- Amazon.co.jp ・本 (193ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101289243
作品紹介・あらすじ
小説作品が着飾った盛装姿だとすれば、詩は身体の骨格である…。戦後の現代詩を主軸に、俳句・短歌から歌詞にまで拡がる、現代のすぐれた詩歌表現のありようを、その特徴によって類別し、読解を試みる傑作評論。自らもなお詩壇の最前線に立つ著者が、培った経験を惜しみなく注ぎ込んだ第一級の鑑賞にして、現代詩人の代表作とその意図を知るための格好の入門書である。
感想・レビュー・書評
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吉本隆明逝去の知らせをきき、駆けつけた書店で手にした一冊…
これは毎日新聞の連載をまとめたものです。
つまり、記者がまとめたもの…だけど…いや、だからかな…
随分と読みやすく、それでいて吉本隆明の視座が明確になっています。
ときおり、ボクは、思うんです…日常、当たり前に口にしている言葉と、
詩との違いは何だろう…って。並べられた言葉は、どこから、
詩になるんだろう…って。おそらく、そうした素人の、
原初的で根源的な問いにも、本書は、やさしく答えてくれています。
現代詩を通史的に知るには、格好の一冊でしょう。
ただ、それにとどまらない…短歌、俳句、歌謡曲の歌詞に
いたるまで俯瞰しているのがスゴイ!
そして、こんなフレーズにどきりとさせられるのです。
―(吉増剛造の詩は)読者の側からいえば、詩の価値が文字の上には
現れておらず、詩人の内面に隠されているわけで、その価値を
受け取るのがとても難しくなっている。
そう考えると、俳句や短歌に比べて、詩は表現としての寿命が
短いように思えてならない。
その一方で、現代的な短歌、俳句をきちりと紹介しています。
俵万智の評などは、まさに絶妙! うなってしまいました。
こうした姿勢で、ものを読み続けられることこそ、
人間の人格的な理想であるように思ったのです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
新潮文庫から出たばかりの吉本隆明の『詩の力』をよみました。10代の終わりに傍線を引きながら「戦後詩史論」を読んだやりみずからすると、吉本さんはなんてカドがとれちゃったんだろうと思ったりもするのですが、同時に大学時代に初めて講演を聴いたときに感じた吉本さんの優しさを懐かしく思い出しました。
日本の現代詩をよもうとする若い人にとってこれほど「温かい入門書」はないんじゃないでしょうか。私も改めてこの本から始めようかな。日本語表現の教科書にも使いたい本です。 -
吉本隆明さんの本を読むのは、実は初めてかもしれない。
教科書に載ってるような詩人・評論家(今はどうなのかわからないけど)なのに。
そのうえ、日常的には詩を読むことがまずない。
二重の意味で、自分からは遠い本を読んでみたことになる。
「詩」といっても、本書では幅広く、通常のイメージする形態の詩以外にも、短歌、俳句、JPopの歌詞まで含んでいる。
高柳重信、夏石番矢、野村喜和夫、天沢退二郎といった人たちは、今回初めて知った。
よい詩には条件がある、と吉本さんはいう。
それは「流れのよさ」をもっている。
意味の移り変わりが速く、多様さと複雑さがある。
ことばをよく選択し、行と行の結びつきが強い。
ことばに強弱があり、強弱のつけかたに着想の意外性があり、強弱、行と行の距離も自在につけられている、のだと。
そのことばでしか言いようがないものを選んで使っている詩が優れているというのは、わかるような気がする。
強弱のリズムというのは自分にとっては新鮮な考え方だった。
散文ばかり読んでいると、こういうことはまず考えないから。
たくさんの詩や短歌、俳句が紹介されていく。
吉岡実「静物」、永瀬清子「諸国の天女」がいいなあ、と思った。
吉増剛造は、これまで何がいいのかよくわからなかった。
句読点を意味のある文字のように使う手法、類似音を重ねてリズムを作り出すこと。
このように説明される吉増の詩について、本書で意味がわからなくてもよい、と言い切る。
ちょっとほっとする。
本書の姉妹編に、「日本近代文学の名作」というものがあるらしい。
そちらも機会があったら読んでみよう。 -
39804
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2013/7/30購入
2013/11/11読了 -
言葉は無敵ではないが無力でもない。
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いろんな人の言葉をもっともっと聞きたくなった。
すごいなぁ。 -
吉本隆明が死んでしまって特集コーナーで発見。
詩とは何か、芸術とは何か、と考えてきたが、個人に生きる力を与えるものは全て芸術といえばいいのではないか。