日本近代文学の名作 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (213ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101289236

作品紹介・あらすじ

漱石は『こころ』のなかに江戸と西欧、二つに分裂した倫理観の危機を刻み、川端は『雪国』で、混じり合う男女の性を「浸透力」と捉えた-。明治から昭和までの代表的文学者24人の作品から、「名作」に値する特異な要件を抽出し、近代精神が孕む諸問題を解き明かした傑作論考。独自の着眼と作品への懐深い洞察で、文学の本質を鮮やかに射抜く、吉本文学論の精髄である。

感想・レビュー・書評

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  • タイトルどおり「こころ」「高瀬舟」など近代の代表作を紹介する本。1作ごとの内容はサラッとしているので、読みやすい。
    恥ずかしながら「雪国」「細雪」「暗夜行路」など未読なので、これを機会に幾つかの本は近いうちに読もうと思う。

    芥川龍之介を大川筋の悪ガキの出自と知識人としてのあり方の乖離と捉えている処が面白い。隆明氏自身が下町出身だからよく分かるとある。大川端の作家の系譜なんてことが頭に浮かんだ。例えば、半藤一利「隅田川の向こう側」小林信彦「日本橋バビロン」。もう下町は消滅したけれどね。

    岡本かの子を天才と高く評価している処。日本語起源論に関する折口信夫、柳田国男への興味。そして、勿論、中原中也、萩原朔太郎の詩人への評論。興味深い内容だった。

    二葉亭四迷は読まなければ。いや、本当に。

  • 筆者による近代文学論。

    ページも多くないし、各作品につき6ページぐらいで短いので、一気読み。 内容は、自分も知ってるものについては「そうだよね-!」と共感(失礼)、知らないものに関しては、難しいものもあった。

  •       ―20080920

    毎日新聞の文化面で週1回連載した「吉本隆明が読む近代日本の名作」-2000年4月~2001年3月-をまとめた一冊。昭和の太宰治から明治の夏目漱石にさかのぼる24人。

  • 毎日新聞の連載。太宰治の評価でよく見かける「これが分かるのは自分だけだ」と思わせるというのは、この連載記事が発端なんだろうか。
    吉本は古典≒名作を太宰治以前と定義し、その理由を「わたし自身と地続きな感じが残っている」とする。これは吉本が学生時代に太宰作品の上演許可をもらいに直接会いに行くほどの太宰ファンであったというエピソードとの繋がりを感じる。

  • 24名の作家、その作品について。吉本さんの語った事を聞き書きしたもの。一般的な紹介ではなく、独自の視点で評価している。読んでいないものには興味を引かれ、食指が動く。2020.10.11

  • それぞれの作品や作者に興味を持つきっかけになればいいと思う。吉本隆明節のようなものにそそのかされて挙げられているような作品を読むというのも悪く無いと思う。著者の物言いは、ひっかかるものはあるものの面白そうなことを言う人という感じ。

  • 学生の頃、人並みに吉本隆明を幾つか読んでみましたが、さつぱり分かりませんで、これはわたくしの理解力が足りないせいだらうと消沈してをりました。
    その後社会人になつて読み返す機会がありましたが、その時は「ああこりや、悪文だな」と考へるやうになつたのです。ファンの方には申し訳ございませんがね。
    さういへば西原理恵子さんの漫画で、よしもとばななさんに「お父さんの本はいつごろから読めたか(理解できるやうになつたか、の意)」と問ふたところ、「今でも読めません(理解できません)」と応へたのがありました。

    ところが本書『日本近代文学の名作』は、さういふ書物とは成立事情が違ひます。即ち、吉本氏が口頭で語る内容を、毎日新聞社学芸部の大井浩一、重里徹也両氏がまとめたものであります。語り言葉なので、まことに解りやすい。
    何でも吉本氏本人の視力が俄かに衰へ、原稿用紙の升目を埋める自信が無かつたとか。それはそれで寂しい話ですな。

    近代文学といふことで、二葉亭四迷から太宰治まで、明治~昭和戦前の作家を24名取り上げてゐます。作家及びその作品の選抜については、毎日の二名によるものださうですが、吉本氏の「わがまま」により、一名だけ外したとか。一体誰なのか、気になります。

    従つて江戸川乱歩のやうに、「どういう作家なのか、大まともに論じられるほど読んでいない」と告白する箇所もあります。
    一方、岡本かの子については、「漱石、鷗外といった男性作家と肩を並べられるほどのものを書いている」と高評価であります。思はず書棚の「岡本かの子集」を取り出したことであるなあ。
    また、鷗外の成功の要因として、あくまでも医学者としての本分を忘れず、文学者としては素人の立場を守つた事であらうなどと指摘します。
    さらに、芥川龍之介「玄鶴山房」を激賞するかと思へば、ラストで社会主義者の名前がとつてつけたやうに出てくるのを「つまらない」「軽薄なことだ」と断ずる。自由自在であります。

    本書は決して「名作案内」ではなく、ある程度名作を読み込んだ人が唸る種類の一冊と申せませう。同時に、構成担当の御両名の力量にも賛辞を贈りたい。
    わたくしとしては、「西脇順三郎」を加へていただきたかつた喃。

    http://genjigawa.blog.fc2.com/blog-entry-713.html

  • 読んだことのない作品が多い。
    今年中には読みたい。

  • 中原中也
    東京で年上の恋人の長谷川泰子と同棲、東大出の小林秀雄や大岡昇平と交流する。故郷に帰って書いた詩の中で年増女の低い声がするとは小林の元に去った泰子を懐かしむ心情をあらわしたものかなと思えます。

  • 135

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著者プロフィール

1924年、東京・月島生まれ。詩人、文芸批評家、思想家。東京工業大学工学部電気化学科卒業後、工場に勤務しながら詩作や評論活動をつづける。日本の戦後思想に大きな影響を与え「戦後思想界の巨人」と呼ばれる。著書多数。2012年3月16日逝去。

「2023年 『吉本隆明全集33 1999-2001』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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