ボトルネック (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 9008
レビュー : 1209
  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101287812

感想・レビュー・書評

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  • 前半から辛い展開が続くので
    ダウナーな気分のまま読みすすめることになります。

    舞台である金沢の冬の天気のように
    いつでも雨が降りそうな、暗い空模様です。

    主人公は、岐路となるターニングポイントで
    常に最悪の選択肢を選んでしまい、
    両親の仲は修復不能なまでに冷え切り、
    兄は事故の後、意識不明の状態が続いた末に死に、
    初恋の女の子は事故で死んでしまう
    という状況におかれてしまうのですが、
    そこから正しい選択肢を選んだら
    どんな世界になっているかを突きつけられます。

    それはさながら、バッドエンドで終わったゲームの主人公が、
    自分は選択をことごとく誤っていたのであり
    本当は正しい選択肢を選べば
    ハッピーエンドが待っていたことを知ってしまうかのようです。

    知らなければどうしようもなかったことなんだと
    思い込むことが出来たのに、知ってしまったわけです。

    そんな主人公のつらさに共感すればするほど
    辛い話ですし、自分のことのように痛い。

    最後まで行って、ハッピーエンドで終わるのなら
    まだ救いがあるのですが、読んだ感じだとそうでもなく・・・。

    結局のところ、
    妬みの怪物たるグリーンアイド・モンスターになったノゾミが、
    生きている主人公の心に毒を吹き込み、死者の仲間にしようとして、
    主人公がボトルネックとなっている世界を見せつけ、絶望させようとする。
    最終的にそれは成功し、主人公が生を諦め、死ぬ決意をするが、
    生まれることのなかった水子霊である主人公の姉ツユが、
    ノゾミの望みはそうではない、過去は変えられなくても、
    未来は変えられると諭すが、悩む主人公に残酷なまでの現実が突きつけられ、
    主人公はノゾミとツユの仲間になる。

    という理解でいいんだろうか。

    もしそうだとしたら、悲しい話だなあ。。。

  • 米澤穂信のブラックな長編青春ミステリ。

    東尋坊で恋人を弔いに来ていた高校生の嵯峨野リョウは、いつの間にか金沢の街に飛んでしまう。そして自宅に帰ると、生まれるはずのなかった姉が、自分の代わりのように生活していた。二人で会話をするうちに、こちらの世界での違いに気付いていく。

    どうも読んだ後に違和感があったのだけど、裏表紙の「青春ミステリの金字塔」という言葉を見て、それに気付いた。この作品は青春ミステリでありながら、学校生活が殆ど入っていない。<古典部>シリーズ、<小市民>シリーズ、「さよなら妖精」では、どれも学校を中心にして物語が描かれている。というか、それこそが青春ミステリに期待されているものの一つであり、また期待に応えるべきところであるように思う。

    しかし「ボトルネック」は非日常の世界が舞台になっており、主人公に学校生活は与えられていない。したがって学校生活は描かれようがない。むしろ家庭環境や街の様子を、第三者の視点から観察させている。特に家族との関わりをレンズにして青春を描いているのが本作品だろう。

    ただし、非日常の中であっても学校生活を描くことはいくらでもできる。だが今作は、あえてそれを避けるように書かれている。これはなぜだろうか。

    思えば米澤青春ミステリの舞台は、徐々に学校から離れてきていた。学校というのは子どもでいられるモラトリアムの象徴であり、その学校の外にある大人の世界へ羽ばたこうともがくことが、青春だと考えることができる。とすると、今作品で学校という舞台を描かなかったのには、学校という安心できる止まり木を取っ払うという意味があったのかもしれない。逃げ場を無くし、主人公が自ら過去と客観的に向きあうように仕向けるのである。

    このような設定における巧妙さも面白さの一つだが、学校生活を描かずに青春ミステリを作り上げてしまおうという作者の確固たる自信も見逃せない。きっとその自信を抱くに至ったものが、それまでの米澤青春ミステリの中にあるはずである。未だ全てを読破していないのだけれど、<古典部>シリーズから全て読み返してみようかという気分にさせられてしまった。

    この作品以降に発表された米澤青春ミステリは、「リカーシブル」くらいだろうか。未読だけれど、きっと新しい青春ミステリを描いてくれているに違いない。

  • 主人公・リョウがある日迷い混んだ世界は、自分が産まれる代わりに流産で亡くなったはずの姉が産まれていた世界でした。
    自分がいた世界と姉が生きているパラレルワールドの違いや自分の周りの人たちの姿に戸惑いながらも、起きていることを把握しようと行動します。
    しかし最後に待ち受けるのは残酷な現実でした。

    福井県の東尋坊と金沢の街を舞台に、話が進む本作。作者が金沢大学の出身ということもあり、大学周りや金沢の街の描写に親近感を覚えました。
    金沢大学生にとってジャスコはかなりお世話になりましたしね。

  • 米澤穂信さんがデビュー前の大学生の頃のアイディアを完成させた第8作となる青春ファンタジー小説の傑作。可能世界と呼ばれるもう一つの世界で残酷にも自分がボトルネックなのだと自覚させられた主人公リョウですが、スーパーお助け女の姉サキだって両親のトラブルとノゾミを救った偉さと別にイチョウの木で事故った為に辰川食堂を存続させたのは偶然のもたらした幸運なのだしそんなに自分を責める必要はないです。人間の性格はそう簡単に変えられないし今のままでいいからせめてこの貴重な体験を生かし今後の人生の岐路で想像力を働かせて欲しい。

    本書の登場人物、リョウ・サキ・ツユ・ハジメ・ノゾミ・フミカが全員カタカナ名前である事はそんなに深く考えなくてもいいでしょうね。他には既に今は存在しないジャスコの名称が懐かしいですね。私も物事に対し積極的とは言えないリョウの性格に近くて、スーパーお助け女サキは正直お節介焼きに思えたりしますが、でも他人の批判ばかりしていては駄目だという教訓は胸に強く響きましたね。ちょっと面倒クサいなと思える元気過ぎる女サキとも二度と会えないとなると急に寂しくなるものですね。リョウは今回の体験から何かを得て生きて行くでしょう。

  • 「ボトルネック」
    落ちた・・・と思ったら。


    亡くなった恋人を追悼するために東尋坊を訪れていた僕は、何かに誘われるように崖から墜落したはずだった。ところが気がつくと見慣れた金沢の街にいる。不可解な思いを抱えたまま自宅に戻った僕は、見知らぬ姉と出くわす。確かに僕には、姉がいるはずだった。名前はツユ。しかし、目の前にいる不明な姉はサキと言うらしい。不明な世界に巻き込まれた僕の行く先は。


    本書は、パラレルワールドに迷い込んだ少年・嵯峨野リョウが、パラレルワールドと自身がいる世界の相違を見つけることで、自身の無力さ・存在価値に気付き、悩み、自身を追い詰めていく様が描かれています。


    パラレルワールドにいたのは、リョウの世界で生まれるはずだった姉・ツユに当たる嵯峨野サキであり、サキは明朗快活かつ利発的で行動力。周りの問題を良い方向に解決していたことが分かってきます。サキがいるからこそ、嵯峨野の家庭環境は最悪の状況を脱し、兄は生きていて、そして諏訪ノゾミも生きている。


    自身がいる世界とは違って、全てが良い方向に進んでいる。その現実を目の当たりにしたリョウは、自分は本来は存在するべきでは無かった(自分こそがボトルネックだった)と感じ、サキが羨ましいと素直に気持ちを吐露する。そして、元の世界に引き戻され、ノゾミが死んだ東尋坊に立った時、失望のまま自らを終わらせるのか。絶望しながらも生きていくのかの2択を自身に迫ってしまう。その時、リョウに掛かってきた電話は誰だったのか。そして、「リョウへ、恥をかかせるだけなら、二度と帰ってこなくて構いません」というメールを送ってきたのは誰だったのか。


    家庭環境により全てを受け入れることが当たり前になってしまったリョウにとって、ノゾミは唯一のつながりであり、そのノゾミまでパラレルワールドでは性格もまるで違い、しかもその原因は自分にもあると分かってしまう。そしてノゾミの死の真相まで明らかになってしまう。そんなリョウの気持ちを考えると辛すぎる。しかしながら生きて欲しいと願わざるを得ない。


    (リョウの両親の我儘ぶりに胸糞悪くなることも含め)後味は決して良くないが、ミステリーとしてもイチョウの木が上手く使われていて、印象深い作品です。

  • 人生は比較できない。
    姉が生きた世界と比較された時、結果はとても残酷だった。
    突き刺さる人には凄く突き刺さる作品。

  • 嵯峨野リョウが、古典部シリーズ折木と重なった
    終わり方が個人的によかった




  • 自分がいない世界はどうなっているのか。
    すなわち自分の存在意義とは…。

    物語が進むにつれ、残酷かつ陰鬱な事実に主人公は直面していくが、読み手もその暗い渦に飲み込まれていくような気持ちになる。

    なんとも、ファンタジックな設定でありながら、恐ろしいテーマを描ききった物語であった。
    また、登場人物フミカの闇もぞっとした。

    色々と印象に残るところの多い物語で、非常に満足度の高い読書ができたといえる。

  • 必ずしもハッピーエンドとは限らないのが人生であり、パラレルワールドものだが現実的な小説。
    どんよりとした北陸の情景が浮かぶ。
    東尋坊から突如別世界へ飛ぶ主人公。
    本来は居ないはずの姉がいる世界では自分の住む世界ではうまくいかなかった物事がうまく進んでいる。
    これでもかこれでもかと自分の存在価値を否定されていき、世界のボトルネックが自分だと気付かされた時に現実に戻る主人公。
    母からのメールを見て主人公はどんな行動をとるのか?

  • この小説は「幸せバロメーター」。
    読んでつまらない人は多分今人生楽しいだろうし、何かしら思うところがあるなら多かれ少なかれ内心不安なことがあるんだと思う。

著者プロフィール

米澤 穂信(よねざわ ほのぶ)
1978年、岐阜県生まれの小説家、推理作家。金沢大学文学部卒業。
大学在学中から、ネット小説サイト「汎夢殿(はんむでん)」を運営し、作品を発表。大学卒業後に岐阜県高山市で書店員として勤めながら、2001年『氷菓』で第5回角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞を受賞し、デビューに到る。同作は「古典部」シリーズとして大人気に。2011年『折れた竜骨』で第64回日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)、2014年『満願』で第27回山本周五郎賞をそれぞれ受賞。『満願』は2018年にドラマ化された。直木賞候補にも度々名が挙がる。
その他代表作として週刊文春ミステリーベスト10・このミステリーがすごい!・ミステリが読みたい!各1位となった『王とサーカス』がある。2018年12月14日、集英社から新刊『本と鍵の季節』を刊行。

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