十二年目の映像 (新潮文庫 は 7-2)

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  • Amazon.co.jp ・本 (289ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101288024

感想・レビュー・書評

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  •  再読。<br>
     初めて読んだときは、そんなに感動を覚えなかった。私にとって大学紛争の話は遠い昔の出来事で、闘わなければならない欲求も衝動も全く未知の世界だったから。<br>
     今も、たぶん当時と変わらないはずだ。それでも、大阪の南の端の、ここにある世界を見てしまった私には、少しだけ、闘争の欲求と衝動を自分のものとしてではなくても、隣人のそれとして、肌で感じることができたような気がしている。<br>
     もう一つは私が社会学を学んできたから。カメラの立つ位置が異なることの意味を、私はよく知っている。調査で、聞く人間がどこに所属しているのかは、得られるデータに大きな違いをもたらす。調査1年目の初読時と、調査4年目、いや5年目になろうという今では、その意味への理解が全く違う。そのことを、これを読んで痛感した。<br>
     ほとばしる青春の物語としての大学紛争と、メディアの虚構と。この二つが絡まりあうことで、ものすごく濃厚で凄まじいパワーを持った一作となっている。

著者プロフィール

1947年、福岡県小郡市生まれ。東京大学文学部仏文科卒業後、TBSに勤務。退職後、九州大学医学部に学び、精神科医に。’93年に『三たびの海峡』(新潮社)で第14回吉川英治文学新人賞、’95年『閉鎖病棟』(新潮社)で第8回山本周五郎賞、’97年『逃亡』(新潮社)で第10回柴田錬三郎賞、’10年『水神』(新潮社)で第29回新田次郎文学賞、’11年『ソルハ』(あかね書房)で第60回小学館児童出版文化賞、12年『蠅の帝国』『蛍の航跡』(ともに新潮社)で第1回日本医療小説大賞、13年『日御子』(講談社)で第2回歴史時代作家クラブ賞作品賞、2018年『守教』(新潮社)で第52回吉川英治文学賞および第24回中山義秀文学賞を受賞。近著に『天に星 地に花』(集英社)、『悲素』(新潮社)、『受難』(KADOKAWA)など。

「2020年 『襲来 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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