蛍の航跡 軍医たちの黙示録 (新潮文庫)

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  • 新潮社 (2014年7月29日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (768ページ) / ISBN・EAN: 9784101288253

感想・レビュー・書評

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  • 2025/4/13読了
    『蝿の帝国』に続き、先の大戦に於ける軍医の体験談を基にした15篇。前作に比べて南方戦線のエピソードの比重が高い印象で、戦況悪化で物資食糧医薬品の欠乏に悩まされ、衛生環境の悪さから風土病が追い打ちをかけるという状況が描かれる。勇ましくも華々しくもない。戦争に於いて、如何に人命は軽く簡単に消費されることか。また、昭和二十年八月十五日で戦争は終わっても、抑留先で捕虜収容所で、日本兵には生き延びる為の更なる悲惨な戦いの日々があったという事も、彼らを扱った連合国側も……日本軍の残虐な行いを非難する割には……褒められたものでは無かったという事も、もっともっと広く知られて良いと思う。
    80年も前の昔の話、今はもっと理性的で人道的でしょう? しかし、ウクライナやガザで、住宅地や病院が空爆されたというニュース(因みに、ロシアの侵攻以来、海外ニュースで増えた気がする「〜と主張している」という表現だが、公平性正確性を二の次にした「言ったもの勝ち」的な感じが、なんか嫌いだ)を見たり聞いたりすると、結局昔から何も変わってないのでは、という思いになる。

  • 敗戦から戦後へ。軍隊と共に軍医も流れていく。「後何日生きていられたら終戦だったのに」……、シベリアや満州で8月15日を過ぎて亡くなった人もいらっしゃる。そもそも戦争という行為を始めなければいいのにと思う。軍医、戦場へ再び送り出すための治療、なんて矛盾を含んだ行為なのだ。それでも患者を前にして治療しないではいられない。そんな方々に頭が下がる。

  • 戦場に送られた軍医15人の物語短編。勉強を早期に切り上げて前線に送られた人や、思いがけずに現地の出産に立ち会う人(産科の臨床教育を受けずに出征)、現地の人と良好な関係を築き生き延びた人、仲間がバタバタと倒れ同僚の軍医も自殺する中何とか踏みとどまった人。どの話も読んでいて息苦しくなる。しかし、しっかりと心に刻む歴史である。

  • 軍医という立場から見た、大東亜戦争での15の体験話を基にした小説。戦争というのは相手国との戦闘だけでなく、病気や飢餓、行軍などあらゆることで命を落としてしまう。膨大な参考資料が記述されており、これを書き上げるのはとてつもない作業だったことが伺える。貴重。

  • 蠅の帝国の2冊目。
    開戦時に「負けるね」という連隊長があんまりにインパクトがあって、現場はそんなもんだったかーと思った。

    まぁそれが主題じゃない。
    この本は、ジャングルの中を彷徨するイメージが強い。

    阿部昭風に言えば、「戦中派の帰ってきた人たち」の声は、こうして話してくれれば掘り起こすことができるけれど、その背後には語ってくれない人々の無数の戦争が埋もれている。
    そして帰ってこられなかった無数の人びとの声もまた、埋もれている。
    これらは掘り起こす事も出きず、知らない私たちが想像すれば、変質し、化け物になる。
    …形にしても化け物になるけれど。

    こういう本は、何も考えず、何も探らず、そのまままっさらな気持ちで読むほうがいい。
    自分は軍医で、手には薬も機材も何もなくて、でもけが人病人は目の前に横たわっている。
    さぁ、どうする?

    読み終えた私にあったのは、声なき慟哭だけだった…。

  • 2016.2.27(土)¥500+税。
    2016.4.8(金)。

  • 単行本で既読。

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著者プロフィール

1947年、福岡県小郡市生まれ。東京大学文学部仏文科卒業後、TBSに勤務。退職後、九州大学医学部に学び、精神科医に。’93年に『三たびの海峡』(新潮社)で第14回吉川英治文学新人賞、’95年『閉鎖病棟』(新潮社)で第8回山本周五郎賞、’97年『逃亡』(新潮社)で第10回柴田錬三郎賞、’10年『水神』(新潮社)で第29回新田次郎文学賞、’11年『ソルハ』(あかね書房)で第60回小学館児童出版文化賞、12年『蠅の帝国』『蛍の航跡』(ともに新潮社)で第1回日本医療小説大賞、13年『日御子』(講談社)で第2回歴史時代作家クラブ賞作品賞、2018年『守教』(新潮社)で第52回吉川英治文学賞および第24回中山義秀文学賞を受賞。近著に『天に星 地に花』(集英社)、『悲素』(新潮社)、『受難』(KADOKAWA)など。

「2020年 『襲来 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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