人の品性があらわになる最近の報道、日ごろの出来事を思い出した。

  • 大人の男女の機微を描く。
    レイプされた女性と
    加害者の男性がひっそりと暮らす。
    隣家で起こった児童殺害事件を発端に
    明かされる隠れた真実とは。

    本作は明らかに男性目線だなあ。
    女性が語る言葉と態度が
    表面的な気がした。
    男性というフィルターを通したもの、というか。

    吉田修一さんは
    好きな作家さん。
    次は国宝を読む予定。
    いろんなジャンルを書ける方なので、
    期待大!

  • 薬丸岳さんの【死命】を読んだ後、この本を読んだからでしょうが…
    しんどかった…

    大学時代レイプ事件の加害者だった男性と被害者だった女性。
    贖罪の気持ちを抱き続ける男性。
    忘れたい、忘れようとする被害者の女性。
    気持ちはどこまでもすれ違っているのに…

    • azu-azumyさん
      まっき~♪さん

      こんにちは!
      コメントありがとうございます♪
      こちらこそ、いつも「いいね」をありがとうございます!!

      初めて...
      まっき~♪さん

      こんにちは!
      コメントありがとうございます♪
      こちらこそ、いつも「いいね」をありがとうございます!!

      初めて読んだ吉田修一さんの本が『横道世之介』でした。
      この本が面白くて、見かけるとつい手にしています。

      これまではものすごく偏った読書をしていたのですが、ブクログのおかげで色々な本にチャレンジできるようになりました。
      まっき~♪さんの本棚にお邪魔するたびに、その幅広さに驚いたり、感動したりしています。
      読んだことのない作家さんもいっぱいで、ぜひチャレンジしたいと思う日々です。

      ブログにも遊びに来てくださっているとのこと、ありがとうございます!
      最近、更新頻度がかなり落ちているのですが…(^_^;)

      これからもどうぞよろしくお願いします。

      2015/10/14
  • 映画的な小説と評されるこの作品。
    正直苦手だった。
    映画も全然観ないからなー、、

  • 一気に読み終えました。
    吉田氏の作品、個人的にとても好きなんだと思います。
    この方は、人に説明することができず、自分でも何なのか分からない人間の心の奥底の「何か」を衝くのがとても上手い。

    その「何か」はどろりとした黒いものだったり、驚くほど無垢で純粋な衝動だったり、周囲への優しさだったり、社会の常識だったり、そんな色々が混ざり合って生まれた、何だかよく分からないモノ。
    それは誰の中にもあると思うのだけど、何となく見せたくないし、見たくない、知らずにいたい。。
    そこを衝くから、読んでいて、ズシンと心に響きます。

    とある渓谷で起きた、幼児殺害事件。実母が容疑者として浮かぶという、実際に起きた事件を思い出させる始まりですが、物語はその隣家に住む夫婦を中心に進みます。

    償うことが償い以外の何かに変わるとき、こんなにも切なく、やるせない感情が生まれるのかと、終盤には涙しました。

  • 傑作である。そして吉田修一の凄さが際立つ作品だと思う。まず情景描写の素晴らしさ。そして人間の描き方。加えて複雑な感情表現・・・それらが組み合わさってはいるが、サラリと描くのが実に旨いのだ。
    なので、先が読めるとか、あり得ないとか、都合がよすぎるとか、正直どうでもいい。人によって感じる度合いや深さが異なるように敢えて書いているのだから。よって様々な意見が無限に出てくるのは当然であり、それが作者の狙いでもある。
    反発が出てくる事も承知の上でこのテーマに踏み込んだ吉田修一の覚悟が伝わってくる。

  • 読み進めるとすぐに、既視感を覚えた。あれ、読んだかしら?と思い、調べると読んではいない。もしかしたら映画かなと調べるとそうだった。映画はかなり小説に近かったようだ。高校生の時に数人にレイプされずっと引きずる不幸な女性と、大学生だった加害者。加害者も自分の罪に苛まれる日々を送っていた。2人が出会い一緒に暮らし始める。重い小説だった。
    ※(2022.3.5 映画観賞)

  • 幼児殺害事件と尾崎と里美の間に起きた決して忘れることのできない過去から、それぞれが歩んできた2人。うだるような暑さの描写や男性からの視線が印象的だった。当時いた同級生の1人は、社会的地位にいて女性のこと、そんな風に思ってたのがいると思うと虫酸が走った。決して幸福とは言えない人生を送る被害者。
    尾崎と立花里美が一緒に暮らしてる?2人にはもう何もない…池袋の映画館で「許して欲しいなら死んでよ」から結末が展開していった。話しの内容は理解しがたいけど、不思議と惹き込まれてしまうのは吉田修一さんだからなのでしょうか。 

  • 集団強姦の加害者と被害者が一緒に暮らす、というあらすじから興味を持った作品。
    幸せになりそうだったから出て行ったかなこの心情をもう少し知りたいと思った。

  • 前作の「悪人」は、読んだあとでいろいろ考えてしまう作品でしたが読み応えはあった。

    今回は東北の女児殺人事件をモチーフにはされているんですが、ストーリーはそれが本題ではない。

    記者の渡辺は自分の息子を殺した母親の取材のために何日も市営団地の前に張り込んでいる。
    ターゲットである立花里美の隣家に住む夫婦とも顔見知りになったが、ふとしたきっかけでその夫婦の秘密を知ることになり・・・

    仕事仲間の須田が偶然現場で尾崎を見つけて声をかけているところを目にしたことから渡辺は尾崎夫婦の秘密を知ってしまう。

    隣に住む尾崎夫婦は実は夫婦ではなく、ある事件の加害者と被害者。
    須田も実は事件の加害者の一人。

    15年前に起きたその事件に加担した加害者のうち人生が変わった者もいれば、さほどマイナスになった者もいないという、人の運の不公平が出ていて何ともやりきれない気持ちになる。

    被害者だった尾崎の妻は事件がきっかけで両親ともうまくいかず、人生をやり直す意味で結婚にふみきろうとしてもやはり事件が原因で結婚直前までいった彼と別れることになる。
    やっとその傷も癒えて結婚しても今度は夫から事件のことを責められてDVを受けて入院したりと転落の人生の一途を辿っていて・・・

    一方の尾崎は社会的な制裁を受けたけれども、先輩に引き抜かれて一流の会社に入り、会社でもそのことを非難されることなく着実に出世の階段を登っていた。

    罪を犯した自分がこういう人生を送ってもいいのかと自問自答しながら被害者に対して後ろめたい思いで、彼女が今幸せにしていればいいと都合のいいことを思いながら日々を送っていた尾崎。
    そんな彼が、あるとき偶然に被害者だった女性に出会う。

    尾崎が想像していたよりも遥かに悲惨な人生を送ってきた彼女をみて、『自分は幸せになってはいけない。彼女のそばにいなければいけない』と思う尾崎。

    尾崎は彼女がイヤがるにも関わらずそばにいるようになり、いつしか二人は「(自分は)幸せになってはいけない」という気持ちで結ばれ、一緒に暮らすように・・・

    読んでて切なくなった。
    記者の渡辺が二人にかけたい言葉を私も言いたいところですが、それを言ってしまうと何だか二人の絆が別のものになってしまうようで・・・

    彼女が尾崎と一緒にいて幸せだと感じてしまうことは、尾崎を赦すことになり、そしてもう尾崎を縛り付けておくものは何もなくなってしまう。

    ラストで彼女は一つの選択をするんですが、それは尾崎との関係を大切に思って行動したんじゃないかなと思います。

    説明するのがなかなか難しいんですが、切なくてやりきれない話だってことだけは確か。
    読後感は悪くない。

  • 大学時のレイプ事件、尾崎は実は無実なのではと思ってたのに普通に加害者で逆に驚く。
    かなこの正体は途中からなんとなく分かってしまったものの、被害者と加害者が生活を共にする理由が最後まで理解できなかったな。
    かなこからすると、加害者である尾崎を幸せにしたくない、だから一緒にいる。
    ラスト、かなこから離れたということは、尾崎をもう許すということなのか。
    でもやっぱり共感できなかった。

    物語としては、面白くて一気読み。
    吉田さんにハマり中。

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著者プロフィール

一九六八年、長崎県生まれ。法政大学経営学部卒業。一九九七年『最後の息子』で文學界新人賞を受賞し、デビュー。二〇〇二年『パーク・ライフ』で芥
川賞を受賞。二〇〇七年『悪人』で毎日出版文化賞。ほか、『パレード』『横道世之介』『さよなら渓谷』『平成猿蟹合戦図』『路』『怒り』『森は知っている』『犯罪小説集』など著書多数。ANAグループ機内誌『翼の王国』での短編小説とエッセイをまとめた書籍に『あの空の下で』『空の冒険』『作家と一日』(木楽舎)がある

「2017年 『最後に手にしたいもの』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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