葬送 第一部(上) (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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レビュー : 52
  • Amazon.co.jp ・本 (355ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101290331

作品紹介・あらすじ

ロマン主義の全盛期、十九世紀パリ社交界に現れたポーランドの音楽家ショパン。その流麗な調べ、その物憂げな佇まいは、瞬く間に彼を寵児とした。高貴な婦人たちの注視の中、女流作家ジョルジュ・サンドが彼を射止める。彼の繊細に過ぎる精神は、ある孤高の画家をその支えとして選んでいた。近代絵画を確立した巨人ドラクロワとショパンの交流を軸に荘厳華麗な芸術の時代を描く雄編。

感想・レビュー・書評

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  • ロマン主義の全盛期、十九世紀パリ。音楽家ショパンと画家のドラクロワとの友情を軸とし、女流作家でショパンの愛人でもあるジョルジュ・サンドを始めとする人物たちが織り成す豪華絢爛な芸術賛歌を描いております。

    これは自分の中でずっと読むのを避けていた小説のひとつで、理由はというとなんといってもテーマの重厚さと原稿用紙2500枚分という膨大なボリュームからでした、しかし、今回この小説を読むきっかけとなり、また、僕の背中を押してしてくれたのは、誰あろう筆者である平野啓一郎氏その人でありました。

    以前、平野氏のツイッター上で『葬送』の話題になっていたときに僕が
    『僕も読もうと思っておりますが、あの重厚さに二の足を踏んでおります。』
    と書き込んでみたところ、なんと平野氏本人から
    『読み始めるのは大変ですが、ぼくの小説の中で一番好きだと言ってくれる人も多いです。最初が重たいとよく言われる小説ですので、第二部上のショパンのコンサートから読んで、この前後ってどうだったんだろうと、遡ってみるというのも、一つの方法かもしれません。』
    というメッセージが返ってまいりました。

    原作者からそこまで言われれば読まないわけにはいかないと。ある種の決意を持ってページを読み勧めてまいりました。物語の舞台になっているのは十九世紀パリ。芸術的な動向としてはロマン主義の真っ盛りだそうで、その辺の知識が欠如しているのは非常に残念です。物語の軸となるのは『天才音楽家』の称号を恣にしたフレデリック・ショパンと近代絵画を確立したウージェーヌ・ドラクロワとの友情とショパンの愛人であり、閨秀作家のジョルジュ・サンドとの関係を中心にして物語は進められていきます。ショパンやドラクロワにかかわらず、当時のサロンで語られている芸術論の情熱的な語り口や、彼らを取り巻く弟子、友人、そしてサンドの子供たちとショパンとの複雑な関係からにじみ出るような緊張感も非常にスリリングですし、特に、サンドの娘であるソランジュの結婚にまつわるひと騒動はとても印象に残っております。

    当時の社会情勢や芸術界について、もっと自分に知識があれば物語世界に踏み込んでいけるんだけれどなぁと残念この上ないのですが、ショパンとドラクロワと取り巻く『人間ドラマ』としてこの小説を読んでも、深みのある物語ですし、当時の世相というか、芸術の動向を知る手がかりとしても面白く、何でこれを今まで読まなかったのかと、若干の後悔を持ちながら長い長い旅路をはじめたような気がいたします。

    今後、彼らがどうなっていくかはまだわかりませんが、楽しみに読んで行こうと思っております。それにしても改めて知ったのですが、平野氏がこの作品を世に問うたのが25歳の頃。この事実を再確認するにつけ、本当の天才というのはやっぱりいるのだなと、筆者のような人間が『芸術の神』に愛された存在なんだなと、そういうことをとみに思うのでございました。

  • 読書感想文は苦手なのだが、この小説に感想を書こうなんて百万年くらい早い気がしてきた・・・。

    再読しなければ、感想など書けないような、
    そんな壮大な作品だった。

    読み始めて挫折されている人が多いようだが、私も実にその一人である・・・。

    読書にじっくり時間を割けないのであれば、
    この作品は読まない方がいいのかもしれない。

    じっくり向き合える時に読むべき、超大作なのではないかと思う。

    この作品は「作者名」で「作者買い」してしまった一作なのだが、作者の初期の作品だからそこまでではないだろうと思ったのが敗因。。。

    これは素晴らしい。

    何度も何度も読み返し、web で調べて、また進んで、戻っての繰り返しだった。

    そのくらい深く、難しく、自分の中でイメージを固めるのに時間がかかった。

    私にはまだ早かったのかなぁ?と何度も諦めそうになってしまった。

    やっと1冊終わったところだが、話は今とても面白くなっている・・・。

    さて、私、次を読み進めるのか・・・。
    一旦休憩するのか・・・。

    私にもまだわからない。。。

  • 第一部、第二部とも読み終わりました。
    各巻それぞれ、かなり多くの引用をしましたが、印象に残った表現もあれば、異なる作家さんの全く違う話と関連付けて残したものもありました。

    巻末の解説にもありますが、集中して読んだ方がいい小説です。たまたま時間が取れる時に読もうと思い立ったのは偶然でしたが、こんな時でなければ挫折していたか、読み終えたとしても印象が散漫になっていたと思います(^_^;

    19世紀の小説技法で書かれているそうですが、時々、スタンダールやドストエフスキーを読んでいるような錯覚に陥ることがありました。
    難解な文章な上に、出てくる音楽や絵画をそのつどネットで探して聴いたり観たりしていたので、よけいに時間がかかりました。ショパンの葬儀の部分で聴いたのは主にモーツァルトのレクイエムでしたが、第一部冒頭の部分に限っては、ショパンの葬送行進曲(ピアノ協奏曲第2番第3楽章)よりも、同じ第2番の第1楽章の方が、私にはしっくりきました。


    ショパン、ドラクロワという稀代の天才二人を中心に、二月革命前後の芸術家を取り巻く群像劇。などと片づけると簡単ですが、いろいろなものが盛り込まれています。

    ショパンとドラクロワの交流も書かれていますが、それがメインではありません。彼らが天才にしか理解できない何かで深く繋がっていたのかもしれませんが、それも私には、行間から読み取れた気がする程度でした。
    登場人物、特に上の二人とジョルジュ・サンド、その娘ソランジュについて、それぞれの思考がそれぞれに細かく綴られていきます。解説によると、絵画の手法の一つ「色彩分割」を小説で試したとのことですが、思考の流れ、感情の揺らぎ、その結果の行動、結末に対する不満、後悔、諦め、責任転嫁、内省、など、後から振り返るとたしかに分割された心理表現だったのかもしれない、と考えました。読み返して確かめる気力は、今はありませんが・・・

    ドラクロワは、絵にかける思いや画壇への複雑な心境など、雄弁な思考が描写されています。著者は彼の日記を原文で読まれているそうなので、そこから取り込んだものもかなりあるでしょう。
    芸術、特に絵画に対するドラクロワの主張は、勉強不足な頭ではすべてを理解はできませんでした。でも彼が本当にそれに人生を賭けている、というよりも、賭けるように生まれついていてむしろその運命に恐怖さえ感じている、というのが伝わってきました。
    完成した図書館の壁画の描写は圧巻です。作者本人でさえ怖れをなすほどの作品を作ってしまう才能こそ、天才と呼べるものなんでしょう。

    逆にショパンは、周りの人間から見た彼の人と為りが多く描写されていています。あれほど繊細な曲を作る人が、どういう人だったのか。実際に会えるはずもないので本当のところは分かりませんが、これほど調べこんでいる著者の描いたものであれば、多分かなり実際に近いショパンなのではないかと信じます。
    演奏の様子を文章で表現するというのは、絵画の出来を表現するより難しいと思うのですが、演奏会の描写はやはり圧巻でした。あの時代のあの場所に生まれて、ショパンの演奏するショパンの曲を聴いてみたかった。


    残念なのは、第一部には視点が狂うところが散見されたこと。まだ登場人物の性格も周囲の状況もはっきり把握できてない段階で、何の手がかりもなくふと視点が変わってしまうところがあって、しばらく読み進めて「これは誰の視点だ??」と混乱して読み返す、ということが時々ありました。
    第二部にはこういった点は気づきませんでした。回顧部分と本文が区別しにくいところはありましたが、こういった文体ではままあることかなと思います。


    いつも読後の感想を書くたびに思うことですが、私には感じたことを書くにはあまりにも語彙がなく、表現力も不足しています。ショパンの造形について。最後のドラクロワの描写が残した余韻について。書きたいのですが、言葉が浮かびません。

  • 全4巻から成る大作の、一冊目。
    この巻は主人公たるショパンとドラクロワの人物像、彼らの日常と交流の様子、その周辺人物と舞台である19世紀のパリの街並、といった背景の描写が中心となっていて、何か重要な事件が起きるわけではない。だから正直、重苦しい語り口とも相俟って、読みやすいとは言い難い。
    しかし300ページも使って語られるほどに作り込まれた人物像、舞台背景はとても魅力的で、念入りに推敲されたのであろう重厚な文体はまるで、一つの荘厳な建築物を思わせる。

    読み進めるにつれて、冒頭から立ち込めていた「死」の匂いが次第に濃くなり、『葬送』という題名の意図するところが見え始めてきたところ。
    繊細なピアノの音色が流れ、勇ましくも思索に満ちた絵画が飾られた、この聖堂のような大作を、最後まで、心行くまで堪能したいと思う。

  • ショパンとドラクロアの物語。
    最初はショパンの葬儀のシーンから始まる。
    文章が古典文学のようで読みにくかったのと、次から次へと出てくる人物名と相関図が頭に入ってこず、、、そのまま物語も頭に入ってこず、、、挫折。
    ドラクロアの人生、大変興味があったのだけど、残念極まりない。
    時を置いて、再チャレンジしたい。

  • 記録

  • 20180223蔵書
    20130503単行本読了
    ショパンの晩年を描く小説、上巻。サンド夫人とその家族とのねじれた関係性が活写されていて、愛人関係に終止符が打たれる間際に友人ドラクロワへ心中を吐露するショパンが痛々しかった・・・病身でありながらこんな心労まで抱えねばならなかったなんて。ショパンを題材にした小説でありながら、二大基軸といっていいほど画家ドラクロワが丁寧に描かれており、その思索や人付き合いを興味深く読んだ。気がつけば「引用」部分はすべてドラクロワ関連だった!

  • ドストエフスキーやトルストイの小説を読んでいるようである.
    いきなりショパンの葬儀から始まるが,その後はショパンと,その親友ドラクロワの間を行ったり来たり.
    この二人の心理描写,心の声が,かなり事細かに描かれるのだが,さまよう魂の軌跡が微に入り細に入り描写される.
    上巻では特にドラマチックな出来事はないともいえるので,下巻が楽しみだ.

  • 日本人らしからぬ古典のような書き口。心のひだに分け入った心情表現。ドラクロワ、ショパン、サンド…いい意味で偉人を俗にしてくれている。

  • 初読

    わーい19世紀ロマン主義周り好き〜
    と軽い気持ちで読み始めたものの
    おお…読みにくいw

    一文節がとにかく長いし(これが19世紀小説技法?)
    確かに視点がすぐ変わるの(この「彼」は誰を指す?)
    と頭の中でひとり国語テストをしながら読んでたり。

    前にジョルジュサンド関連本を興味深く読んだ経験がなかったら
    人物像の把握も大変だったろうなぁ
    その時、私が一番興味あったドラクロワについて
    みっちり描かれてるのが嬉しい。
    それもあってか、私は、ドラクロワの演劇論から絵画論、に発展して
    議論の虚しさまで収束する5章が一番好きだなぁ
    口に出した事をすぐさま後悔したり、人間臭くてかわいいドラクロワ。

    それにしてもやっぱりジョルジュサンドって母性的で面倒見のいいわりに
    母娘関係はダメなんだよなぁ

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著者プロフィール

平野 啓一郎(ひらの けいいちろう)
1975年、愛知県蒲郡市生まれ。生後すぐ父を亡くし、母の実家のた福岡県北九州市八幡西区で育つ。福岡県立東筑高等学校、京都大学法学部卒業。在学中の1998年、『日蝕』を『新潮』に投稿し、新人としては異例の一挙掲載のうえ「三島由紀夫の再来」と呼ばれる華々しいデビューを飾った。翌1999年、『日蝕』で第120回芥川賞を当時最年少の23歳で受賞。
2009年『決壊』で平成20年度芸術選奨文部科学大臣新人賞、2009年『ドーン』で第19回Bunkamuraドゥマゴ文学賞、2017年『マチネの終わりに』で第2回渡辺淳一文学賞、2019年『ある男』で第70回読売文学賞(小説部門)をそれぞれ受賞。2014年には芸術文化勲章シュヴァリエを受章した。『マチネの終わりに』は福山雅治と石田ゆり子主演で映画化が決まり、2019年秋に全国で公開予定となっている。

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