閉鎖病棟 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 3430
レビュー : 492
  • Amazon.co.jp ・本 (361ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101288079

作品紹介・あらすじ

とある精神科病棟。重い過去を引きずり、家族や世間から疎まれ遠ざけられながらも、明るく生きようとする患者たち。その日常を破ったのは、ある殺人事件だった…。彼を犯行へと駆り立てたものは何か?その理由を知る者たちは-。現役精神科医の作者が、病院の内部を患者の視点から描く。淡々としつつ優しさに溢れる語り口、感涙を誘う結末が絶賛を浴びた。山本周五郎賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 著者の「ははきぎほうせい」さんはTBSから大学に入り直しお医者さんになられたそうです。

    10代半ばの島崎由紀さんが堕胎するところから物語が始まります。

    秀丸さんや昭八さん、チュウさんの病棟に入るまでのいきさつなどを伝えながら、精神科病棟の日常を描いてゆきます。

    由紀さんとの接点はどのようにやってくるのかと読み進めるうちに、想像を超えて酷い展開が待っていました。

    読み終えて、世帯主の人柄の大切さや、 閉鎖病棟の壁の外にも病巣は存在すること、閉鎖病棟の中の平安も、実は法だけじゃ守りきれない現実があることも伝えています。いえ、閉鎖的な性質だからって諦めずに善良を導く法整備と見守りが必要だと思いました。

    新川先生や婦長、主任や裁判所の人々も暖かくて胸がいっぱいになりました。
    ただ、秀丸さんが奪った命、救った命は、どちらも測ったり比べられない大切な命。それは忘れてはいけないと思っていたけど、それを誰よりも理解しているのはおそらく秀丸さん。
    平気で幼い義理の娘を傷つけ続けた由紀さんの継父や、多くの患者を気まぐれに暴力で罪の自覚もない様子で傷つける重宗。自分が罪人かもしれないという自覚もないことの恐ろしさ。
    先生達が聞いた「自分はどこが病気だと思う?」の問いに「沈黙」するチュウさんにそれでいいと言う先生。
    その無言の空白のなかに確かにあるものを、私も持っていたいです。

  • 精神病院の話。みんな優しすぎる。いわゆる障害者、とか社会的弱者って呼ばれる人たちのほうがよっぽどまともだなぁと思う。で、これを読む前の精神状態は死にたさMAXだったんだけど、風呂で読んだリラックス効果も相まって死ななくてもいいのか、と思えるようになりました。仕事ができなくても彼氏にふられそうでも、死ぬほど悪いことはしてないし、死ぬほどのことでもない、と思えた。
    2015.11.29

  • ずっと気になっていた作家さん。
    精神科病棟の話で、登場する入院患者さんはほとんどが重くてつらい過去があり、思わず読むことをためらう箇所もあったけど、全体的に優しさに満ちた話だった。
    ラストの法廷のシーンは泣けた。前向きな姿に鼻の先がツーンとして胸が熱くなった。

  • 登場人物の経歴など、しっかり書き留めておくとわかりやすい。最後まで進めば、ほんとに暖かい人情を感じる。
    この本を読んで、私の誤解も解けた。
    この本を読んで、私ももっと人を信じていいかもしれないと思った。
    いい本です。
    目標。この作者の本は全部読むつもり。

  • 20数年前の本だけあって今では見古された感の設定や事件の話筋ではあるけれど、ただショッキングなだけの小説ではなく、描かれているのは家族の話であり、細やかな心情が描かれた本で、今読んでも良かった。3/100冊

  • 「屍人荘の殺人」
    公開日:2019年11月予定
    長野・小諸の精神科病院では、様々な患者たちが入院していた。母親や嫁を殺害した罪で死刑を宣告されたが、執行に失敗し生きながらえている男。妹夫婦から疎んじられている元サラリーマン。不登校の女子高生。彼ら彼女らが穏やかに過ごしているなか、ある男が殺人事件を起こす―。
    キャスト:笑福亭鶴瓶、綾野剛、小松菜奈
    監督:平山秀幸

  • 時代背景としては、Y問題や宇都宮病院事件後の1987年に精神保健法が制定され、精神障害を有する本人の同意に基づく「任意入院」が新設される前後の内容ですね。とはいえ、まだまだ精神障害を有する方々への偏見が渦巻く時代(今もさして変わらないか)でした...。また、精神障害を発症する起因としてDVなどにも触れる本作のラストは涙なしには読み進められません。
    終盤での新川先生や看護主任の当事者に寄り添う姿は、地域移行支援を進める今の支援者の方々が柱としているものであると信じたい。

  • 夜に手に取り一気に読んでしまい、眠れなくなった。
    ヒューマンドラマのように感動的な内容で描かれているが、実は多くの精神医療の問題が組み込まれている。
    無事という言葉が重みを持つ。
    学生時代にしていた陶芸をまたしたくなった。

  • 運命の中で必死に泳ぐヒトの物語

     病気も環境も事故も運命だと片付けるのは好みではない。しかし、それを受け入れたあとに残るのはヒトとしての尊厳っていうか、社会への感謝っていうか、なんか個人を超越したものがあるような気がする。

     東大文学部から、就職を経て九大医学部って言う、人生の高速移動を体験された作者さんだからこそなのかなぁ? すばらしい作品だな。

     スタイルは、先に読んだ安楽病棟同様に患者さんの背景に始まり、病棟が描かれ、事件がおこるってもの。ありきたりかもしれないけど、かなり悲惨な過去を持つこの主人公にはハッピーエンドが似合うね。

  • タイトルのように精神病院の閉鎖病棟にいる人々を描いた話です。
    途中からどうも読みにくいし、はっきり言って魅力のない文章だと思いました。
    内容がスムーズに頭に入ってこない。
    この人の本は以前、ノンフィクションものを読んだ事がありますが、その時は読みにくいとか感じなかったけど・・・。
    でも、患者さんたちのちょっとした言動などはとてもリアルで細かい部分まで描かれていて、これは全くの想像で書けるもんじゃないだろう・・・と感じました。

    物語の時代はどうやら戦時中らしく、その時代の閉鎖病棟とだけあってかなり過酷で無法地帯なんじゃないか?と読み始めて思いましたがそんな事はありませんでした。
    閉鎖病棟というとその言葉通り閉鎖された世界で、外に外出するなんて事はもちろんないだろうし、部屋に閉じ込められたりするんじゃ・・・と思ったらそんな事もなく、入所者たちは意外にも自由に外に出ています。
    それに閉鎖病棟に入れられるという事は相当な重症の人たちだろう・・・と予想していたら、それもそんな事はなく、こんな言い方をしたら悪いけど、意外にもちゃんとしている人たちで、日常の事もちゃんと自分でこなしています。
    でもある一部分が壊れている、という感じで、そこにかなり執着しているという所はあります。

    この物語の主な登場人物となっている男性もそんな人で、新聞社にいつも文章を投書して、その自分の投書した文章が新聞の記事や占い欄で使われていると思っています。
    でもそれ以外の所は割合に普通。
    そして、その感じる事とか言動とかもむしろ普通に生活している人よりも人間らしさを感じました。
    それは世間体だとかを気にせず、計算が働いてないからだろうと思います。

    閉鎖病棟を舞台にした話なので、どうしても閉塞感を感じるし、読んでいてつらい部分もありますが、でも読み終えて希望を感じるストーリーでした。
    ずーっとため息をつきたくなるような事ばかりが描かれていて、後半、ラストにそう感じさせる話になっているので余計だと思います。

    特に、個人的には後半の2つの場面が胸に響きました。
    1つは主な登場人物の男性が母親の死を機に実家に戻ろうとした所、妹夫婦に反対される。
    その妹夫婦に主任の女性が言った言葉。
    人のために涙をしながらこんな事を言える人がいるなんて・・・。
    そして、こんな風に人に思ってもらえるなんて・・・とジンときました。

    もう1つは、これまでの人生、つらい事ばかりがあった若い入所者の女性の一人が言った言葉。
    「嫌なことがあったらおじぎ草に八ツ当たりする。指でつつくと、すみませんてお辞儀してくれるから」
    何て微笑ましくて繊細でやさしい感性だろうと思いました。

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著者プロフィール

1947年、福岡県生まれ。東大仏文卒後、TBS勤務。その後、九大医学部を卒業し、現在は精神科医。93年「三たびの海峡」で吉川英治文学新人賞、95年「閉鎖病棟」で山本周五郎賞、97年「逃亡で」柴田連三郎賞、10年「水神」で新田次郎賞、12年「蠅の帝国」「蛍の航跡」で日本医療小説大賞、13年「日御子」で歴史時代作家クラブ章作品賞をそれぞれ受賞した。

「2016年 『受難』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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