- Amazon.co.jp ・本 (375ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101288215
作品紹介・あらすじ
乳癌と闘いながら、懸命に仕事を続ける、泣き虫先生(「雨に濡れて」)。診療所を守っていた父を亡くし、寂れゆく故郷を久々に訪れた勤務医(「百日紅」)。三十年間地域で頼りにされてきたクリニックを、今まさに閉じようとしている、老ドクター(「終診」)。医師は患者から病気について学ぶのではなく、生き方を学ぶのだ-。生命の尊厳と日夜対峙する、十人の良医たちのストーリー。
感想・レビュー・書評
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十編を収めた短編集。
いずれも老若男女の「良医」が主人公・花が必ず登場するもので、どれもものすごく大きな起伏があるという話ではないけれど、なんだかじんわりよかったなと思わせられた。
現役精神科医である作者によると、メディアなどで大きく名医だと取り沙汰される医者よりも、日の当たらないところに良医はいるのだと、それを伝えたかったのだと。
たしかに作中に出てくる医師たちは、患者をよく見て、患者との関わりを常に模索している人たちが多かったな。
1話目は個人的に導入が入りづらいなあと感じだけど、どの話も全体的にどこか印象に残る。
あらすじには紹介されてない話だけど、藤籠、顔、アヒルおばさんという話が好きかな。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
まずは図書館で借りて来て読む。
本当に手元に置いておきたいと思った本だけ買う。
それが私のスタイル。
そして、これは絶対に買おう!と強く思った本。
病院での診察待ち時間に読んでいて、涙が滲んで困りました。
どの短編も…。
「逃げんで、踏み止まって、見届ける」 -
ちょっと心が辛いときに読みたくなる本。立ち止まって後ろを振り返って良いし、そうやって日々を過ごしていけばいいんだな、と。優しい気持ちになれます。
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性別、診療科、状況のそれぞれ違う10人の医師の視点から描かれる短編集。淡々とした筆致の中に、著者の主張・テーマが差し入れられた内容は、素直に共感できる。「かがやく」と「終診」に心惹かれた。
「逃げんで、踏みとどまって、見届ける。」支援者としてのあるべき姿だと...。 -
逃げんで、踏みとどまり、見届ける。
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しんみりと寂しさを憶える。でもその狭間に、ちらほらと医師の良心を垣間見ることができる。「アヒルおばさん」のショットグラスには戦慄に近い恐怖を覚えるものの、結末にホッと胸をなでおろした。
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地域の医師・開業医の重要な役割、守備範囲の広さ、診療において根底で大切なことを改めて学んだ。
総合病院勤務医の仕事とは根本的に違うし、人間力が問われる。
医師として専門性を突き詰めることも大切だけど、同じくらいか、もっと大切なことを改めて気付かされた。 -
帚木さんの作品はやはりとても読みやすい。
短編なので、気楽に読むことができた。
長編のようなずっしりとした読み応えはもちろんないが、読後感のさわやかさがあった。 -
美しい話だなとは思う
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短編10篇の、うちはじめの2篇はしみじみとした趣があるものの物足りなく感じてしまった。
しかし3遍目からは前のめりに読み耽ってしまった。今まで読んできた医療小説とは少々趣を異にするものだった。
私の我儘ではあるが、最後の「終診」は泣けるものであって欲しかった。