- Amazon.co.jp ・本 (465ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101288048
感想・レビュー・書評
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お勧め。
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歴史について改めて考えさせられた。
著者はもしかして在日韓国人であったり、
韓国に縁のある人なのかな、と読みながら何度も思ったくらい。
最後ちょっとはしょって読んでしまったけれど、
読んでみて良かった、勉強になった本です。
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ひっそりと感涙。
靖国然り、歴史とは教科書で学ぶ“出来事”レベルでは到底理解できるものではないということを痛感させられる。また、その時代に生きた人々の、翻弄されながらもそこに確かに存在したそれぞれの“人生”を、後世に生きる私たちが知ることが、真なる歴史の認識といえるのだとも思う。
強制連行により、否応無く青春を蹂躙された河時根。逃亡、帰国、起業、そして人生の最後にやるべきこととした“事業”。そのために、三たびの海峡をわたる。ただ一人、航路にて。その逞しさの根底には、国を愛する心と、ある人の尊厳を守るのだという強い意志があり、だからこそこうも直向に人生を歩んでこれたのだと、ただただ畏敬の念を隠しきれない。
最後の一文、これからも忘れない、忘れてはいけない。
「生者が死者の遺志に思いを馳せている限り、歴史は歪まない」 -
卒論。
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「韓国朝鮮人強制連行」を題材にした小説。綿密な取材を行ったと言うだけあり、歴史的な流れも、韓国人特有の文化的気質も、大変自然に描かれているのだが、それに対して表現が追いついていない印象がある。終盤に差し掛かるほどに、尻つぼみになっていく気がする。歴史的考察の参考文献、あるいはそのきっかけとして評価できるかもしれないが、小説としてはいまひとつ、というのが正直な感想だ。
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最後まで、集中力を途切れさせない見事な筆力。現在と戦中戦後の間に横たわる年月を感じさせぬ、優れた構成には舌を巻く。
物語は、戦中に強制徴用され家族と引き離され、九州の炭鉱で苦役に従事させられたある朝鮮人男性の一人称で語られる。生きて故国の土を再度踏むことを願って苦役や拷問に耐えるが、恩人とも言うべき仲間を失い脱走を決意する。そして、その過程で大きな罪を犯すこととなる。逃亡した後終戦を迎え、愛する女性と共に故郷へ渡る船に乗る。そして、四十数年間たった頃、日本からの一通の手紙によって、彼は再び日本へと渡航することとなる。長い年月、「手で片眼を覆いながら生き」、日本を無視してきた彼をその地へと誘ったものは何なのか?彼の罪とは?そして、求めるものとは?
日韓の遺恨―正確には、朝鮮人の遺恨とすべきだろうか―は、世紀を跨いでもまだ消えぬものだろうか。過去を顕現させ続けることは、遺恨を後世に残すだけではないのだろうか?新しい世代は贖罪と弾劾ではなく、未来へと協調して行けぬものだろうか?生まれ変わってやり直すのは、裏切りだろうか?最後まで読み切って、主人公の選択には賛成しかねる自分がいる。また、その自分は理解できぬ自分を恥じてもいる。愛国心とは何か、民族の誇りとは何かを見つけられぬ自分への不安と……またこれでいいのだという肯定もある。
何かと考えさせられた一冊であった。評価も半端にして保留とする。 -
朝鮮人の強制連行。強制労働というのは実際に行われた忌まわしい事実なんでしょうが
タブー事項なんでしょうか、あまり知る機会もなかった。
従軍慰安婦とともに日本と朝鮮との間にあった史実は覆い隠すものではなく、
語り継がれていくべきものだと思う。
日本が本当に悪かったかどうかはわからない。
ただ、日本が友好的に考えているほど、韓国側は受け入れていないでしょう。
いつまで謝り続けるかはむずかしい問題だけれども、この悲しい事実はお互いに忘れてはいけない。
この本は1943年ごろ、祖国朝鮮の親元から無理やり日本の炭鉱に連行させられ
死ぬような目に何度もあわされた17歳の男の子の話と、
それから45年の歳月が過ぎ、韓国で実業家となった彼が、再び九州のつらい思い出の地を踏み
幼い頃に手放した息子と再会したり、ボタ山に登ったりする話から成る。
日本の女性と出会い愛し合った甘い思い出と、仲間が次々と殺されていき、
いつかは自分も・・という恐怖におびえたつらい思い出が複雑に絡み合ったほろ苦い再訪問で
ボタ山の中腹に仲間の粗末な手作りの墓を見つけたときには、私も思わず号泣してしまいました。