- Amazon.co.jp ・本 (557ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101288109
感想・レビュー・書評
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居合いの剣でヒトラーを魅了し、護衛に選ばれた日独混血の駐在武官補佐官。だが、祖国・日本は、そしてもう一つの祖国・ドイツは彼の思いとは別の道を歩んでいた。第二次大戦下のドイツを舞台に描く、ヒューマン・サスペンス。
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「強い者はひとりでも生きていける。弱い者には手を差し伸べなければいけない。とくにこんな時代にはね」
2019/11/4読了
作品の舞台ナチスドイツが跋扈した1930-40年代。ただ、「こんな時代」は、そっくりそのまま現代にも当て嵌まると思って引用した。 -
父の国であるドイツの現実に、次第に幻滅を覚えてゆく香田。ついに成立した日独伊三国軍事同盟も、彼の思い描いた祖国の進路ではなかった。迫害に怯えるユダヤ人女性・ヒルデとの生活にささやかな幸福を見いだしたのも束の間、居合術をヒトラーの前で披露する機会を与えられたことをきっかけに、香田の運命は大きく狂いはじめた…。清冽なヒューマニズムで貫かれた大作ロマン。
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戦争が生み出す側面の描写が細かく表現されている重厚な大作。
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ヒトラーの防具
第二次大戦前に、ドイツを訪れた日本の剣道団体がヒトラー総統に剣道防具を贈呈するとこらから物語は始まる。側近に渡すことができればよいと考えていた贈呈団は、ヒトラー本人が表れて感激する。
ドイツ駐在武官補佐である主人公の香田は日本陸軍中尉だが、折に触れヒトラーの関心を引く。一方で、香田自身はナチスドイツに対し、違和感を抱き続ける。それというのも、香田の周りには、両親、兄をはじめ、魅力的な人間が集まっており、やはりナチスドイツに違和感、あるいは反感を持っているからだ。通常の生活では明らかにすることができない各人の本心が、香田に対しては明らかにされていくところに、香田自身の魅力が表現されているのだろう。
ゲシュタポの一斉捜索後、思いがけずヒルデを預かることになるが、香田にとっても大きな人生の転機となる。
戦局の悪化に伴い、大事な人が次々なくなっていき、香田の考え方もますます純化していく。その精神の深まりが丁寧に描かれている。
物語全体は、香田の日記をたどりながら、香田の周辺状況と歴史的事実が巧みに組み合わされており、ダイナミックな展開を味合うことができる。「日本の目となり耳となり、本国に事実を伝えていくのが外交官の役割だ」と強く意識するも、日本国内とドイツとの認識ギャップや、真実を伝えることのできない時局の面映ゆさが物語の主要な展開である。実在した剣道防具からここまでの物語展開を作り上げる技量は相当であり、非常時の人間の在り方について改めて考えてしまった。 -
これはもちろんフィクションの小説なんだけど、ヒトラーと主人公は、今にして思えば出逢った時から、お互いの運命と、相手に対して自分がどんな位置に立つのか、わかっていたのだな…と、そんな気持ちになるラストだった。
いつも本を読み終わると、間髪入れずに他の本を読み始めるのだけど、今日だけはこの小説に敬意を表して、他の小説を読まないでいようと思った。 -
コレは間違いなく今年一番引き込まれた。これだけの描写とスケール感に感動する。
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2000.01.01
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第二次大戦中のドイツを軍の駐在員の視点から描いた話。
実際にどんなことが起き、市民の生活はどうだったのか、という描写が生々しい。
総統の最後が少し迫力が足りないような気もするが全体的には読み応えがある。 -
ドイツでヒトラーに贈呈された剣道防具が発見された。贈与に関わった日本人武官を通して激動のドイツを描く。
題材は最高。文章力・表現力がどこか拙く残念。