- Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101290317
感想・レビュー・書評
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史上最年少で芥川賞を受賞したデビュー作。その文体や文学的探求で「三島由紀夫の再来か」とまで言われたという。当時は興味がなかったのでタイトルを知っている程度だったが、平野啓一郎という作家を知りたくて読んでみた。
どこのレビューをみても、難解な言葉を振り回して知識をひけらかしているとか、平易な言葉にすれば読みやすくなるというような批判がある。三島は彼の文学的センスから溢れ出るものだが、平野は無理に難しくしているというものだ。しかし私はそうは思わない。これは平野のスタイルであって、表現方法の一つだ。それを読みにくいからと批判するのはちょっと違うように私には思える。
この『日蝕』には途中からぐっと引き込まれ一気に読んだ。言われている難しい表現など、ほとんど気にならなかった。さすがに三島の再来とまで言われ、芥川賞受賞作品だと思った。難解だと批評しているレビュアーさんたちは、そうは言いながらもきちんと読んでいる訳で、やはり平野のファンなのだろう。もしかしたら彼の才能に嫉妬しているのではないのか。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
この旧仮名遣いが作品の雰囲気を高めているのだろうけれど、もし現代仮名遣いで読めたらな
と思う。
違うものになってしまうとは思うけれど
秘蹟の瞬間などは特に、つっかえずに読めたら
情景や感情がすっと入ってきそう。 -
こんなこねくり回さなくていいんでないの。
ものすごく読みづらかった。
あらすじはオカルティックで好き。 -
いつのことやら。
数ページで挫折。
これほどの圧倒的挫折は初めてだった。
頭が良くなりたいと思った。
いや、頭よりも根性の問題かもしれない。
わからない、知らない言葉を、
こつこつ辞書をひきながら、頑張ってよみすすめることで、
教養を得るのだろう。
最初から、なんだこの圧倒的語彙不足・教養不足を痛感させてくる高尚でイヤミな芥川賞受賞作品はこの野郎、などと卑屈にならずに、
もう少し、くらいつけばよかったのかもしれないが。
そんな教養と根性がなかった。
というわけで、決して本書と著者が悪いわけじゃない。
正直、この作品のイメージで
平野啓一郎=私には無理、と思ってた。
その後、モノクロの表紙がエヴァ的な「決壊」を本屋さんで見つけて、あれからどんなもの書いてるんだろう、とちら見してみた。
ら、なんてことない、普通に読みやすい文章で書かれていた。
読みやすかった。
違う作品を、また読んでみたい。 -
15世紀頃、キリスト教の敬虔なお坊さんが
信仰書籍を求めてフランスからイタリアに旅に出る物語。
読了までにめちゃくちゃ時間がかかった。
独特の擬古文的文体は決して読みやすくはないが、
本作で描かれている「人間の求める聖性と業の表裏一体」は
確かにこういった文体でなければ表現できないところとも思う。
京大在学中に発表し芥川賞を受賞した当時は賛否両論だったようで、
大きな「否」の論拠は作品が衒学的である、という点。
確かに物語全体を通して訴えたいことは理解できたが、
それが作者の真に言いたいことなのかどうかは判然としない。
その意味で、衒学的と言われてしまうのかもしれないが、
濃淡の差はあれど、人間の表現活動全般に
衒学的要素は内包されるのであって、そこだけを論われるのは
論評としてフェアではないと思う。
登場する敬虔なお坊さん、研ぎ澄まされた寡黙な錬金術師、
錬金術師に使える畸形の下男、下男の妻は村の堕落した司祭に孕まされ、
生まれた子供は唖、更には洞窟に囲われる謎の生物と設定はド変態の極み。
人間の業が聖性を生み、聖性が新たな業を生むというスパイラル。
そのスパイラル自体の業性と一気にすべてを破壊する奇跡。
衒学的だろうが、ここまで描ききれば見事と思う。 -
一昔前の文豪のような言葉遣い、美しさを意識した文字の羅列。作者の意気込みが何よりもすごいと思った。デビュー作とのことですがかなり賭けていたのではなかろうか、と。
前半は思索の杜をうろうろとする主人公に気怠さを感じておりましたが両性具有者登場後は焚刑と日蝕のエクスタシーを頂点にぐいぐい惹き込まれましたが、人間のえげつなさと信仰の恐ろしさと集団心理の怖さと、何だか怖い本でした。
ボルゲーゼ・コレクションの眠るヘルマフロディトスが読んでいる最中、頭から離れてくれませんでした。この不均衡な美しさが両性具有者には必要不可欠なのでしょうね。 -
第120回芥川賞。
15世紀フランスの話。
パリ大学の学生がリヨン近郊の村を訪れ、謎の錬金術師と逢う。魔女狩りが行なわれ、両性具有者が火刑に遭う。その瞬間、太陽が月にむしばまれる。思いがけない日蝕に村はパニックになる。
とにかく文章が難解。「~せられむ」「~せむとする」などの文語体、「抑(そもそも)」「辺幅(へんぷく)を脩(おさ)めぬ」などの難読漢字にかなり手こずる。ルビも豊富で、どのページもすみずみまで文字だらけだ。 -
この本を読んで、私は悔しさのような絶望感のような哀しさのような気持ちで涙が出た。
物語の表層にではなく物語の内容とは別とでも言うべき深層に在るものに、文章という表現方法の中に垣間見られる、形の無い、例えば絵画を見て何かしらを感じる時のようなものが、私を涙させた。
解説を読むと、私の感想は全く本質を捉えておらず、作者の意図や記されたメッセージを汲み取っていないらしいのだが、別に解説通りに読まなければ(感じなければ)いけないということはない。
平野啓一郎氏の小説をいくつか読んで共通して感じることは、語り手となる主人公に、苛立ちのような不快感のような嫌悪感のような類の感情を抱かせられるということだ。
そういった感情を抱くというのは、実は統ての人間の本質にある黒い塊を実に正直に顕しているからに他ならない。
しかしながら人間は綺麗事が好きなのだ。真正面から自分の本質など見たくなんてないのに平野氏は平気で抉り出してしまう。圧倒される程の才能を持って、その美しい文章と毅然とした文体と緻密に構築された流れとで抉り出す。
不快でありながら清く潔く美しいという相反する感情を抱かせる。
そんな風だから、後味は決して良くなくて、心に重く苦しく行き場のない感情が残る。
それでも私は平野氏の小説を手に取ってしまうのは、現代のくだらない情報が氾濫する中で、平野氏は人間に対して嘘偽りなく真正面から文章で向き合っているように感じるからだ。
そういう真摯な姿勢で小説を書く若い作家はそういないだろうと思う。
著者プロフィール
平野啓一郎の作品






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