悪人正機 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (340ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101289229

感想・レビュー・書評

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  • 理想的な上司とは…
    自由な雰囲気、あんまり文句言わない
    よくできる 何でも知ってやがんなっていうくらい仕事がよくできる

    「仕事が良くできる人で、細かく干渉しない。
    自由な空間をつくれるっていう人が理想の上司なんだと思いますね」

    それができればいいよなあ。

  • 正しそうに見えるや情報が氾濫している現代。さまざまなテーマについて吉本隆明さんが本当のことを教えてくれる大人の教科書。
    「泥棒して食ったっていいんだぜ」という言葉に出会い生きるのが楽になった。
    「ほぼ日」スローガン、Only is Not lonely(たったひとりということは、孤独だっていうことじゃない) にもつながる一冊。

  • 良かったなぁ。吉本さんの言葉には人間への鋭い目線があって、甘えや不必要な優しさはない。それが人への公平さというか、真面目さを感じさせる。世の中の本は現実に則さないほど厳しすぎたり、優しすぎたりするから。なんでもない毎日に一本の串をさすような本。

  • 隆明(りゅうめい)というとわれわれの世代では神様のような存在だ。その日本思想界の巨人、吉本隆明が糸井重里との対談のなかで、「よく、『俺、友だちたくさんいるよ』なんて言うヤツいるけど、そんなの大部分はウソですよ。(笑)」と語っている。嬉しくなって本書をいっきに読んだ。

  • 「吉本隆明(話し手)」と「糸井重里(聞き手)」の対談集『悪人正機』を読みました。

    「吉本隆明」に関する作品は初めて読みますね。

    -----story-------------
    「ほとんどの人が本当は友達ゼロ」 「役に立たない旅でいいじゃないか」こんな先生が欲しかった!
    ──絶妙の掛け合いから生まれた逆説的人生論。

    例えば、「生きる」ってなんだ?という問いにいわく「泥棒して食ったっていいんだぜ」―。
    ほかにも「働くのがいいなんてウソだよ」 「円満な家庭なんてねえんだよ」 「有名になるっておっかないことだ」…。
    「糸井重里」が、「吉本隆明」から引き出すコトバの数々。
    驚きに充ちた逆説的人生論だ。
    「今、中学と大学が危ない」と考える「吉本さん」が、若者から大人まで元気づけてくれる一冊である。
    -----------------------

    「糸井重里」の質問に「吉本隆明」が自由奔放に答える形式の対談です。

     ■ほんとのことを言う人との時間――まえがき 糸井重里
     ■「生きる」ってなんだ?
      「泥棒して食ったっていいんだぜ」と言われたことがある
      たどりついたのは、「死」は自分に属さないという考え方
      頭だけじゃダメ。手を使わなきゃ何もできない
      鈍刀のほうが、実はよく切れるんだぜ
      今の時代、「これがいい」という生き方なんてない
     ■「友だち」ってなんだ?
      「人助け」なんて誰もできないって親鸞は言ってる
      ケンカはしたほうがいい
      自分の記憶の中にのみ、友だち関係は残るんだ
      「純粋ごっこ」の時期を除けば、この世は全部ひとりひとり
      結局、人生というのは孤独との闘いなんだ
     ■「挫折」ってなんだ?
      終戦の日、捉えどころのない挫折感を味わった
      六〇年安保の時も、実は、もみ合いながら醒めていた
      挫折なんて、しようと思ったってできないんだ
     ■「殺意」ってなんだ?
      「殺意」は今の社会の象徴的な感情かもしれない
      専門家の言う「正常」の範囲は、もう現実には通用しない
      「殺意」は持つだけなら異常でもないし、法的にも問題なし
     ■「仕事」ってなんだ?
      なんで仕事ってするんだろう
      働くのがいいなんて、それはウソだよ
      さしあたり自分の機能を高めていくのが問題だ
      仕事がほんとうにイヤになったらどうする
     ■「物書き」ってなんだ?
      僕が詩を書き始めたのは、自己慰安からだった
      日本語の極限まで行っちゃうのがプロの詩人だ
      とにかく、あんまり焦らないほうがいいぜ
     ■「理想の上司」ってなんだ?
      仕事ができて、自由な雰囲気をつくってくれる人なんだろうな
      上司以上に大切なのは、実は「建物」なんだ
      いいリーダーにはなれないけど、いい親になら……
     ■「正義」ってなんだ?
      善悪の基準はどこにある?
      アメリカの正義は主観的なおせっかいだ
      そんなに「正義」はすばらしいか
     ■「国際化」ってなんだ?
      都会には慣れておいたほうがいい
      欧米から学ぶものは、もう何もない
      フランスの国際化は、今スゴイところまで行っている
      近代国家を超えるときは、過去も超えなきゃいけない
     ■「宗教」ってなんだ?
      オウムは排除すべきか
      実は唯物論より宗教のほうに、はるかに興味がある
      「信ずること」と「科学的に明瞭なこと」をつなげたい
     ■「戦争」ってなんだ?
      戦争の現実は、イメージとは全然違う
      これからの日本に、果たして革命は起こるか
      現在は日本の「第二の敗戦」だと思ってる
     ■「日本国憲法」ってなんだ?
      どの国と比べても、日本の憲法は圧倒的にいい
      核戦争が起こったら、という考え方がダメ!
      これから日本がとるべき積極的な国防とは?
     ■「教育」ってなんだ?
      大学に行くのは、失恋の経験に似ている
      今、中学と大学が危ない!
      知識も、細部のところでずいぶん余計なことをしている
     ■「家族」ってなんだ?
      円満な家庭なんて、そんなものはねえんだよ
      家庭の数だけ、実験は繰り返される
      子供のために、一年だけは我慢せえ!
      浮浪者的「自由」への憧れは、誰にもある
     ■「素質」ってなんだ?
      素質が問題になるのは、一丁前になってから
      才能や素質が、じゃまになるってこともある
      自分の領域を知るって難しい
      モテる、モテないは距離の問題なんだ
     ■「名前」ってなんだ?
      そもそも「名前」ってのは、いったいなんなんだ
      名前には人間をおかしくさせる何かがある
      有名になりたい気持ちは、宝くじを買うときの気持ちと同じ
     ■「性」ってなんだ?
      性に関する表現の見方? よくわかりません
      性的な表現への制約は、「昔返り」に対する危機感から?
      性の規制は、賛成・反対のレベルでは考えようがない
      ゲイは「純粋ごっこ」のひとつのカタチだと思う
     ■「スポーツ」ってなんだ?
      野球は、選手の心理状態を見るのがおもしろい
      典型的なスポーツマンは、ちょっと苦手だな
     ■「旅」ってなんだ?
      「役に立たない旅」でいいじゃないか
      無人島に持っていく一冊は『国歌大観』
     ■「ユーモア」ってなんだ?
      ユーモア? 僕自身にとっては必要ないな
      「ユーモア」は、生きる力そのものに関わっている
      「ユーモア」ってのは、小さい頃からの修練によるのかも
     ■「テレビ」ってなんだ?
      テレビを見るのは、たださみしいから
      テレビに出ないのは、なぜ?
     ■「ネット社会」ってなんだ?
      メディアの発達と人間の精神の発達は、無関係だ
      マルチメディアの基本にあるのは、「利益」と「損害」だ
      重要なのは、人間の魂に関わることだけ
     ■「情報」ってなんだ?
      「酸素」と「水素」を見つければ、「水」ができる
      目の当たりにしたほうが、見誤ることもある
     ■「言葉」ってなんだ?
      「J文学」はパートの文学。時間給でやってる感じ
      日本語のリズムと使われ方が、今、変わりつつある
      方言と外国語の違いは、地続きだと思っている
      言葉の成立には、全然根拠がないんだ
     ■「声」ってなんだ?
      綾戸智絵の声には、とにかくびっくりした
      折口信夫は、『源氏物語』に「声」を感じた
     ■「文化」ってなんだ?
      違う要素がうまくくっついているのが、「おしゃれ」かな
      これからの文化を支えるのは、第三次産業的な「週刊誌」だ
     ■「株」ってなんだ?
      株は社会における一種の呼吸作用だ
      本気でやらなきゃ、やっぱり儲かんねえぞ
     ■「お金」ってなんだ?
      借金も財産と思えなければ、お金のチャンピオンにはなれない
      お金に感じる「得体の知れなさ」ってなんだろう
     ■病院からもどってきて
      リハビリ訓練は、バカバカしいからしたくない
      意識的であるうちは、だめだ
      大まじめは、だめです
      自然体で続けるということ
      自己評価より下のことを
      「逸らさない」という魅力
      病院は、監獄と変わらないじゃないか
      管理されている者の利益を第一とする
      正直に、つまらないことを、言う
      わかったってどうってことない話は、もう結構
      数百万年前から数十万年前までのあいだ
      中でもって、中がわかるということ
     ■あとがき 吉本隆明


    「吉本隆明」の一般的な常識に囚われないざっくばらんで斬新な意見は面白かったし、そのひと言ひと言に惹きつけられましたね、、、

    読みながら、どんどん引き込まれる感じ… 直接、話を聞いてみたくなりました。


    勇気づけられ、元気をもらった言葉もありましたね、、、

    全ての意見に賛成ではないけれど、私とは全く違う新たな視点・価値観でモノゴトを観ることが刺激になりました。

  • それほどためになった感じはしないが、「ユーモアなんて必要ねえ」と言い切る吉本隆明の考えに、ユーモアは善なるものと信じ切っていた私は「そういう考えもあるのか」と思わせられた。私はユーモアはあったほうが絶対いいなあという考えだ。

  • 吉本さんは、自分自身や自分の暮らしに足を置き、自分の考えに基づいてぽつりぽつりと話をしている。自分があるからどんなことでも多く、少なく語ることができる。

    この本では、生きる、ということや、人助けをする、など広くいろいろなことが語らいのテーマとなっているけれど、自分というものを高めつつも、怪しげな風潮に左右されず、人には自由に動いてもらえるような、そんな人を目指しているように思われた。

  • “「殺意」ってなんだ?” で語られた、正常・異常の基準は法律論ではない。と言う観点が、最近起きた合法ドラッグ事件と繋がって、深く考えさせられた。 『おかしいんじゃねえか。』吉本隆明氏のべらんめえ口調が本質を厳しく突き、そこを少し馴染みやすく、糸井氏が翻訳して成り立つバランスが絶妙。

  • 2年以上ほしい物リストに入ったまま放置で、今回残念なニュースをきっかけに読むことになってしまった。

    個人的には、同調できないところもあるけど、例え奇抜で反論されそうな意見でも、自分がそうと思ったら、堂々と言ってのけるところがかっこいい。

    反対意見を予測して前置きをしたりするあたしはかっこわるいなって思った。

    考えなんて変わったっていいんだから、たらたらと前置きなんかせずに今思うことだけをすぱっと言いきれる潔さがほしいなあ。


    自分の頭で考えて自分の言葉をしゃべる人には「人間」を実感する。人間でありたいし、人間と関わっていたい、とつくづく思いました。

  • タイトルと表紙のデザインがゴツいので☆を減らしました。
    内容は、生きてく上でのアドバイス的なものが多くて、励みになる箇所がいくつかあった。仕事に対するスタンスがいちばん為になったかな。
    他、フランスの話は本当に共感できたし、日本の将来をこんなに早くから予言というか、言及してる人がいたんだななぁと驚いた。吉本ばななさんのお父様とは知りませんでした。まだ私には理解できない章があったからかもしれないけれど、偏屈な作家らしい一面も見れて、吉本さんと現実に話をしているみたいで楽しかった。

  • 全体を通して吉本隆明が語り、各章の始めに糸井重里が話を聞いた感想が入る。

    独特な語り口で「生きるとは」「仕事とは」等幅広いテーマが語られる。

  • 大学なんて国立公園みたいなもんだ。とか物を書くのはただの自己慰安だとか、かっこつけなずにあーたしかにそうだよな。と思わせる言葉がたくさん。

  • 吉本さんに訊いてみる、世の中のあれやこれや。

    なるほどなあ、と思うこともあるし、そうかなあ、と思うこともある。わからないこともある。ただ、受け取っても自分の肉にはならないけれど、一度読んだことには意味があるだろう。ここで出てきた「生きる」とか「友だち」とか「仕事」とかを、自分で考えて、自分の哲学として、持てるようになったら、大人なんだろうか。

  • 糸井さんが大分わかりやすく編集してくれたのか、各項目短い中に吉本隆明の考え方が簡潔に収まっていました。
    一般常識と違った切り口の視点はいい刺激になりますね。
    巨人が俗っぽいテレビをたくさん見ているのも以外でした。

  • 評論家という人種は基本的に得意じゃないけれど、自分でしっかりなにかを消化している人の言葉は、聴くに値する「何か」がちゃんとある。
    それを上手に引き出せるというのも能力のひとつ。

  • 吉本さんは亡くなった後に知ったんだけど、NHKで追悼番組を見て興味をもった。

    色々なテーマで話しているんだけど、私が面白かったと思ったのは、『生きる』『挫折』『家族』について。追加で書かれた『病院から戻ってきて』もよかった。

  • 話し手・吉本に聞き手・糸井が人生に関わるあれこれを尋ねたもの。吉本のシンプルかつ明解な言論、随所に現れる逆説的な見解に頷かずにはいられない。

  • 読み手の知識不足!わからないことの中にチラッとキラッとわかることがあった。タモリの分析の仕方に納得。

  • 対談の語り口調の文章なので読みやすかった。
    けれど、内容は深く、わかったような気がするけど、きっとわかっていない。という気持ちが読みながらチラチラ浮かぶ・・という感じ。

    自己評価よりも下のことだったら、何でもやっていいって考えているんですね。・・・・・という文章がとても気になった。よくわからないけど、大事なことのように思えるのです。

  • 一章一章が物凄く濃ゆい内容。
    今はまだまだ判らないことだらけだし、気付けていないことだらけで読んでいます。でも、それでも読んでいいんだと思わせてくれる本です。例えば、『殺意』ってなんだ?の章。専門家の言う「正常」の範囲は、もう現実には通用しないという言葉。ここのところなんかは、すっとそうだなと思ってしまいました。あっそうだわ。本当に。だから、なんやらこんな不自由な感じの人が多くて(自分も含め)、もうこの方が普通、正常でっせって思ってたんだなというふうに。

著者プロフィール

1924年、東京・月島生まれ。詩人、文芸批評家、思想家。東京工業大学工学部電気化学科卒業後、工場に勤務しながら詩作や評論活動をつづける。日本の戦後思想に大きな影響を与え「戦後思想界の巨人」と呼ばれる。著書多数。2012年3月16日逝去。

「2023年 『吉本隆明全集33 1999-2001』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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