儚い羊たちの祝宴 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (329ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101287829

感想・レビュー・書評

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  • お嬢様たちの読書サークル"バベルの会"でゆるく繋がった短編集。ひとつひとつのお話に驚きの結末が待っている。特に「身内に不幸がありまして」「玉野五十鈴の誉れ」が好き。最終話を読むと、考えれば考えるほど何が真実なのか分からなくなってくる。どれも語り手に不穏な雰囲気があって、絶対何か起こるよな..と思いながら恐る恐る読み進めてしまいました。

  • 想像していたどんでん返しの内容とは違ったけれど、最後の文の意味がわかると後からゾワゾワっと恐ろしさが押し寄せてきた。ダークなストーリーな一方、現代よりも少し前の時代の上流階級、という現実離れした世界観のせいか優美で幻想的な感じもした。

  • 厨娘、夏さん最強!

  • 大学の読書サークル「バベルの会」の周辺で起こる出来事。う~ん、これはかなりな闇の世界。人里離れた別荘、因習的な素封家の離れ、など切り離された場所で起こる5つの挿話から成るが、読書会だけあって、皆読書家。出てくる小説、あるいは絵画が全部分かってればより楽しめるだろう。1割くらいしか読んだことがないか。出てくる小説をそのうち読んでみたい。
    時代設定は戦前とかせいぜい昭和20年代あたりの雰囲気が漂う。

    「身内に不幸がありまして」地方の素封家、丹山家のお嬢様。大学に入り「バベルの会」に入る。一方家では兄、大叔母、伯母、そしてお付きの少女と立て続けに殺人事件が。その理由は・・ 

    「北の館の罪人」母が死に際に”六綱家”に行きなさいと。行ってみると妾腹の私に別館での暮らしが与えられ囚われの兄の世話をすることに。兄は絵を描いたが空の色が青紫だった・・ 

    「山荘秘聞」辰野家の山深い別荘守となった私。冬になり遭難した男をみつけるが・・ 

    「玉野五十鈴の誉れ」女係の続く小栗家。そこでは祖母が権力を握り、父母は形無し、私は五十鈴という世話の娘を与えられ、婿をとり継ぐことを期待されており、大学では「バベルの会」に入った。が、ある事がもとで夏を前に連れ戻され・・ 

    「儚い羊たちの祝宴」私、大寺鞠絵は、「バベルの会」に入っていた。会員には六綱さん、丹山さんがいる。が会長の言うには、バベルの会の会員は儚さが必要だが、私は実際的でそれがないからという理由で除名された。ふふ、そうかしら・・  家にはすごい料理人の厨娘がいた。素材の一番いい部分しか使わないのだ。それで夏の料理にはアミルスタン羊の料理を希望した。


    2008.11.20発行 図書館

  • 5編あるが、毎回ゾッとした。
    通学の電車の中で読んでいたが、特に「玉野五十鈴の誉れ」を読んだあとは、数分間呆然としてしまった。

  • 再読。
    再読ではあるけれど、昔一度読んだきりなので内容をほとんど忘れていて、実質初読のような新鮮さがあった。
    独立した五つの短編から成るが、共通している要素がいくつかあるという趣向。
    名家の子女とその使用人(お嬢様と同年代の女子)の物語であること、お嬢様は「バベルの会」という大学の読書会のメンバーであるということ。

    一言で言えば、「意味が分かると怖い話」とでも表せるだろうか。もちろんミステリ的な意味での怖さではあるが、一番怖いのは「正気と狂気の境目が限りなく無い」ということだ。どの話の犯人も軽々と、その境目を越えて「あちら側」に行ってしまうように見える。
    特に「玉野五十鈴の誉れ」は、もう最後の一文で背筋が凍った。

    大正時代あたりのゴシックな雰囲気と、突拍子もないながらも懸命に生きた羊たちに、葡萄酒で乾杯したくなるミステリ。

  • 久々に米澤穂信の古い本へ行ってみる。

    夢想家のお嬢様たちが集う読書サークル「バベルの会」をめぐる邪悪な5つの事件。
    と裏表紙に書いてあるけど、「バベルの会」が舞台になっているわけではなく、登場するお嬢様たちがそれに属しているというくらいの緩いつながり。
    とは言え、読書サークルに相応しく、解説に言う『読者サイドに一定の読書教養を求める』話が連なる。
    耽美に綴られ薄気味悪いお話は、知らなくても十分楽しめるのだけれど、4話目においては、マーヴィン・バンターやイズレイル・ガウを読んでいて(ジーヴスだけは読んでた)、加えて孔子・荘子にポーをはじめとする様々な作家のことも分かっていれば、尚更に作者の思いにつながることが出来たのだろう。表題作の“アミルスタン羊”についても同じこと。
    本の紹介には『「ラスト一行の衝撃」に徹底的にこだわった連作集』ともあったけど、その一行を読んでは、衝撃というより寧ろ『そんなんで人を殺すか…』という唖然茫然が勝った感じ。

  • 5つの人の物語に別れていてとても読みやすいです。
    大きな館や、お金持ち、召使い、管理人、付き人など、現実では体験できないような設定で世界観に引き込まれました。

  • 使用人が話に上手く絡めてある。金持ちが使用人を使う時代のダークな作品。「バベルの会」で作品がつながっている。話の中で言及されている本が読みたくなるのが困りもの。

    身内に不幸がありまして
    これは!この間読んだ「許されようとは思いません」の「ありがとう、ばぁば」に通じるものがある。てか、こっちの方が先に書かれてるんだからばぁばの方がヒントを頂戴してる形かもしれない。

    北の館の罪人
    「バベルの会」はほとんどおまけ程度にしか登場しなかった。羊に見えていたあまりの最後の独白で、全然羊ちゃうやん!と思うわけだけど、この絵の数年後がどうなるのか気になるね。

    山荘秘聞
    語り手の精神状態がよく分からないので、酷い犯罪でも犯してるのか?と疑うが、なんだ、その口封じの仕方は?
    ミザリーみたいな展開になるのかと思ったら…

    玉野五十鈴の誉れ
    恐ろしいお祖母さん。ご飯を炊く時のあれ、「はじめちょろちょろ中パッパ……」この一フレーズが最後に繋がった時に、後味悪〜い感じになった話だった。

    儚い羊たちの晩餐
    アミルスタン羊が何か。
    この話で「バベルの会」が一つになった。
    夏さん(料理人)、怖っ。アミルスタン羊の意味が分かってから夏の説明を読み返すとめちゃ怖いやん?

  • 臓腑を素手で撫で回されるような感覚を得られる読書体験だった
    しかも、それぞれの短編ごとに撫で方が異なる。
    人の狂気というものを、人間が理解できる論理のギリギリから一歩踏み出したラインで描いているので理解と拒絶の狭間に放り込まれてしまった
    次の不気味な展開を予想できうる文章が綴られるが、その予想の斜め上をいって読者の感情を揺さぶる

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著者プロフィール

1978年岐阜県生まれ。2001年『氷菓』で「角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門奨励賞」(ヤングミステリー&ホラー部門)を受賞し、デビュー。11年『折れた竜骨』で「日本推理作家協会賞」(長編及び連作短編集部門)、14年『満願』で「山本周五郎賞」を受賞。21年『黒牢城』で「山田風太郎賞」、22年に「直木賞」を受賞する。23年『可燃物』で、「ミステリが読みたい!」「週刊文春ミステリーベスト10」「このミステリーがすごい!」でそれぞれ国内部門1位を獲得し、ミステリーランキング三冠を達成する。

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