国銅(上) (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 45
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101288161

作品紹介・あらすじ

歯を食いしばり一日を過ごす。星を数える間もなく眠りにつく。都に献上する銅をつくるため、若き国人は懸命に働いた。優しき相棒、黒虫。情熱的な僧、景信。忘れられぬ出会いがあった。そしてあの日、青年は奈良へ旅立った。大仏の造営の命を受けて。生きて帰れるかは神仏のみが知る。そんな時代だ。天平の世に生きる男と女を、作家・帚木蓬生が熱き想いで刻みつけた、大河ロマン。

感想・レビュー・書評

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  • 奈良の大仏を作るために全国から集められる人々。その中で長門から竿銅を作っていた国人がやがて奈良で大仏を作り懸命に生きる姿を描写する。
    習字や薬草についてなど探究しながらも長門に帰る日を夢見て。
    昔の建造物には奴隷のように働いた一人一人がいたんだ、東大寺の大仏見に行くぞ。古代の旅の風景も興味深い。

  • 感想は下巻に

  • 私は先に「水神」の方を読んでしまったが、この「国銅」があって「水神」がある、そんなことが自ずと頓悟された。

    非常によくできた二昔前ぐらいの連続テレビドラマを観ているかのようだ。
    主人公の国人が絵に描いたような善人の模範で、周りの人々や環境にも異様なほど恵まれる、などといったフィクションならではの好都合も随所に見られるが、本作全体を貫き通す真っ直ぐな流れは揺らぐことなく、読者の真情に迫る。
    物語の中には、謎もどんでん返しもトリックも出てはこないが、“生きる”とはどういうことなのか、そんな命題に真っ向から取り組み、そのプロセスを経て得られた著者なりの答えが示されている。

    「水神」同様、作中に出てくるなんでもない食べ物の数々や、また医師ならではの見地から描かれた疾病の表現などが印象に残る。
    大仏建立の具体的な方法についても、ここまでよく調べられたものだと感服する。
    奈良登りの掘り口や釜屋、吹屋もそうだが、登場人物たちが働いている現場の暑さ寒さまで伝わってくるような臨場感だ。

  • 長門の国から石を切り出し銅を造り都に運ぶ。
    大仏様をどうやって造りあげていったのか。
    詳しく描かれた工程を読みながらもっと知りたい事は検索しながら読みました。
    奈良の大仏様をこの本を読み終えてから、又この都を造りあげた関わった人々に対して参拝したいですね。感慨深い本です。

  • 極上の銅を命懸けで掘り出し、精錬して鋳込む。若き国人も仲間と共に都に向かった…。奈良の大仏造りに身を捧げ、報われずに散った男達の深き歓びと哀しみを描く大平ロマン。

  • 奈良時代に大仏像のための銅を作り出すために懸命働く若者たちの物語。全く明るい話はないが、懸命に生きる姿に清々しい思いも出てくる。色々な場面で登場する拍子歌が物語を少しだけほのぼのとした雰囲気にしてくれる。さて、大仏はどうなるのかの後編に続く。

  • 記録

  • いろんな人が絶賛されていたので、図書館から借りて読んだのですが、私にとっては絶賛とまでは行きませんでした。
    普通悪役になる人足の頭たちも皆いい人ばかりで、精神的な辛さを感じさせないのです。労働の過酷さは書き込まれているのですが、いわゆる虐待だとか強制労働といった雰囲気が無いのです。もちろん、15人で国を出たのに、帰国できたのは1人だけという悲惨さはあるのですが、そこは軽く流されている感じです。
    "三たびの海峡"と比較してそこの辛さが少ない分、帚木さんのヒューマニスティックな良さが出切ってないように思えました。
    むしろ、歴史小説としての面白さのほうを強く感じさせられました。奈良時代の銅の製法、大仏製造の技術、民間の食事。これまで奈良時代の庶民生活を描いた本は読んだことが無いので、そのあたりに新鮮さを感じました。
    ところで、この作品についての、児玉清さんと帚木さんの対談を見つけました。なかなか面白いので、一読してみてください。
    Http://www.shinchosha.co.jp/shinkan/nami/shoseki/331411-7.html

  • 久々にヒット!
    地味な主人公だけど、奈良時代の話が克明に描かれていてその時代が目に浮かんでくるようだ。
    箒木篷生って知らなかったけど、他の本も是非読んでみたい。

  • 全然知識のない時代の話なので面白い。

  • 国人が都で大仏を作って
    薬草が重宝がられて
    詩を学んで…
    と充実していた部分が面白かった。

    長門に戻ったら会いたかった人達がなくなっていて
    ちっともハッピーエンドではなかったのが辛い

  • (上下巻通じての感想です)
    奈良の大仏を作る物語ですが、時の権力者や僧侶の側からではなく、作業に直接携わる人足の側から書いています。大仏の材料となる銅鉱石の掘り出しから始まって、精錬し、地方から都へ舟で運び、大仏の製造鋳込みを行います。その作業過程の描写や働く人足たちの気持ちの記述は素晴らしかったです。
    ただ、ちょっと残念だったのは主人公があまりにも体力的、知的、人物的に優れていたことでした。もっと庶民の姿で書いてあれば良かったのにと思いました。

  • 奈良の大仏を製作する為の、人足(力仕事をする作業員)の物語。
    時代も環境、身分、境遇は違えども、現代の自分達と変わらぬ「人の感情」がそこにはある。いや、むしろ常に生死を意識しながら、己の体を目一杯に使う毎日だからこそ現代以上の強い「感情」がある。

  • 美しい景色と銅山での課役。そして奈良の大仏建立への挑戦。一人の人足の目線で語られる一大スペクタル歴史小説。天平の時代の彩る情景を思い浮かべる事が出来る美しい表現力。神の領域か。後半は味わって読もう♪

  • 長門国 (山口県) 銅山で使役する国人17歳 

    歯を食いしばり一日を過ごす。星を数える間もなく眠りにつく。都に献上する銅をつくるため、若き国人は懸命に働いた。優しき相棒、黒虫。情熱的な僧、景信。忘れられぬ出会いがあった。そしてあの日、青年は奈良へ旅立った。大仏の造営の命を受けて。生きて帰れるかは神仏のみが知る。そんな時代だ。天平の世に生きる男と女を、作家・帚木蓬生が熱き想いで刻みつけた、大河ロマン (アマゾンブックデーターベースより)

    卑弥呼つながりで読む

  • 感想は下へ。

  • 感想は下巻で。

  • よくもまあこんなに幅広くジャンルを拡げて小説をまとめられるものだ!

    筆を持つほどに自ずと文章が溢れ出るのであろう。

  • 奈良の大仏を作るための銅をつくる人足が主人公。

    その後、奈良で実際に大仏造営にもたずさわる。

    1000年

  • 奈良の大仏を作った人たちの話。
    奈良の大仏の銅は長門からはるばる掘り出されて運ばれてきた。
    それだけでもすごい物語だ。

    掘り出された銅は船に載せられ、その船は人の力で漕ぐ。
    そして集められた大量の銅をまた溶かす。
    課役という半強制労働で各地から何万という人が集められ
    大仏作りに加わった。

    現代に例えたらどんな感じだろうか。
    各地区で10人が徴兵され、連絡の一切取れない辺境に行かされて、
    任期は3年なのか、5年なのか、
    それともそこで死ぬことになるのか、それすらわからない。
    言葉だって、今で考えたら外国語なみに通じないのではないか。

    今、歩いて行くことは到底できないから、
    せめて鈍行に乗って、奈良の大仏に会いに行きたくなる。

  • 苛酷な労働に耐え、都に献上する銅を作る国人が、大仏造営の命を受け、奈良へ旅立つまで。
    素直で、ひたむきな主人公と仲間と師匠と、ちょっと気になる娘も・・・と、ベタな展開ではあるんだけれど、素直にいいなぁと思えるお話。
    下巻でも頑張ってね、と思わず応援したくなる。

  • 2011.3.8(火)

  • 奈良旅行をきっかけに読み始めました。
    この時代を描いた小説は珍しいのではないでしょうか…。
    国人という青年を通して見た都、人間、そして仏の教え。
    まっすぐで、一生懸命な国人は周囲の人をも優しくする。
    彼のその生き方は、多くの人を揺り動かす。
    厳しい生活や苦役の中でも、この話が苦しくなりすぎないのはそんな人の優しさを見ることができるからかもしれない。

  • ブクログ導入前に購入

  • ジャケ買いの一冊。
    臨場感がありもったいないくらい早く読み終わってしまった前編でした。

  • 06.5.3

  • ならの大仏建立の物語です。
    銅を作り上げるまで。
    銅を流し込んで大仏にするまで。
    その過程を体験する一人の若者が苦役に耐えて成長する姿を描いています。
    人生でほんとうに大事なものは何か。

  • 借本。
    著者の本はこれが初めて。
    仏像の造り方に携わる人の話が読みたくて。
    久々にいい本にめぐりあえた。

  • まぁ、読みづらい。久しぶりに読み通すのがつらかった。でもこれを読んだときに、ちょうどNHKで大仏を再現するというスペシャルをやっていて、おかげでその番組を興味深く見ることができた。

  •  若い頃「師」と呼べるような人と出会えることは本当に幸せなことだと思う。
     この物語に出てくる主人公「国人」もそのような出会いを経て次第に成長していく。
     時には死者もでる程過酷な大仏建立の課役を務めつつ、様々な人との出会い、別れを乗り越えて「自分の仏」=アイデンティティを確立していく主人公の様子を、徐々に出来ていく大仏と平行させて描いている。
     「国人」が次第に魅力的な人間に成長していく過程を「景信」をはじめ様々な個性あふれる登場人物や、大仏建立作業はもちろん、その他にも当時の都の様子、食べ物等の細かい風俗描写を織り交ぜて描いており、全く飽きずに読み進めることができた。そして最後には本当にさわやかな気持ちにさせてくれた。ちょっと悲しかったけどね。
    飽食の今、なんでも手に入る今、この本に出てくる数々の質素な食事のなんと旨そうなことか。1冊の詩集からでもなんといろんなことが学べるか。
    今の僕より国人の方が豊かな心のような気がする。精進精進。。。

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著者プロフィール

1947年、福岡県小郡市生まれ。東京大学文学部仏文科卒業後、TBSに勤務。退職後、九州大学医学部に学び、精神科医に。’93年に『三たびの海峡』(新潮社)で第14回吉川英治文学新人賞、’95年『閉鎖病棟』(新潮社)で第8回山本周五郎賞、’97年『逃亡』(新潮社)で第10回柴田錬三郎賞、’10年『水神』(新潮社)で第29回新田次郎文学賞、’11年『ソルハ』(あかね書房)で第60回小学館児童出版文化賞、12年『蠅の帝国』『蛍の航跡』(ともに新潮社)で第1回日本医療小説大賞、13年『日御子』(講談社)で第2回歴史時代作家クラブ賞作品賞、2018年『守教』(新潮社)で第52回吉川英治文学賞および第24回中山義秀文学賞を受賞。近著に『天に星 地に花』(集英社)、『悲素』(新潮社)、『受難』(KADOKAWA)など。

「2020年 『襲来 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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