蠅の帝国 軍医たちの黙示録 (新潮文庫)

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  • 新潮社 (2013年12月25日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (608ページ) / ISBN・EAN: 9784101288246

作品紹介・あらすじ

日本占領下の東南アジアに、B29の大空襲を受けた東京に、原爆投下直後の広島に、そしてソ連軍が怒濤のように押し寄せる満州や樺太の地に、医師たちの姿があった。国家に総動員された彼らは、食料や医薬品が欠乏する過酷な状況下で、陸海軍将兵や民間人への医療活動を懸命に続けていた――。二十年の歳月をかけ、世に送り出された、帚木蓬生のライフ・ワーク。医療小説大賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 2025/3/2読了
    『花散る里の病棟』で、野北家二代、宏一医師の軍医時代のエピソードを読んで、同じく帚木蓬生作品の本作を読みたくなった。
    収録された15篇は、戦時中の医師や軍医の手記を基にした創作なのだろうが、実際の体験に基づいたストーリーで、また一人称の語りであるが故に、インタビューの様に生々しい。内地や旧満州のエピソードが多かったが、特に満州では、終戦も知らされずに、撤退を続ける中で攻撃を受けたり、武装解除の後もソ連軍から理不尽な扱いを受けたり、戦争が終わったのに生き残るために闘わなくてはならないという、極限状態が描かれていた。そんな中で医療活動にあたりながらも、平時なら失われるはずのない命が失われていくのを見るしかなかった軍医たちの無力感、無念……。ほんの80年程前に起きていたことであり、今まさにウクライナやガザで同様のことが起きていると思うと、余計に心穏やかには読めなかった。

  • 「軍医」― 最前線より後方において、傷病人の治療介護が使命とされている、一般将兵から羨望の目でみられる特権階級的存在 — しかし、連合軍の大攻勢により食料、医薬品が欠乏し、生死を彷徨う終戦前後の沖縄、満州、樺太、広島、東京で、過酷な状況下で医療活動した医師たちの、階級の隔たりを超えた一人の人間としての慟哭が、魂の叫びがこだまする・・・。その記録をもとに作家<帚木蓬生>のライフ・ワークとして「日本医療小説大賞」を受賞した、15編のノンフィクション・ノベル。〝「一家が全滅して死体を探す人もいない。警察も人手が足りんので、死体を集めることが出来ません。仮に集めて場所を移すと、誰の死体か分からなくなってしまいます。それで、放置しておくことになっとるんです」とすると、広島の街全体が死体遺棄場になっているんだ。街にこれほど蠅が多い理由がのみ込めた(蠅の街)〟〝食糧は底をつき、身体は疲労困憊の域を超えている。私は一年前の中国戦線を思い出した。そこでは僅かな負傷でも名誉の戦傷として扱われたが、ここでは誰も負傷者の面倒を見てくれない。軍医の私さえ、後退につぐ後退で、軍医携帯嚢すらどこかに打ち捨てていた。自分の身を生きのびさせるのに精一杯なのだ。重傷者の中には、手榴弾で自決する者さえ出てきた。将兵に死者が出れば、いかに自決とはいえ、所属と氏名、死因と死亡状況を記録に残すのが軍医の務めではあるものの、いかに自決とはいえ、所属と氏名、私には認識票を探す余裕さえなかった。...米軍は野獣狩りのように日本軍を襲い始めた。私たちは傷つき疲れ果てた烏合の衆でしかなかった。内地から肌身離さず持ってきた千人針も、虱の巣窟となったので、いかに自決とはいえ、所属と氏名、死因と死亡捨てた。何の感慨もわかなかった。(土龍)〟

  • 第二次大戦で軍医として関わった人たちの短編集。
    内地勤務だった人もいれば前線に近い外地での救命活動に携わった人、のんびりとした環境で終戦を迎えた人もいれば、やっとの思いで内地に帰り着いた人もいる。
    そして軍医ならではなのは、やはり命を救う、病気を治すことに使命感を感じ務めを全うする姿勢だと思う。
    膨大な参考資料を読み取材した上で創作した話だと思うが嘘は言っていないだろう。
    15篇もあるので途中で飽きるが、読む価値はあると思う。

  • *星4つ相当です
    厚労省と日本医師会と新潮社が企画した日本医療小説大賞 第一回受賞作との事。
    戦中戦後の軍医または軍医の卵がどのように生活したかよく分かる15編の短編からなる。
    爺さんが陸軍軍医だったという人は読むと良いと思います。うちの爺さんもそうでした。
    作家さんは精神科医で「ははきぎ」と読むそうで、これまで名前は見かけるも手に取ったのは初めて。圧倒的な取材力でこの高解像度はありがたい。

  • こんなに信頼できない『小説』があるとは。
    どう見ても『事実』、
    どう見ても『歴史』、
    どう見ても『人生』。

  • ふむ

  • 2018.10.1(月)¥280(-15%引き)+税。
    2019.4.15(月)。

  • -

  • ふと、本屋さんの本棚で見つけた。
    最初見つけたときは、またどうせ、ありきたりの体験談手記じゃいやだなぁと思って手に取ることもせず。
    これを世間では食わず嫌いという。

    いやはやふと思い立って急に買って、でもしばらく放置。
    そしてある日、急に読みたくなって読んだわけだが、よかった。読んでよかった、買ってよかった。

    とても淡白、冷静。「私」になりきってしまって、通勤時間が広島だったり空襲後の東京だったり、朝の時間に読むには結構つらかった。帰りもなかなかつらいけど。
    視点がいつも「私」なので、吉村昭より読みやすいかも。だけれど、感傷に浸る前に現実が押し寄せて来て、立ち止まりもできないし、泣いてもいられない。
    生きよう、今できることをしよう、何ができるだろう、この何もない状況で。という思考が止まることがない。
    読みえてとても疲れたけれど、また再読したい。
    作家のライフワークだという作品って、こんなに重たいのだと、そして何度も読みたくなるものなんだと感じた。

  • 現役医師でもある著者による医療行為などのリアルな描写に思わず引き込まれる。

  • 悲惨を文章になおした内容。

  • 広島の話や東京の話は臨場感あったが
    一つ一つの話が短くてちょっと物足りないというか残念な感じ。

  • 本意なく従軍、あるいは被災地に赴き、充分な物資なくもどかしさを感じる。15の短編は全て「私」の一人称で冷静に語られ、ノンフィクションのような錯覚を覚える。14.7.19

  • 15名もの軍医の、それぞれの手記という形で、先の戦争を描く。

  • 戦争とは、人が死ぬこと。人を殺すこと。

    死というものと最も向き合わなければいけない軍医。
    医師としての無力感と、駒として戦争という場面に巻き込まれてしまうことに対する不条理さ。
    数々の軍医の物語は、個人という存在にとって戦争がどれだけ無意味かということを生々しくあぶりだす。

  • 太平洋戦争中の軍医を主人公にした短編集。

    徴兵検査に立ち会う様子、軍馬との関わりなど、これまであまり描かれなかったような軍医の姿が見られる。

  • 読んでいて辛い.涙が出てくる.優秀な人々が容赦なく亡くなったことで,日本が被った被害は如何ばかりか.戦争とは,生のレゾンデートルを排斥する行為なのだと,強い憤りを覚える.

  • 各地で色々な経験をした軍医たちの回顧録のような形式
    どの話も戦争ものなだけに凄惨だけど、淡々とした語り口で少し突き放したような感じがある
    だからこそというか、下手に劇的にするより現実感が大きい。同じようなことが実際あったんだろうな……と思える

  • こんな時代もあったんだよね。そう思いました。

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著者プロフィール

1947年、福岡県小郡市生まれ。東京大学文学部仏文科卒業後、TBSに勤務。退職後、九州大学医学部に学び、精神科医に。’93年に『三たびの海峡』(新潮社)で第14回吉川英治文学新人賞、’95年『閉鎖病棟』(新潮社)で第8回山本周五郎賞、’97年『逃亡』(新潮社)で第10回柴田錬三郎賞、’10年『水神』(新潮社)で第29回新田次郎文学賞、’11年『ソルハ』(あかね書房)で第60回小学館児童出版文化賞、12年『蠅の帝国』『蛍の航跡』(ともに新潮社)で第1回日本医療小説大賞、13年『日御子』(講談社)で第2回歴史時代作家クラブ賞作品賞、2018年『守教』(新潮社)で第52回吉川英治文学賞および第24回中山義秀文学賞を受賞。近著に『天に星 地に花』(集英社)、『悲素』(新潮社)、『受難』(KADOKAWA)など。

「2020年 『襲来 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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