日蝕 (新潮文庫 ひ 18-1)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101290317

感想・レビュー・書評

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  • この旧仮名遣いが作品の雰囲気を高めているのだろうけれど、もし現代仮名遣いで読めたらな
    と思う。
    違うものになってしまうとは思うけれど
    秘蹟の瞬間などは特に、つっかえずに読めたら
    情景や感情がすっと入ってきそう。

  •  史上最年少で芥川賞を受賞したデビュー作。その文体や文学的探求で「三島由紀夫の再来か」とまで言われたという。当時は興味がなかったのでタイトルを知っている程度だったが、平野啓一郎という作家を知りたくて読んでみた。

     どこのレビューをみても、難解な言葉を振り回して知識をひけらかしているとか、平易な言葉にすれば読みやすくなるというような批判がある。三島は彼の文学的センスから溢れ出るものだが、平野は無理に難しくしているというものだ。しかし私はそうは思わない。これは平野のスタイルであって、表現方法の一つだ。それを読みにくいからと批判するのはちょっと違うように私には思える。

     この『日蝕』には途中からぐっと引き込まれ一気に読んだ。言われている難しい表現など、ほとんど気にならなかった。さすがに三島の再来とまで言われ、芥川賞受賞作品だと思った。難解だと批評しているレビュアーさんたちは、そうは言いながらもきちんと読んでいる訳で、やはり平野のファンなのだろう。もしかしたら彼の才能に嫉妬しているのではないのか。

  • 自分がまだ20代そこそこの若い時に読んで、読書スキルの無さもあり読みにくいし難しいなと感じた。

    ちなみに内容は全く覚えていない。

    いつかまた読んでみたい。

  • ルネサンス期にトマス哲学をもとに宗教の統一を求め旅に出る.異なる進行の形に出会い,自らの信仰や宗教観に変化が訪れる.かつての文学の形式を反復によって体現している物語の構造こそが,行為自体に価値をも言い出す錬金術であると感じた.

  • ◯中世ヨーロッパの修道僧の視点であり、硬く見える文語調の言い回しなどは、その演出・表現として活きている。
    ◯退廃的かつ幻想的な世界において、神と見まごう出来事の中に自分を見てしまう当たりはまさに日蝕と感じさせる。
    ◯太陽・陽である神と、月・陰である人間が重なり、同円に多い尽くし、隠してしまう。人間を超越した存在を殺すことによる罪を人は背負わねばならない。
    ◯それは神の死んだ世界であるが、先の世における人間賛歌の時代までは、未だ感じさせられず、堕落し、退廃的な世界の暗さを感じながら生きねばならない。
    ◯ファンタジーではあるが、中世暗黒時代の肌感覚も感じられて面白かった。

  • こんなこねくり回さなくていいんでないの。
    ものすごく読みづらかった。
    あらすじはオカルティックで好き。

  • ストーリーに起伏もなく、新しい視点もなく、読み手側が受け取れるものがなにもない。ただ作者が自分の頭の中身を小説世界に構築するための手すさび、という印象以上のものが出てこない。

    三島由紀夫は二十歳前後ですでに起伏もあり新しい視点もあり、読み手をうならせる短編作品を世に出していたので、この作品だけで言えば、三島とは比較にもならない。
    ただし、自分の世界観を紡ぎあげて作品世界に昇華させるという作者の意図は肯定したい。
    三島ではなく平野での作品勝負なのだから、三島うんぬんの言及はナンセンスかな。
    私はこの作品では、平野氏の作品を今後も追って、さらなる作者の挑戦を見たいという思いにはさせられた。

    やるなら徹底的に。冀(こいねが)わくば、平野氏がその頭脳内宇宙をさらに自分流に展開してくれることを。
    (2007/1/16)

  • いつのことやら。
    数ページで挫折。
    これほどの圧倒的挫折は初めてだった。
    頭が良くなりたいと思った。

    いや、頭よりも根性の問題かもしれない。
    わからない、知らない言葉を、
    こつこつ辞書をひきながら、頑張ってよみすすめることで、
    教養を得るのだろう。
    最初から、なんだこの圧倒的語彙不足・教養不足を痛感させてくる高尚でイヤミな芥川賞受賞作品はこの野郎、などと卑屈にならずに、
    もう少し、くらいつけばよかったのかもしれないが。
    そんな教養と根性がなかった。
    というわけで、決して本書と著者が悪いわけじゃない。


    正直、この作品のイメージで
    平野啓一郎=私には無理、と思ってた。
    その後、モノクロの表紙がエヴァ的な「決壊」を本屋さんで見つけて、あれからどんなもの書いてるんだろう、とちら見してみた。
    ら、なんてことない、普通に読みやすい文章で書かれていた。
    読みやすかった。
    違う作品を、また読んでみたい。

  • 15世紀頃、キリスト教の敬虔なお坊さんが
    信仰書籍を求めてフランスからイタリアに旅に出る物語。

    読了までにめちゃくちゃ時間がかかった。

    独特の擬古文的文体は決して読みやすくはないが、
    本作で描かれている「人間の求める聖性と業の表裏一体」は
    確かにこういった文体でなければ表現できないところとも思う。

    京大在学中に発表し芥川賞を受賞した当時は賛否両論だったようで、
    大きな「否」の論拠は作品が衒学的である、という点。

    確かに物語全体を通して訴えたいことは理解できたが、
    それが作者の真に言いたいことなのかどうかは判然としない。

    その意味で、衒学的と言われてしまうのかもしれないが、
    濃淡の差はあれど、人間の表現活動全般に
    衒学的要素は内包されるのであって、そこだけを論われるのは
    論評としてフェアではないと思う。

    登場する敬虔なお坊さん、研ぎ澄まされた寡黙な錬金術師、
    錬金術師に使える畸形の下男、下男の妻は村の堕落した司祭に孕まされ、
    生まれた子供は唖、更には洞窟に囲われる謎の生物と設定はド変態の極み。

    人間の業が聖性を生み、聖性が新たな業を生むというスパイラル。
    そのスパイラル自体の業性と一気にすべてを破壊する奇跡。
    衒学的だろうが、ここまで描ききれば見事と思う。

  • 一昔前の文豪のような言葉遣い、美しさを意識した文字の羅列。作者の意気込みが何よりもすごいと思った。デビュー作とのことですがかなり賭けていたのではなかろうか、と。

    前半は思索の杜をうろうろとする主人公に気怠さを感じておりましたが両性具有者登場後は焚刑と日蝕のエクスタシーを頂点にぐいぐい惹き込まれましたが、人間のえげつなさと信仰の恐ろしさと集団心理の怖さと、何だか怖い本でした。

    ボルゲーゼ・コレクションの眠るヘルマフロディトスが読んでいる最中、頭から離れてくれませんでした。この不均衡な美しさが両性具有者には必要不可欠なのでしょうね。

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著者プロフィール

作家

「2017年 『現代作家アーカイヴ1』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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