あなたが、いなかった、あなた (新潮文庫)

  • 新潮社 (2009年7月28日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (368ページ) / ISBN・EAN: 9784101290393

感想・レビュー・書評

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  • 短編集だが、色々な手法を凝らしている。
    これまでに味わったことのない短編集。

    「鏡」「女の部屋」「母と子」は特に驚いた。

    文学には程遠い自分が一番気に入ったのが「フェカンにて」
    この短編の主役は、平野啓一郎先生ごい本人にとても近い。
    私はご本人であろうと思い込んで読んでいた。

    先生の作品である「葬送」にも触れられ、
    私が先日読んで、どう読むべきか酷く迷っていたドフトエフスキーの
    罪と罰にも触れていた。とても興味深い。
    当たり前だが、私の軟弱な「あぁ面白かった。」という感想とは
    かけ離れている。
    読み方のレベルが違いすぎて溜息しか出てこない・・・。

    この本を読んで、何故かもう一度平野啓一郎先生の「決壊」を読まなくては!と思った。そろそろ再読してもいい頃なのかもしれない。

  • 前衛的な試みと、死の香りにみちた短編集。

    ・やがて光源のない澄んだ乱反射の表で……/『TSUNAMI』のための32点の絵のない挿絵

    老いると身体がどんどん砂になっていく話と、ページ下に横書きで砂浜に津波が来る様が同時進行していく作品。
    徐々に死んでいく話と、あっという間に死んでしまう話といってもいいかな。
    ちょっと一人称は下手なんじゃないかなあと思った。
    別に下のは無くてもよかった(笑)

    ・鏡
    この後に出てくる「死に続ける自己」のことを想像した。
    小説を書くような気持ちで書かれたものが小説だ、というようなことを佐藤友哉『1000の小説とバックベアード』で言っていたので、1行しかなくても、小説だと言い張ったら小説やねん。

    ・『フェカンにて』
    限りなく平野本人に近い小説家「大野」が主人公。
    疑いなくこの短編集の核だと思う。
    作者は私小説は書かないと言っていたような気がするから、何もかもが作者本人にそのまま当てはまるわけではないのだろう。
    『日蝕』『葬送』を読んだらこちらもぜひ。

    ・女の部屋
    たぶん女の部屋を描写しているだけなのだろうが、虫食いというか、文章の一部だけしか見えない。文字が模様みたいな感じ。
    最初はなんとなく覗きをしているような気分で、虫食いを想像しつつ読んだけど、5ページ目くらいであきらめた。

    ・一枚上手
    浮気してる旦那が妻に携帯を見られる話。
    なんとなく笑い話のような感じだけど、携帯が人間の秘密を握っているという、ある意味携帯がその人のすべて、みたいな、当たり前のようなことに気付いてみたりする。
    これもアヴァンギャルドなのかい。アバンストラッシュ。(関係ない)

    ・クロニクル
    ミュージシャン・Pと、その息子で格闘家Jについての回想を、二人の女が小説家に語る。
    前にツタヤで適当に買ったアブダル・マリックの音楽みたいな雰囲気。
    生きている人が語ると、死んだ人の不在が際立つんだな、と思った。

    ・義足
    義足が土に埋まってさあ大変な話。
    解説によるとシエラレオネの話らしい。
    芥川がおじいさんまで生きていたら、こんな話を書いたりしたかもしれないなあと、なんとなく。

    ・母と子
    キュービズムみたいな空間の描写ではじまる。
    同じ動作と同じ言葉が何度も繰り返されるが、状況はどれも違う。
    描写の上手さを堪能できる話。

    ・異邦人#7-9
    フランスの地下鉄で日本人の主人公が手を置いてくる話。
    栗田有起『マルコの夢』を思い出したが、こちらはものすごく孤独。
    外国で、名前すらまともにないなんて。

    ・モノクロウムの街と四人の女
    色を失った世界でハデに着飾った4人の女の話。
    なんやようわからんかったが、乳首のことをいちいちnippleと横倒しで書いてあるのがなんかウケた。

    ・慈善
    テロによるユーロの暴落でお金を儲けて喜ぶ妻。
    それを叱った夫が募金した箱には「GIZEN」と書いてあった。
    わざとらしすぎるが、貧しい国のおかげで幸せを享受している、現代日本。
    身近すぎて文学のにおいがしない。鼻が慣れているからか。


    ところで、この短編集には「津波(TSUNAMI)」と「3月11日」という言葉が入っている。これはどういうことなのだろうか。
    初出2009年の『ドーン』には震災も出てくるし。
    作者は天才だ天才だといわれてるけど、天才すぎてなんか天災を予言したんだろうか。
    たまたまだと思うけど、コワイ。

  • 「やがて光源のない澄んだ乱反射の表で……/『TUNAMI』」
    また厄介な短編集である。下にある2、3行の横書きは何なのか。津波か。縦書きの文章とどう関連するのか。砂はどこかから飛んできたものではなくて、自身の身体から吹き出てきたものなのか。和服姿の祖母が襟から出す懐紙が印象的である。
    「鏡」
    1行だけ。誰もいない家の中で鏡は何を映しているのだろう。洗面台で、風呂場で、クローゼットの前で、玄関で、和室で、、、
    「『フェカンにて』」
    『フェカンにて』という小説を書くための取材に来ている。大野という名の作家。「葬儀」を書いた北九州出身の作家。ドラクロワとショパンの取材のために前にも訪れている土地。電車で乗り合わせたお婆さんとの会話がなかなかいい。会いに行くことになっている女性は日本人なのか。フランス人と思っていたけれど、電話では日本語で話している。声しか登場しない女性。大野に好意を抱いているが、大野は面倒に思っているのか。ならばなぜ会いに行くことにしたのか。その女性が言っている。(女性に言わせている。)また、難しいこと書いてるんでしょう、と。確かに難しい話が続く。まだ漢字も多い。二十歳代で書かれた作品である。
    「女の部屋」
    意味がわからない。次第に見えてくるようで見えない。改めて一から読み直そうとも思えない。右下の数字は何だ。残された文字の割合だろうか。うーん、わからん。
    「一枚上手」
    どう一枚上手なのだろう。それ、我が家でもやってみたいが恐ろしい。
    「クロニクル」
    同じ2005年の8月。どうして父と子なのか。2つの話はつながっているのか。ミュージシャンとキックボクサー、セックスが好きなことだけは共通している。
    「義足」
    「かたちだけの愛」の義足となんという違いか。素人の作った義足、さぞ使いづらかったことだろう。ところで鉈で手足を切り落として、出血多量では死なないのだろうか。不思議だ。
    「母と子」
    また編集者泣かせなことを。どういう順に読んでいけばよいかはほどなく判明したが、0を先に読んだほうがよかったのか、それとも最後に読むと何らかのオチがあるのか、などと思ったが、そういうことでもなさそうだった。離婚して、別の男のところに子どもを連れて行くのだろうかと想像したが、3だったかでおもむろに包丁が出たところで、死ぬのかと思えた。しかし、そういうわけでもなさそうだった。単に、ディテールを変えていろいろな描き方ができるということを示しているだけなのだろうか。(実際には図書館で借りた単行本で読んだのだけれど、文庫だとどういう割り振りになっているのだろう。文庫で2段組とか見たことないけど。)
    「異邦人#7−9」
    仕方ないよなあ。手がなくなってしまったのだもの。できることをするしかない。しかし、パリはそういうところなのだろうか。一目で外国人だと分かるのだし、もたもたしていても仕方ないと思うのだが。誰か教えてくれる人はいないものか。
    「モノクロウムの街と四人の女」
    女たちはサイボーグなのだろうか。色彩のないと言えば多崎つくるだが、この四人は色を取り戻すのだろうか。
    「慈善」
    偽善と慈善か。僕もたぶん、この夫と同じようなことを言うかもしれない。賭け事がとにかく嫌いだ。損をするに決まっている。リスクは背負いたくない。NISAとかも同じこと。そういう点で妻と言い合いになることもある。この夫妻と同じだ。僕は募金はしない。募金活動する時間があったら、働いて自分のもうけた金で寄付をしろと思ってしまう。家電はほとんど欲しいと思わない。壊れない限り新しいものは買わない。まあ、だいたいは面白みのない人間なのだ。

    たぶん、これで平野啓一郎の全ての小説を読んだ。エッセイ類は残っているものの。となると、今度は次に出る作品が楽しみになる。そろそろ長編が出てくるだろうか。

  • 気を衒った短編集

    人生は後ろ向きの席から車窓を眺めるようなもの。
    何が訪れるのかはその瞬間まで分からず、ただ経験的に推測できるだけ。ようやく訪れた時間はその姿をただ断片的に表すにとどめて彼の視界を離れていく。

  • 実験やん笑

  • 作者の作品を読むのは、「決壊」に続いて二作目。難しい、難解。。読みやすいのは、「義足」と「慈善」くらいか。(「義足」は、あの後藤健二さんの著作を参考にしてるそう。)

  • 様々な技法で小説、文章というか、本というメディアを
    分解、再構成している、そんな短編集。

    老いのために少しずつ体が崩れる世界の青年。
    ただ、その小説のページ下部には短いエッセイが
    挿絵の代わりについている作品。
    一文だけの作品。
    親子の人生をインタビュー形式で作り上げる作品 等々

    だが、この短編で最もコアなのは主人公が自殺する小説を
    書こうとしている小説家の作品だろう。
    おそらくは著者自身(平野)が投影された「大野」が
    主人公だが、その「大野」が、さらに自分の小説の
    主人公をみつめるため、実に不思議な感覚に陥る。
    さらにテーマは死である。
    死とは何か。小説にとっての。自分にとっての。
    小説とは何か。「大野」にとっての。実際の著者にとっての。
    多次元に見つめ表現しようとする。

    色々と興味深いが、面白いかと言えば、人それぞれだろう

  • 「やがて光源のない…/TSUNAMI」
    老化現象にまつわる個人的な話と大量死のスケッチが同時進行する

    「鏡」
    物理法則すら信用には値しないという考えへのある種の偏執

    「フェカンにて」
    英雄的な死に憧れをもつ小説家が思わず崖から飛び降りそうになる

    「女の部屋」
    同じ文章が7回、それぞれパターンの違う虫食い状態で繰り返される

    「一枚上手」
    貞操を証明するために携帯電話を交換して連休を過ごそうという提案

    「クロニクル」
    過去の男について饒舌に語る女たちだが結局は自分のことしか喋れない

    「義足」
    慣れた義足が泥にはまって抜けなくなり、ただのモノになってしまう

    「母と子」
    シチュエーションを異にして同じ行為が何度も繰り返される

    「異邦人♯7ー9」
    言葉もわからないまま海外出張に出向いた男の不安が見せる白昼夢

    「モノクロウムの街と四人の女」
    全体主義の街に現れた異物が全てを解放するどころか余計な混乱を招く

    「慈善」
    外貨預金で儲けた妻の賢しさが忌々しいのでヒューマニズムを持ち出し
    もっともらしく批判する夫

  • 書き手の透徹した視点が魅力的だった。今度はもう少し長いのを読もう

  • 死とはつまり。

  • 知らない言葉をたくさん使っているからたぶん好き。大変日本語の勉強になる。電子辞書片手に、時たまメモをとりながら、楽しい国語の時間となる。
    これは短編小説集だが、その中で言葉を並べ、物語を作るという作業で大変冒険しているのがわかる。成功しているかどうかは別として、形式上でもこのくらい新しいことしてみるのは若いなぁとうれしく思う。

  • 平野啓一郎の文体練習 vol.1

  • 解説がほしい。。
    最後の短編「慈善」はさっぱりしててわかりやすかった。

  • 短編が全部実験ぽくて、筆致も違ってるし、作家さんが楽しんで書いてるんだろうなという感じがします。ただし実験がすご過ぎて物理的に読めない作品?もあります

  • 初平野啓一郎作品ですた。現代男性作家さんの中ではかなり好き。

  • 初平野啓一郎作品。これを最初に読んだのは間違いだった。実験的な作品は、最初に読むものではないな。やりたいことはなんとなく分かったのだけど。

  • ふと入った本屋さんで知り合いの人が働いていて、社割?みたいにしてもらったってことが印象的だった。

    結構斬新な試みをしていた本で、本自体がアート作品のようだった。
    けど、その表記のゆれと文字に込められた意味の間で迷子になってしまい、結局、読み切れずに手放してしまった。

  • 『フェカンにて』
    小説ってこういう構造にもなりうるって知らなかった。
    さらっと読めるものではなかったのでやや時間かかったけど、そういう残響みたいのが、好き

  • 2/3
    文学の限界を超える。
    三重の構造になっていたり(「『フェカンにて』」)、同じ言動をする人物の背景だけ変えてみたり(「母と子」)。

  • かなり実験的な作品が並ぶ短編集

    これは小説なのか?・・・・・と少し考えてしまった。


    “日蝕”を読んだ時に(文章表現の難解で独特な事を除いても)

    「おっ、この人やるな」と思ったが

    今回もまた違う意味で同じ感想を持った


    この作品は

    おもしろいか、そうでないかよりも
    おもしろがれるか、そうでないかなんではないだろうか

    私がどっちだったかは・・・・・

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著者プロフィール

1975年愛知県蒲郡市生。北九州市出身。京都大学法学部卒業。1999年、在学中に文芸誌「新潮」に投稿した『日蝕』で、第120回「芥川賞」を受賞する。
主な著書に、『葬送』『透明な迷宮』『マチネの終わりに』『ある男』等がある。

平野啓一郎の作品

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